連載 新生児医療最新トピックス・9
守られるべき命を守る新しい方法—RSウイルスによる呼吸器感染の免疫学的予防法
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学母子総合医療センター
pp.916-918
発行日 2001年10月25日
Published Date 2001/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902747
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なぜ,RSウイルスの予防が必要か
国立岡山病院の名誉院長故山内逸郎先生は,かつて未熟児室には専任のナースと医師以外,たとえ大学教授であっても見学者は入れないのみならず,家族さえ入れないほど厳重な保護隔離を行なっていた。山内先生がなぜそれほどまでに感染予防に神経を使っていたのかは,かつて,手塩にかけて育てあげてきた何人かの超未熟児をRSV(respiratory syncytial virus)の院内感染で失った痛恨の経験からであった。筆者は,山内先生にその話を1/4世紀も前にうかがって以来,母子関係確立のためには家族をNICUに入れなければならないが,感染も怖いというジレンマに悩まされ,心の片隅に「なにかRSV感染の対策はないか」と,常に思い続けてきた。3年ほどまえに,ある製薬会社がRSV抗体価の高いグロブリン(hyperimmunoglobulin)の治験を依頼してきたとき,自分にとってはあまり得意とする分野ではなかったが,二つ返事で「協力する」と答えたのは,そのような経緯からであった。
それは,ヒトから採った血清成分を毎月1回静脈注射しなければならない方法であった。しかし,その治験がまだ終わらないうちに,バイオテクノロジーの進歩により,より特異性が高く筋注のみで済む新しい予防法が開発されたのである。それが今回取り上げるパリビズマブ(palivizumab)であった1)。
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