公衆衛生 76巻10号 (2012年10月)

特集 糖尿病の今

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 糖尿病,とりわけ2型糖尿病が全世界で増大しており,特にアジア地域における爆発的な増加が危惧されています.わが国においてもここ10年で糖尿病が強く疑われる人や,糖尿病の可能性を否定できない予備軍と言われる人が急増しており,40~60歳代の3人に1人は,糖尿病の疑いがあるとも言われています.

 また,糖尿病による腎臓障害で人工透析を開始する人は,年間15,000人,糖尿病が原因の視覚障害の発生は年間3,000人と言われ,糖尿病の合併症によるQOL(quality of life)の低下や,動脈硬化性疾患による健康寿命の短縮は大きな問題となっています.さらに,最近では糖尿病とがんの発症との関連についても注目されています.

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はじめに

 世界では,2008年の25歳以上の成人における糖尿病[空腹時血糖値が7.0mmol/l(126mg/dl)以上,糖尿病と診断された者あるいは糖尿病の治療中の者]の有病率が男性9.8%,女性9.2%と推計されており,1980年の推計値の男性8.3%,女性7.5%から男女とも増加している1).糖尿病による死亡の80%以上は,低所得国あるいは中所得国で起きており,2005年から2030年の間で糖尿病死亡者数は倍増すると予測されている2)

 糖尿病は心疾患や脳血管疾患の危険因子であるとともに,人口の高齢化にともない患者数あるいは医療費の増加を招く.現在わが国の糖尿病の患者数は237万人(平成20年患者調査),糖尿病の医療費は1兆1,854億円(平成21年度国民医療費)であり,その対策は公衆衛生上の重要な課題である.

 糖尿病の実態を見る疫学的な指標としては死亡率や有病率があるが,死亡率(平成21年人口動態統計,人口10万対)は総数で11.1,男性12.1,女性10.2であり,全死亡に占める割合は1.2%程度である.このことから,糖尿病に関する年次推移を見る際に,死亡率はあまり適切な指標ではない.

 そこで本稿では,糖尿病実態調査ならびに国民健康・栄養調査から得られた有病率を中心に述べ,これに基づいた国の改善目標について紹介することとする.

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はじめに

 糖尿病の治療目標は,糖尿病性細小血管合併症および動脈硬化性疾患の発症,進展阻止,健康な人と変わらない日常生活の質の維持と寿命の確保である.しかし,1990年以降では,糖尿病の有無にかかわらず悪性新生物が死因の第1位であり,糖尿病においても癌発症への留意が極めて重要である.一方,肥満においても発癌の危険性が上昇すると言われているが,糖尿病の増加と並行して,肥満者の割合は男性で増加傾向にある.

 本稿では,糖尿病や肥満における死亡リスク,癌との関連性について概説する.

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はじめに

 糖尿病患者数は世界的に増え続けており,その合併症は国を問わず,人々の寿命と生活の質を脅かしている.したがって糖尿病とその合併症の高リスク者を,効率的に見出し効果的な介入を行うことは,公衆衛生あるいは医療行政的に多大な意義を有する.たとえばどのような修飾可能因子が,どの程度糖尿病発症リスクを高めるかは,糖尿病対策の基本となる.また,すでに糖尿病を有する患者において,どのような因子が合併症の発症・進展に影響するのかを解明することも,診療対策上,極めて重要である.

 2型糖尿病はインスリン作用低下による慢性高血糖を主徴とし,細小血管合併症(腎症,網膜症,神経障害など)と大血管合併症(冠動脈疾患や脳卒中などの動脈硬化疾患)を中心とした様々な合併症を惹起する疾患である.高血圧や脂質異常症,肥満など多くの関連疾患を伴いやすく,発症・進展には,多因子遺伝と共に生活文化・習慣も関与する.そのため,合併症の発症率やリスクファクターには人種差や民族差が見られる.

 これまで日本人を含む東アジア人糖尿病患者における合併症の発症率やリスクファクターのデータは,欧米人患者と比較して乏しかったため,わが国の糖尿病の診療ガイドライン作成や日常診療は,主に欧米の大規模臨床研究のエビデンスに基づいて進められてきた.しかし近年,日本人を含む東アジア人糖尿病患者の大規模臨床データも増えつつある.後述するJDCS(Japan Diabetes Complications Study)も,この目的のために立ち上げられた最初の大規模臨床介入研究の一つである.

 本稿では,糖尿病そのものと糖尿病合併症とに分けて,それぞれのリスクファクターについて自験例を中心に紹介したい.

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はじめに

 島根県の地域保健対策の特徴は,各保健所単位,市町村単位に保健と医療が連携した取り組みを進めていることにある.糖尿病対策についても同様である.

 平成17(2005)年「島根県医師会糖尿病対策委員会」が設置され,県全体だけでなく各圏域(保健所単位)の取り組みを進めることとなった.これを機会に,糖尿病対策に関わる地域の関係機関の連携がさらに進んだ.

 今回,関係機関の連携した取り組みとして,島根県全体の取り組みと,「松江地域糖尿病対策会議」および「安来能義地域糖尿病管理協議会」の2つの事例を紹介したい.

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はじめに

 肝臓は,糖代謝の中心的役割を担っており,その障害は糖代謝異常の発病に密接に関連している.また,肝発癌は,慢性肝障害の終末像であり,糖代謝異常が合併する硬変期において高頻度に見られる.肝硬変において二次的に発症する糖尿病は,肝性糖尿病と言われている.また,肝硬変・肝癌の主な原因であるC型肝炎や内臓脂肪蓄積による中心性肥満に伴う脂肪性肝炎の患者には,しばしばインスリン抵抗性が見られ,糖尿病を合併する割合が高いことが知られている.最近の疫学研究によれば,糖尿病は,肝発癌の重要なリスク要因であることが示されている.したがって,患者の耐糖能異常と肝発癌へと至る慢性肝臓病の進行には関連性が示唆される.本稿では,肝疾患と糖尿病の最近の知見について述べる.

歯周病と糖尿病 西村 英紀
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はじめに

 歯周病は糖尿病の合併症としてとらえられてきたが,1990年代後半から米国を中心として歯周病自体が逆に糖尿病の耐糖能に影響を及ぼす可能性が指摘されはじめ,その後現在に至るまで,多くの疫学研究が行われその関連性が追試されると共に,分子基盤の解明が進んでいる.本稿では,歯周病と糖尿病との関連性について,公衆衛生的な側面から概説する.

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 妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:以下GDM)の管理目標としては,①今回の妊娠中の母児の周産期合併症の予防,②母体の将来の糖尿病,メタボリックシンドローム予防,③児の将来の糖尿病,メタボリックシンドローム予防の3つがある.このためには,妊娠前および妊娠中の管理,産後のフォローアップと,一貫した管理が必要である1~3)

 まず,妊婦には糖尿病やGDMがあった場合は,表1に示すような多くの合併症が起こることを理解しておいてもらうことが必要である.

糖尿病患者の療養指導 市來 祐里恵
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はじめに

 糖尿病治療の目標は,「糖尿病細小血管合併症(網膜症,腎症,神経障害)および動脈硬化性疾患(冠動脈疾患,脳血管障害,末梢動脈性疾患)の発症・進展を阻止し,健康な人と変わらない日常生活の質(QOL:quality of life)を維持すること,そして,健康な人と変わらない寿命を確保すること」1)である.

 糖尿病は初めて診断された際には症状がないことが多く,放置することで様々な合併症をひき起こす疾患である.長い療養生活においては,無症状な初期から,合併症の発症・進展などによりQOLを著しく損なったり,生命にかかわるような重篤な症状を呈する時期まで,様々な局面を迎える.したがって,糖尿病患者への療養指導では,合併症の発症・進展を可能な限り防止できるよう,そして,その人らしく健やかに生活できるように支援していくことが必要である.

 本稿では,合併症発症・進展予防のための療養指導に焦点を置き,そのポイントについて述べる.

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 糖尿病は,インスリン抵抗性に基づく高血圧,脂質異常症など動脈硬化のリスクファクターを有することが多く,これら代謝異常は重複して動脈硬化を促進する.DECODE study1)やFunagata study2)では,空腹時血糖値よりも食後血糖値のほうが心血管死や総死亡率に関係することが報告され,STOP-NIDDM3)では食後血糖値を改善することにより,心血管イベントの発症抑制ができたと発表された.食後高血糖は重要な動脈硬化促進因子であり,血管内皮障害や炎症を引き起こす.2型糖尿病患者だけでなく,軽症糖尿病や糖尿病予備軍でも食後血糖を厳格にコントロールすることが重要である.HbA1cや空腹時血糖値だけでなく,随時血糖値やブドウ糖負荷試験により食後高血糖を調べることが,動脈硬化進展抑制に重要である.さらに,血糖の日内変動幅が大きいと,動脈硬化を促進させることが明らかとなってきた4)

 食後の高血糖を抑制するには,αグルコシダーゼ阻害薬などの薬物療法が効果をあげている.しかし,私たちはまず食事療法によって食後血糖上昇の抑制および長期間の血糖コントロールを実現することができないか検証した.

視点

再び行政医師に戻って 福永 一郎
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 私は2009年に縁あって高知県に奉職し,須崎福祉保健所の保健監(保健所長)に赴任した.香川県時代にはいわゆる下積みで,保健所長経験がなかった私にとって初めての重責であった.ゆっくりと“社会復帰”する間もなく赴任初日から新型インフルエンザの応対に追われ,いきなりフルパワー稼働であったことを覚えている.2012年4月に本庁に異動し,現在健康対策課長を務めている.

 香川県を退職したのが1998年であるから,11年ぶりの復帰であった.香川県退職後は,大学の衛生・公衆衛生学教室勤務や,民間公衆衛生医活動を通じて,主に市町村の現場への支援を行ってきた.その多くは母子保健に関わる計画や,健康増進計画など,保健福祉領域の計画策定,推進,評価の支援である.また,発達障害や,精神障害に関する活動も行ってきた.

連載 保健活動のtry! 学会で発表しよう 論文を執筆しよう・19

論文投稿の前に 中村 好一
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 今回は一応の論文の執筆が終わったところから,雑誌への投稿までに行うことを述べる.なお,一部の項目は論文執筆と同時に進めても構わない.

連載 災害を支える公衆衛生ネットワーク~東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ・7

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長期派遣の必然性

 1.被災地の長期派遣に対するニーズ

 佐々木が被災5日目に現地に入った時点で,マンパワーを失った陸前高田市がこれから直面する課題は既に明白であった(表1)1).そのため,地元保健所も含め,他の自治体から,長期(年単位)かつ現地のニーズに合わせて伴走しながら統括・調整の役割を担える保健師の派遣を求めざるを得ないと考えていた(表2)(ただし,当時の現地には表2のような形に思いをまとめる余裕はなかったため,佐々木が代弁する形で作成し,名古屋市側に提示した).

連載 講座/健康で持続的な働き甲斐のある労働へ─新しい仕組みをつくろう・7

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 雇用の非正規化や賃金低下など,労働の条件の劣化が憂慮される中で,近年の日本は「生きにくい」国になっている.しかも,所得格差の緩和において,税・社会保障制度が機能不全というより逆機能している.

 本稿はそうした事情を検討し,税・社会保障の一体的改革により,せめて逆機能を解消する必要があると主張する.

連載 「笑門来健」笑う門には健康来る!~笑いを生かした健康づくり・7

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 ストレス社会と言われる現代では,多くの人がストレスを抱えていると考えられています.実際,平成22(2010)年国民生活基礎調査によれば,わが国の12歳以上男女において,日常生活での悩みやストレスの有無別構成割合を見ると,「ある」46.5%,「ない」42.6%となっており,有効回答者の半数以上が何らかの悩みやストレスを感じていることがわかります.自覚的ストレスはうつ症状などの心理的健康度に関連するだけでなく,循環器疾患を始めとする多くの身体的疾患に関連することから,適切な対処が必要とされています.それでは,笑うことでストレスは解消できるのでしょうか?

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 海外青年協力隊の隊員として中米のグアテマラ共和国への派遣,それが私にとって初めてのフィールド経験となった.その後,東京大学大学院に入学し,在学中は国立国際医療センターの研究協力者として,タイのミャンマー人移民社会と関わることになった.

連載 リレー連載・列島ランナー・43

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はじめに

 6月のある日,携帯電話が鳴り,10数年ぶりに聞く懐かしい声.「公衆衛生の列島ランナーのバトンを受けてくれない?」と言われ,私は長野県佐久穂町の上村さんからバトンを受け取りました.電話の主は,上村さんの同僚の保健師.20年程前に長野県川上村で一緒に働いた仲間でした.電話から聞こえる声はとても懐かしく,嬉しさのあまり,執筆の内容等を検討もせずに了解の返事をしてしまったのですが,後から執筆量が分かり,少々弱腰になりました.しかし,せっかく彼女が私を思い出してくれて声をかけてくれ,今の業務のことや,保健師としての想いをまとめてみるには良い機会と思い,執筆することにしました.

 現在,私は横浜市の保健師として働いていますが,保健師としてのスタートは,長野県川上村でした.新卒でしかも1人配置.とても心細く,右も左も分からない中で保健師の活動を始めました.そんな自分の不安を察してか,職場の上司,同僚の配慮はとても大きく,保健所の担当保健師には事業を全面的にサポートしていただき,保健所管内の市町村保健師の仲間たちにも支えられ,何とか事業をこなした新卒1年目でした.そして2年目に保健師が1名増員されました.その保健師が,私に「列島ランナー」の電話をくれた彼女です.

 2名配置になり,独りでは取り組むことが困難だった様々なことが実現可能になり,多面的に保健師活動を展開することができました.向こう見ずな挑戦をしたこともありましたが,職場の上司,同僚,関係機関,地域住民など,多くの関係者に支えられて活動し,保健師の活動が「つなぐ仕事」であることを学びました.この長野での経験が,私の保健師活動の原点となっています.

連載 衛生行政キーワード・84

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はじめに

 東京電力福島第一原子力発電所の事故により,周辺環境に放射性物質が放出されたことを受け,厚生労働省は2011年3月17日に原子力災害対策本部での協議を経て,速やかに食品中の放射性物質についての暫定規制値を設定し,各自治体に通知した.暫定規制値は,内閣府原子力安全委員会が,原子力発電所の事故等を想定してあらかじめ定めていた「飲食物摂取制限に関する指標」を緊急的な措置として食品衛生法に位置付けたものであった.

 暫定規制値の運用開始により,地方自治体における検査の結果,暫定規制値を超過した食品については,回収・廃棄を行い,また必要に応じて,原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)より,当該食品の出荷制限や摂取制限を行うスキームが確立された.

 しかしながら,この暫定規制値はあくまで事故後の緊急的な対応として定められたものであったため,内閣府食品安全委員会による食品健康影響評価や,今回の事故で実際に放出された核種(の種類や量)なども考慮した,事故後の長期的な状況に対応する新たな基準値の策定が求められていた.

 本稿では,こうした経緯に基づき策定され,今年4月1日に施行された,食品中の放射性物質の新たな基準値の考え方について概説したい.

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 背景:欧米諸国と比べて低いわが国のがん検診の受診率を向上させるために,平成21(2009)年度から国の補正予算により女性特有のがん検診推進事業として,特定の対象年齢(子宮頸がんでは20,25,30,35,40歳)の女性に対し,子宮頸がん検診および乳がんマンモグラフィ検診の無料クーポン券が配布された.大阪府北部に位置する池田市は人口約10万人の中規模市である.池田市における子宮頸がん検診の受診率は平成20(2008)年度で約10%と,大阪府平均の約20%と比べても大幅に低かった.また,平成21年度の無料クーポン券配布後,平成21年10月末時点においても,受診率はさほど向上していなかった.そこで,平成21年10月末時点での無料クーポン対象のうち未受診者に対し,受診再勧奨を実施した.また,翌平成22(2010)年度も同様に実施した.

 方法:無料クーポン対象者のうち,平成21年度は30歳と40歳で子宮頸がん検診未受診の1,375名,平成22年度は25歳と35歳で未受診者の1,201名に受診再勧奨のリーフレットを郵送した.無料クーポン配布(call)と受診再勧奨(recall)の効果を推定するために,各年齢グループにおける平成20~22年度の受診率の変化をモニタリングした.20歳はもともと受診率が低く,再勧奨の効率が悪いため,対象外とした.

 結果:クーポン対象者の合計の受診率は平成20年度(無料クーポン券配布の前年度)では,11.1%であったが,平成21年度には32.7%,平成22年度では34.3%に増加した.無料クーポンおよび再勧奨を行った年齢層(平成21年度は30,40歳,平成22年度では25,35歳)では,平成20年度の受診率12.5%から平成21年度は40.4%,平成22年度は41.0%と大きく向上した.無料クーポンのみの年齢層(平成21年度は25,35歳,平成22年度では30,40歳)では,受診率は順に11.8%,32.2%,33.6%と向上した.そこで,無料クーポン群では約20%,無料クーポン+再勧奨群では約28%の向上が観測されたため,無料クーポンによる効果を20%,受診再勧奨による上乗せ効果を8%と推定した.

 結論:平成21~22年度の女性特有のがん検診推進事業を活用した大阪府池田市における一部の年齢に対してのコール・リコールの試みは,効果的であった.住民対象のがん検診受診率を向上させるために,効果的かつ持続可能性のある組織型検診のシステムを構築する必要がある.また,対象年齢や頻度を明確にした上での検診の無料化や,コール・リコール・システムは不可欠である.

列島情報

病院医師数 日置 敦巳
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 岐阜県では,病院従事医師の不足状態が続いている.医師から保健所への届出票の提出に基づく医師・歯科医師・薬剤師調査(2010年12月31日現在,以下「三師調査」)によると,「主に従事する施設」が病院であると回答した県内従業医師数(人口10万対)は112.3人で,全国で少ない方から5番目であった(全国141.3人,都道府県により85.4~200.4人).人口10万人当たり病院従事医師数の県と全国との差の推移を見ると,新医師臨床研修が始まった2004年以降,差が大きくなっており,主として大学附属病院勤務医の増加不足に起因している.一方,県内の診療所従事医師数(人口10万対)は徐々に増加し,2010年には76.8人と全国レベル(77.7人)に近づいた.この結果,医療施設(病院および診療所)従事医師のうち病院従事医師の割合は,全国の64.5%に比べ,59.4%と低くなっている(都道府県により58.5~73.1%).

 病院従事医師数については,病院からの従事者票提出に基づく病院報告(2010年10月1日現在)によっても,常勤医師数および非常勤医師の常勤換算数として集計されている.調査時期に約3か月のずれがあるが,病院報告による人口10万人当たりの常勤医師数(県102.3人,全国122.7人)は,前述の三師調査(非常勤医師を含む)に比べ,県で9.9人,全国で18.6人少なくなっており,この差は主として非常勤医師数を反映しているものと考えられる.研修医(初期および後期)の身分(常勤・非常勤)は病院によって異なるが,2009年および2010年採用の初期研修医数(人口10万対)は県9.4人,全国11.8人であり,全国では初期研修医以外にも多くの非常勤医師がいることになる.県内でも非常勤医師が多く集まる病院が増えることが望まれる.

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 徳島市から勝浦川に沿って山間部に分け入る険しい道には,3つの興味深い地名が付けられています.最初の地点は「馬返し」.ここから先は険しすぎて馬では入れず,ここで馬を返して進むという意味です.次に現れるのは「犬返し」.更に道は険しくなり,犬も通れないような道という意味です.3番目の地点は「猿返し」.もう猿でも先には進めないほど道が険しくなる場所です.これら「馬返し」「犬返し」「猿返し」の更に先に,今回ご紹介する「人生,いろどり」の舞台となった上勝町があります.

 上勝町は徳島県の西部,四国山地の山深いところに位置しています.人口は少なく,高齢化率が高い,典型的な過疎集落です.台風の影響で主要農産物であったミカンの木が全滅し,地元のJA(農協)はそれに変わる農産物の生産,販路拡大を企画しましたが,なかなか思うようにはなりません.そんな苦境の中で,JA職員の江田は,高地である上勝の特性を生かして,山に自生する「葉っぱ」などを収穫し,料理に添える「つまもの」として販売することを思いつきます.

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 公衆衛生の専門職は,国民の健康を守るために,社会の変革に合わせながら,その活動を推進し,歴史を刻んできました.そして,2012年7月に,公衆衛生看護学,保健師活動のさらなる発展と,その教育と研究の推進・開発をめざし,「日本公衆衛生看護学会」を設立しました.行政,学校,産業など公衆衛生の様々な分野で働く看護職が,社会の安寧と国民の健康増進に,より一層寄与することに役立つ学会にしたいと考えています.

 第1回日本公衆衛生看護学会学術集会を下記の通り開催しますので,是非ご参加ください.

 

テーマ:新たな公衆衛生看護の創造~すべての人々の健康と生活を支える保健師活動を語り合おう~

日時:2013年1月14日(月・祝日)

会場:首都大学東京 荒川キャンパス(東京都荒川区東尾久7-2-10)

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開催期間:2012年12月7日~12月8日

場所:高知県民文化ホール,高知会館他(7日),高知県立大学池キャンパス(8日)

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日時:2012年12月8日(土)

場所:女性就業支援センター 〠108-0014 東京都港区芝5-35-3[JR田町駅三田口(西口)徒歩3分,地下鉄(都営浅草線・都営三田線)A1出口徒歩1分]

沈思黙考

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 若いときは元気印の妻も寄る年波に勝てず体調を崩しがちで,昨年は老妻に同伴して大学病院を受診した.待合室に順番を待っているときに診療ブースの中から怒声が響き,どうやら患者が医師の診療方針に不満のようであった.そのときは偶然の出来事かと思ったが,数か月後再び同病院を訪れた際にまた,別人らしい人の怒鳴り声が聞こえた.昔から医師に対する患者の不満はあっただろうが,ことの良し悪しは別として,大学病院の診療室でのあからさまの言い争いはあまり記憶がない.

 最近研究の関係で,別の大学病院の外来診療を数回見学させていただく機会を得た.複数の教育スタッフとともに数名の研修生が診療にあたっているが,印象的だったのは診療側と患者の間ばかりでなく,教育スタッフと研修生の間,あるいは教育スタッフ同士のコミュニケーションはいたって静かで,そばにいてもよく聞き取れず,思わず身を乗り出すほどであった.医療側は患者への診療態度ばかりでなく,スタッフの間でも気を遣っていることがよく伝わり,大学病院と言えどもかつての権威主義的な態度はすっかり影をひそめ,きわめて民主的な運営がなされているように見える.一方,女性の研修生の一人は見るから明るい性格で,なんらわる気もなさそうであるが,丸いすに胡坐をかいて座り,指導教官の説明に聞き入っている.立って説明する指導教官はそれでも穏やかに懇切丁寧に教えている.こうした光景は私にとってやはり驚きであり,もはや浦島太郎になってしまった心地がした.

予防と臨床のはざまで

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 8月31日に順天堂大学にて,日本産業衛生学会・関東産業衛生技術部会主催,北里大学・労働衛生を語ろう会・さんぽ会(http://sanpokai.umin.jp/)等が共催し,産保合同シンポジウム「ストレスを考える!」が開催されました.2つのシンポジウムと,1つの基調講演を含み,私が事務局を務めるさんぽ会は,シンポジウム1「メンタル困難事例から1次予防の可能性を探る~もぐらたたきで終始しない,求められる企業のメンタル対策とは?」を担当しました.

 まず私から,今や産業医業務の7割がメンタルケースの対応で,ケースの困難化を背景に多くの企業でスタッフが復職やリハビリなどの3次予防に追われている現状をお話ししました.一方で,国は全労働者へのメンタルチェックの義務化を推進しようとしています.自殺減少という総論は重要であるものの,2次予防を主体としたシステムでは,質問票の限界も含め予防施策として様々な課題がありそうです.モグラたたきに終始しないルールづくり,人づくり,組織づくりを含む職域のメンタルヘルス対策の推進のために,今,企業で求められていることは何か? 今までのさんぽ会での議論を踏まえ,専門職の視点だけでなく,経営や人材育成の視点でメンタルヘルスプロモーションを考えるべきではと,話題提供しました.

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投稿規定

あとがき・次号予告 品川 靖子
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 2007年の国民健康・栄養調査によれば,糖尿病が疑われる人の約4割は「ほとんど治療を受けたことがなかった」ということです.20世紀の糖尿病治療と言えば,空腹時血糖を目安として,スルフォニル尿素薬(SU薬)などの経口血糖降下薬と,インスリン製剤の1回注射や2回注射が中心でした.空腹時血糖がそれほど高くなければ治療の対象にはならないと考えていた人も多かったのではないでしょうか.

 ところが,1990年代後半に糖尿病患者における心血管病の発症リスクや死亡について,空腹時血糖よりも食後の高血糖が強く関与しているという研究報告が出され,早期の治療介入や厳格な血糖コントロールが求められるようになってきました.最近では,空腹時血糖がそれほど高くなくても,食後高血糖に対して早期にαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)などを用いた治療を開始するようです.

基本情報

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公衆衛生
76巻10号 (2012年10月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

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