助産婦雑誌 55巻10号 (2001年10月)

特集 女性の産む力を引き出すケア

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子育てで大切なこと

 助産の仕事をグローバルな視点から見た時,私たちの住む国は,ものの豊かさの陰に「何か」が隠れてしまった特殊な社会だとわかる。学びを共にした海外の助産婦からの贈り物は,私にこのことを気づかせてくれる。

 マラウイの女性が,一生に産むこどもの数は平均10人。この女性たちの役割は育児と農場での労働が主であり,「主人」である夫のサインなしには,避妊手術さえ受けることができない。ジェンダーの問題が,生活の隅々にまで浸透している。でも,夕食後にこどもたちが一番楽しみにしていることは,母親から聞く「ものがたり」だという。冒険心がくすぐられる話,勇気ある話,信仰心を育てる話,涙あふれる話,どれもこどもの想像力を膨らませ,そして母親への尊敬の念を育む。

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 筆者らは,平成11年度厚生科学研究(子ども家庭総合研究事業)「利用者から見て望ましい出産のあり方に関する研究」1)で,妊娠・分娩・産褥・育児期のケアに関する疫学的な全国調査を行なった。この研究にあたり,開業助産婦で日本助産婦会役員の神谷整子さん,臨床の助産婦から日赤医療センターの中根直子さん,バースエデュケーターの戸田律子さん,疫学者(EBM)から慈恵医大の縣俊彦先生,産科医から葛飾日赤産院の竹内正人先生に協力研究者として参加していただいて研究班を発足させた。研究の初段階の調査票作成,サンプリング,フィールド交渉,考察に至るまで,熱意に溢れた協力研究員の方々の多大な貢献なしに遂行できなかったことを思い,この誌面をお借りして謝意を表したい。

 この厚生科学研究では,層化無作為抽出法により,全国47都道府県の大学病院16施設,一般病院65施設,診療所76施設,助産院75施設の合計232施設を選び,分娩後入院中または1か月の褥婦10,268名(有効回答8,224名)を対象として,日本における妊娠・分娩・産褥・育児各期のケアの現状,それら一連のケアに対するいわゆる「出産ケアに対する満足度」および保健医療サービスに対する利用者からの評価を行ない,女性たちのニーズを明らかにしようとした。

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アクティブ妊産婦さんとの出会い〜96年秋

 「あの,これ書いてみたのですが……」 外来でおずおずと手書きの紙を差出す,予定日を4週間後に控えた初産婦Mさん。B4の用紙には,分娩の進行期別に「陣痛を逃すときにはじっと寝ていずに動き回る」「自分の産みやすいスタイルを探していきたい」。生まれた赤ちゃんは自分から離さずに傍に」「臍帯結紮は血流が止まるまで待って」「夫とずっと一緒に」などとよく整理されてまとめてあり,「スイミングスクールの助産婦さんに相談にのってもらった」と話すMさんの表情は,間近に迫った初めての分娩への不安よりも,なんだか待ち切れない想いが勝っているのがこちらにも伝わって,きらきらと輝いて見えた。

 ずっとこの日を待っていた。とうとう,「バースプラン」を持つ妊産婦さんが登場してくれたのだ!

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エンパワーメントがクラスの最大の使命

 出産準備クラスには,さまざまな役割がある。妊娠・出産・母乳育児情報を提供する,出産時のリラクセーションなどのセルフケアのノウハウを提供する,個々の出産施設のコンセプトを伝える,子どもを迎えるカップルが孤立しないようにコミュニティ作りをするなどが含まれる。しかし,最大の使命であり,挑戦でもあるのが,実際に行動につながる「やる気」を起こさせる「動機づけ」だと私は感じている。

 妊婦とパートナーを含めて行なう出産準備クラスは,健康的なセルフケアや前向きな妊娠・出産・母乳育児に向けてプラスの動機と活力を得る,うってつけの場であると考えている。自分自身の持っている力に気づき,自ら進んでその力を活用して,目標に向かう自信と元気が一人ひとりの参加者の目の輝きに表われる時が,クラスを引っぱっていく者(以下リーダーとする)として,こころがニンマリする時だ。エンパワーにつながる動機づけをどのように効果的に行なうのかに焦点を当てて,私の試行錯誤の一端をご紹介したい。

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はじめに

 私は,現在開業助産婦(保健指導中心)として活動しています。マタニティ・ヨーガとマタニテイ・スイミングを産前教育の場で担当し,出産時は妊婦の希望により病院の許可が得られた時に「ドゥーラ」として関わっています。また数は少ないのですが,みちつき助産院(本特集46ページ参照)や自宅出産では助産婦として関わっています。産後は新生児訪問,沐浴,乳房ケア,育児相談,インファントマッサージの教室等の活動をしています。

 本稿では,私が「ドゥーラ」として産婦に寄りそった経験を紹介し,安全で満足のいく正常分娩へのケアを考えたいと思います。

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 私たち,湘南鎌倉総合病院のスタッフが過去10年間に行なってきたいろいろなお産の取り組み,それは妊婦の要望への回答だった。その妊婦の要望とは,具体的にどんなお産をしたいか,逆に言えば,「こんなお産はしたくない」とのわれわれへのメッセージだった。妊婦の要望に対する回答は,いくつも選択肢がある場合もあり,またその気持ちが理解できても,今の日本のシステムだとどうにも答えられない場合もあった。次から次へと出てくる妊婦のお産に関する要望。それは,少しずつ解決されていった。

 まだたくさんの困難な問題が山積みとなっているが,これからの10年間はその一つひとつを精力的に解決していきたいと思う。もっと妊婦にお産をしたい気持ちをもたせてあげたい,いや「産む気」にさせてあげたいと思う。

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はじめに

 「みちつき助産院」をオープンさせて何とか2年。この間,約50名の方々をお世話させていただいた。一人ひとりとのお付き合いの中で女性が「産む」ということ,そして助産院というものの意味を学ばせていただいている。

 今回の特集テーマである「女性の産む力を引き出すケア」。私がいつも考えていることは,正常と異常の見極めとそれに伴う医療との連携,そして女性が望むような環境をつくることだ。

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熱気に包まれた第25回学術集会(旧・日本臨床遺伝学会)

 2001年5月25日(金)〜26日(土)の2日間,労働スクエア東京(東京・中央区)で日本遺伝カウンセリング学会第25回学術集会が行なわれました。参加者は約350名。初めて本学会に参加された方が半数以上を占め,コメディカルの参加も多く,会場は学際的な熱気に包まれました。

 発表一般演題は60題,さらに6題の教育講演があり,26日最終日には夜9時まで熱心な論議が続けられました。教育講演では「遺伝と生命倫理」(松田一郎先生),「遺伝子治療の現状と展望」(島田隆先生),「チーム医療としての遺伝カウンセリング」(松本光子先生),「染色体異常のカウンセリング」(梶井正先生),「Nuchal translucency」(清水卓先生),「妊娠中の超音波検査とカウンセリング」(山中美智子先生)が取り上げられました。講演はそれぞれ50分間お願いをし,質疑応答にも20分間を当てていただきました。実質的な討議を重視させていただきましたが,長時間にかかわらず熱心な討論が最後まで続けられました。一般講演でも,1題あたり12分間と他学会より長めの設定にしましたが,白熱した論議に時間が足りなくなることもしばしばでした。

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はじめに

 2001年3月12日から1週間,ICM国際会議がアフリカのジンバブエ共和国の首都ハラーレのホテルで開催された。会議の内容はICMの役員会,コアコンペテンシーズのフィールドテスト説明会,アフリカ地域の助産婦のワークショップの3つであった。日本からの参加者は近藤潤子天使大学学長と筆者の2人であった。私は,コアコンペテンシーズのフィールドテストの説明会に代理出席させていただいた。以下,私の参加したこの会議について報告する。

代理出産.何が問題か 鈴木 良子
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根津医師の起こしたハレーション

 「代理懐胎(代理母・借り腹)は禁止する」。これが,昨年12月に発表された旧厚生省・生殖補助医療技術に関する専門委員会「「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」の結論である。金銭授受をともなうか否かにかかわらず,すべて禁止という意味だ。この報告を受け,厚生労働省は平成15年の通常国会に代理出産禁止を含んだ法案を提出することをめざしていた。

 しかし,長野県の産婦人科医・根津八紘氏が姉妹間での「代理出産」を実施していたことが,5月19日の新聞各紙で報道された。「事実を先行させて議論を起こす」という根津氏の方法論には賛成できないが,現実には根津氏の思惑どおりにコトが進んでいるような気もする。ハレーションは大きかった。

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はじめに

 近年,出生数は減少傾向にあるが,20歳未満の若年妊娠は,やや増加傾向にあるとも言われている1)

 若年妊娠は多くの問題を抱えやすい。産婦人科初診の時期が遅延しがちなこと,また社会的な援助が得られにくく,経済的に困窮をきたしやすいこと,精神的に成熟しておらず,離婚率も高いことなどがあげられる。さらに出産後は,育児放棄や虐待,遺棄などの社会的な問題も生じやすい2)

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 わが国で現代科学とフィロソフィーを背景にした遺伝相談が始まったのは比較的新しく,1974年に日本人類遺伝学会が遺伝相談医師養成研修会をスタートさせたことに始まるといえます。遺伝相談という概念がまだ無い頃に,その重要性を認識し事業をたちあげた先達の苦労には大きなものがあったことでしょう。

 そして25年前には日本臨床遺伝学会が発足,遺伝カウンセリングの普及にも力を注ぎ始めました。医師とコメディカルそれぞれを対象に,遺伝カウンセリングの教育を行なってきました。

連載 新生児医療最新トピックス・9

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なぜ,RSウイルスの予防が必要か

 国立岡山病院の名誉院長故山内逸郎先生は,かつて未熟児室には専任のナースと医師以外,たとえ大学教授であっても見学者は入れないのみならず,家族さえ入れないほど厳重な保護隔離を行なっていた。山内先生がなぜそれほどまでに感染予防に神経を使っていたのかは,かつて,手塩にかけて育てあげてきた何人かの超未熟児をRSV(respiratory syncytial virus)の院内感染で失った痛恨の経験からであった。筆者は,山内先生にその話を1/4世紀も前にうかがって以来,母子関係確立のためには家族をNICUに入れなければならないが,感染も怖いというジレンマに悩まされ,心の片隅に「なにかRSV感染の対策はないか」と,常に思い続けてきた。3年ほどまえに,ある製薬会社がRSV抗体価の高いグロブリン(hyperimmunoglobulin)の治験を依頼してきたとき,自分にとってはあまり得意とする分野ではなかったが,二つ返事で「協力する」と答えたのは,そのような経緯からであった。

 それは,ヒトから採った血清成分を毎月1回静脈注射しなければならない方法であった。しかし,その治験がまだ終わらないうちに,バイオテクノロジーの進歩により,より特異性が高く筋注のみで済む新しい予防法が開発されたのである。それが今回取り上げるパリビズマブ(palivizumab)であった1)

連載 いのちの響き・33

いのちの祭り 宮崎 雅子
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 「どうか間に合いますように」,そう思いながら始発のあずさに飛び乗り,穂高へと向かった。 助産婦の高橋小百合さんが北アルプスの麓,安曇野に移り住んで5年。小さな分娩室で自身,産婦となった小百合さんはクッションにもたれ,その時を待っていた。

 3人の子供を育てながら助産院「ウテキアニ」を営む小百合さんは今,シングルマザーだ。

連載 とらうべ

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 私は文化人類学専攻の学生として,日本の助産と出産を文化的・社会的な面から研究している。卒業論文を書くために,日本の助産婦さんたちの現在の仕事,昔のお産婆さんとのつながり,そして助産婦という職業が将来どのように変わっていくのか調べている。私は日本で生まれ育っているが,今通っているプリンストン大学を来年卒業後,アメリカで助産婦学校に行き,将来は助産婦になるつもりだ。今回,助産婦の研究のために日本を選んだ理由には個人的な動機もあった。

 日本で初めて助産婦さんと出会ってお産に立ち会ったのは,東京の聖母病院だ。4時間も一人の産婦さんに付き添って,陣痛が強くなった頃から赤ちゃんが生まれる時まで,産婦さんの隣で助産婦さんの働きを見た。その若い助産婦さんはとても優しい手と言葉で,苦しんでいた産婦さんに力を与えながら,穏やかに支えていた。分娩室に入ったら,助産婦さんはかなり大きな赤ちゃんを上手に取り上げた。病院でも助産婦さんは,医療に組み込まれた産婦さんにも喜ばれるいいお産を体験できるようにしてくれるので,とても素晴らしいと思う。

連載 判例にみるジェンダー・9

胎児の権利 石井 トク
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 胎児は人としての権利を有するかという疑問は「生命の始まりはいつか」,「権利能力の発生はいつか」などといった根本的な疑問と関連して,法律の分野でも関心が高まりつつある。

 民法では人としての権利能力の始期は,出生したときとしている。出生とは,児が母体から完全に娩出したことをいう(全部露出説)。これに対して自発的に呼吸をした時(独立呼吸説)という考えもあるが,通説では全部露出説である。とすると,母体内に存在する胎児には権利能力がないことになるが,一方,民法では不法行為に基づく胎児の損害賠償を認めている。721条「胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたものと看做す」。また,相続に関しては886条に「胎児は,相続に関しては生まれたものと看做す」としている。つまり,胎児は生きて生まれる可能性を持っていたにもかかわらず,出生の時期が遅れたにすぎない。これをもって権利能力を全く認めないことは,すでに生まれたものと比べて不公平になるという事由による。

連載 英国助産婦学生日記・10

初めてお産を見る 日方 圭子
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初めての分娩室実習

 コミュニティでの仕事は楽しかったけれど,やはりお産を見るまでは助産が自分に合っているのか確信できなかったので,早いうちにお産を児て安心しておきたかった。だから3月になって分娩室で実習する日を何日かとった。

 メントーのメルがスタッフトレーニングの業務も兼任していてなかなかスケジュールが合わないので,今後メルと働けないときはマンデイがついてくれることになった。マンデイは私より小柄なカーリーヘアがかわいいちゃきちゃきした感じの人(55巻7号87ページの写真でメルの横にいる)。メントーを快く引き受けてくれたはずなのに,なんだか初日は不安そうに見えた。聞くと「1年生にはできるだけ自然分娩を体験できるようにしたいんだけど,私が最近ケアしたケースは高い確率で緊急帝王切開になっちゃっているから,今日も心配」。

連載 りれー随筆・203

子供を通して学ぶ日々 竹内 真美
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 この頃,児童虐待や家庭内暴力のニュースをよく聞くが,なぜ大切な子を傷つけてしまうのか?信じられない。

 陣痛が来て,不安と期待でドキドキしながら過ごす分娩第一期。やっといきめるようになってわが子を産み出す。待ちに待ったわが子との対面。その瞬間の感激は忘れられない。

今月のニュース診断

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障害者専門の風俗

 障害者を対象にサービスを提供する風俗が話題になっている。「CANDY」は,昨年6月に都内で開業した会員制デリバリーヘルス(デリバリーヘルスは利用客の自宅やホテルまで女性が出張して性的サービスする風俗)。ホームページを開設し,慈恵医大リハビリ科の医師と提携して会員の医療相談を受けたり,女性客の依頼に応じる男性スタッフが存在するなど,特色を打ち出している。これまでの会員は150人。北海道・関西・九州に滞在するスタッフが,脳性麻痺・脊椎損傷による車イス使用者や全盲の人など,全国からの依頼に応じているという(日刊スポーツ8月2日)。

基本情報

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助産婦雑誌
55巻10号 (2001年10月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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