臨床眼科 51巻1号 (1997年1月)

連載 眼の組織・病理アトラス・123

角化棘細胞腫 猪俣 孟
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 角化棘細胞腫keratoacanthomaは,中高年齢者の顔面や眼瞼皮膚に生じる上皮性腫瘍状増殖で,扁平上皮細胞(棘細胞)の偽癌性過形成pseudocar-cinomatous hyperplasiaの特殊型である。

 病因は不明である。ウイルス説があるが,確証はない。腎移植を受けて免疫抑制薬投与中の若年者に発症した例も報告されている。結膜や口腔粘膜にできることもある。孤発型と多発型があるが,多発型はまれである。

連載 今月の話題

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 色票を用いた色名呼称検査やアンケート調査から,色覚異常者の色誤認のパターン化を試み,その誘発条件について考察を加えた。これは色覚異常者の社会適応や職業適性など,社会的問題を考える上で,重要な事柄である。

連載 新しい抗菌薬の上手な使い方・9

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 使用法,使用量:フルオロキノロン系薬は,①黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌に抗菌力をもつ,②緑膿菌を含む非発酵菌にも抗菌スペクトルを有している,③眼内移行が良好である,④副作用が比較的少ない,などの条件がそろっている。したがって外眼部感染症および外傷,術後眼内炎などで原因菌不明のまま治療を開始する際,empiric therapyとして第一に選択されてよい経口抗菌薬である。

 通常の投与法・量を下の表に示した。

今月の表紙

Uveal effusion syndrome 宇山 昌延
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 網膜の下方に胞状の網膜剥離があり,眼底周辺部全周に輪状に脈絡膜剥離を伴っている。網膜下液は移動性が大きく,坐位では下方に貯留するが,臥位では黄斑部にまで拡がる。

 3つの病型が知られている。1型は高度遠視の真正小眼球症の眼に発生するもので,眼軸は16mm前後と極めて短い。MRI検査で小眼球がわかる。強膜が厚く硬いことが特徴である。Ⅱ型は眼球は正常の大きさであるが強膜は厚く硬い。Ⅲ型は眼球の大きさも,強膜も正常なものである。

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 無色素性網膜色素変性を併発した多種スルファターゼ欠損症の1例を経験した。症例は4歳の男児で,眼瞼は軽度膨隆し,触診で柔らかく,濃い眉毛がみられた。振子様眼振があり,眼位は10プリズムの内方偏位がみられた。眼底検査では,両眼の黄斑は褐色で輪状反射および中心窩反射が不整であった。後極部網膜は灰白色であり,網膜細動脈に狭細がみられた。周辺部網膜は帯青灰色で,網膜深層に粗造な混濁が認められたが.骨小体様色素沈着はみられなかった。網膜電図は両眼とも消失型であり,本症例の眼底異常は無色素性網膜色素変性と考えられた。結膜生検組織の電子顕微鏡的観察では,結膜線維芽細胞に多数の封入体が認められた。これらの封入体内には,顆粒状あるいは膜様構造物がみられ,両者が混在している像もみられた。この所見は,眼底の異常とともに多種スルファターゼ欠損症に特異的であると考えられた。

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 MRIで上斜筋筋腹の左右差がみられた片眼の先天性上斜筋麻痺の1症例を報告した。患者は9歳女児で,正面位で2△外斜位8△左上斜位を示し,9方向向き眼位ではKnapp II型を示した。MRIでは麻痺眼の上斜筋の断面積が健眼に比べ著明に減少していた。他の外眼筋の断面積には左右差がなかった。

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 3年前に原因不明の急性球後視神経炎として発症し,両眼の視神経萎縮になった12歳男児の1歳下の弟が同様な病状で急性発症した。これを機に末梢白血球のミトコンドリアDNA(mt DNA)の解析を行い,両名に11778番塩基対の点変位が確認され,レーベル病の診断が確定した。この兄弟の眼科的に異常のない40歳の母も同じ変異型を示し,レーベル病の保因者と判定された。

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 過去10年間に経験した角膜真菌症26例26眼について,考えられる発症誘因,臨床所見,真菌の検出,治療方法およびその効果について検討した。26眼中11眼(42%)に外傷の既往があった。臨床所見では,潰瘍が汚く灰白色を呈したものは26眼(100%)であった。直接鏡検・分離培養ともに陽性であったものは25眼中13眼(52%)であり,分離,同定された菌種はFusafium属が最多であった。治療方法はピマリシンを第1選択とし、必要に応じ他の抗真菌薬を併用した。眼球摘出に至ったFusarium solaniが原因の2例を含む4例以外は潰瘍の消失がみられた。Fusarium属は進行が速く,早期診断と早期治療が重要であると考えられた。

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 糖尿病と慢性C型肝炎が原因と思われる赤血球,血小板減少を合併した両眼性網膜中心静脈閉塞症の1例を経験した。患者は61歳男性で,左眼視力低下を主訴に受診した。眼底は糖尿病網膜症に合併した両眼性の網膜中心静脈切迫閉塞症を示し,全身検査では赤血球,血小板の減少がみられていた。

 網膜中心静脈閉塞症発生に関与する因子として,高血圧,糖尿病,動脈硬化などがあるが,これに加え血液学的因子による易出血性にも留意し,厳重に経過観察することが必要であると考えた。

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 過去2年間に波長575〜630nmの色素レーザーで,活動性の脈絡膜新生血管を伴う滲出性中心性網脈絡膜症10眼を治療した。女性5例,男性4例の9例で,年齢は16〜48歳,平均34歳であった。光凝固後の視力は,2段階以上の改善4眼,不変5眼,悪化1眼で,最終視力は8眼が0.8以上,2眼が0.3以下であった。新生血管が中心窩下にある1眼で新生血管が残存し,中心窩からの距離が200μm以内の1眼では再発した。新生血管が中心窩から300μm以上離れた部位にあり,活動性の強い本症では,光凝固により視機能悪化を予防できる可能性がある。

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 帯状疱疹ウイルスによる片眼性の急性ぶどう膜炎で網膜血管炎を伴った12歳と14歳の女児を治療した。全身的にアシクロビルを用いた。1例は全網膜剥離に至ったが,他の1例は治療に反応し,視力障害を残さずに治癒した。

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 Sjögren症候群29例49眼とその他のドライアイ21例39眼について,涙液表面のスペキュラー像を検討した。非接触型の涙液表面観察装置を用いてSjögren症候群,その他のドライアイ,健常眼13例22眼を観察し,5つのGrade (Gradel:干渉色が灰色で分布が均一,Grade2:干渉色が灰色だが分布が不均一,Grade3:干渉色が2色以上で分布が不均一,Grade4:干渉色が多彩,Grade5:角膜表面が露出し,透見可能)に分類した。各群においてGrade分布を比較すると,Sjögren症候群,その他のドライアイ,健常眼の順に前者ほどGradeの高い例が有意に多かつた(各p<0.0001)。今回の検討により,涙液表面の観察は,健常眼とドライアイ,特に健常眼とSjögren症候群を鑑別する方法として有用であると考えられた。

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 水晶体乳化吸引術(PEA)を行った先天水晶体欠損症の1例を報告した。症例は44歳の男性で,左眼の視力障害を起こした。初診時の矯正視力は右1.5,左0.6で,左眼の水晶体には後嚢下の混濁と6時の辺縁に楕円形の欠損があり,同部の毛様小帯は少なかった。左眼の先天水晶体欠損症,白内障と診断して経過をみていたが,5か月後に成熟白内障となり,矯正視力が0.01まで低下したため,左眼にPEA+眼内レンズ挿入手術を行った。術中,前嚢切開線が一部赤道部に及び,硝子体の一部が水晶体欠損部から前房内へ脱出した。後嚢の破嚢はなかつたが,眼内レンズは嚢外に固定した。退院時の左矯正視力は0.9で経過は良好であった。先天水晶体欠損症に対し白内障手術を行う場合には,毛様小帯の異常を考慮し,毛様小帯への負担の少ない術式を選択する必要がある。

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 黄斑部光凝固術を施行された糖尿病患者12名18眼に,螢光眼底造影検査と走査レーザー検眼鏡を用いた微小視野検査(SLO microperimetry)を施行して光凝固斑の特徴を検討した。フルオレセイン螢光眼底造影検査では光凝固斑の中心部は低螢光を示し,その周囲を囲む過螢光を認めた。また,インドシアニングリーン螢光眼底造影検査では光凝固斑に一致した低螢光が全造影中にみられた。一方,これらの螢光造影検査では明らかな差はなかった個々の光凝固斑において,SLO microperimetryでは18眼中13眼で絶対暗点を示すものと示さないものとがあった。したがって,SLO microperimetryは光凝固斑の網膜感度の定量的評価に有用であることが示唆された。

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 51歳女子が右眼霧視を主訴として受診した。19か月前に急性骨髄性白血病と診断され,化学療法により完全寛解を得ていた。右眼の視力は0.6で,乳頭浮腫,傍中心暗点,内部イソプタの沈下,CFFの低下があった。髄液検査は正常であった。原因不明の視神経炎として副腎皮質ステロイド薬の内服を開始したが,乳頭浮腫は進行し,9日後に右眼視力は手動弁となった。画像診断で小脳に占拠病変が発見され,臨床的に白血病による視神経浸潤と診断した。抗癌薬の髄注は無効であった。全脳に対する放射線照射を行った。照射5日目に右眼視力は1.0に改善した。

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 エキシマレーザー屈折矯正術(photorefractive keratectomy:PRK)を施行した27例39眼を対象に,術後12か月の時点で角膜上皮下混濁の程度と目標矯正度数からの屈折度数の偏位および矯正視力との関連を検討した。角膜上皮下混濁の程度は前眼部解析装置EAS-1000®を用いて,角膜上皮下の散乱光強度測定により定量化した。その結果,角膜散乱光強度が強いほど術後再近視化傾向が有意に強いことが判明した(r=−0.73,p<0.001)。しかし角膜散乱光強度と矯正視力との間には有意な相関を認めなかった。PRK術後の上皮下混濁は矯正視力に有意の影響は与えないが,矯正精度と密接な関連があると考えられた。

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 中心性漿液性網脈絡膜症の病因は未だ不明な点が多いが,最近脈絡膜循環の関与が指摘されている。今回筆者らは著明な脈絡膜循環障害を基礎として再発性の漿液性網膜剥離を生じ,びまん性の網膜色素上皮萎縮が進行したと考えられる3症例を経験した。症例は42,49,55歳の男性で以下の共通点があった。(1)後極部に漿液性網膜剥離とその部分の網膜色素上皮の軽度の萎縮を認めた,(2)フルオレセイン螢光造影で色素上皮レベルからのびまん性の色素漏出があった,(3)インドシアニングリーン螢光造影では初期に脈絡膜流入遅延を,後期に過螢光と低螢光の混在を認めた,(4)視野検査では病変部に一致した部分に感度の低下があった,(5)病変部が無血管野を含む場合は視力低下が著明であった,(6)脈絡膜循環障害の範囲で網膜色素上皮萎縮は進行した,(7)脈絡膜新生血管を生じたものはなく加齢黄斑変性の初期像とは考えられなかった。

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 1994年12月までの2年間に硝子体手術を行った増殖糖尿病網膜症71眼につき,眼内病態に基づく手術方法と手術結果を検討した。眼内病態は,網膜症の活動性,後部硝子体剥離の程度,裂孔原性網膜剥離の有無および周辺部増殖膜の有無により判断した。初回手術成功は71眼中64眼(90%)。再手術はすべて水晶体切除を行い、最終的な手術成功は71眼中70眼(98.6%)であった。増殖糖尿病網膜症の手術成績は,周辺部まで硝子体を十分に切除し,増殖膜を取り残さず,術中に網膜を復位させて十分に光凝固を行えば良好であり,術前の眼内病態把握と必要な併用術式の選択が大切である。

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 67歳の男性が観光のためネパールを訪れ,国立公園に滞在中に上眼瞼の違和感を自覚した。帰国中の機内で右上眼瞼の疼痛と発作腫脹が出現した。自覚症状の出現から1週間後の診察で,上眼瞼の睫毛根部皮膚にマダニが咬着しているのが発見された。虫体は自然脱落した。マダニはマダニ属(Dermacentor)の幼虫と判定されたが,種名は同定できなかった。海外からの輸入マダニ寄生例の報告は少なく,眼瞼刺傷例は今回が最初の本邦報告例である。

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 経過観察中にポリープ状病変が自然消失したidiopathic polypoidal choroidal vasculopathyの1例を報告した。患者は72歳,男性。左眼視力低下を主訴に来院。右眼視力(0.04),左眼視力(0.8)。左眼黄斑部には出血性色素上皮剥離があり,鼻下側辺縁部の橙赤色病巣を光凝固し,色素上皮剥離は消失した。右眼には角膜片雲があり,黄斑耳側に橙赤色病巣がみられ,赤外螢光造影で分岐する脈絡膜血管網とポリープ状病変が認められた。10か月後の造影所見でポリープ状病変は自然消失していた。右眼のポリープ状病変の消失は,血管網と交通する脈絡膜血管の閉塞によると推測された。

眼科の控室

たとえ話
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 どんなに良い話でも,相手に伝わらなければ意味がありません。これは患者さんへの病状説明,いわゆるムンテラのときに大事なことです。この際に,適当な「たとえ話」を使うと便利なことがあります。

 私の知っている某先生は,「女の腕まくり」がお好きです。相手はキョトンとしますが,それに続けて,「怖くない」と言うと,「なあーんだ」と簡単にわかってもらえます。ただ最近では女性が強くなっているので,簡単にはお勧めできません。

文庫の窓から

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 人の健康は食べものにより大きく左右されるが,その健康を害した時に,食べてよいものと食べてはならないものとがあるといわれ,病気と食物のかかわりについては昔から種々,考えられてきた。

 本書は何の病気にどの食物が適するか,あるいは害があるか,諸々の病名とその各々に適否の食物を挙げて記述した注意書である。

基本情報

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臨床眼科
51巻1号 (1997年1月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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