特集 インバウンドと在留外国人—その増加と諸課題
訪日外国人旅行者への医療対応の現状と今後の展望
岡村 世里奈
1,2
1国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野
2国際医療福祉大学大学院医療通訳・国際医療マネジメント分野
pp.102-106
発行日 2019年2月15日
Published Date 2019/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209072
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訪日外国人旅行者の医療機関の受診状況
近年,政府のインバウンド(inbound:訪日旅行)戦略を背景として,日本を訪問する外国人旅行者が急増している.図11)に,訪日外国人旅行者数の推移を示す.2013年に1,030万人程度であったものが,2017年には2,860万人に達するなど,直近5年間で約3倍近くも増加している1).図22)は,都道府県別・国籍別の外国人旅行者の延べ宿泊者数を示したものであるが,この図からも分かるとおり,最近は訪日外国人旅行者の多国籍化が進んでおり,また,都市部だけではなく地方に滞在する訪日外国人旅行者が増えている.
こうした傾向を背景として,近年は,都市部や主要観光都市だけではなく,地方の医療機関においても訪日外国人旅行者の(緊急の)医療受診が増えている.この点に関する正確な統計データはないが,例えば,厚生労働省が2017年に全国の救急告示病院を対象として実施した「医療機関医おける外国人旅行者及び在留外国人受入れ体制等の実態調査」3)では,アンケートに回答した1,710医療機関のうち,外来では41.6%(712機関),入院では24.6%(421機関)の医療機関が訪日外国人旅行者患者の受け入れ実績があると回答しており,訪日外国人旅行者患者の受け入れが決して珍しいものではないことが分かる.2020年に東京オリンピックを控えていること,また,政府が外国人観光客の目標人数を2020年に4,000万人,2030年に6,000万人としていることを鑑みれば(図1),医療機関を受診する訪日外国人旅行者患者の数も今後,ますます増加することが予想される.
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