公衆衛生 83巻2号 (2019年2月)

特集 インバウンドと在留外国人—その増加と諸課題

  • 文献概要を表示

 政府のインバウンド戦略の推進などによって訪日外国人観光客数は年々増加しており,2018年には3,000万人を超えました.在留外国人も増加しており,必然的に外国人傷病者が病院で受診する機会が増え,医療の受け入れ体制の整備が進められています.一方,言語対応,健康保険制度,未収金など多くの問題点が指摘されています.

 少子高齢化に伴う国内での労働力不足を補う対策として,外国人労働者の受け入れが拡大しています.企業の社員として雇用される直接雇用よりも人材派遣会社からの派遣などによる間接雇用が多く,また,研修・技能実習制度に基づく研修生,留学生によるアルバイトなど多様です.こうした中で産業保健や医療,生活環境および日常生活支援などを含めた公衆衛生上の課題が数多く指摘されています.

  • 文献概要を表示

変革期を迎える外国人政策

 日本の外国人政策は目まぐるしい動きをみせている.2018年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針)では,これまで受け入れを認めてこなかった「非」高度外国人材に対し,就労を目的とした新たな在留資格を創設することが明記された.建設,介護,宿泊,農業などの労働力不足が深刻な10業種程度が対象であり,最長5年間の滞在を原則としつつ,高い専門性を有すると認められれば,さらに長期の在留を許可する方針といわれている.2019年4月の資格の開始に向けて議論が進められている.

 この他にも,近年,日本政府は,①経済連携協定による外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れ,②国家戦略特区における特定分野(農業や家事サービス業など)での受け入れ,③日系4世の受け入れ,④技能実習制度の期間延長・職種拡大,⑤外国人留学生の積極的受け入れなど,さまざまな方法・ルートを通して外国人に対して門戸を広げている.

  • 文献概要を表示

はじめに—外国人技能実習制度とは

 「外国人技能実習制度」は,わが国で培われた技能,技術または知識(以下,技能等)の開発途上地域などへの移転を図り,当該開発途上地域などの経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度である.1981年の出入国管理及び難民認定法(以下,入管法)の改正によって,海外に支店や関連会社がある企業が外国人研修生を1年間受け入れる制度として開始された.1993年には,研修生として受け入れた外国人が1年の研修期間後に特定活動の在留資格の下で技能実習に1年間従事する「技能実習制度」が創設された.1997年には技能実習期間が2年となるなど,累次の改正によって制度は拡充されてきた.

 2017年末の時点で,外国人技能実習制度の監理団体は約2,000団体,実習実施者は約48,000社に上っており,技能実習生は全国に約27万人在留している.技能実習生の7割以上はベトナムと中国出身者で占められており,職種としては食品製造関係,機械・金属関係,建設関係の順に多い.同制度の現状を図11)に示す.

  • 文献概要を表示

はじめに

 2018年に日本を訪れた訪日外国人は3,000万人を超えた.訪日外国人の近年の急激な増加の背景には,円安局面の継続やオリンピックを前にした観光客誘致の政策などさまざまな要因があり,今後も動向を注視する必要がある.一方で,日本に在住する外国人の数も2008年のリーマン・ショックから東日本大震災にかけての数年を除いて,一貫して増加が続いている1).経済活動や人の移動は活発化しており,今や日本国内で外国生まれの住民がいない自治体はほとんどなくなっている.地域の健康を守るためには,増え続ける外国生まれの住民の存在を前提としておくことが不可欠である.

 本稿では,外国生まれの人口の増加が顕著となった1990年ごろから現在に至る経緯と,今後の課題について述べる.

  • 文献概要を表示

訪日外国人旅行者の医療機関の受診状況

 近年,政府のインバウンド(inbound:訪日旅行)戦略を背景として,日本を訪問する外国人旅行者が急増している.図11)に,訪日外国人旅行者数の推移を示す.2013年に1,030万人程度であったものが,2017年には2,860万人に達するなど,直近5年間で約3倍近くも増加している1).図22)は,都道府県別・国籍別の外国人旅行者の延べ宿泊者数を示したものであるが,この図からも分かるとおり,最近は訪日外国人旅行者の多国籍化が進んでおり,また,都市部だけではなく地方に滞在する訪日外国人旅行者が増えている.

 こうした傾向を背景として,近年は,都市部や主要観光都市だけではなく,地方の医療機関においても訪日外国人旅行者の(緊急の)医療受診が増えている.この点に関する正確な統計データはないが,例えば,厚生労働省が2017年に全国の救急告示病院を対象として実施した「医療機関医おける外国人旅行者及び在留外国人受入れ体制等の実態調査」3)では,アンケートに回答した1,710医療機関のうち,外来では41.6%(712機関),入院では24.6%(421機関)の医療機関が訪日外国人旅行者患者の受け入れ実績があると回答しており,訪日外国人旅行者患者の受け入れが決して珍しいものではないことが分かる.2020年に東京オリンピックを控えていること,また,政府が外国人観光客の目標人数を2020年に4,000万人,2030年に6,000万人としていることを鑑みれば(図1),医療機関を受診する訪日外国人旅行者患者の数も今後,ますます増加することが予想される.

  • 文献概要を表示

はじめに

 近年,わが国を訪れる外国人は飛躍的に増加している.東日本大震災が起きた2011年は一時的に落ち込んだものの,それ以降は毎年24%から多い年で47%の伸び率を示しており,2018年には3,000万人を突破する勢いである1).観光地はもちろんのこと,街中でも外国人を見かけないことはないくらい,日常生活の一部となってきた.政府は東京オリンピックが予定されている2020年までに訪日客4,000万人を目標に掲げており,一部の国の観光ビザ免除や円安の進行などで後押ししている.

 一方,外国人旅行者に比べると絶対数は少ないものの,外国人労働者も年々増加しており,毎年,過去最高を更新している.製造業に限らず,例えばコンビニエンスストアなどの小売業,レストランや居酒屋などの飲食業,または建設業など,さまざまな業種で外国人労働者のサービスを受けることは珍しくなくなり,労働力としての存在感を高めている.彼・彼女らはわが国で雇用される以上,各種労働法のルールの下で就労することになるが,健康確保の基本となる産業保健に関して問題となる事例があるのも事実である.

 本稿では,わが国における外国人労働者の現状と,ヤマハ発動機株式会社(以下,当社)での取り組みと対応事例を通して,産業保健の実務上の課題を整理し,その対策について概説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 「日本再興戦略2016」1)(第2次安倍内閣による成長戦略.2016年)の中で海外人材の導入が議論されて,外国人労働者政策は大きな転換を迎えた.日本はかねてから人材不足が指摘されており,産業界は一斉にそれぞれの労働需給についてロビイングを活発化させ,海外人材の導入には大きな期待が寄せられた.

 ただし,こうした展開は同時に動揺をもたらし,一部ではヘイトスピーチが行われ,不正確な報道も散見された.例えば,NHKの「クローズアップ現代+」(2018年7月23日放映)は,インバウンド(inbound)の外国人による医療保険の不正受給の結果をセンセーショナルに報道したが,厚生労働省は「在留外国人不適正事案の実態把握を行ったところ,その蓋然性があると考えられる事例は,ほぼ確認されなかった」と報告しており2),報道の根拠となった調査とは矛盾している.外国人のレセプト数約1,500万件のうち,偽装滞在の可能性が残るのはわずか2件であった.公共性の高いメディアでさえも自ら書いたシナリオに従った報道を行っており,その動揺が読み取れる.

 日本の外国人政策は大きく変わりつつある.ビザなし渡航の拡大や,特区における家事労働者の受け入れはその一環である.2017年に技能実習法が制定され,介護が技能実習制度に加わった.また,同年に在留資格「介護」が創設された.これは,留学生が介護福祉士資格を取得した際に付与されるビザと理解してよい.さらに2018年には,後述するとおり,特定技能が導入される法案が明らかとなった.こうした改革を通じて,2025年までに30万人の外国人労働者が導入される予定となっている.

 上記のような一連の政策転換によって最も影響を受けた産業の一つが介護である.現在の高い有効求人倍率や,将来にわたる人材不足の予測から,介護分野への海外人材導入はホットなニュースとなった.しかし,これまで筆者が従来から論じてきたとおり3)〜6),海外人材の受け入れには費用分担や労働者のリスクという点においてさまざまな問題がある.本稿では紙幅の都合から,特に技能実習に焦点を当ててその問題点を論じる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 在住外国人の母子への支援において,保健医療領域が抱える課題は長年継続したままで抜本的な解決に至っていない.その多くは「言語の違いによるコミュニケーション」に起因するものであるが,特に異言語話者間のミスコミュニケーションが相互理解を阻み,外国人患者に医療サービスへの不満や不信感をもたらしている.

 医中誌(医学中央雑誌)Webで検索すると,外国人医療の中で「言語の違いによるコミュニケーション」に関する課題は,妊娠,出産,育児に関するものが多い.トラブルとなる事項として,妊娠期は妊婦健診への定期的な受診行動がない,内服薬が適切に内服されない,食事管理ができない,などがある.分娩においては,受診や来院のタイミングについて,例えば陣痛発来時や破水時,切迫症状があるときや胎児の異常を感じたときの連絡方法,さらに産後は,さまざまな価値観の違いから起こる授乳,新生児の世話の方法,入院生活のルール,などのトラブルがあげられる.母子の二つの命を同時に対象とすること,妊婦健診や出産に関わる費用が自費であること,日本人であっても訴訟になりやすい領域であることなどの理由から,外国人においても同じようにトラブルは起こりやすい.産科は他の診療科に比べて通訳依頼が多いという報告1)2)があることからもトラブルに発展しやすいことが推察できる.

 母子保健だけでなく他領域においても「言語の違いによるコミュニケーション」は,常在化した課題である,解決されないままトラブルを引き起こし,患者満足度の低下,医療事故,医療費未払い,といったさまざまな問題につながっていく.つまり,このようなトラブルに発展させず,適切な医療を提供できるリスクマネジメントとしての対策が必要である.

 近年,病院施設の外国人患者の受け入れ実績の調査は多く行われていて,調査した病院施設の約80%が外国人患者を受け入れた経験があり,それについての課題は「多言語対応」であると回答している3)〜5)

 また,インバウンド(inbound:訪日外国人観光客)が増えてきたことから,その受け入れに対する調査も行われている5)〜7).外国人医療における調査の動向は困難さを集積しているものが多いが,その状況把握は重要である.しかし,もはや課題を確認しているだけではなく,取り組みとしての準備を具体的に進めていかなければならない時期にきている.わが国の人口動態は毎年約30万人ずつ減少しており,少子高齢化が進んでいる.少なくとも,外国人定住者は社会の一員として歓迎すべき人々であるし,むしろ日本人だけでは社会構成が崩れてしまうという危機感を持つ必要があるのではないだろうか.外国人は日本人の補完的な存在ではなく,共に生きてく生活者であることを念頭に置いて,さらなるダイバーシティ社会を迎えることへの意識改革と定住への受け入れ整備が不可欠である.

 このような状況を受けた政府の動きを確認すると,2010年の政府が発表した「新成長戦略」8)の中に,21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクトがあり,その中で初めて「国際医療交流」が取り上げられた.その内容は,外国人患者受け入れの拡大についてであり,①医療滞在ビザの新設,②外国人医師や看護師の受け入れ,③「外国人患者受入れ医療機関認証制度」(Japan Medical Service Accreditation for International Patients:JMIP)の創設,④医療言語人材の育成,などが掲げられ,これ以降,さまざまな事業が展開されている.しかし,これらの政策の焦点は大きな体制づくりであり,それぞれの施設でどのようなに取り組めばよいのかについてまでは言及されていない.本稿では,その必要な取り組みを論点としたい.当然のこととして,施設によって取り組みの規模や優先順位が異なるため,全てを整えることは困難であるがそれぞれの施設においてどのような対策が検討可能なのかに注目し,組織的に必要な取り組みについて確認していただきたい.外国人受け入れ準備の参考にしていただければ幸いである.

  • 文献概要を表示

はじめに

 近年,東京を訪れるアジアを中心とした国々からの外国人は増加しており,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)では,国外からの訪問者のさらなる増加が見込まれる.このため,国外からさまざまな感染症が持ち込まれることが懸念され,また,東京2020大会開催時には,ある期間一定の場所に多くの人が集まることから,通常と異なる規模で感染が広がるリスクも想定される1).このようなリスクを踏まえ,東京2020大会に向けて感染症に関わる危機管理体制の強化を図ることが重要である2)

 現在,東京都では,感染症の発生を早期に探知し,迅速に対応するためのさまざまな取り組みを行っている3).本稿では,東京2020大会を約1年半後に控えた東京都の取り組みの現状について具体的に紹介する.また,同大会に向けた感染症対策の検討状況と課題,今後の展望について述べる.

  • 文献概要を表示

わが国における外国出生者の結核発生動向

 最新の結核統計(2017年分)によれば,わが国の結核患者数は16,789人で,結核罹患率は人口10万人当たり13.3となり,結核低まん延国(結核罹患率が人口10万人当たり10以下)の目前となっている1).外国出生者の結核患者数も増加の一途をたどっている.2000年には全結核患者に占める外国籍の者の割合は2.4%であったが,2017年には全結核患者に占める外国出生者が1,530人と,その割合が9.1%まで増加した(図1)2).特に,20〜24歳,25〜29歳の若年層では,それぞれ外国出生者の占める割合が69%,57%と半数を超えるまでに増加しており,今後も増加し続けることが予想される.これらの外国出生者の内訳を見ると,フィリピン(321人,21.0%),中国(258人,16.9%),ベトナム(257人,16.8%),ネパール(164人,10.7%),インドネシア(121人,7.9%),ミャンマー(80人,5.2%)の6カ国が全外国出生結核患者の約8割を占めている(図2)2).これら6カ国の患者報告率(notification rate)を表13)に示す.これらの国々の患者報告率は中国(55.7)を除き,いずれも人口10万人当たり100を超えており,わが国では1970年以前の高い状態といえる.

 外国出生結核患者の入国後の発病時期を表22)に示す.発病は入国後1年以内が45%と圧倒的に多いが,2〜4年が約2割いた.10年以上経過して発病した者も約2割いた.このことから,結核高まん延国出身者に対しては,入国前あるいは入国時の検診のみならず,入国後も定期的に結核検診を実施する必要性が示唆されている.今後,諸外国の例(後述する)に倣って,入国前ないし入国時に感染診断を行い,感染者に潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection:LTBI)治療を行う必要性も出てくるかもしれない.

  • 文献概要を表示

公衆衛生との縁

 研修医1年目.当直をしていると,救急外来から呼び出された.患者さんは医局中に知れ渡ったリピーターで,「眠れない」を主訴にする,なかなか帰宅しようとしない統合失調症の方であった.自分が対応するのは初めてで,不安な気持ちで当直室を出た.

 その患者さんとしばらく話をしていて,学生時代の保健所実習で家庭訪問をさせていただいた方であると気付いた.実習の時,学生の私を快く招き入れてくれた優しい方であった.しかし,部屋は真っ暗で散らかっており,臥床がちに過ごしているのが分かった.保健師は生活リズムについて助言をし,それに素直に応じていた.その方の親しみやすさと生活状況のギャップが非常に印象的であり,これが,人間の生活状況に密着した支援を行う公衆衛生という分野に初めて興味を持った瞬間であった.

連載 いま,世界では!? 公衆衛生の新しい流れ

  • 文献概要を表示

はじめに

 国際移住機関(International Organization for Migration:IOM)は,世界的な人の移動に関する課題を専門に扱う国連機関である.今日の「移民」1)は,国境を越える者と国内移住する者を合わせて,有史以来,最も多い約10億人である.すなわち,世界の7人に1人が移民と推計されている2).その背景には,災害,紛争,経済的不均衡など,さまざまな要因がある.IOMは「正規のルートを通して,人としての権利と尊厳を保障する形で行われる人の移動は,移民と社会の双方に利益をもたらす」という基本理念に基づき,直接支援や技術協力などを通じて,移住にまつわる課題の解決に努めている.保健医療分野における人道・開発支援もIOMの役割の一つである.

 人の移動は健康の社会的決定要因の一つであり3),国境を越えた移動の拡大を背景にして,感染症対策についても国際的な取り組みが強化されている.公衆保健上の安全を確保することを目的として世界保健総会で1969年に採択された「国際保健規則」(International Health Regulations:IHR)についても,人口移動の増加に伴う感染症の拡大に対する懸念などから,各加盟国がアウトブレイク対応に関して最低限備えておくべき能力(コア・キャパシティ,core capacity)を規定した改訂版が2005年に採択されている4)

 IOMは,人の移動や国境管理に関する専門性を生かして,コア・キャパシティのうち,国境地帯などにおけるサーベイランス強化や入域地点(point of entry)の能力強化などを支援している.

 入域地点とは,旅行者,輸送機関,物品などの国境を越えた入出国のための通過点(空港,港,陸上越境地点),および,それらに対して入出国手続き業務を提供する機関ならびに区域をいう5).IHRでは,各国は自国内の指定した入域地域において衛生措置を監督し,公衆衛生上のリスクを阻止することが求められている6)

 IOMが活動する国々(特に本稿で例示するアフリカ諸国)では,陸続きの国境線の至る所が長大な陸上越境地点となり得るため,入出国管理施設が必ずしも整備されていない越境地点もある.IOMはそうした面の能力強化にも取り組んでいる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 前回(83巻1号)を執筆された藤原久子先生とは,私が以前に京都府の総合母子医療周産期センターで勤務していた時,同病院の医療ソーシャルワーカー(medical social worker:MSW)さんとして出会った.特定妊婦(出産後の子どもの養育について,出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦)の方の支援においては地域との連携が欠かせない.これには,症例ごとにきめ細やかな対応をしていただける敏腕MSWの存在がとても大きい.藤原先生の地域母子保健水準の向上への取り組みからは,大変多くのことを学ばせていただいた.

連載 睡眠と健康を考える・4

交替勤務者の睡眠 高橋 正也
  • 文献概要を表示

はじめに

 私たちは昼間に活動し(働き),夜間に休息(睡眠)をとるように仕組まれている.夜間に睡眠をとるのが最適であり,その効果は最大になる.交替勤務に就くと,夜間の睡眠が全体,または一部奪われる.夜間の睡眠が妨げられる交替勤務者は不眠や仕事中の眠気に悩まされる1).睡眠の不調が長く続くと,心身の健康,仕事の安全,生産性が低下する.

 本稿では交替勤務に伴う睡眠問題と,その有効な対策について述べる.

連載 Coda de Musica 心に響く音楽療法 Ancora・1【新連載】

  • 文献概要を表示

新たな音楽療法の世界へ

 2018年の連載「Coda de Musica心に響く音楽療法」(82巻1〜12号)では,12回にわたって,終末期を生きるホスピス・緩和ケア患者さんとの音楽療法を通じて見えた,心の葛藤,家族との愛,過去との決着,そして人生への感謝を述べた.死に直面し,困難の中にいる患者さん一人一人に音楽は寄り添い,勇気を与え,慰め,最後の一息まで支えた.

 「Ancora」(イタリア語の「アンコール」)では,さらに音楽療法と私たちとの関わりをご理解いただくため,これから3回にわたって,終末期以外の領域での音楽療法を紹介する.今回は,障がい児のための音楽療法の世界をお伝えしたい.

連載 ヘルスコミュニケーションと健康な社会づくりを考える Dr.エビーナの激レア欧州体験より・6

  • 文献概要を表示

 前回は,私の母が2017年のスコットランド旅行中に,大腿骨を骨折してエディンバラ王立病院に入院した際の,人工股関節全置換術の手術内容の説明や手術時のヘルスコミュニケーション,スコットランドの股関節骨折患者のための治療基準などについて述べました.

 今回は,手術後とリハビリテーション(以下,リハビリ)の場におけるヘルスコミュニケーションについてリポートします.

予防と臨床のはざまで

  • 文献概要を表示

 健診スタッフのための勉強会である文天ゼミ(同友会主催)が2018年10月30日に「文天シンポジウム」(第91回文天ゼミ)を開催しました.シンポジウムとして4回目となる今回は,カウンターチェアに浅く腰掛けて語り合うサロンミーティング形式で行いました.オープニングでは「テラスハウス」風ムービーを流しました.その心は「用意したのは,素敵な椅子と素敵なスピーカーだけ.台本は一切ございません」.

 今回のテーマは「行動変容〜人を動かす極意」です.保健指導はもちろん,健康経営における経営層の説得の仕方,キーパーソンの巻き込み方,人を研究会に誘う方法など,あらゆる場面の行動変容について取り上げるべく,現場で活躍する医師・保健師・管理栄養士と,行動経済学やマスメディアで活躍されているプロに登壇をいただきました.お誘いしたスピーカーは,私が達人と一目を置いている方々です.最初に私から本日の趣旨を説明し,行動変容理論の変遷,その難しさについてお話をしました.

  • 文献概要を表示

 1952年に公開された「生きる」(黒澤明監督/東宝)では,志村喬が演じる主人公の胃がんが分かった時,主治医はがんを告知せず,胃潰瘍という診断名を告げていました.すでに進行しており,当時の医療技術では治療の時期を失していたからでしょう.1975年の「化石」(小林正樹監督/東宝)では,佐分利信が演じる主人公が旅行中のフランスで,進行した膵臓がんで治療不可能という診断を知り,死を覚悟してヨーロッパを回ります.両作品とも名作の誉れ高い映画ですが,製作年代と,がんの告知との関連を考えるのも面白いかもしれません.

 日本人の二人に一人が「がん」になるといわれる現代です.がんは告知される病気になりました.しかし,「がん」というと,まだまだ恐ろしい病気というイメージが先行している気がします.今月ご紹介する「がんになる前に知っておくこと」は,「がん」をただ恐れるのではなく,正しく知ることに資するために製作されたドキュメンタリー映画です.

--------------------

目次

書評

次号予告

  • 文献概要を表示

 東北の片田舎で生活する私にとって,訪日・在留外国人の急増を実感できる機会といえば,数年前までは,首都圏などに出張した際に限定されていました.しかし最近は,地方でも外国人観光客の増加が顕著であり,保健所が留学生や技能実習生などの在留外国人の結核や精神科救急事例に対応する機会が増えています.

 訪日・在留外国人の増加に伴う公衆衛生面の課題は何か? と問われたとき,言語の壁に関連した課題を真っ先に指摘する人が多いと思います.私もそうでした.しかし,本特集を読み進むうちに,外国人が日本に在留するためのチャンネルが増え,かつ,複雑化する中で,表向きの在留目的からは想像できない問題が全国各地で起きていることを知りました.外国人労働者の活躍が,介護を含めたさまざまな業種において深刻な人手不足を解消するための鍵になるという期待もありますが,在留資格や出身国の違いによるいろいろな課題について,闇に紛れた問題を含めて広く理解していないと落とし穴にはまる恐れがあると感じました.

基本情報

03685187.83.2.jpg
公衆衛生
83巻2号 (2019年2月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

文献閲覧数ランキング(
10月7日~10月13日
)