公衆衛生 66巻11号 (2002年11月)

特集 公衆衛生におけるNPOの役割

NPOとは 赤塚 和俊
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NGOとNPO

 今年の7月26日現在,NPO法人の数は7,634法人に達し,なお月300近いペースで増え続けている.新聞では毎日,紙面のどこかにNPOの文字を見ない日はない.NPOという言葉はすっかり社会に定着した感があるが,この3文字で人々が思い浮かべるイメージは,いまだに各人各様,千差万別である.

 よく受ける質問に,「NPOとNGOとはどう違うのですか」というのがある.NGOとは英語のNon-Governmental Organizationの略で,日本語では「非政府組織」と訳している.広義には政府(地方自治体も政府=Government)以外のすべての組織すなわち企業を含む民間組織のことだが,通常は企業と政治団体は含めない.最も狭義には国際連合憲章で言うNGOのことを指す,と言うよりもNGOという言葉が一般的になったのは,国連で使われるようになったためである.

NPOと公衆衛生活動 櫃本 真聿
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はじめに

 サッカーのワールドカップが韓国と日本で同時開催されたことはまだ記憶に新しい.元ラガーの筆者にとっては,サッカーの派手さやわざとらしいアピールには抵抗があったが,さすがに今大会は盛り上がった.決勝トーナメントへは誰もが無理だろうと思っていただけに,予選リーグ1位通過といううれしい期待はずれで,みんなの気持ちが“日本頑張れ”へと強く向いて行った.みんなが同じ方向を見て一体となっていることの素晴しさを,ワールドカップは実感させてくれた.

 ところで,自分の身の回りの地域や職場,家庭ではどうだろうか.例えば職場会議において,目的についての共通認識が得られずどの方向か確認のないまま,上司の命令,要綱,慣例などに基づき,「どうするか」の方法についての調整が大部分を占め,役割分担が決まれば「連携ができた」と誤解しているような状況ではないだろうか.あるいは各事業のねらいについて住民との共通認識が得られないまま,マンネリ化に陥ってはいないだろうか.目的が一致していることが互いに理解できていれば,方法はもっと豊富になり,効果的に活用できるはずだが,マニュアル等による方法の一律化では,多少の底上げはできてもすぐに限界が訪れる.目的意識もなく「やらされている」感覚が強ければ,チームワークも図れず,各人の工夫や努力も期待できない.

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NPO(民間非営利組織)を選択した日本社会

 NPO法(特定非営利活動促進法,1998年成立)施行以来約3年間で,NPO法人の認証数は8,000団体に達し,毎月約300団体が新たに誕生している.そのうち,約40%前後が医療・保健・福祉活動を中心にしたNPOである.これらの「NPO界」を支援し,社会との連携を促進する40近い中間支援団体が集まってNPOサポートセンター連絡会を結成し,行政や企業,大学等の教育機関とパートナーシップを実現するための協働プロジェクトを推進している.

 全国連絡会の事務局をつとめるNPOサポートセンターは,1993年に日本最初の中間支援組織として設立され,NPOの情報ネットワークと人材育成の2つの事業を中心にNPOの自立・事業化支援に取り組んできた.情報事業は2001年2月からNPO総合情報サイト・NPORTがスタートし,人材育成事業も学生へのインターンシップや社会人向けのNPO起業・就業訓練に本格的に取り組んでいる.

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 日本ダウン症ネットワーク(以下,JDSNと略)は,1995年7月に発足した染色体起因障害本人,家族,専門家,市民の協働型NPOである.本稿では,NPOとしてのJDSNの活動を紹介し,既存の公衆衛生活動との接点,地域での果たすべき役割等について述べる.

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 グループホーム“ふじいさんち”の朝は早い.朝もやがたつ5時過ぎ,スタッフは自宅で排泄に苦労されたIさんをそれとなくトイレに誘導し,義歯が気になるYさんの口腔ケアを始めます.“ふじいさんち”は見晴らしのよい斜面に立つ民家です.元「藤井さん」の家でしたので名前をそのまま“ふじいさんち”としました.朝食の準備では両眼視力のないMさんが芋の皮むきを手伝い,重い認知障害があるSさんがご飯もおかずもお構いなしに配膳してくれます.10分で食べてしまう人,皆が食べ終わるころやっと起き出して2時間近くかけて食べている人がいます.それぞれの朝が始まります.ここではお互いの「間」を気遣いながらも,時間がゆっくりと流れます.

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CAPNAの誕生と活動

 子どもの虐待防止ネットワーク・あいち(通称CAPNA,以下同)は,大阪「児童虐待防止協会」,東京「子どもの虐待防止センター」に続いて,日本で3番目の虐待防止市民団体として1995年10月に誕生した.当初はボランティアが集まる事務所がなかったので,会員の自宅を提供してもらい,週2回の電話相談「虐待防止ホットライン」を開始した.その後,名古屋市内に事務所を開設し,月曜日〜土曜日に電話相談を行えるようになった.

 2000年4月には愛知県よりNPO法人として認証され,2001年1月には朝日新聞社より朝日社会福祉賞を授与された.

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はじめに

 特定非営利活動促進法が施行され3年が経過した.内閣府国民生活局の調査によると現在(2002年7月12日現在)7,518団体が特定非営利法人(NPO法人)の認証を受けている.認証されたNPO法人のうち60%が保健・医療または福祉の増進を図る活動を定款に掲げている.国民生活審議会総合企画部会の報告書では,21世紀の社会では,NPOは行政や企業と並ぶ第三の主体として重要性を増していくことを予測している.

 このような時代の流れの中で,日本におけるヘルスプロモーションの展開にもNPO法人の役割は少なくないと思われる.本稿ではNPO法人Well-Beingの活動を紹介し,ヘルスプロモーションの展開におけるNPO法人の役割と問題点を検討する.また保健所や大学との連携についても述べてみたい.

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年間127人の新記録

 エイズ動向委員会が,3カ月ごとに新規に報告されたHIV感染者,エイズ患者の数を発表しています.この数はほとんど毎回記録更新で増加の一途を示していますが,新聞の隅に載るだけですから,ほとんどの人は気にもしていないでしょう.最近では「エイズ」と言えば日本では「問題ではない」かのような認識です.けれど,実際は大違いです.ぷれいす東京はHIV感染者,エイズ患者の支援を始めて8年がたちますが,昨年(2001年4月〜2002年3月)もやはり記録を更新しました.感染の告知を受けて初めてコンタクトをとって来られた感染者(患者を含む)が1年間で127人,月平均で10人を超えたのです.

 なぜなのでしょうか.理由は2つありそうです.1つはもちろん,感染者総数が増えていることです.2つめは,民間活動組織である私たちのサービスへのニーズが確実に存在し,しかも増えているからでしょう.

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相談は保健所からも

「結核治療を中断した外国人女性を訪問したが,戸を開けてくれない」

「外国人の両親から生まれた子供が未熟児で入院したが,医療費が高額で支払えない」

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中学校結核集団感染と15歳の少女の涙

 高知市保健所は,平成11年3月に中学校での結核集団感染を経験した.150名を超える生徒に予防内服が指示され,患者発生は平成14年2月まで続き,計32名にのぼった.

 事例の対応では,結核予防会結核研究所の森亨所長をはじめ,全国のさまざまな方々から支援や励ましをいただいた.そのことに報いるために,「事例の経過について話して欲しい」という要請があれば,業務に支障がない限り出かけるようにした.いろいろな機会を通じて,医療関係者や保健行政関係者,学校関係者など,多くの人に話を聞いてもらった.話の内容は少しずっ変えたが,次のエピソードだけは必ず紹介するようにした.

トピックス

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はじめに

 今年2月,厚生労働省は,過労死予防の最も重要な要因と考えられている長時間労働を減少させる目的で,「過重労働による健康障害防止のための総合対策」1)とする各都道府県労働局長宛の通達を出すとともに,全国136の各産業分野の事業所団体や産業保健関連団体長宛にも趣旨徹底の文書を送付した.昨年12月,過労死の労災認定基準が「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準について」2)とする通達で大幅に改訂されたことに続く新たな布石である.労働基準局長宛の通達が,全国の各団体にも同時に送付され,かつ厚生労働省のホームページを通じて団体名が公表されることは稀である.またすべての審議が終了した今年2月になったとは言え,1年以上にわたって続けた過労死の認定基準改訂の専門家会議の議事録が公開されたことも初めてであり,これまでこうした議事録では秘密主義を堅持してきた旧労働省の意気込みが感じられる.

 認定基準が改定されてから半年たった現在,過去に業務外とされた事例が見直され,業務上として救済される事例がマスコミで報道されるなど,遺族に大きな安心を与えている.あらためて通達が出された経緯や内容とともに,今後の課題などに触れたい.

今後の人口を推計する 小川 直宏
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はじめに

 2002年6月に厚生労働省から発表された人口動態統計によれば,2001年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと思われる子供数,以下TFRと呼ぶ)は1.33人となり,2000年における合計特殊出生率であった1.36人から再び低下し,わが国の史上最低記録を更新した.このような結果から,20世紀末の1999年から2000年への僅かな出生率の上昇は,ミレニアム効果によるものであったことを示唆していると考えられる.すなわち,1996年の1.43人から連続的に低下してきている出生率は,ミレニアム効果で一度は中断したが,現在も依然としてその低下傾向が続いていると解釈することができよう.

 では,わが国の出生率は一体どこまで低下を続けるのだうか? そして,わが国の高齢化現象はどこまで進行するのであろうか? 人口がどのように今後変動するかは,わが国における中・長期の経済成長パフォーマンス,労働市場の需給バランスや雇用形態の変化,年金・医療を中心とする社会保障制度の将来動向に直接的に影響を及ぼす.

連載 地方分権による保健医療福祉活動の展開・11

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はじめに

 与えられたテーマ「障害者サービスと自治体の役割」については,相互依存的・融合的な国・地方関係を行財政構造をとおして見ることもできるが,本稿では障害福祉計画と措置から利用への制度転換の両面から地方自治体を見ることとする.それは,前者が介護保険制度の場合と同様に分権型とは言えず,国の誘導型・垂直協働型の計画ではあるが,分権化の手法を採用しつつあり,後者は新制度における地方自治体,とりわけ市町村の役割が制度運営の「要」と位置づけられるからである.

連載 今,改めて「公衆衛生看護」・10[最終回]

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はじめに

 本シリーズ『今,改めて「公衆衛生看護」』は,本号で最終回を迎えた.第1回(本誌66巻1号)で平野1)は,“最近は『公衆衛生』という言葉がほとんど使われなくなりそれに伴い「公衆衛生看護」も曖昧になってきていることがある.(—中略—)このシリーズでは,これから執筆するそれぞれの筆者の保健婦としての実践および教育の体験から,公衆衛生を担う保健婦は何をするものであるかを提示し,保健婦の活動方法を明確に示していきたいと思う”としている.このシリーズの執筆者は『日本公衆衛生看護研究会』のメンバーであり,日常的に「公衆衛生看護とは何か」という永遠の(?)課題に,悩み取り組んでいるものである.

 本稿では,筆者の30数年にわたる行政保健師としての公衆衛生看護活動を振り返るとともに,現在保健師教育の場に身を置くものとして感じていることなど,今,改めて「公衆衛生看護」についての若干の私見を述べさせていただく.

連載 全国の事例や活動に学ぶ

今月の事例 奈良県都祁村保健センター

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都祁村の概要

 都祁村は奈良県の北東部に位置し,大和高原にある人口約6,800人,出生約60人,老年人口21.1%の農山村地域である.村内に保育所6園,小学校4校,中学校1校があり,純朴な生徒が多い.中学校を卒業すると村外の高校へ進学し,多くの情報と新しい刺激を急激に受けることになる.このことによって,心の変化が大きく見受けられ,子どもたちのおかれている状況が危惧されている.

 一方,わが国において年々HIV感染者やエイズ患者あるいは性感染者の増加が問題となっている現状から,思春期教育を実施することが重要となる.これまで,本村では思春期教育に関して種々の取り組みを行い,その中で学校保健と保健センターとの連携に努めてきた.平成7年よりエイズ予防事業を手がけ,平成11年度からは中学校と共催事業としてエイズ教育に取り組み,学校教育の場でエイズ教育を定着させる方向に発展してきた.

連載 私の見たイギリス保健・医療・福祉事情・11

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 前回取り上げたNHS planが発表された2000年は,ブレア率いる労働党が18年ぶりに政権について4年目の年であり,翌年の春には,再選をかけた総選挙が待っていた.労働党は5つの公約の1つに,国民の関心の高いNHS改革を掲げた.国民のNHSへの不満に対しては,その原因を作ったのは前保守党政権であるとし,労働党が新たに着手した改革とその成果が出始めていることを宣伝した.総選挙の結果は,好調な経済も追い風になって,労働党の大勝利で終わった.

 二期目に入った労働党政権は手を休めることなく,改革に取り組んでいる.

連載 地域保健関連法規とその解釈・23

改正薬事法と血液事業法 河原 和夫
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はじめに

 先の通常国会で,セットで薬事法の改正と採血および供血あっ旋業取締法が改正された.その趣旨は,バイオテクノロジーの発展に伴って血液製剤を含む医薬品の安全性確保が急務となったこと,医療機器の安全性審査を医薬品のそれと同等に考えること,また,これらの安全性審査の方法を改めること,そして医薬品や医療機器の市販後の安全性確保や調査に関する責任を元売に強化したことがあげられる.

 上記の内容は,地域保健とは直接関係がないように考える方もおられると思うが,薬事監視や献血推進などの保健所を主とした地域保健業務に深く関係している.

連載 シリーズ 介護保険下の公衆衛生活動を考える・8

けむりおんな 関 なおみ
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女性(84歳):不整脈,矢禁,要介護 3.2階建て木造アパート1階部分で1人暮らし(アパート大家)

連載 米国の知的障害者サービスと脱施設化に学ぶ—わが国の痴呆性高齢者対策への警鐘・2

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知的障害者(問題)と痴呆性高齢者(問題)の共通点と相違点

 知的障害者と痴呆性高齢者は言うまでもなく全く異なるものである.しかし,両者を人間環境生態学的視点で捉えると,共通点でくくることができる.1つには知的障害者と痴呆性高齢者はそれぞれ知的障害,高齢・痴呆症を有した当事者であること,もう1つには社会環境(米国と日本の違いを除く)における位置づけが同じであることなどである.もちろん,知的障害あるいは高齢・痴呆症がなければ当事者は存在しないことになる.そして知的障害,高齢・痴呆症を有する当事者がいなければ,当事者,その当事者を介護する家族・介護者(場合によっては後見人)がいる生活環境,社会環境は存在しないことになる.

 当事者は障害や高齢・痴呆症とともに生き,家族・介護者(場合によっては後見人)の援助,その日常生活環境(家庭・施設等)の中で生活をしている.当事者,家族,その生活環境は社会環境の1つをなし,それらは自然・物理的環境,社会,経済,文化,慣習との相互関連性を有する.見方を変えれば,当事者の存在自体が社会に影響を与え,また,その影響が社会環境を変えるといったように,すべての存在が相互に影響し合いながら,環境,時代,歴史を形成している.

日本学術会議環境保健学研究連絡委員会主催公開シンポジウム 環境と健康の危機管理・2

学校における安全危機管理 南 哲
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「水泳さえ教えなければ…」

 今から半世紀前の1954年秋,相模湖での私立麻布中学校の遊覧船転覆事故で,湖底に沈んだ長男を追悼し,今なお苦汁の想いを抱き続ける95歳の老父の後悔を知って愕然とした.水難事故から身を守るために,中学入学以来ふた夏の父子水泳特訓がかえって災いしたのではないか,編み上げ靴と着衣のまま船から最も遠くまで泳いで沈んでいた愛子を不欄としたものであった.この相模湖事件は,後に「日本学校安全会法」成立の嚆矢となったと言われる.俳人でもあるその父の一句を添えたい.

悲しみを沈めて碧し秋の湖 筧水

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緒論

 わが国の結核罹患率は1970年代までは年間10〜11%の割合で減少してきた.しかし1980年代からは減少率が鈍化し,1997年からは3年連続で増加した.

 結核対策としては確実な服薬が重要とされており,WHOは世界の結核対策として,服薬を直接確認するシステムであるDOTS戦略の進展を図っている1).DOTSとはDirectly Observed Treatment,Short-courseの略で,「ドッツ」と呼ばれ,結核患者に対する「直接観察下の短期化学療法」を意味している.

基本情報

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公衆衛生
66巻11号 (2002年11月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

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