保健婦雑誌 43巻7号 (1987年7月)

特集 保健医療制度の再編と保健婦活動の課題

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録

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第1会場

住民のための組織づくり

 はじめに2日間の日程のオリエンテーションを行い,松下先生から「保健所も市町村も老人保健法の健診業務に追われ,本来の保健活動ができないとの悩みが多い,住民の実態を知り,要求に基づいた組織活動を行いたいと思うが,時間の余裕もなく,数を上げることのみ言われるとの声を聞く。今回の実践講座では,健診後のフォローのあり方を通して,住民の健康問題と組織づくりについて考えてみたい」との位置づけの提起があった。

参加者の感想・1
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〈30代市町村2回目の参加〉

基調講演の感想

いままで,地方自治を頭において仕事をしたことはなかった。世の中の情勢を考えて仕事をしたことはなかった。ただ目の前の問題の解決だけに悩んでいた。でも,現在の国の政策や自治が,将来,自分の仕事に影響を及ぼすことを,いま考えていかなければならない。もっと地方自治を考えなければならないと,初めて認識させられました。

分科会報告
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第2分科会

障害児に対する取り組み

 まず自己紹介をかねて,現在の取り組みの状況と参加動機の交流を行ったが,この中では次のような意見が出された。

参加者の感想・2
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〈20代政令市の保健所2回目の参加〉

この感動をパワーに

このつどいに,全国から保健婦が何かを求めて集まってきていると思うと,あらためて保健婦の仕事の良さと自信を感じます。すごいもんだなあと感動しています。この感動をパワーにかえていきたい。

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第1会場

疫学の基礎を学ぶ

 講師から,1.疫学的なものの見万(歴史的背景,疫学の定義),2.疫学がめざすもの,3.疫学的方法の特徴,についての講義を受け,質疑に入ったが,次のような話しが行われた。

自由交流集会報告
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市町村に働く保健婦の交流会

 仕事上の悩みとして,「保健婦本来の仕事をやっているのだろうか。自分のやっていることが見えてくるのはいつだろうか」という意見や「最近事務量が増えてきた。役場職員との交流が減り,住民の実態もつかめなくなってくるのではと恐れている」,「住民がやってほしいことを受けとめてやっているのだろうか。保健婦は,自分がやりたいことをやっているのではないか」などが出席者から率直に出された。

 交流の中で保健婦は老健法に基づく事業にふり回されている,いろいろな人とのつながりをつくりながら,住民の側に立って,保健婦本来の仕事をとりもどそうと確認し,散会した。

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「第19回自治体に働く保健婦のつどい」は,天候にも恵まれ,全国から900名近い保健婦の仲間たちの参加の中で,充実した学習,交流集会とさせることができました。

 特に,秋から暮にかけての国会では,母子保健事業を機関委任事務から団体委任事務に変更する法案が通り,医師会や老人クラブ連合会,そして多くの国民の反対を押し切って,老人保健法の改悪(案)が成立する,また,62年度の予算では,防衛費が大きく伸びる一方,公衆衛生関係職員の交付金が削減される等,私たち自治体に働く保健婦にとっては,暗いニュースが続きました。

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 基調報告——つどい発足10年の節目を迎え,つどいの沿革を簡単に報告。北海道のつどいは「若い保健婦のつどい」,「十勝のつどい」,「オホーツクのつどい」と,確実にその輪を拡げていることを伝えた。

 基調講演——弁護士の仕事をとおして感じていること,保健婦に期待すること等が話された。最近扱う事件では,サラ金の被害が依然として多いこと,働く人の解雇や倒産の問題,あとを絶たない悪徳商法の問題などは,弱い者いじめの政治が国民の生活をおびやかしている結果であると指摘された。さらに,調停からみられる家庭崩壊の実態では悲惨な父親の嬰児殺し事件の事例などが挙げられ,離婚率トップの北海道の背景として,高度経済成長のひずみが出ていることが明らかにされた。これらの問題への対応としては公的相談機関の設置と同時に,すべての事柄の前提として平和なくらしが背景になければならず,保健婦も健康,生活の問題と平和への努力を両輪にして考え,行動していく呼びかけが行われた。

 記念講演——看護をとりまく情勢として,医療費の圧縮削減の実態の中で,病院経営だけでなく,地域ケアにまで大企業が進出し,企業化が進んでいる実態が話された。

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録 開会挨拶

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 全国から「つどい」に参加された皆様に感謝を申し上げます。

 1987年も厳しい幕開けで始まりました。昨年末に発表された政府予算案「経済見通し」は,住民の生命とくらしを脅す内容となっており,保健・医療の分野でも,憲法が定める人権保障の諸制度の見直しが行われ,医療法,母子保健法,精神衛生法などの「改正」が準備されています。

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録 基調講演

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I.分析の視点

 ご紹介いただきました日野です。

 本日は主催者の方から,非常に大きなテーマを与えられ,いささか困っているところです。このような大きなテーマをお話しする場合,一定の絞りこみをしないと収拾がつきませんので,二つのポイントからお話しする内容を決めました。

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録 基調報告

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「第19回自治体に働く保健婦のつどい」運営委員会より,この1年間の私たちをとりまく情勢とこれからの課題について報告します。先に厚生省が発表した昭和60年度「国民健康調査」によると,国民の7〜8人に1人が病気だと言われ,新聞社のアンケートでも38℃以上の熱があっても休めず出勤するサラリーマンが半数近くいると報道しています。心労,ストレスによる精神病も多くなっており,心筋梗塞が職業病に認定されるケース等も増えています。一方,円高不況と減量経営の中で,労働市場はどんどん狭くなり,完全失業率は3.0%,失業者の数は200万人に達するといわれています。船造を初め炭坑の閉山,国鉄の分割・民営化,中・小,地場産業等の経営困難,倒産による労働者の失業は非常に深刻です。しかし,私たちは受け持ち地区のこうした労働者や家族の生活実態をつかんでいるでしょうか。以上のような状況の中で今,国や自治体にとって一番大きな問題となっているのは「高齢化社会」の問題です。

 厚生省は「高齢化に対応した新しい民間活力の振興に関する研究会」「シルバー産業の振興に関する報告書」というのを発表しましたが,ここでは「かつて老人は社会的,経済的弱者,マイノリティーという考え方が一般的であった。しかし今や高齢者は社会的にも経済的にも主役の一翼を担いつつある」と述べ,その根拠として高齢者の購買力の高さをあげています。

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録 特別報告

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 今,国鉄職員の約18,000人が"人活センター"(人材活用センター)へ行っています。この人活センターのひどい実態を告発しようじゃないかと,全国的な人活センターの連絡会を作りました。そしてとりあえず,職場の実態を写真で訴えようということで「国鉄収容所からの告発」という写真集をつくりました。

 この写真集を見れば,人活センターの内容が大体わかると思いますが,まだまだ国民の中には分割民営化について,賛成といいますか,よくわからないけれど仕方がないじゃないかという議論があります。しかし,国鉄の本当の問題は何なのか,国鉄を守る立場で訴えていく中で,国鉄を守る国民会議ができ,1,300を超える組織が参加しています。そして,公共の輸送をどうするかについて皆さんと共に頑張っています。

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録 実践講座

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 それではまず57年度,実質的には58年度から始まり今日までに5年を経過した老人保健法に基づく老人保健事業の健診を中心とした問題点について述べます。次に,昨年の7月11日に厚生大臣の諮問機関である公衆衛生審議会は「保健事業の見直しに関する意見」を厚生大臣に提出しましたが,その内容について述べてみたいと思います。

 なお,「老人保健事業の第二次5か年計画」に伴う国の予算,あるいは人員の問題などについては,自治体研究社から「民活の時代の保健医療」という本が出ております。これは昨年の「第9回全国保健所問題研究交流集会」の「まとめ集」として出されたものです。その中に,「保健事業第二次5か年計画下の公衆衛生と保健所」ということが特別に取り上げられています。そこに厚生省の予算人員の問題などが述べられておりますから詳しく知りたい方はぜひお買い求めください。今後,皆さん方が市町村等で予算や事業計画を立てるうえで,参考になると思います。

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 司会 それでは始めさせていただきます。実践講座の第7会場のテーマは,「労働者の健康問題と保健婦活動」ということですが,今日は助言者に,杏林大学の上畑先生と保健婦の先輩前田さんをお迎えしております。

 この実践講座では,「労働者」と書かれているため何となく地域の保健婦にとって遠いような問題として受けとめられがちです。しかし,上畑先生も編集に加わりました「公衆衛生実践シリーズ」第7の『地域産業保健』にもありますように,農業とか地場産業の問題,あるいは中小・零細企業の問題など,保健婦のかかわる分野での問題はたくさんあります。それに最近は,主婦の方でも,退職した方でも,パートとして外に出る人が増えており,その点では地域住民の多くが「労働者」といえるのではないでしょうか。私たち自身も,公務職場の労働者であり現に皆さんの中には保健婦として職場の労働安全衛生委員会の委員をしている方もいるのではないかと思います。

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参加の意義

 司会(星野) 実践講座の第9会場「保健婦の歴史を綴ろう」という講座をただいまから始めたいと思います。

 この講座は木下先生を講師にお招きして,今回は新潟県守門村の保健婦さん,五十嵐さんに報告していただきます。

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録 分科会

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 司会 それでは,第1分科会を始めていきたいと思います。まず,昨年の12月に国会で,母子保健法が改正(私は改悪と考えていますが)され,国の機関委任事務から団体委任事務に変わりました。その辺の動きを山本さんに簡単に説明していただいてから,進めていきたいと思います。

 山本 保健婦とは,母子のことに関して働きなさいといって置かれた職種で「健兵,健民政策」の中で誕生した職種です。昭和16年,政府の政策の中で置かれた職種だから,非常に働きやすく,国家政策に乗って働けたんですね。それから後も,私たちは母子のことに関しては一生懸命やりました。それで,乳幼児の死亡率は激減したんですね。沢内村では,チベットじゃあるまいし,日本の中でこんなに乳幼児の死亡率が高いというのは恥ずかしいことだから,自分たちの村は自分たちで守りましょうというので,深沢村長が保健婦を増員して乳児死亡率ゼロという記録を出した。誰がしたかといえば保健婦です。それで昭和37年に保健文化賞を取ったんです。それで,昭和41年に母子保健法が作られたんですね。しかし,昭和41年には,いままで8/10国が持ち,2/10を県が出していた母子の予算を,国が2/3に,県が1/3にして,国の負担をグッと下げたんです。そして,そのときに保健所の保健婦を2名ないし3名残して,あとは全部市町村に下ろすというものを一緒に出したんです。

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あなたの自治体は住民の砦か

 司会 実は,昨年もこの分科会で,「地域に根ざした成人病の取り組み」を学習しました。「地域に根ざした」という言葉の解釈は,言い換えれば,そこに住んでいる人々の生活実態に依拠したという意味である,ということを昨年確認しております。「地域に根ざした成人病の取り組み」というのは,そこに住んでいる人々の実態に依拠したという意味で御理解いただきたいというのが,皆様と,我々,先生も含めての共有事項です。それをまず確認し合いたいと思います。

 次に,この分科会ではいくつかの実践例が出されますが,学習する課題として,四つを挙げさせていただきました。一つは,成人病というのは人々の暮らしの歴史の中から自然に生活のシワとして出てくるものだということ。2番目には,成人病対策の砦は,○○病院とか○○診療所とかではなくて,実は自治体なんだ,ということ。この二つには昨年この分科会でお互いが「うん,なるほど」と思った事項です。3番目は,成人病対策は,保健婦だけとか,立派なお医者さんが1人いればとかではなしに,専門家の援助はもちろん,自治体それから関連職種そして大事な住民組織との連携で取り組まれること,これが非常に有効な方法であるということ。

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 司会 まず,シンポジストの紹介をさせていただきます。竹井さんは,石神井保健所を中心として「練馬老後の健康と生きがいを語る会」の会長さんで,練馬区の保健医療協議会のメンバーと,保健所運営協議会の副会長さんでもあります。林玲子さんは北保健相談所の「ねりま健康の会」の世話人で,「練馬区に公的総合病院をつくる会」の発足当時からの事務局をお世話していただいています。望月さんは「大泉健康と老いを考える会」の会長さんで,「大泉保健相談所全面改築をすすめる会」の会長さんでもあります。次は練馬の住民づくりというか,人間づくりの基礎の活動をされている社会教育主事の野々村さんです。最後に,北保健相談所の保健婦で,保健婦歴13年というキャリアの林優子さんです。助言者は松川町の松下先生と私たち練馬区の保健婦の大先輩で,お母さん的な存在の山本裕子さんです。

 では,住民の立場から,まず竹井さん,林さん,望月さんの順でご発言をお願いします。

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録 基礎講座

痴呆性老人への対応 小阪 憲司
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 司会 きょうお集まりいただいたこの会場は,「痴呆性老人への対応」というテーマの実践講座です。痴呆老人の介助で苦しんでいる方々からの相談が最近ふえてきていますし今後高齢化社会を迎えてますます痴呆老人への対応が保健婦にとっても大切な仕事になってくるんだと思います。この痴呆老人への対応については「自治体に働く保健婦のつどい」では新しいテーマでして,これからみんなで,勉強していきたいと思っています。

 きょうの講師は東京都精神医学総合研究所にお勤めの小阪憲司先生です。

第19回自治体に働く保健婦のつどい集録 記念講演

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I.海上保安庁の仕事

私は海の男であります。昭和30年代,朝鮮海峡で韓国とのたいへんな紛争があり,日本の漁船が次々につかまった。私はそこで,その日本の魚船を守るための警備をしていました。つかまろうとする漁船と韓国の警備艇の中に割り込んでいく。煙幕を焚きながら漁船を隠して,そうして横抱きにして脱出する。そのときに韓国の警備艇から銃撃されることも何度も経験しました。こういう体験の中で1つだけ忘れられない思い出を紹介します。

 海上保安庁の巡視船は大砲を積んでおり,それには撃たれたら撃ち返せという規則がありました。しかし,私たちは,現場で命を削るような苦労をしていたものにとっては,もし1発の大砲を撃ったら,ただちにこれは戦争につながるという危険を,肌で感じていました。だから巡視船の船長がみな集まって大激論を展開し,規則がどうあろうと,私たちは巡視船の船長の責任において,この大砲を撃たないことにしようと,ひそかに誓いを立てた。そして10年間のあのものすごい紛争中私たちは1発の大砲も撃ちませんでした。もしあのとき,だれかが撃ち返していたら,今日の日本の平和はなかったんだと,いまでも古い仲間に会うと,この思い出だけはひそかに私たちの誇りにしています。今日の日本の平和を守ったものは法律でも国会でもない。政治でもない。現場の無名の私たちが誓いを立てた。その誓いがこの平和を守っているんだというひそかな自負です。

基本情報

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保健婦雑誌
43巻7号 (1987年7月)
電子版ISSN:2185-4041 印刷版ISSN:0047-1844 医学書院

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