臨床眼科 70巻6号 (2016年6月)

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要約 目的:抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬で加療した網膜中心静脈閉塞症の症例で,カリジノゲナーゼの内服が網膜血流に及ぼす影響の報告。

対象と方法:過去64か月間に網膜中心静脈閉塞症で受診した56例56眼を対象とした。男性28例,女性28眼で,平均年齢は68.7±10.6歳である。全例に黄斑浮腫があり,抗VEGF薬の硝子体内投与を複数回行った。カリジノゲナーゼを紹介医から経口投与されていた26例では治療をそのまま継続し,投与されていない30例ではそのまま非投与とした。乳頭大血管の血流速度をlaser speckle flowgraphyで測定し,平均ブレ率(mean blur rate)を指標とした。虚血型の網膜中心動脈閉塞症は対象から除外した。全例で1年以上の経過を追った。

結果:平均視力は有意に改善した(p<0.01)。カリジノゲナーゼ投与群と非投与群の間に差はなかった。平均中心窩網膜厚は有意に減少した(p<0.01)。カリジノゲナーゼ投与群と非投与群の間に差はなかった。乳頭大血管の血流速度は有意に改善した。カリジノゲナーゼ投与群では167±73%,非投与群では125±37%で,前者が有意に高かった(p<0.05)。

結論:抗VEGF薬の硝子体内注射で加療した網膜中心静脈閉塞症では,カリジノゲナーゼ内服者での網膜血流速度がより増加した。

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要約 目的:黄斑前膜手術症例の手術施行に伴う血圧の変動を日帰り手術症例と入院手術症例で比較した。

方法:2014年1月1日〜12月31日に当院で施行した初回黄斑前膜手術94例(日帰り群54例,入院群40例,平均年齢70.8歳)を対象とし,周術期の血圧をretrospectiveに比較検討した。

結果:日帰り群,入院群とも術前と比較し入室時および術中最高血圧とも有意に血圧が上昇していた。高血圧症ありの症例では,日帰り群と比較し入院群では入室時で9.2mmHg,術中最高血圧で15.6mmHg血圧が上昇していた。

結論:黄斑前膜手術時には,全身疾患の有無にかかわらず,適切な血圧管理が必要である。

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要約 目的:特発性黄斑上膜(ERM)にみられる血管周囲異常所見の術後変化の報告。

対象と方法:対象は当院で硝子体手術を行ったERM症例9例9眼。術前後に青色単色光撮影と光干渉断層計を用いて血管周囲異常所見の変化を検討した。手術は全例内境界膜剝離を併用した硝子体切除を行った。

結果:術前,血管周囲に網膜内層孔が9眼中7眼に,血管周囲囊胞が9眼中4眼に観察された。術後7眼中7眼で網膜内層孔が消失したが,内層孔が深い1例は陥凹が軽減するにとどまった。血管周囲に囊胞がみられた4眼中3眼で囊胞が消失した。

結論:黄斑上膜症例の血管周囲にみられる網膜内層孔と囊胞は,接線方向の牽引が成因の1つであると考えられた。

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要約 目的:UF-021の網膜色素変性患者に対する有効性検証試験の結果を報告する。

対象と方法:Humphrey視野(HFA)10-2中心4点平均網膜感度が30dB未満の患者で,解析可能患者対象例は199例(プラセボ群99例,UF-021群100例)であった。主要評価項目は52週または中止時のHFA中心4点平均網膜感度,主な副次評価項目はETDRS視力,VFQ-25とした。病期による評価として,HFA10-2のMD値−15dBでの層別解析を施行した。

結果:主要評価項目で両群間に統計学的有意差はなかったが,副次評価項目のうちVFQ-25では有意差があった。MD値−15dB以上の症例では主要評価項目で統計学的有意差があった。

結論:主要評価項目においてUF-021の有効性はなかったが,MD値−15dB以上の症例では有効である可能性が示された。

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要約 目的:滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対するアフリベルセプト硝子体内投与が視覚的な生活の質(QOL)に影響する結果を,AMDの種類とアフリベルセプトの投与法に関連づけて解析した結果の報告。

対象と方法:未治療のAMD 61例を対象とした。男性41例,女性22例で,平均年齢は73.7歳である。AMDの内訳は,典型AMD 22例とポリープ状脈絡膜血管症(PCV)39例で,全例に導入期3回のアフリベルセプトを投与した後,無作為に選んだ33例には2か月ごと,他の28例には必要に応じて(pro re nata:PRN)投与を行った。投与前,導入期後,1年後にQOLについてアンケートで調査した。アンケートにはNEI VFQ-25を用いた。

結果:典型AMDでは,総合得点と下位尺度に有意な改善はなかった。PCVでは,両群に有意な改善している項目があり,「一般的な見え方」と「見え方による心の健康」について,PRN群よりも2か月投与群で有意に改善した。QOLの改善は,両眼の視力が良好な53例よりも,不良な8例で顕著であった。

結論:アンケートで評価したQOLは,典型AMDでは変化せず,ポリープ状脈絡膜血管症では改善し,アフリベルセプト2か月ごとの投与がPRNよりも優れていた。

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要約 目的:滲出性加齢黄斑変性に対し,ラニビズマブ硝子体内投与からアフリベルセプト硝子体内投与に切り替えたが,治療に抵抗し,再度ラニビズマブ投与に切り替えた症例群の報告。

対象と方法:滲出性加齢黄斑変性に対し,ラニビズマブ硝子体内投与からアフリベルセプト硝子体内投与に切り替えた229眼のうち,治療に抵抗し,再度ラニビズマブ投与に切り替えた6例6眼を対象とした。男性と女性各3眼で,年齢は57〜90歳,平均69歳である。ラニビズマブ再投与に切り替えてから2か月間の視力と中心窩網膜厚を検討した。

結果:再切替前後の平均視力と中心窩網膜厚に有意な変化はなかった。1か月後に漿液性網膜剝離が2例で改善したが,いずれもその2か月後に再発した。

結論:滲出性加齢黄斑変性に対するラニビズマブへの再切替の効果は,限定的であった。

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要約 目的:角膜内皮移植術の術後短期成績を海外プレカット角膜と国内術直前カット角膜で比較した。

方法:水疱性角膜症に対して角膜内皮移植単独手術を施行された症例から機能的濾過胞眼,眼内炎後を除外した65例76眼で,視力,角膜内皮細胞密度,術後合併症を後ろ向きに検討した。

結果:術後1か月の視力は海外群が有意に高かったが,3か月,6か月の視力と術前後の角膜内皮細胞密度,合併症発生率には有意差はなかった。

結論:海外プレカット角膜を使用した角膜内皮移植は国内術直前カット角膜を使用した群に比べて術後早期の視力回復が早かった。

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要約 目的:緑内障患者において,2年間にわたる点眼補助具の使用によるアドヒアランスの変化を検討した。

対象と方法:対象は,少なくとも6か月にわたり,ラタノプロスト点眼液0.04%またはラタノプロスト・マレイン酸チモロール配合点眼液を単独に点眼しており,点眼方法に問題があると申告した緑内障患者112名(73.8±11.6歳,男性34名,女性78名)である。点眼補助具(ザルイーズ®)を渡し,2年間にわたり,2か月ごとにその使用状況と点眼のアドヒアランスの変化を調査した。

結果:調査は108名(96.4%)が完了した。調査開始から6か月後,12か月後,24か月後の使用率は,68.5%,74.1%,75.0%であった。最終調査の時点で点眼補助具を使用している患者では,点眼のアドヒアランス良好患者が使用前では55名(67.9%),使用後では71名(87.7%)であり,有意に増加した(p=0.003)。使用していない患者では調査開始前18名(66.7%),調査終了時21名(74.1%)であり,変化はなかった(p=0.3)。

結語:緑内障薬の点眼補助具は,2年間においても,75%が使用されており,使用の容易さと忍容性の高さを示していた。点眼補助具を使用することで,点眼が容易になり,点眼のアドヒアランスが改善したと考えられた。

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要約 目的:完全型先天停在性夜盲にdome-shaped maculaと漿液性網膜剝離が併発した症例の報告。

症例:39歳女性が右眼の視力低下と変視症で受診した。幼少時から夜盲と視力低下があり,20歳のときに網膜色素変性症と診断された。父親の親族に夜盲と色覚異常があるという。

所見:矯正視力は右0.5,左0.8で,それぞれ−15Dと−14.5Dの近視があった。光干渉断層計で,両眼の黄斑部が前方凸に隆起し,右眼の中心窩下に漿液性網膜剝離があった。

結論:完全型先天停在性夜盲には強度近視が併発することがあり,経過中にdome-shaped maculaや,それに伴う漿液性網膜剝離などの合併症が起こったものと解釈される。

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要約 目的:ビタミンA欠乏症により夜盲を生じ,治療後に夜盲が改善してinterdigitation zone(IZ)が回復した1例の報告。

症例:42歳女性,夜盲を主訴に受診した。幼少期から肝機能障害があり,2年前には,肝硬変と診断された。

所見と経過:矯正視力は右1.5,左1.5。光干渉断層計(OCT)では網膜厚の減少とIZの消失,網膜電図(ERG)では振幅の減弱が認められた。血清ビタミンA濃度は5IU/dl未満で,ビタミンA欠乏による夜盲と診断した。ビタミンAを投与し,3日後には自覚症状が軽快し,ERGも振幅が改善した。治療開始後からOCTで中心窩網膜厚が増加し,IZも中心窩から周辺に向けて徐々に回復がみられた。

結論:OCTによる網膜厚とIZの経時的な変化が,治療効果の評価に有用であった。

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要約 目的:角膜移植後に眼球破裂を生じた9例9眼の臨床的背景と予後の調査。

対象と方法:2009年4月〜2014年9月に角膜移植後の眼球破裂に対して,東京医科大学病院眼科で加療を行った9例9眼(男性3例,女性6例)の臨床的背景や予後について診療録をもとに調査を行った。

結果:眼球破裂の原因は全例が眼球打撲で,破裂に伴う合併症は眼内レンズの脱出4眼,水晶体の脱出1眼,上脈絡膜出血5眼であった。上脈絡膜出血を合併した症例は最終的に全例が眼球癆に至った。

結論:角膜移植後は長期間経過した後も鈍的外傷による創離開を生じるリスクが高く,予後も不良なことが多い。高齢者など,転倒リスクを有する症例では眼球破裂のリスクについて長期にわたる注意喚起を行い,眼球保護用の眼鏡装用などを勧める必要がある。

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要約 目的:白内障手術後に水晶体核が残存し,水疱性角膜症に至った症例の報告。

症例:74歳,男性。近医で左眼の白内障手術を受け,約7か月後に原因不明の視力低下で当科を紹介され初診となった。

所見:初診時左眼の視力は(0.7)で軽度の結膜充血があり,角膜は軽度の浮腫とDescemet膜の皺襞があった。角膜内皮細胞密度は307個/mm2であり,水疱性角膜症と診断した。隅角鏡で3時の隅角に異物を認め,初診から約2週間後に異物除去術を施行した。異物は層状構造で,成分分析で蛋白質であったため水晶体核と考えられた。

結論:白内障術後に残存水晶体核が長期に残存し,水疱性角膜症に至る症例があり,注意する必要がある。

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要約 目的:特発性黄斑上膜(ERM)に対する硝子体手術前後の網膜神経節細胞複合体(GCC)厚の経時的変化を評価し,視機能に影響するか検証すること。

対象と方法:特発性黄斑上膜に対し25 G器具を用いた硝子体手術システムで施行した21例23眼,平均年齢69.4歳,男女比(11:12)を対象とした。GCC厚解析には光干渉断層計を用い,術前後のGCC厚パラメータを評価し,視機能との関係を検討した。

結果:GCCパラメータのうち,術前より有意に減少したのは内円4セクター(parafovea)であり,特に耳側領域で減少していた。視力は,GCC厚の減少量と関係なく,術後改善した。Humphrey視野のMD値は,術前後で有意差はなかったが,PSD値が悪化している症例は23眼中15眼(65%)あり,悪化15眼中8眼(53%)で耳側GCC菲薄部位とパターン偏差の感度低下部位が一致していた。

結論:ERMに対する硝子体術後は,parafoveaにおけるGCC厚が減少しており,特に耳側領域が菲薄化した。また,GCC厚の菲薄部位は網膜感度が低下している可能性が示された。

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要約 目的:Nd-YAGレーザーによる外傷性黄斑円孔に対し,内境界膜剝離が奏効した症例の報告。

症例:22歳の男性が,大学院生として研究中にNd-YAGレーザーの反射光が右眼に入り,その直後から視力低下と中心暗点を自覚した。受傷2日後に受診したときの右眼の矯正視力は0.7で,黄斑に接する部位の白濁と出血があった。光干渉断層計で黄斑の断裂があった。自然閉鎖を期待したが,全層の黄斑円孔が拡大し,中心暗点が増悪したので,10週後に硝子体手術を行い,内境界膜を剝離し,硝子体を20% SF6ガスで置換した。黄斑円孔は閉鎖し,矯正視力は1.2に改善した。以後6か月後の現在まで,黄斑円孔の再発はなく,視力にも変化がない。

結論:Nd-YAGレーザーによる外傷性黄斑円孔に対し,硝子体手術と内境界膜剝離が奏効した。

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要約 目的:漿液性網膜剝離を伴う加齢黄斑変性(SRD-AMD)と中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)の眼底自発蛍光の報告。

対象と方法:SRD-AMDは14眼で,59〜76歳(平均67歳),CSCは24眼で,33〜68歳(平均48歳)である。眼底自発蛍光にはキヤノン社製CX-1を用いた。

結果:SRD-AMDの蛍光造影は,全例occult CNV型の過蛍光で,CSCは円形漏出19眼,吹き上げ型5眼であった。SRD-AMDの眼底自発蛍光では,全例でoccult CNV部の低蛍光があり,12眼で枝状,1眼で地図状,1眼で点状であった。CSCの眼底自発蛍光では,23眼で蛍光漏出部の低蛍光があり,16眼で点状,5眼で点の集合,2眼で枝状であった。

結論:SRD-AMDの眼底自発蛍光は,枝状の低蛍光を示すことが多く,CSCでは,点および点の集合の低蛍光を示すことが多い。

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要約 目的:新しい眼内レンズSS-60YG(SS)の術中術後屈折誤差と個別A定数についてNS-60YG(NS)と比較した報告。

対象と方法:対象は過去10か月間に白内障手術を行った53例92眼。使用した眼内レンズ度数は+17〜+27D,角膜曲率半径はTMS-5(トーメーコーポレーション社),眼軸長はOA-1000(トーメーコーポレーション社)のContactモード,度数計算式はSRK/T式を用いた。A定数はNSの初期使用値118.4を用いて予測屈折値を算出した。屈折度は白内障手術後にハンディレフラクトメータARK-30(ニデック社),術翌日はARK-30と同社オートレフラクトメータARK-730A,術後7〜10日,1か月,3か月はARK-730Aで測定した。また術後1か月に他覚屈折値を基に自覚屈折値を求め個別A定数を算出し,同度数範囲のNS(239例411眼)と比較した。

結果:SSの屈折誤差平均値は絶対値平均値ともに術中,術翌日,術後7〜10日,術後1か月,術後3か月の各時点でNSのそれと有意差がなかった(p=0.097〜0.985,t検定)。パーソナルA定数はNSが118.67に対しSSは118.72であった。SSの個別A定数分布範囲は118.46〜118.94でありNSと有意差がなかった(p=0.263,t検定)。

結論:SSの術後屈折誤差や個別A定数はNSと有意差がなかった。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

眼科再生医療研究会 大家 義則
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はじめに

 再生医療は,これまで行われてきた対症療法的な治療方法を,培養細胞やマテリアルを用いた根治療法へ一変させる可能性を秘めており,次世代の医療として期待されている。2015年10月に名古屋国際会議場で開催された第69回日本臨床眼科学会では,SIGとして再生医療研究会が開催された。本研究会は眼科の再生医療領域を中心として多くの研究者が集まり,毎年最新の知見について意見交換がなされている。今回は以下の5演題が発表され,活発な議論が交わされた。

今月の表紙

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 症例は38歳,女性。3日前から左眼耳側の見づらさ,飛蚊症,夜盲を自覚し,近医を受診。白点状網膜炎にて当院紹介受診となった。初診時視力は,左右とも(1.2),眼圧は左右とも11mm/Hgであった。前眼部・中間透光体には炎症所見はなく,左眼の視神経乳頭周囲に多数の白斑を認めた。Goldmann動的視野検査では左眼のMariotte盲点の拡大を認め,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)では,ellipsoid lineの不明瞭化がみられた。眼底自発蛍光では,白点部位は過蛍光となった(写真左)。フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)では初期から白斑は点状の淡い過蛍光を示し,インドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyanine green angiography:IA)では低蛍光斑がみられ,後期でより明瞭となった(写真右)。約2か月後に白点は消失し,Mariotte盲点も縮小して自覚症状も改善した。

 撮影は,HEIDELBERG社のHRA2を使用し,55°の広角レンズを装着してHigh Resolution Modeで行っている。また,眼底自発蛍光像はより明瞭な画像が得られるように30枚の加算処理を行っている。

連載 今月の話題

カラーコンタクトレンズ 植田 喜一
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 美容(おしゃれ)を目的としたカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)を装用する者の急増により,眼障害が増加している。本稿ではカラーCLによる眼障害の実態,その原因と対応など,カラーCLが抱えている問題を概説する。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第5回

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今月の症例

【患者】39歳,男性

【主訴・現病歴】近見作業に従事し,普段から老眼鏡を使用している。1年前から1か月ごとの霧視,2日前から左眼の痛みと霞みを訴え急病センターを受診し,左眼の急性緑内障発作と診断され,当院へ搬送とされた。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第6回

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疾患の概要

 遺伝性網膜変性は頻繁に遭遇する疾患ではないが,原因不明の視力低下や視野障害などで鑑別診断を行う際には必ず念頭に置く必要がある疾患群である。本稿ではStargardt病,網膜色素変性,中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィを例にとり,フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)での脈絡膜背景蛍光の読影について解説していく(Basic Note参照)。

 Stargardt病は黄斑の萎縮性病変とその周囲に散在する黄色斑を特徴とする疾患である。眼底所見はこれらの組み合わせによって多彩な所見を呈する。視細胞外節内でレチノール代謝産物を輸送する遺伝子異常が関与し,常染色体劣性の遺伝形式をとる症例が多い1)。レチノールの異常代謝産物であるリポフスチンが網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelium:RPE)に蓄積し,細胞障害を生じる2)

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第22回

Blowoutは俺がBLOW! 尾山 徳秀
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はじめに

 眼窩壁骨折(blow in fracture and blow out fracture)の患者が来院した際には,骨折患者だけでなく医療側も大変です。なぜかといえば,外傷の治療には緊急性があり,ひとつとして同じ状態のものはなく,医療スタッフを多数巻き込んで治療に当たるからです。時間と場所,人手を費やすため誰しもがかかわりたくない疾患でしょう。私も,年末年始の飲酒が絡む時期,祭りの時期,スポーツの秋などに多数の症例に携わり,こちらがblowされています。この記事を読んで,レクイエムと思って理解を深めていただける先生方が多ければ多いほど,われわれ眼形成医も癒されます。

海外留学 不安とFUN・第6回

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いよいよ…卒業

 辛かった勉強の毎日も5月のDecision Science in Economic(Economic Evaluation for Health Policy and Program Management)の試験で最終章を迎えます。長い冬の終わりとともに,いよいよみんなが待ち望んでいた卒業式です。卒業式はHarvardの学生,その家族にとって非常に大事なイベントです。親たちも世界中から自分の子供たちの晴れ姿を見にBoston市内に集まってくるのです。Bostonは学生街なので,スーパーマーケットにもMassachusetts工科大学(MIT)やBoston大学など各大学の卒業式の日程が貼りだされます。各大学の卒業式の規模が非常に大きいために,卒業式が同じ日に重ならないように事前に調整されている点も興味深いです。式典の内容は非常に綿密に練られ,卒業生に対する説明会や予演会も複数回にわたり開催され,タイトなスケジュールのなかでいかにスムーズに式が行えるのかを肌で感じました。

 そして,その盛大な卒業式の前日には指導教官への感謝祭というものがあります。私はたまたま国連憲章の前文を読む日本代表に選ばれ,15人の各国代表とともに和服を着て読むことになったのです。ついこの間まで授業を実際に受けていたHarvardの大御所の教授たちの前で朗読するということで,そのドキドキといったら半端ありませんでした。

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要約 目的:光覚が消失した外傷性視神経症に対し,ステロイドパルス療法で良好な視力が得られた症例の報告。

症例:28歳の男性が3mの高さから転落し,緊急搬送された。視力は右1.5,左光覚なしで,CT所見から視神経管骨折が疑われ,外傷性視神経症と診断した。受傷の翌日からメチルプレドニゾロンのパルス療法を開始し,第5病日からプレドニゾロン内服を3週間行った。第5病日から視力の改善がはじまり,108病日に矯正視力が1.0になり,受傷から1年後の現在まで良好な視力を維持している。

結論:受傷早期にステロイドパルス療法を行ったことと,視神経損傷がなかったことが良好な結果になったと推定される。外傷性視神経症に対するステロイドパルス療法は,禁忌事例でない限り試みてよい治療法である。

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要約 目的:血管新生緑内障に対するバルベルト®緑内障インプラントを挿入した成績の報告。

対象と方法:過去3年間にバルベルト®緑内障インプラントを挿入した25例27眼を対象とした。男性19眼,女性8眼で,年齢は29〜82歳,平均61歳である。糖尿病網膜症が23眼,網膜中心静脈閉塞症が3眼,網膜静脈分枝閉塞症が1眼にあり,全例に新生血管が虹彩または隅角にあった。硝子体手術など手術の既往が22眼にあった。全例で6か月以上,平均17か月の経過を追った。最終眼圧が5mmHg以上,21mmHg以下の場合を成功と定義した。

結果:眼圧の平均値は,術前36.2±11.4mmHgから,1年後11.1±3.8mmHg,2年後12.3±4.5mmHgと有意に下降した。累積成功率は術1年後90.1%,2年後90.1%であった。術後1か月以内に,合併症として前房出血が7眼,硝子体出血が2眼,脈絡膜剝離が2眼に生じた。術後1月以降に,30%以上の角膜内皮細胞密度減少が6眼にあった。

結論:血管新生緑内障に対するバルベルト®緑内障インプラント挿入は,約90%で奏効した。

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要約 目的:眼窩の蔓状神経鞘腫の画像所見の報告。

症例:44歳,男性。2年前からの左眼眼球突出と右方視時の複視のため受診された。上方視での上転障害も認めた。視力は左右眼とも1.5であった。CTで左眼の筋円錘内に紡錘形の腫瘤があり,左眼球を外下方に圧排していた。MRIのT2強調像は,中心やや低,辺縁高信号を示した。Dynamic造影MRIで,中心部のAntoni Aの部位は早期から漸増性に造影され,辺縁のAntoni Bの部位は後期相で淡く造影された。眼窩内の神経鞘腫を疑い,外科的に切除され病理学的に神経鞘腫の所見が得られた。

結論:Antoni AとB型が混合した眼窩蔓状神経鞘腫(plexiform schwannoma)はきわめて頻度が低く希少な疾患であるが,本症例はCTとMRIの画像で典型的なtarget patternを示した。蔓状に連続する小結節の存在と,MRIでの漸増性dynamic造影効果と拡散強調像(ADCマップ)が術前診断に有用な所見であった。

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 『戦略としての医療面接術』のタイトル通り,医療面接の著作です。しかしながら,従来の「医療面接」をテーマに扱った書籍とは異なり,著者自身の実際の経験に基づき深く洞察されており,通読してなるほど,そういう切り口もあったか,と深く感心しました。われわれが普段の臨床で応対する「患者・その家族」—その個性や社会環境などの背景要素の多様性に注目しています。

 「うまくいかない医療面接」を経験した際,医師としては,「あの患者・患者家族は変だから…」と自分を含め他の医療スタッフに説明付けようとしがちですが,うまくいかなかった医療面接は,われわれが医療面接上必ず確認しておかなければならなかった手順や態度を怠ったことが原因であったかもしれない。この著作はそれを実臨床で陥りがちな,さまざまなシチュエーションを提示することで,抽象論に終始することなく具体的に提示してくれています。通読後,今まで自分が経験してきた医療面接の失敗例を思い返しても,本書にて指摘されている「やってはいけないこと」がいくつも当てはまり,内省した次第です。

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 本書は現在の日本眼腫瘍学会所属役員と会員の執筆による力作大著である。同学会と日本眼病理研究会との両方に所属している執筆者も含まれており,随所に病理組織学的診断の重要性を説明し,カラー病理組織写真が豊富に挿入されている。

 第1章「総説」では眼瞼・角結膜・眼窩・眼内の4区分別に,各腫瘍の定義,良性・悪性腫瘍別の診療目標,腫瘍診断〔目的,診断に必要な技術と設備(写真撮影,画像読影,試験切除と病理診断),診断に必要な人材,診断における問題点〕,腫瘍の治療〔治療に必要な技術・人材・設備(腫瘍の手術,放射線治療,薬物治療),治療における問題点〕,経過観察(治療前の経過観察,治療後の合併症に伴う経過観察,腫瘍再発・転移のチェック,経過観察に必要な技術・人材・設備)などについて概説されている。腫瘍局所のカラー写真,CT像,MRI像,カラー眼底写真,蛍光眼底像,光干渉断層計検査(OCT)像などの画像が示され,解説されている。また,病理組織診断のためには,切除組織をホルマリン固定後,手術を行った眼科医自身が「切り出し」を行うよう推奨している。さらに,眼腫瘍診療は一般眼科医と眼科腫瘍専門医が協力して行うよう推奨,すなわち病診連携を推奨している。

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欧文目次

第34回眼科写真展 作品募集

ことば・ことば・ことば 半
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 「片頭痛」は,英語ではmigraineと言います。この病名の語源を調べようと思い,権威のある大きな辞書に相談したら,「megrimを見よ」と書いてあり,びっくりしました。

 この単語は,そもそもはラテン語のhemicraniaに由来します。これがフランス語を経由して英語に入りましたが,フランス語ではハ行のhを発音しない癖があります。有名なHondaでも,フランスではホンダではなく,オンダになるのがその例です。

べらどんな 風船と望遠鏡
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 最近の小学生は背が高くなったようだ。特に高学年でこれが目立つような気がする。

 畳の生活が減って,正座をしなくなったこともあろうが,なによりも栄養が良くなったことが原因であろう。この50年間だけでも,高身長化はヨーロッパでもアフリカでも起こっているからである。

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あとがき 鈴木 康之
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 熊本県,大分県地方で大地震が起きました。非常に広い地域に,それも何度も地震が起こり,多くの方々が被災されました。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。医療機関でもたくさんの被害が出たことが報道されています。本号で国立病院機構熊本医療センター眼科の宮崎先生が著明な視力改善が得られた貴重な外傷性視神経症症例について臨床報告としてご報告されていますが,その熊本医療センターでも一時診療を中止せざるを得なかったとのこと。自らも被災されながら被害者の方たちや患者さんたちの対応をしなければならないのは本当に大変だと思います。くれぐれもご自分のお体を壊さないように,また心理的にも無理をなさらないようにお過ごしいただけばと祈念しております。報道では最初の大きな地震が起きてから2週間以上経っても,まだ震度4や震度5の地震が続いており,1日も早く余震が終息することをお祈り申し上げます。

 さて,今号は第69回日本臨床眼科学会講演集(4)です。多くの貴重な新知見が報告されています。また,今月の話題では今,全国的に大きな問題となっているカラーコンタクトレンズの問題点について植田先生に具体的なデータを用いてとてもわかりやすく解説いただいており大変参考になります。その他,各連載も相変わらず力が入っていて読みごたえがあり,特に尾山先生の眼科底骨折の詳細な解説は必見と思います。臨床報告やその他の記事と合わせて是非,ご熟読ください。

基本情報

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臨床眼科
70巻6号 (2016年6月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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