特集 病院の「若返り」策—特に医師をめぐって
病院勤務医の高齢化と病院の「若返り」
浅井 一太郎
1
1虎の門病院
pp.933-937
発行日 1982年11月1日
Published Date 1982/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207869
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病院の老化■
一般社会の人からは,病院の良し悪しは,建物が立派であるとか,備え付けられている機械器具が最新の高性能のものであるとかいうことが判断材料として取り上げられている場合が多いように思われる.そこで病院の側でも,そうした,いわゆるハードウエアの充実には,可能な限りの努力を惜しまないのが常である.
しかしながら,よく考えて見ると,病院にとって一番大切なことは,そこで行われている医療内容が常に高い水準に維持されていて,それが患者のために役立てられることであろう.その医療を支配しているのは,病院で働いている医療従事者の働きであり,個々のこれらの人たちが患者のためにいかに努めて仕事をするかで決まるわけである.こうした医療従事者の働きの中で,その中心的役割を果たしているのは医師の働きであることは言うまでもない.建物や機械がどんなに立派であっても,病院に働いている人たちのモラルが低く,奉仕の精神に欠け,また知識不足であっては,真に患者に役立つ医療ができるとは考えられない.科学技術が急速に発達している今日,それを用いた高性能の機械器具を持つことも良い医療を行うために必要ではあるが,それは病院の医療水準を決める要因の一つに過ぎず,もう一つの,それに劣らない重要性を持つ要因は,医師を中心とする病院に働く人にかかわる問題であることを忘れてはならない.
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