臨床眼科 47巻13号 (1993年12月)

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・6

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脈絡膜外層の割断面の走査電顕写真。メラノサイト(M)と膠原細線維の束から成る索状組織の間に,線維芽細胞様細胞の扁平な細胞質突起によって縁どられたリンパ洞様構造が観察される。線維芽細胞様細胞同士の結合はゆるく,細胞間および細胞内に大きな間隙がみられる(矢印)。リンパ洞様構造には,しばしば,遊走細胞(WC)を認める。樹脂冷凍割断。ニホンザル。×6,700

連載 眼の組織・病理アトラス・86

ステロイド緑内障 田原 昭彦 , 猪俣 孟
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 ステロイド緑内障は副腎皮質ステロイド薬(以下ステロイド薬)の眼局所あるいは全身投与で高眼圧が誘発された病態である。ステロイド緑内障の発症機序は不明であるが,前房隅角からの房水の流出が障害されて眼圧が上昇するとされる。この房水流出障害は,隅角線維柱帯に存在するグリコスアミノグリカンの量がステロイド薬の影響で増加するためとの説がある。

 通常ステロイド薬で誘発された高眼圧は可逆性で,投薬が中止されると眼圧は正常となる。しかし長期にわたって投薬を受けた場合,自覚症状がないままに視機能障害が進行することや,投薬が中止されても眼圧が下降しないことがある。このような例では強い視野障害や視力障害を残すことも稀ではなく,ステロイド薬を使用している患者に緑内障の定期検査を怠ってはならない。

連載 今月の話題

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 シクロスポリンは細胞性免疫を選択的に抑制するImmunophylin ligandのひとつである。現在ベーチェット病に用いられ優れた治療成績が得られている。さらにシクロスポリンは免疫異常が関与する前眼部疾患に対しても有効性が明らかにされており,今後Immunophylin ligandの眼科疾患に対する幅広い臨床応用が期待される。

連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・60

インプラントの選択と方法 松村 美代
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選択

 エクソプラントよりインプラントのほうが威力を発するのは,次のような場合である。

 1)前方の裂孔(毛様体裂孔や鋸状縁付近の網膜最周辺部の裂孔):結膜下に外から見えない(美容上の理由),術後期間を経て脱出してくることがない(これには例外はある)。

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 クッシング症候群により高度の高血圧性網膜症をきたした稀な1例を経験した。症例は両眼の視力低下を主訴として来院した37歳の女性で,肥満傾向,満月様顔貌,男性型発毛を認め,血圧250/140mmHgであった。視力は両眼とも0.01(矯正不能),眼底所見は両眼とも網膜細動脈の狭細化が著明であり,視神経乳頭の浮腫,広範囲の滲出斑,黄斑部星状斑が認められた。精査で副腎皮質腺腫によるクッシング症候群と診断され,降圧療法と腫瘍摘出術が施行された。治療による血圧の下降とともに滲出斑の減少,軽度の視力改善が見られたが,視神経萎縮のため視力は両眼0.1にとどまった。

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 白色家兎眼における強膜cauterization施行後の経時的角膜形状変化を,角膜形状解析装置TMS−1を用いて,実験的に観察した。12時の強膜にcauterizationを施行した直後,施行部位付近に一致した上方角膜輪部から瞳孔領付近まで,steep化がみられたが,2日後には角膜はほぼ施行前の形状に回復していた。Jaffeの2倍角ベクトル法で求めた乱視変化量は,8眼中7眼において,施行直後あるいは施行後1時間で最高となった後,翌日には減少し,その後は安定する傾向がみられた。以上より,cauterizationを施行した場合,施行直後の直乱視化は避けられないものの,過剰に施行しなければ,その影響は比較的早期に安定化するものと考えられた。

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 超音波カラードプラ法を用いて,眼窩内血管をモニターしながら血流速度を測定した。プロープには7.5MHzの表在血管用プローブを用いた。対象は健康成人21人(年齢19〜41歳,平均28.9±5.9歳)で,これまでの連続波ドプラ法を別の8名に行い比較検討も行った。流速の絶対値は,網膜中心動脈,中心静脈,眼動脈の近位部および遠位部では,それぞれ0.08±0.02,0.04±0.01,0.31±0.10,0.31±0.09m/sで,左右差はなかった。また,眼動脈近位部および遠位部について差はなかった。測定信頼度を,10名について3〜5回測定したところ,それぞれ最大血流速度の平均変動係数は7.8,10.0,8.8,7.9%であった。またその10名で日を変えて再測定を行ったが,日差にも有意な差はなかった。従来の連続波ドプラ法で用いられた収縮期最大流速と拡張期の最低流速の比の信頼度は,カラードプラと同程度であった。しかし,カラードプラ法は測定部位が設定でき,絶対流速が得られて,より詳細な評価ができること,網膜中心動・静脈の測定も可能で,優れた検査法である。

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 スギ花粉症患者12例に抗原による眼誘発試験を行い,0.5%トラニラスト(N−5′)点眼液の涙液中ヒスタミン遊離抑制効果を検討した右眼にN−5′点眼液,左眼にplacebo点眼液を点眼し,10分後にスギ抗原液を点眼して,アレルギー反応を誘発した。N−5′投与眼の誘発5分および10分後の涙液中ヒスタミン量は,対照眼に比べ有意なヒスタミン遊離抑制効果がみられた。N—5′点眼液のヒスタミン遊離抑制率は,誘発5分後50%,誘発10分後63%であった。0.5%N−5′点眼液はスギ花粉症に対する有効な薬剤であると考えられた。

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 絶対緑内障で眼球摘出した偽水晶体落屑を伴った嚢性緑内障の66歳の症例を電子顕微鏡で観察した。典形的な偽水晶体落屑を強膜,視神経,血管周囲に観察できた。これらの偽水晶体落屑は毛様体,水晶体表面に観察されるものとほぼ同様であった。今回の結果は,偽水晶体落屑が眼内のみならず眼外にも分布しているとの最近の報告を裏付け,本疾患が全身病であるという報告を支持する。

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 42歳の女性で,左眼に網膜血管腫と高度な網膜剥離がある症例に対し,網膜冷凍凝固術,網膜下液排液術,色素レーザー光凝固術を試みた。初診時すでに,レーザー光凝固術が不可能な胞状網膜剥離を伴っていたため,まず網膜下液排液を行った後,網膜冷凍凝固術,色素レーザー光凝固術を行うことにより,血管腫が著明に退縮し,網膜剥離もほとんど消失した。

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 角膜ヘルペスに続発した角膜穿孔に対して全層角膜移植術を施行したのちepithelialdowngrowthを発症し,その10年後に続発緑内障を合併した43歳の症例を経験した。この間,移植片の透明性は保たれていた。

 続発緑内障に対し5—フルオロウラシル(5-FU)を用いた線維柱帯切除術を施行し,術後約1年を経過した現在,眼圧はコントロールされている。線維柱帯切除時に得られた切除標本では,虹彩面上に4〜5層の重層扁平上皮が観察され,epithelial downgrowthであることが確認された。この切片に対し,抗ケラチンモノクローナル抗体(AE5)を用いて免疫染色を行ったところ陽性所見を示し,角膜型ケラチンの発現を認めた。

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 1980〜1991年の間に全層角膜移植術と白内障手術を同時または2段階で施行した47症例(同時手術19眼,2段階手術28眼)を術式別に,透明性維持率,視力成績,合併症について検討し,2段階手術における移植角膜内皮細胞密度についても検討を加えた。透明性維持率は,同時手術は19眼中11眼58%,2段階手術は28眼中17眼61%であった。視力改善率は,同時手術は19眼中14眼74%,2段階手術は28眼中20眼71%であった。2段階手術における角膜内皮細胞数は白内障手術前に平均1004.2cell/mm2であり,術後3か月に30.1%,6か月に46.7%の細胞減少を認めた。移植片への侵襲を考えると2段階手術より同時手術が望ましいと思われる。

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 眼球摘出術を拒絶した左眼脈絡膜悪性黒色腫患者に対し,経強膜的腫瘍切除摘出術(eyewall resection)を施行し,視機能の保存に成功した本邦第2例目の症例について報告した。症例は,左眼の下方視野狭窄を主訴に来院した55歳の女性で,初診時の視力はR.V.=0.4(0.7),L.V.=0.05(0.6)であった。左眼眼底上耳側,赤道部に1象限に及ぶ,色素沈着を伴う半球状の隆起性病変を認め,大きさは超音波検査にて,径10.8mm×12.4mmにおよんだ。手術は,ジアテルミー凝固術にて腫瘍周囲をマーク後,強膜を半層切開,残存側の強膜と腫瘍をen blocに切除し,切除標本の病理組織像は,mixed cell typeの悪性黒色腫であった。術後の出血とPVRに対して硝子体手術が有効であり,網膜を復位し得た。術後144日の同眼の矯正視力は0.05p,眼圧は6mmHgであり,遠隔転移は見いだされていない。

眼科の控室

必読書
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 医局というのは便利な制度です。ごく普通にしているだけで,なんとなしに知恵がついてくるからです。診断は兄弟子など上の先生が教えてくれるし,手術も人のを見ているだけで,だいたいはわかるものです。初手術となると,それこそ手とり足とりして指導してもらえます。これを昔の人は,「門前の小僧 習わぬ経を読む」といいました。

 けれどもこれだけでは寂しいのです。この方法は便利な代わりに,自分の先生よりは絶対に偉くなれないからです。先生を小粒にしたのが弟子で,そのまた小粒が孫弟子というのは,まさに縮小再生産であり,この変化の速い医学の世界で先に進むのはまず無理というものです。

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 本稿は中国の眼科雑誌に発表された盲目の調査にかかわる28篇の報告を摘録し,総合した資料である。双盲目罹病率は0.26%,単盲目の率は0.44%,計0.7%である。中国の双盲目の罹病率は世界の発展途上の国家および中間地区より低く,工業化した国家よりやや高い。年齢からみれば,単双盲目はともに60歳以上のグループで多い。性別からみれば,ともに女性が多い。病因からみれば双盲目は白内障が一番で,緑内障がその次である。単盲目は眼外傷が最も多く,白内障がその次である。したがって,白内障は単双盲の中で重要な位置を占めている。

文庫の窓から

眼目 中泉 行信 , 中泉 行史 , 斎藤 仁男
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 本書は外題に『眼目』の2字が書かれているだけであるが,内題は『麻嶋灌頂小鏡之巻』となっており,麻嶋流眼科の治療方法などを記述したものである。

 本書の奥書によれば,この写本は尾州三本木麻嶋(愛知県海部郡大治村三本木馬島)の真寺大坊(真島の寺の大智坊)の清源という僧が三州寳来寺(愛知県南設楽郡鳳来町鳳来寺)の薬師如来(峯薬師,日本三薬師の1つ)へ17日の間参籠して得た秘法の書物であって,のち,慶長12年(1607)に清源家伝として麻嶋若狹守林活,三刀屋新左衛門尉へ相伝された写本だということである。この写本は全1冊12葉(18×23.7cm)からなり,紙のコヨリで綴った横長本で,楮紙の料紙に漢字と片仮名混り(毎半葉の行数,字数など不定)の和文で墨書した,朱入本である。本書の内容は,その主な項目によって抄記すると以下のとおりである。

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基本情報

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臨床眼科
47巻13号 (1993年12月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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