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今年も11月号をお届けする季節になりました。思えば今年は震災に続き,原発,水害,タイの大洪水,TPPなど,ただでさえ解決困難な問題を様々に抱えていた日本の今後にさらに新たな難題が次々に積み重ねられることになりました。この歴史に残るであろう試練の時代を共有する私達もそれぞれの持ち場で最大限に国の発展に寄与していきたいものです。そこで今月の特集は「脈絡膜の画像診断」です。近年のOCTの進歩は眼疾患の理解に革命的な発展をもたらしました。網膜疾患に始まり,最近は脈絡膜の断面画像がこれまでの血管造影による平面画像に立体的な解釈を与えることになり,強度近視,加齢黄斑変性,ぶどう膜炎そして中心性漿液性脈絡網膜症の理解が深まっています。今回はこれらの分野の新進気鋭の研究者の気合いの入った解説と世界への情報発信能力の高さに日本の眼科学も決して暗いものではないと感じることができる内容となっています。そして今月から新連載の「網膜剝離ファイトクラブ」,喜多美穂里先生の編集がすばらしいですね。網膜剝離のエキスパートによる症例検討はそれぞれに納得できるご意見です。「眼科医にもわかる生理活性物質……」シリーズは臨床編に入っています。それまで基礎編で単発に扱ってきた各因子が実際の眼疾患でどのように係わってくるのかを,これまた少し立体的に知っていただきたいと思います。今回は久冨智朗先生による加齢黄斑変性です。この病気は生理活性物質と眼疾患では恐らく最もホットな話題を提供する代表であろうと思います。私達は日常,患者さんの眼の中でさまざまな病気の「顔」を見ていますが,将来はその裏で活動する細胞と細胞同士の分子レベルでの会話にまで通訳なしで理解できるような時代が来ることを願ってもう少しこのシリーズも続けます。臨床と基礎との橋渡し研究(translational research)の具体を感じる読み物としてお楽しみください。
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