臨床眼科 64巻2号 (2010年2月)

特集 OCTによって緑内障診療の何が変わるか

前眼部OCT 三嶋 弘一 , 富所 敦男
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はじめに

 緑内障診療のなかでも狭隅角眼の診断において,隅角の評価は重要である。一般的な隅角評価法として,細隙灯顕微鏡検査による周辺部前房深度の観察(van Herick分類),隅角鏡を用いた隅角検査があるが,前者はスクリーニング検査であり,後者は隅角鏡による接触を要すること,主観的・定性的検査であり,客観性,定量性に乏しく,また,熟練した検者でなければ隅角の3次元構造を理解しづらいことなどの欠点がある。超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscope:UBM)は,高周波の超音波により,前眼部断層像が撮影可能であり,特に原発閉塞隅角症や同緑内障の隅角閉塞メカニズムの理解に役立った。

 近年,これまで眼底,特に網膜の解析に応用されていた光干渉の技術が前眼部にも応用され,前眼部光干渉断層計(anterior segment optical coherence tomograph:前眼部OCT)が開発されている。代表的なものとして,タイムドメイン方式の前眼部OCTであるVisanteTMOCT(カールツァイスメディテック社)(図1a),およびフーリエドメイン方式前眼部OCTであるSS-1000 CASIA(トーメーコーポレーション)(図1b)がある。これらの前眼部OCTは,UBMに比べ非侵襲的に前眼部断層構造の解析が可能である。本稿ではOCTの原理から,その特徴などについて解説する。

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はじめに

 日常診療において緑内障の病期の進行判定は,ともすれば視野検査や眼圧測定に多くが委ねられている。しかし,視野検査は自覚的検査であり,眼圧測定は正常眼圧緑内障の存在や眼圧コントロールが良好でも病期の進行する例があることから,診断と経過観察が他覚的に行えるという点で視神経乳頭や網膜神経線維層(retinal nerve fiber layer:RNFL)などの後眼部所見の判定が緑内障では非常に重要と考えられる。ただ,眼科医の眼底の評価には個人差が存在するため,乳頭変化を標準化された方法で評価・判定・記録することは容易ではない。また,臨床的に視野障害が検出される前の段階から網膜神経線維層欠損や陥凹の拡大が生じること(preperimetric glaucoma)が知られており,RNFL厚の測定などが早期緑内障の検出に役立つと期待されている。

 最近,光干渉断層計(optical coherence tomograph:OCT)で視神経乳頭や黄斑部などの眼底後極部の3次元画像を得ることができ,かつ量的解析を迅速に行うことができるようになった。そのため,眼底カメラの代わりに視神経乳頭変化を記録,解析する装置としてOCTは今後,有望であるとも思われる。本稿でRTVue-100(Optovue社,図1)を中心にその有用性を検討したい。

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はじめに

 CirrusTMHD-OCT(Carl Zeiss Meditec社)はスペクトラルドメインOCTであり,高解像度(深度5μm)で短時間に多数の解析が可能となった。一度に眼底を広く細かくスキャンでき,網膜の層構造を詳細かつ立体的に再構築でき,病変を検出することができるようになった。視神経乳頭および黄斑の周囲を6mm×6mmの範囲で200×200本のスキャンを行うので,ほぼ面による解析が可能となった。緑内障は網膜神経線維層の障害という,網膜表面の連続的欠損をきたすことから,この面による解析はより理にかなった検査となった。黄斑周囲のスキャンにおいても,同様に連続した神経線維の障害を描出しやすくなった。

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 緑内障の機能的構造的異常の本態は緑内障性視神経症である1)。そのため,緑内障の診断および経過観察を行ううえで,視神経乳頭(乳頭)や網膜神経線維層(retinal nerve fiber layer:RNFL)などの眼底所見を詳細かつ的確に評価することは,きわめて重要である。

 新しい光干渉断層計(optical coherence tomograph:OCT)であるスペクトラルドメインOCT(SD-OCT)は,従来のタイムドメインOCTに比し,測定速度および空間解像度が著しく向上し,眼底の3次元的構造を精密に描出することが可能となっている。

 2006年に発売されたトプコン社製3D OCT-1000は,一般臨床に導入された世界初のSD-OCTである。その後同社のSD-OCTは器械の改良がなされ,2008年に3D-1000MARKII,2009年末に3D OCT-2000が臨床に導入されている。

 本稿では,3D OCT-2000の装置の概要と検査方法,スキャンモードと緑内障診断プログラムなどについて解説する。

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はじめに

 SpectralisTM HRA+OCT(以下,Spectralis,図1)はドイツのHeidelbergにあるHeidelberg Engineering社が開発したスペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral-domain optical coherence tomography:SD-OCT)である。もともとHeidelberg Retina Angiography 2(HRA2)という高性能なconfocal scanning laser ophthalmoscopy(cSLO)が販売されinfra red(IR),fluorescein angiography(FA),indocyanine green angiography(IA),autofluorescence(AF),red-free(RF)の5つの検査が可能であり,特に黄斑疾患の検査機器として黄斑専門医のいる病院に浸透していた。このHRA2にSD-OCTを加えたものがSpectralisTM HRA+OCTである。

 最高機種はSD-OCTを含め6つの検査が可能になった。FA,IA,AF,RF機能を持たない廉価版のSpectralisTM OCT,OCT機能を持たないSpectralisTM HRA(前名称HRA2)の3機種構成として販売されている(ジャパンフォーカス社)。SpectralisTM HRA+OCTの緑内障解析機能は,現状では視神経乳頭周囲神経線維層(circumpapillary retinal nerve fiber layer:cpRNFL)厚の解析のみであるが,次の項で説明する他にない特徴を有しており,将来緑内障診療を変えるポテンシャルを持つと考えている。

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はじめに

 光干渉断層計(OCT)を用いた緑内障の診断はOCT初代機のときからその報告はあったが1),解像度,走査スピードからあまり実用的ではなかった。しかし,近年の性能向上により,現在では日常診療でルーチン検査として用いることができるものになっている。特にタイムドメインからフーリエドメインになりスキャンスピードが大幅にアップした結果,1~2秒で眼底を面状にスキャンするボリュームスキャンが可能になったこと,解像度の向上により神経線維層の厚い視神経乳頭周囲のみでなく,黄斑部においても神経線維層厚解析が可能になったこと,また散瞳が必ずしも必要でないこと,などにより診断精度,日常診療での有用性は著しく向上している。

 OCTは実用性の向上とともにそのマーケットが広がった結果,開発競争も激しくなり,最近では毎年のように新製品が出ている。そのなかでも解像度で3μmという最高性能,スキャンスピードでも52,000 Aスキャン/秒という現行機種でのトップクラスの性能を誇るのが,ポーランドのオプトポール社の開発したSPOCT-HRである(わが国での販売はキャノンマーケティングジャパン。表1,図1)。本稿ではこのSPOCT-HRを用いた緑内障の診断について概説する。

連載 眼科図譜・356

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緒言

 Bloch-Sulzberger症候群(incontinentia pigmenti)は,1926年にBlochが,1928年にSulzbergerが報告した症候群で,特有の皮膚症状以外に,歯牙・中枢神経・眼病変をきたすきわめて稀な疾患であり,そのほとんどが女児に発症する1)。近年ではその原因遺伝子が同定され,ヒト染色体Xp28に存在するNEMO/IKK gamma遺伝子の変異で発症する2)。本疾患の眼病変は網膜血管の異常,斜視,白内障などをきたすことが知られているが,網膜血管病変を治療後,10年間にわたり経過観察できた症例の報告はきわめて少ない3)

 今回筆者らは,Bloch-Sulzberger症候群の8歳女児の網膜血管病変に対して光凝固を行い10年間増悪がみられなかった1例を経験したので報告する。

連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・23

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はじめに

 Stevens-Johnson症候群は1922年に,StevensとJohnsonにより初めて報告された,粘膜・皮膚・眼症候群の1つである。Stevens-Johnson症候群は,免疫複合体誘導性の過敏反応により粘膜・皮膚上皮の細胞死が起こると考えられ,薬剤の投与や微生物感染が誘因となりうる。Stevens-Johnson症候群は皮膚科など他科と連携して診療する機会が多い疾患であり,さらに半数以上の症例で眼病変を伴う1)。本疾患は患者生命に影響を及ぼすのみならず,重篤な視力障害を残す可能性があり,病態の把握と適切・迅速な治療が重要である。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・2

TNFα 中澤 徹
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 腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor α:TNFα)は炎症の初期に急激に産生され,炎症全体に広くかかわる炎症性サイトカインである。Behçet病の眼発作にTNFαの抑制治療が著効するという報告が,昨今学会を賑わしている。TNFαの抑制はすでにリウマチ治療の世界で中心的治療として地位を確立し,ヒトの慢性炎症疾患では最も確実な治療のターゲットとなっている。本稿では,TNFαの基礎知識から役割,最新の眼疾患の病態へのかかわりまでを広く総括する。

連載 説き語り論文作法・11

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教授 これだけ時間を費やして議論してきたら,この論文で言いたいことは全部見えてきた。そうすると,ここで初めて「要約(abstract,summary)」やな。「要約」は論文のはじめにあるけれど,書くのは最後や。

 初心者の論文は,袋に小麦粉を詰めるときのイメージやな。ふわぁ~っと入れたら,袋はすぐにいっぱいになる。しかし,そこには無駄な空間が山ほどある。それを叩いたら,まだ,倍ぐらいの小麦粉を入れられる。叩いて,叩いて,これ以上詰められないというぐらいに詰めた小麦粉1袋と,ふわぁ~っと入れた小麦粉の違いや。

連載 もっと医療コミュニケーション・26

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手術室は最後の聖域

 手術室は診察室以上に密室性が強く,異次元ともいえる空間で,一般社会では当然のように行われる会話や動作を自由に行うことはできません。限られた人が清潔を保って立ち入り,人体の内部が露出し,そこでの状況を検討しようにも,他の学問が入り込むのは難しいです。全身麻酔では,患者には意識がなく意思疎通はありませんが,眼科では局所麻酔,あるいは意識下での手術や処置が多く,患者側のストレス,緊張,不安など,全身麻酔にはないコミュニケーションの問題点があります。術者側にも患者を思いやりながら手術をするという難しさがあります。

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要約 目的:初期緑内障に対するラタノプロスト点眼の効果の報告。対象と方法:未治療の原発開放隅角または正常眼圧緑内障35例69眼を対象とした。年齢は31~76歳(平均53歳)であり,眼圧は14~28mmHg(平均19.2±2.8mmHg)であった。眼圧は点眼開始から4週,8週,12週,6か月の時点で測定し,静的量的視野は治療前と6か月後に測定した。結果:眼圧は点眼開始後すべての時点で有意に低下した。6か月後の眼圧下降率は平均20.4%で,治療前の眼圧が高いほど下降率が大きかった。10眼(14.5%)では下降率が10%未満であった。点眼前後で視野に変化はなかった。結論:初期の開放隅角緑内障に対するラタノプロスト点眼で,眼圧下降効果と視野維持効果が得られた。

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要約 目的:視力が良好なポリープ状脈絡膜血管症に対する光線力学的療法の結果の報告。対象と方法:矯正視力が0.5以上のポリープ状脈絡膜血管症8例8眼を診療録により検索した。男性5例,女性3例で,年齢は56~80歳(平均69歳)である。フルオレセイン蛍光眼底造影による病巣の最大径は729~5,291μm(平均2,860μm)であった。治療前と6か月後の視力と中心窩網膜厚を測定した。視力はlogMARで評価し,0.2以上の変化を有意とした。中心窩網膜厚は光干渉断層計(OCT)で測定し,10%以上の変化を有意とした。結果:治療6か月後の視力は,4眼で改善,3眼で不変,1眼で悪化した。中心窩網膜厚は6眼で減少,1眼で不変,1眼で増加した。結論:視力が良好なポリープ状脈絡膜血管症に対し,光線力学的療法が奏効することが多い。

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要約 目的:再発翼状片に対する羊膜移植または角膜輪部移植併用の成績の報告。対象と方法:過去7年間に手術を行い,1年以上の経過を追えた再発翼状片25例26眼を診療録の記録から検討した。男性7例,女性18例で,平均年齢は68歳であり,瞼球癒着が15眼にあった。6眼には羊膜移植,20眼にはこれと同時に角膜輪部移植を行った。結果:術後1年間の翼状片再発は,羊膜移植をした6眼中2眼(33%),角膜移植を併用した20眼中1眼(5%)であった。瞼球癒着の再発は前者では1眼中1眼(100%),後者では14眼中5眼(36%)に生じた。他の合併症はなかった。結論:再発翼状片に対し羊膜移植は有効であり,角膜輪部移植を併用するとより有効であった。

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要約 目的:感染性角膜炎の自験例の患者背景と起炎菌の報告。対象と方法:2006年までの6年間に久留米大学眼科を受診した感染性角膜炎99例99眼を診療録により検索した。ヘルペスウイルスによる角膜炎は除外した。男性48例,女性51例で,年齢は0~93歳(平均56.2±23.5歳)であった。顕微鏡検査または培養により起炎菌を推定した。起炎菌は4群に分けて評価した。結果:起炎菌は62例で検出され,真菌31%,グラム陰性桿菌19%,グラム陽性球菌18%,その他32%であった。2006年の感染性角膜炎全国調査に比べ真菌が多かった。結論:今回の調査で真菌による感染性角膜炎が全国平均よりも多かったのは,当科が農村の近くにある紹介型の医療施設であるためと推定される。

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要約 目的:0.3%ガチフロキサシンまたは0.5%レボフロキサシンの術前点眼による減菌効果の報告。対象と方法:白内障,緑内障,または両者同時手術が予定され,結膜囊の擦過培養で菌が検出された75例83眼を対象とした。男性34例,女性41例で,44眼は眼圧下降薬を点眼中であった。術前3日前から1日4回の点眼を行い,術の前日に結膜囊からの培養を行った。結果:結膜囊の減菌化率は,ガチフロキサシン群で39眼中36眼(92%),レボフロキサシン群で44眼中38眼(86%)であり,両群間に有意差はなかった。緑内障に対する点眼の有無は減菌率に影響しなかった。結果:ガチフロキサシンまたはレボフロキサシンの点眼は,白内障または緑内障の術前減菌法として有用である。

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要約 目的:翼状片への手術から18年後に発症した強膜穿孔に保存角膜移植が奏効した症例の報告。症例:77歳男性が18年前に右眼翼状片手術を受けた。右眼に霧視が生じ,強膜軟化症と眼内炎があり,紹介され受診した。8年前に右眼に白内障手術を受けた。所見と経過:矯正視力は右0.02,左1.2であった。右眼の鼻側強膜が菲薄化し,硝子体混濁と脈絡膜剝離があった。経過中に強膜が穿孔し,低眼圧になった。-20℃で保存してあった角膜片で穿孔部を被覆し,脈絡膜剝離,硝子体混濁,低眼圧は消失し,移植部は結膜の上皮化が得られた。術後1年目の視力は右0.06,左1.2であった。結論:強膜軟化症による強膜穿孔に対し,移植保存角膜が生着し,視機能が保存できた。

今月の表紙

虹彩囊腫 河田 直樹 , 鈴木 康之
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 症例は34歳の女性。明所における右眼視野の狭窄感を訴え他医を受診,その1か月後にセカンドオピニオンを求め当院を受診した。患眼は,5歳時に虹彩を「目打ち」で刺す外傷の既往があるが,外科的な治療はほどこされていない。

 初診時の視力は右0.2(1.2×-1.00D()cyl-1.00D 145°),左0.4(1.2×-0.50D()cyl-1.00D 90°),眼圧は圧平眼圧計・非接触眼圧計ともに両眼16mmHg,相対的瞳孔求心路障害は陰性であった。Goldmann動的視野測定では狭窄,暗点ともに認めなかった。右眼の虹彩上の囊腫が視野狭窄感の原因と診断された。囊腫は角膜とは触れていない。囊腫部以外の前房は深く,視神経乳頭にも変化はないため経過観察となった。

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 書評を書くにあたり,まずは解剖学実習を終えたばかりの現役の医学生たち数名に率直な感想を聞いてみた。いずれもとても高い評価であり,「こういう本を読みながら実習を進めれば,自分の解剖学の勉強もより効率的で奥深いものになっていたに違いない」という感想であった。揃ってそのような感想が出てくるに足るユニークな特徴を,この本は有している。

 古典的で著名な複数のアトラスを含め,解剖学のアトラスは数多く出版されているが,本書は,単なる「地図帳」的なアトラスというよりは「図鑑」的であり,子どものころに夢中になって読んだ図鑑のように,いつの間にか引き込まれていろいろなページをめくり,熱中してしまうような面白さがある。医学生にとって必要かつ重要な情報が,コンピュータグラフィックスによる洗練されたわかりやすい画像情報に乗って快適に展開される。情報量は大量であるにもかかわらず,楽しみながら読み進めるうちに知らず知らずさまざまな知識が身についていくものと思う。

べらどんな

追悼
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 網膜剝離学,とくに硝子体手術に大きな貢献をしたRobert Machemerが暮の23日に逝去した。享年77歳である。

 それ以前から硝子体切除術はあった。ただし,角膜を大きく切開して水晶体を摘出し,それから鑷子とWecker刀で硝子体を切除するopen sky vitrectomyである。

眼底図譜
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 昆虫図鑑が小学生のころの愛読書だった。三省堂の『原色千種昆蟲図譜』がそれで,正と続がある。続のほうは台湾産の虫が多いので面白くなかった。それでもこの本のお蔭で,アカタテハとかミヤマカラスアゲハなどの名前がいまでも頭の隅に残っている。

 あの頃は「これで全部」だと思っていた。もちろんそんなものではなく,地球にはざっと100万種の昆虫がいるらしい。もし完璧な図譜をつくるならば,少なくとも5千冊がずらりと並ぶことになる。

やさしい目で きびしい目で・122

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 「仕事と家庭の両立をするにはどうしたらいいか。」よく話題になるテーマですが,私の答えは「それは無理でしょ」。誤解のないように申し上げますが,「どちらも完璧にこなすことは無理でしょ」という意味です。

 仕事をがんばる人は,ものすごくがんばっています。睡眠時間以外,ずっと医局で仕事をしている先生もいる。いつ仕事のメールを打っても待ち構えていたように,すぐ返事が返ってくる先生もいる。毎日終電の先生もいる。子供の大切な行事をあきらめて,学会に行く先生もいる。「すごいなあ,私にはとてもできない。」

ことば・ことば・ことば

悪性と良性
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 学生のころはmelanosarcomaなど,「肉腫」sarcomaという術語がよく使われましたが,最近ではほとんど目にしません。医学辞典で「肉腫」を引いても,「悪性非上皮性腫瘍を見よ」と書いてあります。完全に消えたわけではなく,「細網肉腫」reticulum cell sarcomaなどでまだ残ってはいますが,個々の腫瘍について,上皮性か非上皮性かを判断するのが面倒になったためかと思っています。

 Sarcomaは古い英語にもあり,皮膚にできる腫瘍のことでした。ギリシャ語のsarkos「肉」がその語源です。「肉腫に似た皮膚の腫瘤」がsarcoidosisです。皮膚科の授業では「類肉腫」と教わりましたが,現在ではサルコイドーシスが立派な日本語として定着しています。

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あとがき 鈴木 康之
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 OCT(光干渉断層計)の登場によって生体眼の網膜微細構造が描出可能になったことは,網膜特に黄斑疾患の診療にきわめて大きいインパクトを与えたのはご存じのとおりです。近年,非常に高速かつ高解像度のフーリエドメインOCTが発売されたことによって,少なくとも黄斑部の画像診断機器としては,ほとんど完成された域に達しました。現在,各社から市販されている後眼部OCTは,いずれも網膜疾患の診療には十二分な機能を有しており,細かい使い勝手や値段などが異なるのみといっても構わないぐらいの状況です。一方,OCTのもう1つの大きな用途である緑内障診療への応用という面から見ると,いずれの機器も,まだまだ不十分な部分があるとともに,これからが期待される要素もそれぞれ持っていて,今後大きな発展が期待される分野であることがわかります。

 本号の特集では「OCTによって緑内障診療の何が変わるか」と題して,5種類の後眼部フーリエドメイン方式OCTと2種類の前眼部OCTの緑内障診療への応用について詳述していただきました。この分野は現在,急激に進歩しており,この特集の原稿を各執筆者にご依頼した後も各社から次々と新しい機能がアナウンスされ,各先生方も大変苦労されたことと思いますが,最新の状況を含めてご解説いただきました。今号の特集は,緑内障の画像診断を研究している諸先生方ならびにOCTの新規購入を検討している先生方にもきわめて役に立つものであると思っています。是非,ご精読ください。もちろん,特集以外にも各連載や臨床報告など非常に読みでのあるものになっていると思いますので,そちらも忘れずにチェックしていただければ幸いです。

基本情報

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臨床眼科
64巻2号 (2010年2月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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