臨床眼科 48巻1号 (1994年1月)

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・7

烏類のペクテン 杉田 新
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解説

鳥類の眼球にはペクテンと呼ばれる,血管と色素細胞から成る櫛状の突起がみられる。ペクテンは視神経乳頭から硝子体に向かって突出しており,マクロ的にはアコーディオンに似た多数のひだが特徴である。ペクテンの外表面は基底板様の被膜と細線維で被われているため,そのままでは,よく発達したペクテン毛細血管の網目を観察することは出来ないが,塩酸とコラゲナーゼで処理すると,被膜と細線維が消化されて,毛細血管の網目が観察される。この様に,よく発達した毛細血管から成るペクテンの機能はなお不明であるが,鳥類の網膜は厚く,固有の血管がないことから,網膜内層の栄養に関係しているものと推測されている。

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緒言

 近年線維柱帯切除術に5—フルオロウラシル(以下5—FU)を併用する事により,術後の眼圧コントロールは改善しているが,同時に5—FU使用による合併症として角膜上皮剥離が生じる事もよく知られている。しかし角膜上皮剥離は通常数週間で治癒し,視力予後にも影響は及ぼさないと報告されており1),5—FU併用線維柱帯切除術は現在広く行われている。今回筆者らは5—FU併用線維柱帯切除術後に重篤な角膜混濁を生じ,表層角膜移植を要した症例を経験したので報告する。

連載 眼の組織・病理アトラス・87

瞳孔ブロック 猪俣 孟 , 藤沢 公彦
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 眼房水は後房から瞳孔領を経由して前房へ入り,前房隅角の線維柱帯からシュレム管を通って,眼球外へ流出する。生理的状態でも,虹彩の瞳孔縁と水晶体の前面はほとんど接触するように近接しているので,房水が後房から前房へ流出する際に軽い流出抵抗が存在する。これを瞳孔縁における生理的房水流出抵抗という。なんらかの機序で,瞳孔縁における房水流出抵抗が高くなったものを瞳孔ブロックpupillary blockという。瞳孔ブロックには,瞳孔縁が水晶体と癒着しておこる完全瞳孔ブロツクcomplete pupillary blockと,瞳孔縁の癒着を伴わない比較的瞳孔ブロックrelativepupillary blockとがある。

 完全瞳孔ブロックは慢性の虹彩炎あるいは虹彩毛様体炎などでおこる。この場合,瞳孔縁の全周が水晶体と癒着して輪状の虹彩後癒着annular(ring) synechiaがおこったものを瞳孔遮断se—clusio pupillaeと呼ぶ(図1,2)。前房内に出たフィブリンが器質化して瞳孔領を覆ったり,あるいは増殖した線維血管膜が瞳孔領を埋めたものを瞳孔閉鎖occlusio pupillaeと呼ぶ(図3,4)。瞳孔遮断と瞳孔閉鎖は同時に存在することも多い。瞳孔遮断では,瞳孔縁と水晶体前面にできた結合組織が収縮し,瞳孔縁は水晶体側に引き込まれるので,しばしば瞳孔縁の虹彩色素上皮層が反転してぶどう膜の内反entropion uveaeがおこる。瞳孔遮断および瞳孔閉鎖のいずれの場合でも,後房から前房への房水の流れが遮断されるので,後房圧が上昇して虹彩を押上げる。その結果,水晶体と癒着のない部位の虹彩が膨隆する。これを膨隆虹彩iris bombéという。この状態を放置しておくと,周辺虹彩前癒着を生じて難治性の緑内障に進行する。

連載 今月の話題

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 サルコイドーシスのぶどう膜炎は内因性ぶどう膜炎中で頻度が高く,特徴的な病変を示し,本症の発見動機となることが多い。本症の診断は眼外全身所見から行うため,全身所見に乏しい場合には本症の診断が困難であったが,気管支肺生検で診断できる症例が多い。本稿では,サルコイドーシスの特徴的眼所見と全身所見を述べ,眼外全身所見を伴わない場合の診断方法を提示した。

連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・61

網膜下液排液の方法(1) 沖波 聡
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はじめに

 ジアテルミー凝固が終わった時点で網膜下液が多量に残っている場合は網膜下液の排液が必要である。網膜下液の量が少ない場合には無理に排液をしなくてよい。排液の位置は網膜穿孔の危険を減らすために網膜下液の最も多い位置を,また,液化硝子体の脱出を防ぐために裂孔から遠い位置を選ぶ。シリコンスポンジを通す位置よりも後極よりで行うこともあるが,穿刺部への網膜嵌頓や網膜穿孔を起こした場合に処理しやすいように,シリコンスポンジの下になる位置で行うのがよい。渦静脈の強膜内走行部は出血するので避ける。また,3時と9時の位置は長後毛様体動脈が走行しているので避ける。

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 初診時,既に網膜全剥離を伴った脈絡膜血管腫に対し,腫瘍表面にアルゴンレーザー光凝固を施行し,長期に経過観察した。経過中,腫瘍の大きさ,網膜剥離は改善せず,結局,初診後6年8か月して,続発緑内障のため眼球摘出に至った。その病理組織は脈絡膜血管腫に特徴的であった。

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 卵黄様黄斑変性症では,EOGでのL/D比の著明な低下が知られている。筆者らは母子に認められた症例に諸種電気生理学的検討を行った。症例1は13歳男児,右眼黄斑部にニボーを伴う黄色斑,左眼黄斑部にいり卵状黄色斑を認めた。症例2は38歳女性,症例1の母で,両眼黄斑部に網脈絡膜萎縮巣を認めた。電気生理学的検査では2例ともscotopic, photopic, flicker, single flash ERG, pattern-reversalVECPは正常であったが,EOGでL/D比の著しい低下を認め,pattern-reversal ERGは消失型で,網膜内層の障害を示唆した。

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 筆者らは,白内障手術を希望する長期罹病の精神分裂病患者3人について,スペキュラーマイクロスコープによる角膜内皮細胞の検索を行った。3例中2例は細胞密度と六角形細胞率の減少が認められたが,1例はほぼ正常の内皮細胞であった。3例とも角膜浮腫は認められなかった。精神分裂病患者における角膜内皮障害の原因は,現在のところ不明である。2症例に対して当科にて白内障手術を施行した。術前から内皮細胞数の減少がある者では,眼内手術時の角膜内皮への侵襲をできる限り少なくすることが重要である。

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 今回筆者らは,closed loopの支持部をもつ新しいディスク型眼内レンズを開発した。PMMAのsingle pieceレンズであり,直径5mmのbiconvexのレンズ部と外径10.5〜11.5mmの外周支持部は,3本の支持腕部で連結されている。ディスク型眼内レンズの支持部の切断面は楕円形で0.12×0.16mmと細いために,flexibilityをもつ特性がある。このディスク型眼内レンズの物性試験および動物眼への挿入試験では,7mmの強角膜輪部切開創,6mmのcontinuous circular capsulohexis (CCC)から水晶体嚢にレンズの挿入が可能であった。このディスク型眼内レンズは豚死体眼では水晶体嚢内の固定状態が良好であり,家兎に移植した場合では,レンズ偏位や水晶体嚢およびチン小帯に損傷はみられなかった。

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 1970〜92年の23年間に京大眼科を受診したベーチェット病患者127例(男性82例,女性45例)を対象として,本疾患の動向を検討した。その結果,患者数は減少していた。初診時平均年齢は男性は上昇,女性は低下した、眼症状を有する者は男性に多く,その内容は近年全ぶどう膜炎が中心であった。女性は眼症状のない不全型が多く,男性に比べて全ぶどう膜炎の比率は少なかった。治療薬はステロイド,シクロホスファミド,アザチオプリンは減少し,代わってシクロスポリンが最近使用されていた。コルヒチンも比較的よく使われていた。視力予後は女性に関しては改善されていたが,男性は現在も60%が5年後の視力が0.1以下であった。

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 原発開放隅角緑内障眼のうち,術前視力が0.1以上で,精密閾値検査の結果Aulhorn-Greve分類V期以上の視野障害を有し,網膜光感度5dB以下の検査点が中心5°以内に存在する末期例39眼を対象として,線維柱帯切除術前後の視力,視野を比較検討した。術後,全例で眼圧が調整され,術直後ならびに経過中中心視野が消失した例はなかった。術前後での視野の変化に影響する術前臨床因子として,重回帰分析の結果,術前mean sensivityにのみ有意な相関がみられ,術前視野障害の高度な例ほど術後感度が上昇する傾向がみられた。末期緑内障眼に対する線維柱帯切除術により術後中心視野が消失する危険は少ないと考えられた。

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 緑内障眼における乳頭周囲網脈絡膜萎縮(peripapillary chorioretinal atrophy:PPA)と中心部視野の関係を調べる目的で,初〜中期の正常眼圧緑内障(NTG)23例30眼,原発開放隅角緑内障(POAG)22例33眼における視野障害度とPPA/乳頭面積比(PPA/D比),乳頭縁/乳頭面積比(RD比)との関係を検討した。Humphrey自動視野計中心30-2プログラムのmean deviationはRD比により強く相関したが,中心10-2プログラムでのtotal deviationの平均値とは中心視野に対応したPPA/D比がより強い相関を示した。この結果から,PPAが中心部10°内視野障害程度,さらには緑内障の中心視力予後を予測しうる可能性があることが示唆された。

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 通常の臨床使用で想定される濃度で,インドシアニングリーン(以下ICG)とフルオレセインナトリウムを血液中に溶解し,それを薄い容器に入れ,2枚の容器を重ね合わせたときの螢光像を観察した。ICGでは,容器が重なった部位で,少なくとも厚さ400μmまではその発する螢光は加算され,強い螢光輝度を示した。これに対し,フルオレセインナトリウムでは均一の螢光を示し,重なった部位でも螢光輝度に変化はなかった。臨床的にも,ICG螢光造影では血管が交叉した部位や太い脈絡膜血管,また脈絡膜血管腫などで強い螢光を示し,過螢光像の描出はフルオレセイン螢光造影とは異なってくる。血管外に漏出したICGにより過螢光を示すものとして,脈絡膜新生血管や原田病などがあり,原田病では脈絡膜血管からの螢光漏出による過螢光像が観察された。また,脈絡毛細管板はベール状のびまん性螢光として観察される。その閉塞域ではベール状螢光を欠くため,脈絡膜血管の輪郭はより明瞭となる。ICG螢光造影では,観察方向にあるICGの厚さにより螢光輝度が規定されることが特徴であり,フルオレセイン螢光造影とは大きく異なる点である。ICG螢光造影は,網膜血管から脈絡毛細管板,脈絡膜血管までの立体的な構造を捕らえることができる方法であることが結論される。

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 20歳男性の上顎洞横紋筋肉腫のため,上顎眼窩全摘術後の再建に際し,遊離広背筋皮弁,腸骨移植,有茎側頭筋膜弁による上顎眼窩再建,義眼床形成術を行った。胎児型横紋筋肉腫は稀な腫瘍であるが,若年者に好発し,広範囲切除を必要とするため著しい機能的,整容的障害を残す。このためquality of lifeの観点から早期の再建術が望まれる。眼窩を含む上顎の広範囲な組織欠損の再建において,再建後の外貌の改善と安定した義眼床の形成には,支持組織としての骨組織再建と,十分な量の軟部組織移植が重要であり,筆者らの行った遊離広背筋皮弁,腸骨移植,有茎側頭筋膜弁による上顎眼窩再建,義眼床形成術は有用で良好な結果を得ることができた。

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 今回筆者らは,VDT (Visual display terminal)作業と紙面作業での視機能への影響を調べるために,60分のアルファベット修正作業と,その後に90分の休憩を設け,その経時的変化を赤色・緑色・黄色のフリッカーのチラツキ閾値と融合閾値を測定し比較検討した。その結果,VDT作業と紙面作業では低下傾向に差が認められたが,回復傾向では認められなかった。赤色は緑色・黄色より大きな変動を示し,融合閾とチラツキ閾では,チラツキ閾の低下が大きく,VDT作業では90分休憩後でも完全には回復しなかった。フリッカー値によるVDT作業の疲労現象は長期に存続し,特に赤色でのチラツキ閾測定が,作業形態による疲労度を反映し易く有益であると思われた。

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 本邦では稀な疾患である緑内障を合併した49歳女性のぶどう膜悪性黒色腫につき報告した。術前のCTでは虹彩・毛様体に限局していると思われたが,腫瘍の著明な増大,コントロール困難な緑内障の合併,腫瘍の浸潤度が不明などの理由で右眼球摘出術を施行した。病理組織所見は一部壊死巣を含むepithelioid cellsを主体とした悪性度の高い腫瘍であり,Callender分類のmixed cells typeであった。眼圧上昇は,黒色腫融解による隅角閉塞が原因と考えられた。

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まもなく眼科学会は100周年をむかえる会員数は10,000人を超え,また年間300〜400人の新しい眼科医が生まれているその間,眼科医療は急速に進歩してきた手術や診断の技術は今後も発達し続けるであろうし遺伝子の組み替え,屈折矯正手術などアプローチもさらに多様化していくと考えられる眼科は組織的にも内容的にも膨大なものとなったがそれに伴うさまざまな問題も抱えている本座談会では,日本の眼科をリードする4人の先生方にお集まりいただき昔と今の違い,今こそ考えなくてはいけない問題点,そしてよりよい将来への展望をいろいろな角度からお話いただいた

眼科の控室

「ご返事」の書き方
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 紹介患者では,かならず紹介医に返事を書くべきです。その場合に,ふたつコツがあります。

 ひとつは,相手に理解してもらえる文章にするということ。紹介医の知らない略語はできるだけ避けてください。たとえばBRVOでもそのままでは不可です。網膜静脈分枝閉塞症BRVOというようにします。「相手が読みたくなる文章」というのも大事です。ゴチャゴチャ書いてあると,まず読んではもらえません。絵はなるべく描くことにします。眼底なら直像で,2色以上を使います。

 もうひとつは,「次にまた患者さんを紹介したくなる文章」を書くことです。紹介してくださった先生が知らないことをちょっぴり追加するというのがコツです。すこし経過の長い症例では,今までの大略を記述するようにします。これからの治療予定もできれば書いてください。

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 1990年7月までの16年1か月間に,涙嚢炎による涙嚢瘻に対し,瘻孔切除と涙嚢鼻腔吻合術の組み合わせ手術を施行した。48例52眼は全部治癒した。

基本情報

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臨床眼科
48巻1号 (1994年1月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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