臨床眼科 65巻12号 (2011年11月)

特集 脈絡膜の画像診断

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はじめに

 近年の眼科光学機器の進歩は目覚ましく,特に光干渉断層計(OCT)は網膜疾病の診断,病態の解明,そして治療の効果判定に至るまで,多くの概念を変えてきた。脈絡膜は従来,多数の血管の重層構造であることや,強い光学吸収体である網膜色素上皮下にあることから,OCTによる画像診断にはあまり適していなかった。しかし,近年の光学撮影技術の進歩はそれを可能にし,脈絡膜のOCT所見は,多くの黄斑疾病に示唆を与えている。

 本稿では,脈絡膜の正常所見やその特徴,加えて屈折や加齢変化について解説する。

加齢黄斑変性 丸子 一朗 , 飯田 知弘
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はじめに

 滲出型加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は黄斑部に脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)をきたす疾患で,欧米では50歳以上の中途失明者の最も主要な原因であり,日本でも急増している。AMDはフルオレセイン蛍光造影(FA)およびインドシアニングリーン蛍光造影(ICGA)により,典型的加齢黄斑変性(typical AMD:tAMD),ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy:PCV),および網膜血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation:RAP)の大きく3つに分類され,近年の報告で欧米の白人とは異なり,日本を含むアジアではPCVの割合が高いことがわかってきており1,2,3),人種差の関与が示唆されている。

 AMDのCNVは脈絡膜から発生していることから脈絡膜の異常が関与していることは疑いないが,視細胞や網膜色素上皮などの視機能に直結する部位に直接作用しないこと,FAによる脈絡膜描出の限界やICGAの解像度の限界もあり,詳細な検討はなされていなかった。ICGAは脈絡膜血管を直接的に観察できるため,CNVそのものを描出し病変のサイズを評価することが可能である。ただし実際には厚みを持った組織である脈絡膜を二次元的にしか描出できないため,その深さなどの情報を得ることは不可能であった。病変を三次元で解析可能な光干渉断層計(OCT)でも,CNVによる網膜色素上皮の隆起や滲出による漿液性網膜剝離をみることで間接的にCNVの活動性を評価することはあっても,脈絡膜そのものの評価には最近まで用いられることはなかった。

 2008年にSpaideら4)が市販のOCT装置を用いてEnhanced depth imaging OCT(EDI-OCT)と呼ばれる脈絡膜を観察する方法を報告した。それ以降,さまざまな疾患のOCTによる脈絡膜の画像診断の報告が本格的になされるようになった。

 本稿ではEDI-OCTの手法を用いて研究されたAMDの脈絡膜観察について,最新の話題を含めて述べる。

強度近視 大野 京子
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はじめに

 強度近視眼では眼軸延長や後部強膜ぶどう腫の形成に伴い,網膜脈絡膜が伸展によって菲薄化し,近視性網膜脈絡膜萎縮や近視性脈絡膜新生血管(近視性choroidal neovascularization:CNV)などの種々の眼底病変を生じ,これらが視覚障害の原因となる。

 同じ眼底の血管でも,網膜血管と脈絡膜血管は病的刺激に対する反応性が異なる。網膜血管においても,強度近視眼では動脈の直線化や静脈の折れ曲がり減少や網膜毛細血管瘤などのさまざまな変化を生じ,これらの変化は近視性牽引黄斑症の有無と関連していること1),また,強度近視眼では正視眼や弱度近視眼に比較し網膜血流量が減少していること2)などが報告されている。一方,脈絡膜血管系は強度近視眼における機械的伸展に伴い高度に菲薄化し,特に眼底後極部において脈絡膜大血管の数が激減し,ときに顕著な血管再構築がみられることが,インドシアニングリーン赤外蛍光眼底造影(IA)や近年のenhanced depth imaging OCT(EDI-OCT)によって明らかになってきた3)。おそらく強度近視は,さまざまな眼病態のなかで広範囲の脈絡膜血管系に最も劇的な変化が生じる病態ではないだろうか。

 そこで本稿では,強度近視の脈絡膜画像診断について,IA,EDI-OCT,高侵達OCTなどによって得られた所見を提示し,さらにこれらの所見がどのような病的意義を持つのか考えたい。

中心性漿液性脈絡網膜症 植谷 留佳
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中心性漿液性脈絡網膜症の分類と画像診断

 中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy:CSC)は黄斑部に漿液性網膜剝離(serous retinal detachment:SRD)が生じ,視機能障害をきたす疾患である。タイプAパーソナリティの中年男性に好発し,ストレスや喫煙,副腎皮質ステロイド剤の使用などが発症のリスクとなる1)。現在日本では,CSCは臨床的に以下のように分類されている2)

ぶどう膜炎 髙橋 寛二
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はじめに

 眼底の画像診断のうち,脈絡膜の病態を直接あらわすものとして,インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)と光干渉断層計(OCT)がある。なかでも,脈絡膜の深部まで断層像を検出できる深部強調光干渉断層計画像(enhanced depth imaging OCT:EDI-OCT)は近年急速に眼科臨床に普及しつつあり,さまざまな眼底疾患の病態を解明できる可能性が指摘されている。ぶどう脈炎の領域では,Vogt-小柳-原田病(以下,原田病)についてはEDI-OCTを用いた解明が進んでいるが,他の疾患についての報告はまだ少ない。本稿では,脈絡膜に主座があるぶどう膜炎のEDI-OCT所見について,自験例を示しながら,病理組織所見を参考に読影所見を考察してみる。

AZOOR, MEWDS, OMD 岸 章治
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はじめに

 眼底検査は長らく検眼鏡と眼底造影によって行われてきたが,近年,画像診断の急速な進歩により,革命的な変化が起こっている。

 光干渉断層計(OCT)は1997年に日本にはじめて導入された。当時のtime domain OCT(TD-OCT)は網膜内の層状構造は不明瞭であったが,エコーの性質ゆえに,網膜から薄く剝離した硝子体皮質を鋭敏にとらえることができ,黄斑円孔などの網膜硝子体界面病変の解明に寄与した。2002年に登場した改良型(Stratus OCT, Carl Zeiss Meditec社)では,視細胞内節外節接合部(IS/OS)と網膜色素上皮(RPE)の分離ができるようになり,視細胞外節の評価がある程度可能になった。2006年に上市されたspectral domain OCT(SD-OCT)では,さらに外境界膜(ELM)と錐体先端と考えられるCOST(cone outer segment tip)が描出できるようになった。これらの進歩により,網膜の視細胞外節を主病変とする疾患群「視細胞外節病」が存在することが明らかになってきた。

 本稿では「外節病」の代表であるAZOOR,MEWDS,OMDにつき,画像診断の観点からその病態を論じる。

連載 網膜剝離ファイトクラブ・Round 1【新連載】

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ファイトクラブにようこそ!

毎回,網膜剝離の症例を提示して,治療方法を検討するクラブです。ブラッド・ピットの映画「ファイトクラブ」のように,時には激しく,時には過激に,殴り合い? いえいえ,議論が行われます。

Round 1,2は,網膜剝離に対する現在の治療スタンダードを探るべく,上方の裂孔による剝離をクラブメンバーによる討論の形式で検討します。

ちょっぴりシャイな私たち,初回とあって少しおすまし気味ですが,いつ本性があらわれるか,ご注目あれ。

連載 つけよう! 神経眼科力・20

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意外に多い視神経乳頭の先天異常!

 視神経乳頭の先天異常dysplasiaは決して稀なものではない。視野変化をきたす先天異常のなかでしばしばみられる傾斜乳頭症候群(tilted optic disc,図1)や乳頭逆位症(situs inversus,図2)は,オーストラリア人の統計では49歳以上の3,583例中56例(1.6%)77眼であり,上耳側を主とする視野欠損(図3)がその19.4%にみられるとされている1)。また40歳以上の中国人4,439例で傾斜乳頭症候群は23例(0.52%)31眼にみられるとする報告2)もあるが,筆者の感覚では近視の頻度の高いアジア人種ではさらに多いように思われる。また最近では上方視神経低形成(segmental superior optic hypoplasia:SSOH)も緑内障との鑑別疾患として注目されている3)。しかし,日常診る視神経乳頭の先天異常では視野変化をきたさない小乳頭や偽乳頭浮腫,巨大乳頭なども多くみられるので,これらを後天的な視神経疾患と間違えないようにしなければならない。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・23

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はじめに

 加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:以下,AMD)とは,先進国の50歳代以上における失明原因の首位を占める疾患であり,近年は高齢化にしたがいますます増加傾向にある。

 AMDは大別すると黄斑部に網脈絡膜萎縮を生じる萎縮型と,黄斑部に新生血管を生じ滲出性変化を生じる滲出型とに分類される。この中でも臨床上特に問題となる視力障害をきたすのは滲出型AMDであり,その主な病態は脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:以下,CNV)と,それに伴う滲出性変化および網膜神経細胞の変性である。

連載 『眼科新書』現代語訳

その8 清水 弘一
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『眼科新書』巻之三(続)

 『眼科新書』第3巻の眼球病篇第七(morbi bulbi ocularis)は,角膜病篇第六に続くもので,9疾患が挙げられている。

今月の表紙

網膜振盪 反保 宏信 , 中澤 満
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 症例は24歳女性。2010年3月16日,右眼を拳で殴られ,当院救急外来を受診後,当科紹介となった。視力は手動弁で,眼圧は10mmHg,前房出血と網膜振盪を認めた。

 翌日の診察で視力は(0.7)と改善し,前房出血も引いてきたため眼底写真を撮影した。黄斑部と周辺部網膜全周性に網膜振盪による浮腫性混濁を認めた。その1週間後に浮腫性混濁はほぼ消失していた。

やさしい目で きびしい目で・143

不思議な「縁」 野崎 実穂
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 今から10年前に,Seung-Young Yuという女医さんが,ソウルのKyunghee universityから1か月間,名古屋市大眼科を見学しに来られました。当時,私は病棟係をしていたため,小椋教授の手術にいつも入り,教授回診にもついていましたので,必然的にYu先生と話をする機会が多く,親しくさせていただきました。Yu先生は,耳鼻科医のご主人と息子さんとのご家族で,子育てもしながら,海外に勉強しに来るという,superwomanです。ちょうど同年代でしたので,韓国での眼科の状況や,女医としての生活,生活習慣の違いの話など,いろいろな話をして,とても興味深かった覚えがあります。

 その後は,Yu先生と特別連絡を取り合ってはいませんでしたが,2003年のAmerican Academy of Ophthalmology(AAO)のときを皮切りに,毎年数々の偶然の再会が続いていくことになりました(早朝の誰も乗っていない学会シャトルバスで偶然一緒になったり,満席のsubspeciality dayの広い会場で前後の席に偶然座っていたり,学会場のエスカレーターで偶然すれ違ったりなど‥)。2009年になり,東京で開かれた治験のミーティング会場でも,Yu先生と再会,ついに(?)名刺を交換して,お互いのメールアドレスを知りました。2009年12月には小椋教授が会長となって開催された網膜硝子体学会(Nagoya Ophthalmic Week NOW2009)に,Yu先生が一般演題を出して参加,学会当日は,夕食を名市大医局員の先生たちと一緒にとり,韓国の眼科の状況の話などさまざまな話題で盛り上がりました。

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要約 目的:急性網膜壊死の自験例の臨床像と治療成績の報告。対象:過去15年間に診断した急性網膜壊死12例15眼を対象とした。男性9例,女性3例で,年齢は19から72歳,平均47歳であった。所見と経過:病因は単純ヘルペスウイルス7例,水痘・帯状疱疹ウイルス5例であった。全例にアシクロビルを投与し,1眼に網膜光凝固,1眼に強膜輪状締結術,11眼に強膜輪状締結術と硝子体手術を行った。手術回数は平均2.6回で,10眼にシリコーンオイルを併用した。最終視力は0.7以上が6眼(40%),0.6から0.1が2眼(13%),0.1未満が7眼(46%)であった。結論:当科での急性網膜壊死は単純ヘルペスウイルスによるものが多く,網膜剝離が高頻度に続発した。重症または劇症の症例には,強膜輪状締結術とシリコーンオイルを併用する硝子体手術が有効であった。

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要約 目的:診断確定前の副腎皮質ステロイド投与がアカントアメーバ角膜炎に及ぼす影響の報告。対象:過去47か月間にアカントアメーバ角膜炎と診断治療した10例10眼を対象とした。男性6例,女性4例で,年齢は16~73歳,平均29歳であった。結果:診断確定前に3例に副腎皮質ステロイドが投与されていた。うち2例は移行期,1例は完成期であった。非投与群は7例で,すべて初期であった。最終視力は非投与群で良好であり,治療期間は投与群が非投与群よりも長かった。結論:診断が確定する前の副腎皮質ステロイド投与は,アカントアメーバ角膜炎を悪化または長期化させる可能性がある。

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要約 背景:黄斑上膜がある眼でのAモードによる超音波検査では,黄斑上膜と網膜色素上皮とから二峰性の反射が得られることがある。目的:IOLマスターTMで二峰性波形を示す黄斑上膜眼に,白内障と硝子体同時手術を行ったときの術後屈折誤差の検討。対象と方法:白内障と硝子体同時手術を行った16眼を対象とした。術前にIOLマスターTMで眼軸長を測定し,二峰性波形を示した眼につき,中心窩網膜厚と術後屈折誤差を解析した。結果:11眼(69%)が二峰性波形を示した。前面と後面波形の差は平均0.44mm(0.38~0.52mm)で,中心窩網膜厚は平均423μm(305~565μm)であり,両者間に正の相関があった(p=0.0216,r=0.66)。術前の後面波形から算出した眼軸長は,術後の眼軸長の実際値と最も近似した。結論:IOLマスターTMによる白内障の術前検査で二峰性波形が得られる眼では,後面波形から算出される眼軸長を用いることが望ましい。

囊性緑内障の眼圧季節変動 市岡 伊久子
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要約 目的:囊性緑内障での眼圧の季節性変動の報告。対象と方法:3年以上通院している囊性緑内障84例115眼を対象とした。男性24人,女性60人であり,うち通院中に治療薬の変化がない78眼につき,月ごとの眼圧の平均値を測定した。結果:全期間を通じての眼圧平均値は15.0±3.3mmHgであり,最高眼圧の平均値は19.2±2.5mmHg,最低眼圧の平均値は11.4±2.5mmHgであった。この変動幅は,片眼のみに前囊偽落屑がある他眼41眼と,開放隅角緑内障60眼での変動幅よりも大きかった。囊性緑内障眼での年間を通じての眼圧値と季節による変動幅は,瞳孔縁の沈着と隅角の色素沈着と正の相関があった。結論:囊性緑内障では,眼圧の季節変動幅が大きく,眼圧は隅角の色素沈着と関連がある。

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要約 目的:関節リウマチに対し,腫瘍壊死因子α阻害薬であるエタネルセプトで治療中に球後視神経炎が発症した症例の報告。症例:39歳女性が3週前からの左眼運動痛と2週前からの左眼霧視で受診した。9年前に関節リウマチが発症し,5か月前からエタネルセプト治療を開始し,リウマチ症状は寛解していた。所見:矯正視力は右1.2,左0.2で,眼底に異常はなかった。左眼に中心暗点があった。磁気共鳴画像(MRI)で左視神経に腫大と高信号があり,左球後視神経炎と診断した。エタネルセプトを中止し,ステロイドパルスを行い,19日後に視力は1.0に回復した。歩行障害などのリウマチ症状が再燃し,トシリズマブ投与で改善した。以後8か月間,経過は良好である。結論:エタネルセプト投与で視神経炎が発症し,投与中止で寛解することがある。

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欧文目次

べらどんな 掲載拒否
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 新しい学説は,それが正しくてもただちに受け入れられるとは限らない。その古典的な例がコペルニクスの天動説である。

 コペルニクスはポーランドの牧師であり,数学者でもあった。彼の著書『天体の回転について』は1543年に刊行されたが,1530年頃にはその理論がほぼ完成していたらしい。寿命の終わりが見えてから,出版することを決めたらしい。ちなみにこの1543年は,ベサリウスの「人体解剖学」が出版され,種子島にポルトガル人が来たという,歴史では重要な年である。

ことば・ことば・ことば 広 場
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 「京都にはあって東京にはないもの」のことが気になりました。広隆寺の弥勒菩薩,先斗町の狭い路地,東山とその麓にある散歩道,錦小路,石庭がある竜安寺,賀茂川と高瀬川の清流,祇園祭,はんなりした京言葉と,順不同ながら数え上げると無数にあります。

 医学関係で特記すべきなのが京都の国際会議場です。戦艦の司令塔を連想させる独特な形をしています。昭和53年(1978)の国際眼科学会は,その「こけら落し」として開催されました。皇太子と皇太子妃が開会式に臨席され,記念切手まで発行されました。

投稿規定

著作権譲渡同意書

希望掲載欄

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 公益信託須田記念緑内障治療研究奨励基金は,熊本大学において眼科学の指導研究,とくに緑内障の研究・治療に永年尽くされました故・須田経宇名誉教授により設立されました。緑内障またはその治療に関する優れた研究を助成するため,下記要項により助成金交付申請を募集いたします。

べらどんな 眼疾患の数
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 「ものを数えたくなる癖」が誰にでもある。日光にある「いろは坂」にはカーブが48か所あり,酒を飲むと「五臓六腋」に沁みとおることになっている。

 新しい辞書が刊行されると,「この辞書には○○万語が載っている」と広告で宣伝される。小学生のときの愛読書である昆虫図譜にも,「原色千種」が書名についていた。

学会・研究会 ご案内

次号予告

あとがき 中澤 満
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 今年も11月号をお届けする季節になりました。思えば今年は震災に続き,原発,水害,タイの大洪水,TPPなど,ただでさえ解決困難な問題を様々に抱えていた日本の今後にさらに新たな難題が次々に積み重ねられることになりました。この歴史に残るであろう試練の時代を共有する私達もそれぞれの持ち場で最大限に国の発展に寄与していきたいものです。そこで今月の特集は「脈絡膜の画像診断」です。近年のOCTの進歩は眼疾患の理解に革命的な発展をもたらしました。網膜疾患に始まり,最近は脈絡膜の断面画像がこれまでの血管造影による平面画像に立体的な解釈を与えることになり,強度近視,加齢黄斑変性,ぶどう膜炎そして中心性漿液性脈絡網膜症の理解が深まっています。今回はこれらの分野の新進気鋭の研究者の気合いの入った解説と世界への情報発信能力の高さに日本の眼科学も決して暗いものではないと感じることができる内容となっています。そして今月から新連載の「網膜剝離ファイトクラブ」,喜多美穂里先生の編集がすばらしいですね。網膜剝離のエキスパートによる症例検討はそれぞれに納得できるご意見です。「眼科医にもわかる生理活性物質……」シリーズは臨床編に入っています。それまで基礎編で単発に扱ってきた各因子が実際の眼疾患でどのように係わってくるのかを,これまた少し立体的に知っていただきたいと思います。今回は久冨智朗先生による加齢黄斑変性です。この病気は生理活性物質と眼疾患では恐らく最もホットな話題を提供する代表であろうと思います。私達は日常,患者さんの眼の中でさまざまな病気の「顔」を見ていますが,将来はその裏で活動する細胞と細胞同士の分子レベルでの会話にまで通訳なしで理解できるような時代が来ることを願ってもう少しこのシリーズも続けます。臨床と基礎との橋渡し研究(translational research)の具体を感じる読み物としてお楽しみください。

基本情報

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臨床眼科
65巻12号 (2011年11月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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