臨床眼科 54巻12号 (2000年11月)

連載 今月の話題

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 正常眼圧緑内障の管理は,高齢化社会を迎えた現在重要な課題である。本症の管理に関する臨床的に重要な最近の知見についてまとめた。本症の予後予測は困難であるが,予後に関連する眼圧以外の因子が次第に明らかになってきた。特に乳頭出血は重要である。本症の視野保持に眼圧下降療法は有効であるが,全例に有効とはいえず,また手術療法を試みる際には,手術療法の限界を見極めて行うべきである。カルシウム拮抗薬は一部の症例で有効性が認められている。将来的な治療としての神経保護的治療の可能性についても触れた。

連載 眼の組織・病理アトラス・169

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 1968年6月頃から西日本一帯で米ぬか油を摂取した人達に多彩な全身および皮膚粘膜症状を示す食中毒事件が発生した。これは米ぬか油の製造工程で混入した有機化合物による中毒症であることがわかり,油症Yushoと呼ばれた。当時,油症患者は早期から眼脂が異常に増加し,眼瞼の腫脹,視力減退,眼痛などを訴えた。全身の皮膚には,座瘡様皮疹,面疱,色素沈着が出現した(図1)。また,全身の倦怠感,食欲減退,頭痛,嘔吐などの症状を生じた。他覚的には,眼瞼浮腫,眼瞼縁の凹凸不整,瞼結膜の充血と混濁(瞼板腺性結膜炎),結膜の褐色色素沈着などがみられた。マイボーム腺は嚢胞状に腫大し,黄白色梗塞を伴っていた(図2)。その部を軽度に圧迫すると,チーズ様の分泌物が排出した。

 組織病理学的には,油症患者の眼瞼はマイボーム腺導管が著明に拡張し,管腔内容物(角化物)が充満している。腺房は萎縮して腺房細胞はほとんど消失し,扁平上皮化生が起こっている。管腔内容物の貯留によって,管腔も腺房も拡張し,組織切片上ではあたかも腺房が導管の憩室腔のようにみえる。腺房細胞は萎縮して,憩室腔の外壁側にわずかに痕跡的に存在している(図3,4)。

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 小口病は常染色体劣性遺伝を示す停止性夜盲性疾患であることは前回に述べた。しかし,昔の論文をひもといてみると,網膜色素変性と小口病の家族内発症があること,また片眼が小口病で他眼が網膜色素変性という症例が存在することが報告されている。今回は,網膜色素変性と小口病が同胞で認められた1家系を,分子生物学的検討と併せて報告する。

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緒言

 白点状眼底fundus albipunctatusは,眼底所見および暗順応速度の遅延を特徴とする先天停止性夜盲疾患であり,それ以外に視機能異常がないとされてきたが1),近年,黄斑変性を伴う症例の報告が出されている2)。しかし血管新生黄斑症が発生したという報告はない。今回筆者らは,白点状眼底を基礎疾患として急激に大きな黄斑部の脈絡膜新生血管を生じた症例を経験したので報告する。

連載 眼科手術のテクニック・131

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 最近,脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)の治療として黄斑移動術が期待されている。網膜全周切開黄斑移動術と強膜短縮黄斑移動術があるが,いずれにしても中心窩の感覚網膜をCNVのない網膜色素上皮上に移動させることは理想的な網膜色素上皮移植ともいえる。手術がトラブルなく終了し,増殖硝子体網膜症などの術後合併症もなく経過すれば,読書視力の獲得の可能性が最も高い治療法である。この手術における手技の上でのいくつかのステップのなかで,最も厄介なのは網膜剥離の作成である。強膜短縮黄斑移動術のほうでは,このステップさえクリアできれば,手術は終了したに等しい。この特殊なテクニックを,この項には不適切かもしれないが,最近試みてみようという術者が少しずつ増えているので,今までの筆者の経験をもとに紹介したい。

連載 他科との連携

防衛医大流他科との連携 吉井 大
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院内の連携

 内科,耳鼻咽喉科,脳神経外科,形成外科,小児科,泌尿器科,麻酔科にとどまらず,眼科の対象となるコンサルテーション科は全科に及んでいる。防衛医大は自衛隊員の健康管理ができる医官を養成することを目的の1つとしている関係上,研修医は総合臨床医となるべく養成される。卒後2年間の研修では,臨床科16科臨床部7部のうち12科・部をローテートする(ただし,将来専攻を希望する科は6か月選択できる)。現時点では,この研修カリキュラムでは,眼科専門医になるのに後れをとることになるが,厚生省指導の臨床研修が義務化されれば,他大学と全く同一のカリキュラムとなる。しかし,この研修制度を利用して各科の医師が基本的にどのように考えているかを理解できるようになれば,コンサルテーションの際に役立つ利点もある。

 当科では,糖尿病を対象とする第3内科とは,2か月に1度の割合で合同カンファランスを開催し,活発なディスカッションを行っている。しかし,お互いの連携が良好になるほど対象患者が増加することになり,近年,外来予約診療に支障をきたしている傾向がある。関連病院など地域医療機関で経過観察ができる患者は,眼科と内科合同の経過観察プログラムを全体として協議し,効率のよい外来診療を目指す必要がある。

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 症例は,17歳女性。約3年前に角膜白斑に対して全層角膜移植術を受けている。数日前から異物感と結膜充血および霧視を自覚し,当科を受診した。角膜周囲の充血と上方からの角膜への血管侵入を認め,移植片の上1/3の位置に直線的に角膜後面沈着物が並んで認められるKhodadoust line (rejection line)と浮腫がみられた。また移植片下方には,角膜後面沈着物を伴ったびまん性浮腫も同時にみられた。

 ステロイドの全身および局所投与(点眼,結膜下注射)で治療を開始し,角膜後面沈着物の減少および角膜周囲の充血の消退を指標に漸減した。約3週間後に角膜後面沈着物,充血および角膜浮腫はほぼ消失した。

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 71歳の女性が1週間前からの両眼視力障害で受診した。糖尿病が21年前からあり,胃癌手術に続発した腸閉塞のために3か月前から静脈内高栄養輸液(IVH)を受けていた。18日前に敗血症と肺炎が発症した。尿から真菌,喀痰から緑膿菌とMRSAが検出されていた。矯正視力は右0.04,左0.01で,両眼眼底に白色斑が播種状に分布し,真菌性眼内炎と診断した。全身状態が不良なため,フルコナゾールを1日量200mgで点滴した。10日後に眼内炎は軽快をはじめ,6週後には寛解した。最終視力として,右0.6,左指数弁となった。進行性の真菌性眼内炎に薬物療法が有効である場合があることを示す症例である。

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 72歳男性が右眼水晶体摘出術と眼内レンズ移植術を9年前に受けた。続発した水疱性角膜症に対して全層角膜移植が17か月前に行われた。角膜炎を伴う眼内炎が今回診断された。角膜擦過標本の培養は陰性であった。バンコマイシンの点眼と結膜下注射と,これに続く硝子体手術で臨床的治癒が得られた。67歳男性が右眼線維柱帯切除術を5年前に受け,続発した水疱性角膜症に対して全層角膜移植および白内障手術がその22か月後に行われた。真菌性角膜炎が4か月前に発症し,当科を受診した。バンコマイシン点眼で角膜炎は治癒した。今回の2症例は,広域抗生物質とステロイド薬が長期にわたって使用された後の難治性の角膜感染症に対してバンコマイシンの局所療法が有効であることを示す事例である。

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 50歳男性の右眼に急性の視力低下が生じた。当初,後部虚血性視神経症が疑われていたが,髄液検査にて悪性リンパ腫が発見され,再度の画像検査にて右蝶形骨洞縁に視神経を圧迫する占拠性病変を認めた。悪性リンパ腫による圧迫性視神経症と診断し,髄腔内と全身への化学療法を施行し,視力,視野は改善した。視神経症を初発として悪性リンパ腫が発見された稀な症例である。

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 46歳の男性を,両眼水晶体亜脱臼にて経過観察していたが,徐々に右眼水晶体偏位が強くなり,1999年4月19日に,右眼水晶体嚢内摘出術および眼内レンズ毛様溝縫着術を行った。術前眼底は異常なく術中合併症もなかったが,術後4日目に右眼後極部に漿液性網膜剥離と色素上皮剥離を認めた。フルオレセイン蛍光眼底造影では両眼に多発性の過蛍光がみられ,多発性後極部網膜色素上皮症(MPPE)と診断した。蛍光漏出点に対して光凝固を行い,漿液性網膜剥離と色素上皮剥離は消失した。インドシアニングリーン蛍光眼底造影では両眼の脈絡膜の循環障害がみられた。本症例は白内障手術による直接的,間接的ストレスが誘因となり,脈絡膜の一過性虚血が生じ,MPPEが発症したと考えた。

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 後部強膜ぶどう腫を有する高度近視眼で,深部大血管近傍の裂孔から生じた網膜剥離の3例3眼を経験した。全例に硝子体手術を行い,硝子体手術中の共通の所見として,後部強膜ぶどう腫内および近傍の網膜血管周囲に強い硝子体網膜癒着を認めた。硝子体収縮に伴う牽引が加わることによって,裂孔が形成され網膜剥離を生じるものと考えられる。このような症例では,硝子体手術による確実な硝子体網膜牽引の除去が効果的と考える。

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 加齢黄斑変性症の2症例に広範囲網膜剥離をきたした。症例1は79歳男性で,左眼に裂孔原性網膜剥離を認めた。網膜下増殖組織の牽引により黄斑部の下方に裂孔が形成されていた。硝子体切除術を施行し,網膜下増殖組織を除去し網膜は復位した。症例2は82歳男性で,初診時,左眼に色素上皮剥離を伴う加齢黄斑変性症が存在し,9か月後,左眼血管アーケード耳側に網膜下増殖組織と色素上皮剥離をきたし,下方に広範囲漿液性網膜剥離が存在し,硝子体切除術を施行した。網膜下組織の牽引を除去し,網膜下新生血管からの漏出点に網膜光凝固を行い網膜は復位した。症例1は網膜下増殖組織の牽引により網膜に裂孔を形成し,症例2は網膜下増殖組織の牽引のため新生血管からの滲出が促進され,生じたものと推測した。加齢黄斑変性症から生じる網膜剥離は,網膜下増殖組織により異なった機序で起こりうる。

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 アデノウイルス結膜炎の結膜炎所見消失後に,上気道感染に伴って角膜上皮下混濁の再発がみられた症例を経験した。症例は60歳の男性で,両眼性急性濾胞性結膜炎を発症し,結膜擦過物から免疫クロマトグラフィー法でアデノウイルスが検出された。発症6か月目に角膜上皮下混濁はほぼ消失したが,初発時から10か月後に上気道感染を発症した。この際,ウイルス性結膜炎の所見を伴わずに両眼に角膜上皮下混濁が再発した。再発時にアデノウイルスは分離されなかったが,アデノウイルス3型および8型中和抗体価は上昇した。詳細な発症機序は不明であるが,アデノウイルス結膜炎の晩発性合併症として,角膜上皮下混濁再発への注意が必要である。

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 21歳の男性が1週間前からの左眼の視野欠損で受診した。矯正視力は右1.5,左1.0であった。両眼に前房内細胞,隅角結節,雪玉状の硝子体混濁があった。左眼眼底に,4×5乳頭径で高さが約8Dの視神経乳頭肉芽腫とこれに接する漿液性網膜剥離があった。全身検査と頸部リンパ節生検でサルコイドーシスの診断が確定した。初診から4週後にコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(ソル・メドロールTM)の200mg/日点滴静注を開始し,その後メチルプレドニゾロン24mg/日の内服に切り替えた。治療開始後2か月で肉芽腫はほぼ消退した。視神経乳頭肉芽腫例があるサルコイドーシスに,副腎皮質ステロイド薬の大量療法が有効であることを示す症例である。

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 円孔が自然閉鎖し,視力が改善した外傷性黄斑円孔の2症例を報告した。症例1は11歳男性。右眼をサッカーボールで打撲した。初診時には円孔はみられなかったが,1か月後に発生した。4か月後には自然閉鎖し,視力は裸眼1.2に改善した。OCT検査にて,円孔発生時に黄斑部に浮腫と網膜全層円孔を認め,円孔が徐々に縮小して閉鎖する経過を観察し得た。症例2は24歳男性。右眼を野球ボールで打撲した。初診時に黄斑部に裂隙を認めたが,受傷1か月後には閉鎖し,視力は矯正0.7に改善した。外傷性黄斑円孔はときとして自然閉鎖するので,手術適応と時期については考慮すべきである。OCT検査は円孔の発生,閉鎖の過程の観察に有用であった。

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 超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入を行った90眼について,手術3年後の後発白内障の混濁度をカラーマップ画像解析で定量化し,臨床分類をした。症例の年齢は平均70.3歳である。徹照像を前眼部画像解析装置(EAS1000®)で撮影した。後発白内障は,細隙灯顕微鏡撮影で線維増殖型とElschnig pearl型とに分け,カラーマップ解析所見との相関を検索した。線維増殖型では129cct以上の低濃度の混濁領域が多く,Elschnig型では129cct未満の高濃度の混濁領域が多かった。特に106〜128cctの部位ではElschnig型が有意に高かった(p<0.05)。以上のように,カラーマップ解析所見は細隙灯顕微鏡による後発白内障の2型と相関し,後発白内障の臨床分類に有用である。

臨床報告 カラー臨床報告

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 1999年までの10年間に自検したFuchs虹彩異色虹彩毛様体炎患者34例の臨床像をまとめた。男性16例,女性18例で,初診時年齢は平均35.3歳,全例が片眼性であった。角膜後面沈着物と虹彩萎縮が全例にあった。白内障は25眼(74%)にあり,従来の日本で報告された頻度よりも少なく,21眼では後嚢下白内障であった。軽度の漿液性虹彩炎が33眼(97%)にあり,虹彩結節が15眼(44%),隅角新生血管が4眼にあった。検索できた32眼では硝子体混濁が27眼(84%)にあった。初診時視力は34眼中17眼が1.0以上,3眼が0.1以下であり,視力不良の原因はほとんどが白内障であった。白内障手術を行った8眼の成績は良好であった。

やさしい目で きびしい目で・11

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 先日,久し振りに大学のクラス会に出席した。その帰り道,同じ私鉄沿線の垣添氏(国立がんセンター院長)と親しくお話し,意気投合した。最近とみに“ペイしない機器は買わない”とか“学会出席の回数を制限する”とか,経費節減と称して医者の足を引っぱる締めつけが厳しくなっているという。たまにしか使わない機器は患者をその機器のあるところへ送ってやってもらえというのだそうだ。

 しかし,「たとえその機器が10人の患者のうち3人にしか使わないものであっても,それにより患者が恩恵を受け,医者の学問にも寄与すれば,ペイしなくても買わなければならない。日本のがんセンターですからね」と淡々とおっしゃっていた。

第53回日本臨床眼科学会専門別研究会1999.10.10東京

眼の形成外科 古田 実
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 第52回の本会でもそうであったように会場が狭く,立ち席のほか,多数の参加者が部屋に入れない状態となってしまい残念であった。このことは,いかに日常診療で眼形成の知識が必要とされているかを実感させるもので,今後も一般口演の他にもビデオ口演でわかりやすく手術方法を学べる場にしていきたいと考えている。また,もう少し大きい会場を確保できるよう努力していくつもりである。

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トラホーム唱歌

 陸軍々医学校教官 長野文治 閲 陸軍二等軍医正  横井忠国 作畏れて避けよ「トラホーム」

ゆめ侮るな「トラホーム」

基本情報

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臨床眼科
54巻12号 (2000年11月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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