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はじめに
糖尿病患者数は世界的に増え続けており,その合併症は国を問わず,人々の寿命と生活の質を脅かしている.したがって糖尿病とその合併症の高リスク者を,効率的に見出し効果的な介入を行うことは,公衆衛生あるいは医療行政的に多大な意義を有する.たとえばどのような修飾可能因子が,どの程度糖尿病発症リスクを高めるかは,糖尿病対策の基本となる.また,すでに糖尿病を有する患者において,どのような因子が合併症の発症・進展に影響するのかを解明することも,診療対策上,極めて重要である.
2型糖尿病はインスリン作用低下による慢性高血糖を主徴とし,細小血管合併症(腎症,網膜症,神経障害など)と大血管合併症(冠動脈疾患や脳卒中などの動脈硬化疾患)を中心とした様々な合併症を惹起する疾患である.高血圧や脂質異常症,肥満など多くの関連疾患を伴いやすく,発症・進展には,多因子遺伝と共に生活文化・習慣も関与する.そのため,合併症の発症率やリスクファクターには人種差や民族差が見られる.
これまで日本人を含む東アジア人糖尿病患者における合併症の発症率やリスクファクターのデータは,欧米人患者と比較して乏しかったため,わが国の糖尿病の診療ガイドライン作成や日常診療は,主に欧米の大規模臨床研究のエビデンスに基づいて進められてきた.しかし近年,日本人を含む東アジア人糖尿病患者の大規模臨床データも増えつつある.後述するJDCS(Japan Diabetes Complications Study)も,この目的のために立ち上げられた最初の大規模臨床介入研究の一つである.
本稿では,糖尿病そのものと糖尿病合併症とに分けて,それぞれのリスクファクターについて自験例を中心に紹介したい.
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