病院 41巻11号 (1982年11月)

特集 病院の「若返り」策—特に医師をめぐって

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病院の老化■

 一般社会の人からは,病院の良し悪しは,建物が立派であるとか,備え付けられている機械器具が最新の高性能のものであるとかいうことが判断材料として取り上げられている場合が多いように思われる.そこで病院の側でも,そうした,いわゆるハードウエアの充実には,可能な限りの努力を惜しまないのが常である.

 しかしながら,よく考えて見ると,病院にとって一番大切なことは,そこで行われている医療内容が常に高い水準に維持されていて,それが患者のために役立てられることであろう.その医療を支配しているのは,病院で働いている医療従事者の働きであり,個々のこれらの人たちが患者のためにいかに努めて仕事をするかで決まるわけである.こうした医療従事者の働きの中で,その中心的役割を果たしているのは医師の働きであることは言うまでもない.建物や機械がどんなに立派であっても,病院に働いている人たちのモラルが低く,奉仕の精神に欠け,また知識不足であっては,真に患者に役立つ医療ができるとは考えられない.科学技術が急速に発達している今日,それを用いた高性能の機械器具を持つことも良い医療を行うために必要ではあるが,それは病院の医療水準を決める要因の一つに過ぎず,もう一つの,それに劣らない重要性を持つ要因は,医師を中心とする病院に働く人にかかわる問題であることを忘れてはならない.

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人口高齢化時代の医師■

 日本は史上類を見ない急速な人口高齢化時代を迎えて,マスコミをはじめそれをめぐる話題に毎日こと欠かない.老人医療の問題はその花形と言ってよかろう.ところが皮肉にも,医療従事者,特に医師たちの高齢化については,正面から取り上げられた話を聞かない.確かに医師は一般市民と違い,昔から特殊な技術職として,「医者は例外」的な意識が自他ともに通用して今日に至っているが,これからの厳しい経済情勢と高齢化の中で,このまま安穏に暮らせるはずはない.

 筆者は,職域病院の内科勤務医として実に30年余も働いた後,還暦を迎えて同じ職域の健康管理部門に第二次就職し,高齢勤務医の不安を切実に体験しているので,これを踏まえて何がしかの提言を試みたい.

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 最近,大きな病院では医師集団の停滞の傾向が見られるようであるが,その原因について分析し打開策を考えてみたいと思う.

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 病院の若返り策が雑誌の特集記事になるとは急速な時代の流れをつくづく感じさせられます.一部の病院では既に医師の高齢化に伴う医師集団の停滞と病院の活力の低下現象が生じており,長野県下でもいくつかの病院にその状況が推察されます.この問題は一般的に論じても余り説得力はありませんので,私どもの佐久市立国保浅間総合病院や長野県内で私どもの病院と同じように,最近急速に発展した病院の観点から与えられたテーマを論じたいと思います.

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研究所のアクティビティ■

 中央公論社から発行されている科学雑誌「自然」には"mini scope"と言う短報欄があるが,ここにはしばしば研究所あるいは研究者の知的生産の能力,人事の停滞に関する話題が取り上げられている.研究所あるいは研究部のアクティビティが高いのは設立後10年間と言うのが定説で,建物が立派なものに建て替えられ,研究者が有名になり始めると次第に衰運に向かうとされている.こんな例はいくつも挙げることができよう.

 病院は研究所と非常に異なるように見えるが,患者ひとりひとりのなかに病気の原因を発見して治療法を工夫して行く過程は,本質的には研究所の業務と差はない.大病院も中小病院も一様に建物が立派になり,筆者の勤務する病院もその例に漏れないが,その活性を維持し向上させるためにはどうすべきか,全員で知恵をしぼって行かなくてはならない.

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 人事の停滞はただ公立病院におけるだけではなく,すべての官庁,会社などでも事情は同じである.定年制の問題,あるいは中高年層の処遇の問題,特に"窓際族"などの言葉にも表されるように社会問題化し,これがモラールの問題とも結びつき,いかに対応するかが大問題となっている.

 筆者の勤める都立松沢病院においても,この問題は避けて通れない.明治20年から昭和24年まで,松沢病院長は東大教授が兼務することになっていた.東大精神科医局と松沢病院医局は一体のものであり,精神医学者,精神科医の不足のため,呉秀三院長から内村祐之院長,更に林暲院長の時代まで,多くの先輩は大学教授あるいは官公私立病院長として迎えられていた.病院内において医師の「若返り」を考える必要もなく,いわば自然の流れに任せておいても,それぞれ業績を上げ松沢から巣立って行ったのである.

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 筆者は,自治体病院勤務の経験しかないので,自治体病院サイドから本テーマを論じてみたい.実のところ,こんなテーマを与えられて「ハタ」と当惑している.

 現在,病院長職4年目で,医師の確保についてはいつも悩んでいるが,まだ,医師の「若返り」については考えたことはなかった.

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 病院の「若さ」とは何であろうか.「常に新しい医学,医療技術を吸収して,人的にも物的にも発展できる可能性と柔軟性をもっていること.」と言ってよいのではなかろうか.

 病院が,このような若さを保っていくことは,医療機関としての基本的な責務でもあり,その成否は地域住民の保健,生活の確保向上に大きな影響を及ぼすばかりか,その病院の盛衰をも左右することとなる.

アンケート

病院の「若返り」について 本誌編集室
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 編集室では,病院の「若返り」策に関して下記のようなアンケートを行った.アンケートの対象は厚生省調査による昭和55年の病院数9055の10%の905病院の病院長とした.アンケート送付先病院は都道府県別・開設者別に各々10%を無作為に選定した.その結果131病院(アンケート送付数の約14.4%)より回答を得た.またアンケートは病院長宛送付したが,回答記入者別では下記のとおりとなっている.(回答締切日7月末日)

グラフ

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■放医研の性格と組織

 放射線医学総合研究所(略称,放医研)は,昭和32年7月,科学技術庁の附属機関として設立.①放射線による人体の障害並びにその予防,診断及び治療に関する調査研究,②放射線の医学的利用に関する調査研究,③これらに関する科学技術者の養成訓練,の三つを行うことが目的とされた.相次ぐ核実験,とりわけ29年の第五福竜丸事件,及び原子力の平和的利用という,放射線のもつプラス・マイナス両に対する社会的関心の高まりが設立の背景となった.

 千葉市郊外,国鉄総武線稲毛駅から徒歩10分の新興住宅街に位置する放医研は,11万7千平米の敷地内に大小25の棟舎が建ち並ぶ.組織的には,物理・化学・生物・遺伝・生理病理・障害基礎・内部被ばく・薬学・環境衛生・障害臨床の各研究部が,放射線障害に関する研究分野を,臨床研究部,並びに病院部が医学的利用についての臨床的研究分野を主に受持っている.また,茨城県那珂湊市には支所が設置され,環境放射生態学・海洋放射生態学の研究部が置かれている.

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 検査関係の非医系の人々の中で,最も将来を嘱望されている中堅の1人である.昭和56年千葉大学降矢震教授の指導のもとに研究した「二基質アルカリ性燐酸酵素測定法」に関する論文で医学博士の称号を授与され,同年同大学の講師に就任された.

 京都の出身で高校卒業後直ちに東京衛生病院の臨床検査室に就職.病院の好意によって翌年から,断続的ではあるが4年間米軍病院で,更に1年間慶応大学で検査技術の勉学が出来たことは,後に理科大学化学科を卒業するきっかけともなっている.もちろん実社会生活から必要性を感じての勉学は,それなりに努力した結果であろうが,その基礎を導き出してくれたのは当時の東京衛生病院の市瀬晴夫院長である.

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 第6回日本診療録管理学会が去る9月2,3日の両日,福岡市の福岡大学医学部で開催された.今回は診療録管理業務をすすめる診療録管理士をはじめ,医師,看護婦ら約500名が参加した.

 学会はシンポジウム「診療録記載に関する教育の現況」及び「診療録管理における電算機応用の実際的効用」のほか特別講演,学会長講演,指定課題,一般演題の発表が行われた.

設備機器総点検

ゼグフィックス抑制帯 松沢 孝子
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ゼグフィックス抑制帯の導入

 入院患者の安楽,安全は看護にとって重要な条件であり,かつ非常に神経を使い,特に意識障害をもつ患者の安全のための抑制には優れた固定技術が必要となる.手術後半覚醒状態の患者,何らかの意識障害をもった患者,体動激しくベッド固定の必要な患者,治療のため一定の固定を必要とする場合,老齢化による痴呆の患者などはこのくらいなら大丈夫だろうと思っていてもちょっとした瞬間に,ベッド転落などを起こしてしまう.ベッド棚をつけていても防止することのできない場合が臨床の場で多々起こるのである.

 従来は,布で体を包む抑制帯を作ったり,サラシ布で紐を作り固定帯として四肢を無理してベッドに縛る型を使って来た.しかし体動が激しかったり,縛られることが嫌で,力を入れると,紐が四肢を締め,血行障害を起こしたなど,二次障害を併発したこともあった.今回このゼグフィックスを導入し,精神障害をもち,自己意識のない体動激しい患者に使用し,安全を計ることができたので紹介する.「患者の症状にあわせて身体を自由に動かせ,ワンタッチタイプの抑制帯」と紹介されているが,その効果は十分あることが実証されている.

講座 病院経営分析入門・20

採算性の検討と改善(1) 一条 勝夫
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損益分岐点について

 採算がとれるということは,収益が費用を上回って,目論見どおりの純利益が得られる状態を指す.つまり損益計算における黒字状態をいうのであるが,経営管理の努力は黒字が出るよう日頃から計画し,実行することにある.とすれば,黒字経営が達成でき,計画どおりの純利益が得られるかどうかという時に,どのような分析検討を行うべきか.

 次の例はある小都市の360床の一般病院におけるデータである.

バイオエシックスと医療

11.病院での患者教育 木村 利人
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 今月と来月の2回にわたり,主に「バイオエシックスと教育」の問題について考えてみます.

 言うまでもなく「医療」は専門知識と経験を持った医師・看護婦をはじめとする多くの人々と,患者自身をも含めたチームワークです.しかし一方では,「患者の権利」とか「同意」とか医療従事者と患者の「コミュニケーション」とかは,医療にとって本質的なことではないし,「要は病気を治すことだ.早く病気が治りたいなら贅沢を言ってはならない.」と考える医療従事者たちもかなり多かったのも事実です.しかし事態は大きく変化してしまいました.人間としての尊厳を認め人格を尊重することは,実は医療にとって最も重要な根本原理の一つであるということが当然だからです.その意味では「患者の権利」は全く新しく作り出されたのではなく,今まで医療のメカニズムの中であまりにも人権が無視されていたのが間違っていたのだ,とも言えるのです.

病院職員のための医学知識

老年学とは 村井 淳志 , 亀山 正邦
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老年学とは,いつごろから始まったどういう学問ですか.現在どういう分野の人がどのような研究をしていますか.

 生物はなぜ,どのように年をとり老化するのか,年をとると精神と身体はどのように変化するのか,社会は老人をどのように処遇したらよいのか,など老人に関するあらゆる事柄を扱う学問が老年学です.19世紀の後半自然科学が著しく進歩するとともに,老化の科学的研究が始まりました.20世紀に入ると欧米では老人の人口が非常に増え,老人問題が社会問題になりました.このような社会的要請を反映して老年学が急速に発展し,老年学の専門誌が1939年ドイツにおいて始めて発刊されるに至りました.米国ではそれより少し遅れて,1946年に専門の機関誌が発刊されました.

 日本において社会福祉法人浴風会が設立され,老年の医学的及び心理学的研究が系統的に開始されたのは1926年のことです.しかし当時老年学を専攻する者は少なく,先駆的な仕事が社会的に注目されることもないままに,積み重ねられておりました.

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業務単位当たり原価と収益(つづき)

3)入院患者・外来患者1人1日当たり原価と収益(表4)

①計算の手続き

 入院部門及び外来部門における1人1日当たり原価と収益は前述したところであるが,その他の部門,すなわち手術,放射線,検査などの各部門の原価及び収益を,入院患者または外来患者の利用割合に従って,入院患者にかかるものと外来患者に対するものに分け,これを患者数で除したものを合計すると,入院または外来患者1人1日当たりのすべての原価と収益が得られる.

 利用割合は,各部門の入院または外来の収益額によることとした.この割合は,表5のようになる.

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 最近,とみに老人医療,福祉医療の見直しが問われており,訪問看護に対する要望も高まってきた.老人に限らず,急性期の濃密な治療を終え入院が長期化している患者では,家族の経済的,精神的負担が,大きく,更に退院を指示されても,家庭に帰った場合の介護問題に対する不安もまた深刻である.

診療報酬請求のポイント 松尾 茂
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 診療報酬請求に関して,「いかに考え,正しい算定ができるか」の問題が昨年6月改訂以来話題となっている.これは改訂に伴う収入減が著明なため医療行為の請求漏れや算定ミスを中心に,また査定の多い所は少しでも査定を少なくするように,より真剣に考えて来た証拠と思う.「診療報酬点数表」を自由に駆使して適正点数を導き出す行為は医事課職員にとって一つの職人芸的なものとされ,点数表の解釈にはいろいろ頭を使うものである.「請求のポイント」を分かりやすく解説した参考書は余り出ていないが,今回は実務的な具体例は別にして,医事課職員の点数算定のためのポイントとも言える心構えや点数表の見方などについて述べてみたい.

随想=私の出会った患者

水葬 吉岡 観八
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出撃

 いよいよ明日は出撃である."士官心得の条"に従って,朝一服の抹茶をたて,謡曲"清経"を独吟し,白装束ではないが,すっかり出陣の身づくろいを整えた.昭和18年9月19日,折から秋雨がシトシトと本降りになっていた.

修羅謡い港の秋を出撃す出撃に港の秋の時雨たる出撃の朝(あした)に烏鷺(うろ)を萩時雨

新 病院建築・59

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沿革

 国立がんセンターの研究所は,昭和37年に開設されて以来ほぼ20年経過しており,この間がんセンターの研究所における,がんの研究,臨床,予防面の開発とその進歩には,めざましいものがある.がんウイルス,化学的発がん物質の研究はもとより,ヒトのがんモデルとしての動物実験の多角的追及等,数多くの研究実績を上げ,その成果は,世界的に高く評価されている.

 しかしながら,旧研究所建物は,昭和5年に建築された旧海軍軍医学校の建物が主体で,それらを模様替,改造を行って利用したもので,建物の老朽化とともに研究の進展に追従するには限界に達した.そこで昭和51年に新研究所建設構想が打ち出され,昭和53年10月に着工,昭和56年10月に竣工の運びとなったものである.

病院精神医療の展開

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 現代はアイデンティティの危機の時代と言われているが,精神科看護者の役割も,今日,アイデンティティの危機に見舞われている1).これは今日の精神医学の動きと精神衛生の考え方に基因するものと思われる.

 精神病が悪霊にとりつかれた不治のいわゆる"気狂い"の病として取り扱われた時代には看護者は患者の保護拘束,監視,食事の世話などを,更にマラリァ熱療法,インシュリンショック療法,電気ショック療法などが精神科治療の中心になると,その治療介助を,というようにその役割は明確であった.向精神薬の登場により,看護者の役割も医師の従属的機能から,生活療法すなわち生活指導,作業療法,レクリエーション療法の担当者としての役割を担うことになった2).生活療法を中心とした看護者の働きかけは,確かに病院内での日常生活行動の自立をもたらした.しかし,生活療法は必ずしも患者が社会復帰する過程で直接的に力とはなりえず,また,いったん社会復帰した患者も再三再四入院を繰り返し,いわゆる"院内寛解"しかもたらさないのではないかと疑問視する声も出てきた3)

老人医療と福祉の課題

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はじめに■

 どんな理想的な家族でも,家族成員の障害あるいはもっと一般的な疾病によって,これまでの生活が一時的または長期的な危機に見舞われる可能性を秘めている.

 特に高齢化社会の到来と言われている今日,障害や疾病に起因して,日常生活が困難なまま,家族生活の中に封じ込められ,家族全体が文字通り社会的なハンディキャップを背負った形で生きていかなければならない人々の増加が予測されている.このことは,昭和26年の身体障害者数512,000人(人口1,000:6.05人)が,昭和55年では1,977,000人(人口1,000:23.8人)と,その絶対数でも人口比でも約4倍の増加があり,そのうち54%が60歳以上で占められるという実態からも明らかである.

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 53,56年の二度にわたる保険点数の改定で人工透析は大幅に点数が引き下げられ,透析専門から一般病院への道を歩き始めた病院の話も聞く昨今,透析専門病院は皆,転機に立っていると言っていい.昭和50年開設された井上病院は,55年外来透析専門の分院を附設して,合計70の透析ベッドを持つ北大阪最大の透析施設であるが,ここでも引き下げの影響を受けて,昨年6月以前に比べ,25%の減収.そのため診療の対象を腎関連疾患全体に広げ,かつ職員の意識改革に取り組み始めた.

中小規模病院の運営 座談会

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 深瀬 まず,中小病院の歴史を概観し,それから本題のお話をうかがいたいと思います.

 明治維新以来現代に至るまで,日本はすべての分野で西洋のまねをして西洋に追いつくという形で近代化しようという考え方が基盤になっていたと思います.その間,「産業立国」ということで殖産工業が重視されたため,医療面は医者個人の能力や資金に頼ってきて,いわば政府は少し怠けてきた,すなわち戦前には国立の病院として,陸海軍の病院や療養所はありましたが,一般の国民のための国立病院は皆無に等しかったことに,これは端的に見ることができます.

基本情報

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病院
41巻11号 (1982年11月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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