臨床眼科 70巻7号 (2016年7月)

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要約 目的:局所麻酔下での白内障手術で体動が懸念された3症例に対して,鎮静のためにデクスメデトミジン(dexmedetomidine:DEX)を持続静注した結果の報告。

症例:症例1は不安が強い65歳男性で,DEXで鎮静を行い,体動なしに手術ができた。症例2は不安感と認知症のある75歳女性で,DEXの投与開始直後に起き上がろうとしたが,手術の開始後には体動がなく推移した。症例3は過熟白内障,水晶体亜脱臼,急性閉塞隅角症で眼痛と不安が強い41歳男性で,DEX投与下で手術を開始したが,眼痛と体動が強く,全身麻酔に切り替えた。

結論:DEXの持続静注は不安の強い症例では鎮静効果があり,認知症がある症例にも有効であった。鎮痛効果が乏しいため,疼痛が強い症例では有用性が低かった。

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要約 目的:計画的後囊切開を併用した白内障手術後,徐々に計画的後囊切開部位から前房に前部硝子体膜が保たれた状態で硝子体が嵌頓し,網膜剝離を発症した症例の報告。

症例:アトピー性皮膚炎がある12歳男児。

所見:全身麻酔下で両眼の水晶体超音波乳化吸引術,眼内レンズ挿入術,計画的後囊切開術を施行した。硝子体脱出はなく,眼内レンズは囊内に固定した。術後も瘙痒感のため上眼瞼を搔破しており,両眼とも徐々に前房内へ硝子体嵌頓をきたし,右眼は鋸状縁断裂による裂孔原性網膜剝離を発症した。硝子体手術を施行し,網膜は復位した。

結論:アトピー性皮膚炎を合併する小児症例では,計画的後囊切開の適応は慎重に検討する必要がある。

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要約 目的:滲出型加齢黄斑変性に対して行ったアフリベルセプトの硝子体注射の1年間の成績の検討。

症例と方法:2014年4月までの1年間に,加齢黄斑変性に対する治療としてアフリベルセプトの硝子体注射を行った27例28眼を対象とした。男性17眼,女性11眼で,平均年齢は77歳である。9眼が未治療眼,19眼がラニビズマブなどによる治療を受けたが効果がない既治療眼であった。加齢黄斑変性の病型は,22眼が滲出型,6眼がポリープ状脈絡膜血管症であった。投与開始から1年後の視力と中心窩網膜厚を評価した。

結果:1年後の視力は改善せず,未治療眼と既治療眼の間に有意差がなく,治療前の視力が維持されていた。中心窩網膜厚は,両群とも治療前よりも有意に改善した。

結論:加齢黄斑変性に対するアフリベルセプトの硝子体注射の1年間後の評価で,視力の悪化はなく,ラニビズマブによる既治療眼でも未治療眼と同様な効果があった。

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要約 目的:穿孔性眼外傷後の線維組織形成により白内障手術の難度が高くなった1症例の報告。

症例:45歳男性が,8歳時に鉛筆の芯により左眼に穿孔性外傷が生じた。数年前から左眼の視力低下で,外傷性白内障として紹介受診した。

所見と経過:矯正視力は右1.5,左30cm/指数弁で,左眼角膜の鼻下側に混濁があり,その後部に虹彩欠損と水晶体混濁があった。1か月後の水晶体再建術中に,角膜穿孔創から水晶体囊に至る線維性の組織形成があった。眼内レンズ支持部の片方を線維組織の上にかかるように囊外に固定した。以後眼内レンズの偏位はなく,術1年後の矯正視力1.0を維持している。

結論:本症例の外傷性白内障では,穿孔後の反応として線維組織増殖があり,白内障手術の際に格別の配慮が必要であった。

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要約 目的:Rathke囊胞に漿液性網膜剝離が併発した3症例の報告。

症例:症例1は15歳男児で,4年前から片頭痛・両眼の乳頭浮腫・右眼の漿液性網膜剝離があったという。Rathke囊胞が発見され,その摘出手術で視力と眼底所見が正常化し再発は認めない。症例2は24歳女性で,8年前から片頭痛があり,6年前にぶどう膜炎の所見を伴わない漿液性網膜剝離があり,原田病疑いで加療し改善した。同様の所見が今回再発し,Rathke囊胞が発見された。摘出手術後再発は認めない。HLA型はDR14,DR15であった。症例3は39歳女性で,9年前から片頭痛があり,両眼の視力低下で受診した。ぶどう膜炎の所見を伴わない両眼の漿液性網膜剝離があり,原田病の疑いで加療し改善した。その6か月後に両眼の漿液性網膜剝離が再発し,Rathke囊胞が発見された。摘出手術後,漿液性網膜剝離は完治したが5か月後に漿液性網膜剝離が再発した。

結論:これら3症例では,Rathke囊胞と漿液性網膜剝離との間に因果関係が存在する可能性が示唆された。

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要約 目的:眼瞼下垂術後の角膜収差の変化を検討する。

対象と方法:対象は眼瞼下垂手術を施行した48名74眼(平均年齢74.5±9.23歳)。二次収差および角膜高次収差を術前,術後1週間,術後1か月で測定した。Schirmer I法,SPKスコアで他覚的ドライアイの評価を行った。

結果:角膜二次収差は術前後で有意な変化がなかったが,角膜高次収差は術後1週間で有意に増加した。Schirmer I法による涙液量は術後1週間で有意に増加し,SPKスコアの変化には有意差がなかった。

結論:眼瞼下垂手術は一時的な術後角膜高次収差の増加により視機能に影響を及ぼす可能性がある。

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要約 目的:角膜異常眼における白内障手術の安全性と有効性の検討。

対象と方法:同一術者が白内障手術を施行した角膜異常眼79例100眼を対象に,合併症,矯正視力,術後屈折誤差を後方視的に検討した。

結果:術中の後囊破損を1眼認めた。術後,視認性不良部での核片残存の処理と眼内レンズハプティクス整復を各1眼に行った。矯正視力は白内障手術で有意に改善した(p=0.0001)。屈折誤差は0.87±0.91Dであった。

結論:角膜異常眼における白内障手術はおおむね安全かつ有効であったが,視認性不良部での核片残存と術後屈折誤差に注意が必要である。

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要約 目的:涙点に発生した囊胞の症例を報告する。

症例:83歳女性。約2年前からの両側の流涙を主訴に受診した。両側の下涙点閉鎖と右下涙点の囊胞様隆起病変があった。

所見:右下涙点閉鎖に対して涙点形成術と涙道内視鏡検査を施行した。囊胞様病変を切除すると内腔は粘液で満たされ,涙小管と連続していた。下涙小管水平部は開通していたが,内総涙点の閉塞があった。切除検体は病理組織学的に重層扁平上皮に裏装される真性囊胞と診断された。

結論:本症例では二重閉塞により涙小管水平部は閉鎖空間となっていて,粘液産生能を有する総涙小管が含まれていた。これが囊胞形成の要因になった可能性がある。

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要約 目的:裂孔原性網膜剝離(RRD)の手術中,液体パーフルオロカーボン(PFCL)を使用し,網膜下液(SRF)の移動中に黄斑円孔が生じた1例の報告。

症例:66歳女性。2週間前からの右眼の視力低下,網膜剝離のため当科を紹介され受診した。初診時の矯正視力は右眼0.04,眼底は硝子体出血と全網膜剝離を認めた。白内障併用硝子体手術を施行した。手術中PFCLでのSRF移動時に黄斑円孔を生じ,PFCLが網膜下に迷入した。意図的裂孔よりPFCLを吸引し,内境界膜剝離後にSF6ガスを注入した。黄斑円孔は閉鎖が得られず,2週間後に再手術を施行し円孔は閉鎖した。初回治療15か月後の右眼矯正視力は0.4まで改善した。

結論:SRFの移動にPFCLを使用する場合,黄斑円孔を生じる危険がある。

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要約 目的:網膜全剝離が自然軽快したCoats病の1例報告。

症例:3歳9か月の男児。瞬目の増加で近医を受診し,右眼の網膜剝離を指摘され,名古屋市立大学病院を受診した。視力は右光覚弁なし,左1.0であった。右眼に胞状の網膜全剝離,網膜血管異常および網膜下滲出斑を認め,蛍光眼底造影検査で蛍光漏出および無灌流領域を認めた。超音波検査,CTおよびMRIでは充実性病変や石灰化はなく,Coats病と診断した。網膜電図は平坦で,光覚もないため,経過観察とした。初診から6か月後,徐々に末梢血管異常が改善し,滲出斑も減少してきた。それに伴い網膜剝離も改善したが,視力は光覚弁なしのままであった。

結論:本症例は経過中に末梢血管異常が改善し,血管透過性が減少したことにより滲出性網膜剝離が改善したと考える。

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要約 背景:エルロチニブは,細胞の表面に発現する上皮成長因子受容体を選択的に阻害する内服抗癌剤である。

目的:肺腺癌に対するエルロチニブの内服中に網膜症が生じた1例の報告。

症例:64歳男性が両眼のかすみで受診した。4年前に肺腺癌で手術を受け,その1年後に脳転移が生じ,4日に1回のエルロチニブ150mgの内服を開始した。

所見と経過:矯正視力は右1.0,左1.2で,両眼の眼底に多数の硬性白斑と網膜出血があり,右眼に網膜浮腫と漿液性剝離があった。その所見は糖尿病網膜症に類似していた。エルロチニブを7日に1回へ減量し,右眼の網膜剝離は消失した。1年後に左眼に漿液性網膜剝離が生じた。エルロチニブの内服を中止し,3か月後に網膜剝離は消失した。

結論:エルロチニブの内服で糖尿病網膜症に類似する網膜症が発症した可能性がある。

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要約 目的:漿液性網膜剝離を呈したネフローゼ症候群の症例報告。

症例:59歳男性が左眼の視力低下で受診した。1年前にネフローゼ症候群と診断されていた。全身浮腫のため体重が10kg増加していた。

所見と経過:矯正視力は右1.2,左0.6であった。左眼黄斑部に漿液性網膜剝離を認めた。利尿薬投与とステロイドパルス治療の後,体重減少と同期して網膜剝離は改善し,1週間後の左矯正視力は1.2であった。その後,漿液性網膜剝離は18か月の間で2回再発し,全身的治療(塩分制限や透析導入)と体重減少の後に速やかに改善した。

結論:ネフローゼ症候群による漿液性網膜剝離は体重増減と同期していた。

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要約 目的:ブリモニジン酒石酸塩点眼液(ブリモニジン)によるアレルギー性結膜炎発症の頻度と傾向の報告。

対象および方法:ブリモニジン点眼を3か月以上継続した緑内障および高眼圧症連続178例について,後ろ向きにブリモニジンによるアレルギー発症の有無と投与期間を調べた。さらに発症に関与する要因を検討した。

結果:アレルギーを発症した症例は33例で,発症率は投与1年で15.7%,2年で27.1%であった。発症に関与する要因として点眼アレルギーの既往が有意であった。

結論:ブリモニジンアレルギーは点眼開始後1年を過ぎても発症し,投与期間2年で4人に1人が発症した。発症は年齢,性別,併用点眼薬数,全身アレルギーの有無にかかわらず,点眼アレルギーの既往がある場合に生じやすかった。

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要約 目的:プレドニゾロン内服で眼圧が上昇した小児に対し,リパスジルを含む5剤の点眼で眼圧が下降した報告。

症例:4歳女児がネフローゼ症候群と診断され,プレドニゾロン内服の開始から13日後に眼科に紹介された。

所見と経過:矯正視力は左右眼とも1.2で,眼圧は右52mmHg,左56mmHgであり,乳頭陥凹が両眼にあった。トラボプロスト,チモロール,ブリンゾラミドの点眼で2日後に眼圧が30mmHg台に下降したが,リパスジル点眼を追加し,さらにブリモニジンを加えた5剤点眼とした。治療開始から8日後に眼圧は右22mmHg,左19mmHgへ下降し,点眼を漸減終止した後に乳頭陥凹が軽症化した。

結論:多剤点眼で治療中のステロイド緑内障に対し,リパスジル点眼を追加することで,良好な眼圧下降が得られた。

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要約 目的:眼窩腫瘍に対し開頭腫瘍摘出術を行い,mesenchymal chondrosarcoma(間葉型軟骨肉腫)と診断できた症例の報告。

症例:42歳男性。3か月前から左眼視力低下を自覚して近医眼科を受診した。遠視化,脈絡膜皺壁を認め,MRIで左眼窩内腫瘍と診断され当科を紹介された。

所見:視力,眼球運動障害,眼位に異常なく,全身的に異常はなかった。開頭腫瘍摘出術を施行し,眼窩原発の間葉型軟骨肉腫と診断した。化学療法,放射線治療は感受性が低いため行わなかった。腫瘍全摘出後の経過は良好で,術後1.5年で再発・転移を認めていない。

結論:間葉型軟骨肉腫が眼窩に生じることがある。

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要約 目的:原因不明の両眼の視神経炎に対して血漿交換療法が奏効した症例の報告。

症例:54歳女性が左眼の球後視神経炎を発症し,3日後に受診した。左眼視力は0.01であった。副腎皮質ステロイドのパルス療法が行われたが,光覚なしになった。その3か月後に右眼の視神経炎が発症した。左眼の経過からステロイド抵抗性であったので,血漿交換療法を行った。一過性の効果があったが,2週間後に再発し,光覚なしになった。再発の7週間後に開始した再度の血漿交換療法で,視力は1.0に改善した。以後プレドニゾロンと免疫抑制剤の内服を併用し,1年後の現在まで,良好な右眼視力を維持している。経過中に複数回行った抗AQP4抗体と抗MOG抗体は陰性であった。

結論:原因が特定できず,ステロイドに抵抗性のある視神経炎に,早期の血漿交換療法が奏効した。

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 症例は63歳,男性。10日前に左眼瞼腫脹を自覚し,当院へ紹介受診となった。

 初診時視力は右0.4(1.0×−1.50D()cyl −1.00D 20°),左5cm指数弁(矯正不能)であった。左眼前眼部には,眼瞼腫脹,瞼結膜・球結膜充血,結膜浮腫,多量の眼脂を認め,周辺部角膜は菲薄化し,その鼻側に潰瘍と少量の房水漏出を認めた。

連載 今月の話題

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 先天眼瞼下垂の治療には,挙筋前転術や前頭筋つり上げ術(以下,つり上げ術)などの手術が行われる。手術適応の判断や術式の選択,手術時期の決定には,下垂の程度や挙筋機能など眼瞼の所見はいうまでもなく,視機能の発達を含め見逃せないポイントがある。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第6回

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今月の症例

《症例1》

【患者】64歳,男性

【主訴】両眼の視野狭窄

【現病歴】4年前から近医眼科で両眼の緑内障と診断され,抗緑内障点眼治療を開始した。眼圧は20mmHg前後で推移し,薬物治療を強化されたが,視野障害が進行した。定年退職を機にようやく精査・加療目的で当科へ紹介され受診となった。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第7回

糖尿病網膜症 長谷川 泰司
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疾患の概要

 糖尿病網膜症(diabetic retinopathy:DR)は微小血管障害が主な病態であり,①網膜毛細血管の破綻,透過性亢進による網膜出血や網膜浮腫,②毛細血管瘤形成,③網膜毛細血管閉塞による無灌流領域の形成,④網膜虚血による血管新生,などがみられる。血管透過性亢進による糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)はDRのいずれの病期にも合併し,視力低下の原因となる難治な病態である(次号第8回参照)。

 無灌流領域が広範に及ぶと,網膜虚血によって発現される血管内皮増殖因子の眼内濃度が上昇1,2)し新生血管が発生する。その結果,硝子体出血や牽引性網膜剝離,血管新生緑内障を生じ視機能を著しく低下させる。フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)は,これらの微細な血管変化を描出することが可能であり,微小血管症としてのDRの病態把握に非常に大きな役割を果たす。血管新生という増殖性変化が悪化する前に汎網膜光凝固を行い,病状の悪化を防ぐのがDRをコントロールするうえで重要である。そのためにはFA画像を正しく評価することが大切となる。DRにはさまざまな重症度分類が存在するが,本稿ではAmerican Academy of Ophthalmologyにより提唱されたDiabetic Retinopathy Disease Severity Scale3)(表1)をもとに解説する。

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第23回

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はじめに

 八子恵子先生が書かれた義眼床形成術の総説1)の中に,「眼球を失うことになる患者は,その後の義眼装着に大きな不安を抱くとともに,義眼装着を他人に気付かれないことを願っている。従って我々眼科医は,最終的治療である眼球摘出術や内容除去術を行う際に,その治療目的を十分に達成することはもとより,よりよい義眼床を形成するよう努力すべきである」とのくだりがあります。視機能を救うという戦いに敗北した眼科医が最後に患者にしてあげられること,それが「よりよい義眼床を形成すること」なのです。

 ここで「よりよい義眼床」とはどのような義眼床をさすのでしょうか? 義眼を入れたときに見栄えが良くて,それが動くこと。これに尽きます。本稿ではこの命題を実現するためにいかなる方策をもって手術に臨むべきか,という観点から,眼球内容摘出術(evisceration)と眼球摘出術(enucleation)を比較し,また,変形した義眼床に対する二次的な修正について解説します。

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 400ページに及ぶ緑内障治療に関する本が出版されたと知り,早速手にした。

 フローチャートと表が多く使用され,写真,図が豊富である。Webサイトを通して動画を見ることもできる。商品名を記した薬物治療の実例が示されているなど,臨床の第一線を意識した構成である。要となる箇所は,著者の単なる印象ではなく文献を引用した記述であり,説得力がある。「臨床の現場で役立つ」と「根拠が明らかな記述」を重視した編集者のコンセプトを感じる。

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 本の価値はいったい何で決まるのだろうか? わかりやすく言えばそれは,その本によってどれだけの人が救われるかということではないだろうか。そして,救われるのが死に瀕して助かる命だとしたら,その本の価値は何にも代え難いものだろう。この本がまさにそんな本だ。

 人ががんや寿命で死ぬとき,人は死を自覚し,死を受容し,受容しないまでも納得して,あきらめて,死ぬことができる。しかし,突然の病気で死に至るとき,あるいは不慮の事故に巻き込まれて死に至るときは,死を思う時間さえも与えられない。人生を振り返る時間もない。だから,突然の死からできるだけ多くの人を救ってあげたい。全ての医療者は,いや全ての人々は,家族は,そう願っている。その願いを叶えるのがこの本だ。

海外留学 不安とFUN・第7回

ニューヨークに留学して 井上 麻衣子
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 私は2015年1月〜12月の1年間,アメリカ・ニューヨークのVitreous-Retina-Macula Consultants of New Yorkに留学しました。これが掲載される頃には日本に戻っており,留学中のことがあたかも夢であったかのように感じていることでしょう。この留学記を書くにあたり,留学前に感じていた不安を挙げながら私の経験をお伝えできたらと思います。

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要約 目的:両眼の水平半盲を呈した梅毒性ぶどう膜炎の症例の報告。

症例:66歳男性が4か月前からの視力障害で受診した。発症前の視力は左右とも0.7であったという。輸血歴と海外渡航歴はない。

所見と経過:矯正視力は右0.2,左0.6で,対光反射が減弱していた。両眼に硝子体混濁,脈絡膜萎縮,乳頭周囲の白点病変があった。Goldmann動的量的視野検査で両眼に上方の水平半盲があった。血液の梅毒反応が陽性で,髄液に単核球と蛋白の上昇があり,大脳のMRI検査所見と神経症状などから神経梅毒と診断した。ペニシリンの大量点滴とステロイド点滴で,翌日から視力と自覚症状の改善が始まり,13日後に視野が改善した。治療開始から21か月後の現在,右0.7,左1.0の視力を維持している。

結論:梅毒性ぶどう膜炎では,神経梅毒が併発し,視野異常を呈しうることを本症例は示している。

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要約 目的:全身性強皮症の加療中にサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎が発症した症例の報告。

症例:75歳男性が左眼の飛蚊症で受診した。紹介医の診断は急性網膜壊死であった。1年前に全身性強皮症と間質性肺炎と診断され,免疫抑制療法が行われていた。両眼に白内障手術を受けていた。

所見と経過:矯正視力は右1.2,左1.0で,両眼の網膜周辺部に網膜血管炎と黄白色の病変があった。左眼から採取した前房水のPCRで,CMV-DNAが陽性で,ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスDNAは陰性であった。CMV網膜炎と診断し,ガンシクロビルの全身投与と硝子体注射を開始した。全身性強皮症と間質性肺炎に対する免疫抑制療法は継続した。4週後に血液のCMV所見は陰性化し,右眼の網膜滲出斑は7週後,左眼の滲出斑は11週後に消失した。初診から30か月後の現在まで再発はなく,左右眼とも1.2の視力を維持している。

結論:HIVの感染がなくても,ステロイドや免疫抑制剤による治療を受けている場合には,CMV網膜炎を発症する可能性があることを本症例は示している。

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要約 目的:劇症型の猫ひっかき病の1例の報告。

症例:51歳の男性が数週間前からの右眼の視力低下で受診した。矯正視力は右0.7,左1.2で,右眼の眼底に乳頭の発赤と浮腫があり,光干渉断層計で乳頭から黄斑にかけての網膜剝離があった。4日後に乳頭浮腫と黄斑部の網膜剝離が増悪した。問診で,2か月前に野良猫に引っ搔かれたことと,2週間前に子猫のノミに咬まれたことが判明した。手と前腕部に水疱があり,38.5℃の発熱があった。初診の1週間後に右眼視力は0.03になり,20日後にBartonella IgGとIgM抗体が上昇していることが判明した。猫ひっかき病と診断し,テトラサイクリンの内服を開始した。黄斑部の萎縮が生じ,視力は0.2にとどまった。

結論:猫ひっかき病は自然治癒の傾向があり,視力予後が良好とされているが,本症例は劇症型で視力障害が残った。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 眼脂
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 「一つの臓器には一つの名」というのが解剖用語の大前提です。五臓六腑の「五臓」についても,心臓,肝臓,腎臓,脾臓と四つだけは「臓」がついているのに,肺臓とはいわず,「肺」が正規の名称です。なにか理由があるのでしょうが,「そうなっているから」と言われそうです。

 その中で,「下垂体」だけには,英語だとhypophysisとpituitary bodyの二通りの名前で呼ばれています。解剖用語では前者が正式名ですが,雅号か源氏名のように,後者でも立派に通用します。

第34回眼科写真展 作品募集

べらどんな PSS
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 ポスナー・シュロスマン症候群(PSS)という変わった疾患がある。眼圧上昇を伴う虹彩炎の発作が年に数回かある。眼圧が60 mmHg以上になることがあるが,眼痛はなく,大多数が片眼性なので,本人にはほとんど病識がない。

 ニューヨークのPosner先生とSchlossman先生が連名で1948年に報告した。日本でも昭和40年ごろにはかなり多数の症例があったように記憶している。虹彩炎と高眼圧の発作はステロイドの点眼をしてもしなくても数日で寛解するので,「予後の良い」疾患であると考えられていた。

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次号予告

あとがき 下村 嘉一
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 熊本に地震が続いており,日々心配しております。大阪府や大学からもDMATが派遣され,救急患者の対応に励んでいると聞きます。一般的に眼科医療は災害の1〜2週間後から必要となり,実際に阪神・淡路大震災の時は阪大から神戸にバイクで点眼薬を運んだり,眼科診察を行ったりしたことを思い起こします。

 さて,本号の「今月の表紙」では,近年ほとんど診られなくなった淋菌感染が取り上げられています。私自身,感染症が専門ですが,この10年ほど急性の淋菌感染は経験がありません。ぜひ皆さんも留意していただければ幸いです。「今月の話題」では,八子恵子先生に先天性眼瞼下垂の手術に向けての診察ポイントについての力作を執筆していただきました。「熱血討論!緑内障道場」では,寺西慎一郎先生の呈示症例を基に3名の先生方から眼圧の解釈についてコメントをいただき,素晴しいディスカッションになったのではないかと編集委員の一人として自負する次第です。「蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス」では,長谷川泰司先生に糖尿病網膜症について解説いただきました。「目指せ!眼の形成外科エキスパート」では,柿﨑先生が,最近我々眼科医にとって疎遠になった義眼床形成術について「心の治療」を強調されています。

基本情報

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臨床眼科
70巻7号 (2016年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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