連載 衛生行政キーワード・84
食品中の放射性物質の新たな基準値の概要
鈴木 貴士
1
1厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
pp.833-835
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102562
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はじめに
東京電力福島第一原子力発電所の事故により,周辺環境に放射性物質が放出されたことを受け,厚生労働省は2011年3月17日に原子力災害対策本部での協議を経て,速やかに食品中の放射性物質についての暫定規制値を設定し,各自治体に通知した.暫定規制値は,内閣府原子力安全委員会が,原子力発電所の事故等を想定してあらかじめ定めていた「飲食物摂取制限に関する指標」を緊急的な措置として食品衛生法に位置付けたものであった.
暫定規制値の運用開始により,地方自治体における検査の結果,暫定規制値を超過した食品については,回収・廃棄を行い,また必要に応じて,原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)より,当該食品の出荷制限や摂取制限を行うスキームが確立された.
しかしながら,この暫定規制値はあくまで事故後の緊急的な対応として定められたものであったため,内閣府食品安全委員会による食品健康影響評価や,今回の事故で実際に放出された核種(の種類や量)なども考慮した,事故後の長期的な状況に対応する新たな基準値の策定が求められていた.
本稿では,こうした経緯に基づき策定され,今年4月1日に施行された,食品中の放射性物質の新たな基準値の考え方について概説したい.
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