助産婦雑誌 50巻8号 (1996年8月)

特集 自由な分娩体位—寝ないお産の達人になる

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 現場の助産婦さんは素晴らしい! その人にしかない素晴らしい技を持っている。それを,もっとしっかり分かち合えたら──そんな思いが,私たちが1996年3月31日,東京ウィメンズプラザで「フリースタイル出産ワークショップ」を行なったときの原動力になった。

 特に非仰臥位での出産介助は,助産院見学でもポイントになりやすい貴重な技だ。現在の日本には,十分にこれを指導する訓練システムがない。しかし,アクティブ・バースの考え方が日本に紹介されて以来「寝て産みたくない」と希望する母親は確実に増え,非仰臥位出産のメリットもすでに明らかになっている。

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今回のフリースタイル出産ワークショップで講師をしていただき,かつては黄(ファン)助産院においてチーム関係にあったお二人に,さらに詳細な介助の実際をお聞きしました

その実際・1 分娩体位の選び方
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基本的な体位とその特徴

 下に掲げたのは,基本的な体位とその特徴です。フリースタイルの出産とは「産婦が楽な体位を自由にとること」なので,正しい分娩体位というものはありません。また,分娩体位はどれか一つに決めるものでもなく,変換していきます。これらの基本体位は,組み合わされ,変形されていくことで,ひとりひとりに合った分娩体位の流れを作ります。

その実際・2 介助の詳細Q&A
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 Q フリースタイル出産には,何人のスタッフが必要ですか。

 A 病院で行なう場合は2人以上になるでしょう。3人いれば,かなり余裕が出ると思います。

 消毒をして清潔,不潔を区別する頃までは1人でも不自由しませんが,それ以降になるとプライマリの助産婦は児頭を押さえることに専念したくなり,肛門保護,脚を支える,モニターのプローブを押さえる,など補助者を頼みたい仕事が増えてきます。

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内診

 1.四つん這い姿勢での内診

 まず,上下の感覚が逆になりますから,手の甲を上にして挿入します。体内では,子宮口が肛門のほうへ逃げています。普通に内診指を入れていけば,子宮壁しか触れません。

 しかし子宮口が6〜7cm開大になれば,子宮口の辺縁には触れるようになります。そこで,子宮口辺縁から恥骨までの距離を測ります。もし全開大(10cm)なら,この距離は0cmのはずですから,たとえば,恥骨までの距離が3cmならば,10-3=7cm開大とします。

その実際・4 起きやすいトラブル
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小陰唇裂傷

 四つん這いの体位は,慣れないうちは「小陰唇裂傷が起きた」という声がよく聞かれます。原因は,ほとんどの場合,仰臥位と同じように会陰保護を行なったためです。手の圧迫により,児頭が小陰唇のほうに押されて裂傷の原因になるのです。会陰には触れず児頭だけを保持し,「児頭が降りてくる直下に手を当てる」,「骨盤誘導線に沿って力を加える」という原則を守ります。

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微弱陣痛

 第1期であれば,眠れるものならただ眠るのが一番いいと思います。

 第2期で「もうひとついい陣痛が来ない」というときは,分娩体位の効果が期待できます。できる限り縦型の姿勢にします。立位,スクワット,立て膝,バーススツールに座る,などです。そうすると,収縮の間隔はあくかもしれませんが,ひとつひとつの収縮はぐっと強まることがあります。このとき,産婦が疲れていれば,間歇期には側臥位など寝る体位にしてあげます。

産婦を起こす 河合 蘭
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産婦の先入観

 「お母さんがついてこない」という声をよく耳にする。寝ない出産は妊産婦にとっても常識を覆すやり方である。助産婦がフリースタィル出産に取り組んだところで,すべての産婦が直ちにそれを理解し歓迎するわけではない。

 産婦が先人観を破って起きるためには,助産婦がフリースタイル出産をどこまで自分のものにしているか,産婦とどこまで深く関わっているかが問われる。その基本を踏まえながら,杉山助産婦,中根助産婦が産婦をどうやって起こしているかを見てみよう。

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 病院でフリースタイル出産の一歩を踏み出すとき,おそらくどこの病院も同じような問題を抱える。その中でも大切なことの一つは,チームのひとりひとりが納得し,合意することだ。

 ワークショップに来ていただいた寺前光子さんにお願いして,勤務先での伝達講習会を取材させていただいた。この病院では月1回の勉強会が確立していて,企画進行にはスタッフ2名が持ち回りであたっている。寺前さんは今回,ワークショップに同行した後輩助産婦の上野麻紀さんとお2人で,この会を企画された。

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 分娩体位に関する研究は,臨床の状況を思うと意外でならないほど早期からあり,数も決して少なくない。海外では,1960年にはカルディロ・バルシア博士による初期の代表的論文が発表され,70年代終わりまでにはかなり数が増え内容も充実した。日本にこうした考えが紹介されたのは1979年,東京で世界産婦人科学会(FIGO東京大会)が開かれたときで,当時のFIGO会長バルシア博士が上映した立位出産のフィルムや分娩体位のセミナーが大きな反響を呼んだ。以来,日本人産科医の間にも仰臥位出産を見直し,座位分娩を提唱する動きが出てきた。

 一方,分娩体位の見直しは出産を女性の手に取り戻す運動とも結びついている。1982年,イギリスでは「アクティブ・バース宣言」が出され,6000人の女性が集い,自由な体位で出産する権利を主張するデモンストレーションとなった。 現在,日本語による非仰臥位出産の資料には,この二系統がある。前者は医学的観点から,後者は出産哲学の観点から見て共に欠かせない。フリースタイル出産を実践している助産婦によく読まれている文献を,発行年順にご紹介する。

誌上「フリースタイル出産ワークショップ」

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産婦さんをまること受け入れるお産

 私が開業しましたのは,ラマーズ法全盛の昭和59年だったわけですが,開業して間もない頃から,もう,座産をしたいというカップルがみえました。私も当時は仰臥位の出産しかやっていなかったものですから,戸惑いを感じつつ,試行錯誤しながら対応してきました。

 ところが,昭和63年に「アクティブ・バース」の本に出会ってから,産婦さんを心も体もまるごと受けとめるお産というのはこれだな,と確信しました。さっそく出産準備教室に非仰臥位出産のメリットを伝える話やデモンストレーションを取り入れ,自分で産む意識を持ってもらうように努めました。産む人が型にはまらず素直に自分を出せるような環境作りなど,助産婦に求められるものはたくさんあります。私も日々反省しつつ,今日に至っているわけです。

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 私は現在日赤医療センターに勤務しておりますが,黄助席院に3年間勤務していたことがあり,ただいまお話しくださった杉山先生の弟子でもあります。今日は“師匠”のあとにお話をさせていただくことをうれしく思っています。

 私がお話しできることは,施設の中ではどうすればいいか,ということだと思います。医師との関係,他の助産婦との関係,そして産婦さんとのつきあい方もあります。体位の詳細については杉山先生がお話しくださったので,私はこの3つについてお話ししたいと思います。

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 午後は,いよいよワークショップらしい場面に入った。一同,テーブルと椅子の講義室から畳の部屋へ移動し,円陣になった。司会は,JIMONの赤山さんが務める。

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 「厚生省/看護職員の養成に関するカリキュラム等改善検討会」の中間報告書が4月1日に公表されました。平成9年度から助産婦教育課程に新カリキュラムが導入されます。中間報告書の中の助産婦教育課程に関連する部分は本誌50巻5号に掲載させていただきました。また,全文は『看護教育』(37巻5号)をはじめ他誌に掲載されています。

 助産婦の立場から上記の検討会に委員としてご参加されました岡本喜代子氏と堀内成子氏に,新しいカリキュラム検討の過程と問題点,そして運用のしかたなどを語っていただきました。

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はじめに

 自分たちの子どもが遺伝的疾患をもつ可能性があるときに,受精卵のうちに診断して,病気にならない子どもを生みわける。そのための「受精卵の着床前遺伝子診断(以下着床前診断)」は,①体外受精,②胚のバイオプシー,③遺伝子診断の技術を組み合わせた,究極の出生前診断・発症予防といわれている。

 この方法は1989年,ロンドンのハマースミス病院で初めて行なわれた。5組のカップルが体外受精をし,そのうちの3組が,病気にならない女の子の出産に「成功」したのである1)

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「抱っこ法」との出会い

 お母さんは,赤ちゃんに泣かれると不安になります。そして,赤ちゃんの生理的欲求を満たしてあげ,何とか泣き止むようにと努力します。お母さんの誰もが,赤ちゃんができるだけ泣かないで機嫌が良い状態でいることを望みます。

 しかし実は,赤ちゃんの「泣き」には生理的欲求を訴えるための「泣き」だけではなく,「過去の辛さを慰めてほしい。辛いことから生じた感情的な緊張を発散させたい。思いっきり泣いて癒されたい」という欲求もあるのです。

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 岐阜県高(たか)鷲(す)村は県中央部の山間地にある人口3,500人の静かな村.年間の出生数は約40人ほどである.村役場の保健婦伊藤清美さんはある日,自宅出産の希望をもっ妊婦さんの話を同僚から聞き,本人と面談,妊婦の希望に沿いたいと考えるに至った.

 伊藤さんは保助合同コース出身の助産婦有資格者.保健婦となってからも地元の広域病院で助産婦として勤務を経験,また高山赤十字病院などで研修も積んでいる.お産にはそれなりの自信もあるが,村の職員としては責任者からのOKが必要である.幸いご自身で3人めのお子さんを取りあげた経験のある村長の理解をはじめ,ひそかにバックアップ体制を敷いてくれていた医師など,結局は村中に支えられて初めての自宅出産は遂行された.

連載 おニューな地球人・52

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 チベット人の女たちは,「お産は神様がくれた女の仕事」と言う。彼女たちにとってお産は,食事を作ったり,糸を紡いだりすることと同じように,とても日常的なことに過ぎないのだ。ゴイ・ゲーさん。32歳。ラサ近郊の電気も水道もない小さな村に住んでいる。1か月前に第3子を自宅の庭にある納屋で出産した。

 ゴイさんは,赤ん坊が生まれそうになると,家を出て納屋をうろうろした。立った姿勢のまま赤ちゃんが出てきたので,思わず前にジャンプしてしまったという。「私の母が,あわてて赤ん坊をつかまえた。アハハ……」

連載 とらうべ

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 私は,この6月まで福岡県看護協会の助産婦職能委員の任にあり,母子や家族に少しでも正しい医療情報を提供するために,今年2月,会員施設を対象に「母子保健看護情報調査」を実施した。その結果,大・中病院の分娩数の激減の事実を確認し,非常に驚いている。今から10年前,開業医の先生から「病院では普通のお産はいずれなくなりますよ」と聞いたことがある。地域特性かもしれないが,福岡県ではまさにその方向に移行しつつあるように思われる。

 単純に計算すると、回収された会員の施設ごとでは35病院の平均月間分娩数(平成7年)は812人,そこで働く助産婦数は396人,病院間の差はあるものの平均すると,助産婦1人当たりの月間分娩介助数はなんとおよそ2人となる。一方,産科診療所8か所の平均月間分娩数は440人,そこで働く助産婦は54人であった。施設間,地域の助産婦の偏在はますます強くなっている。ちなみに母乳育児相談室12か所の乳房トラブルの新患数は平成7年では1,652人もあった。このことも施設助産婦の偏在がもたらしている1つの現象ではないだろうか。1950年代,自宅出産は急激に施設に移行したが,その後約30年間,助産婦不足に困窮した病院に全く逆現象が起こりつつある。変革の時期にある施設管理者は2つの問いかけ,疑問を投げかけているようである。1つは施設全体のいかなる成果の改善が必要か。

連載 シリーズお産人探訪・11

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 高鷲村は岐阜県郡上郡の山間にある静かな農村だ。ここに,村ぐるみで自宅出産をしてしまった夫婦と,それを応援した保健婦がいる。ユニークな登場人物がいっぱいの,まるでドラマのような自宅出産ストーリーをどうぞ。

連載 りれー随筆・144

私の妊娠大変記 野田 深雪
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 「今日も1日,あっという間だった……」。そう思って眠りにつく。子供が2人になって半年,毎日がとても忙しい。私はだいたい寝つきが悪い。小さい頃から布団に入っても30分以上は起きていて,よく時計の鳴る音を聞いていた。だが,今は違う。2粒の睡眠薬のおかげでスーッと心地よく眠りにつけるのである。1粒は2歳半の長男・圭吾,もう1粒は5か月になる長女・紀恵だ。私が紀恵の妊娠に気付いたのはちょうど1年前だった。

ニュース・プラス・ワン

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医学的に意味のない割礼

 昨年,医療関係の雑誌を読んでいて,ある記事に大変なショックを受けた。それは女子に対して行なわれる儀式としての「割礼」の記事であった。

 男子の割礼は,ペニスの包皮を切除するというもので,亀頭を露出させれば,包皮と亀頭との間に垢が溜まらなくなるので,ペニスのガンにかかりにくくなるかも知れない,という程度の意義はある。また最近言われているのは,パートナーの女性に対し,HPVの感染で起きる子宮頸癌の発症を少なくする,といった説もある。

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はじめに

 近年の周産期医療においては,母子の安全性の確保のため先手の医療を志向する傾向にあり,帝王切開の割合は高まっている。

 正常分娩後の褥婦に比べて離床が人幅に遅れる帝王切開術後の褥婦の場合,分娩後の悪露の排出不良,母乳分泌開始の遅延など,問題点が多い。

私の分娩体験記

自然出産からの贈りもの 山中 容子
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 平成7年2月7日,その日は穏やかでカーテン越しに朝日が入り小鳥もさえずっていました。その中でわたしは,生まれたばかりの菜子を傍らに,幸せな時間を過ごしていたのです。

 自然の素晴らしさに酔いしれ,すべてのものに対して神に感謝したい気持ちでいっぱいでした。生まれてこのかた,心からそのように思えたのはこのときが初めてでした。それほどに,自然な出産は神聖なことであり,生命の神秘や自然の偉大さを感じさせてくれるものでした。

Medical Scope

巨大児の出生前診断 島田 信宏
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 頭位分娩で児頭娩出後に肩甲の娩出が困難になる肩甲難産(shoulder dystocia)では,新生児に多くの合併症が発生する可能性があります。難産のための新生児仮死(低酸素症),あるいは分娩外傷としての分娩麻痺(腕神経叢麻痺や横隔膜神経麻癖)や分娩骨折(鎖骨や上腕骨の骨折)といやな合併症発生が考えられます。こういった肩甲難産の大部分を占めるのが巨大児です。必ずしも4kg以上の体重を示す巨大児ばかりではなく,それに近い大きな胎児です。巨大児は肩甲難産だけではなく,分娩が長時間にわたる遷延分娩から難産といわれる状態になることも多いでしょう。そして,出生前に巨大児であることが診断されていたら,この難産や肩甲難産は発症しないで済んだのではないかと考えられる場面があります。

 しかし,これだけ発展をとげた産科周産期医療でも,巨大児の出生前診断はとても難しいものの部類に入り,100%出生前に診断するということはなかなかできません。超音波断層法は大変有効な手段ではありますが,ときどき見逃してしまうこともあります。大切なポイントは胎児の1カ所の計測で巨大児だという診断をしないことです。すなわち,胎児の児頭大横径,大腿骨長,胸囲,腹囲といったように多くの項目をチェックして,計算式を作ったりして,それに当てはめて診断するという方式が採用されなくてはなりません。また,胎児の肩幅が計測できるととてもいいのですが,なかなかうまく計れません。

基本情報

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助産婦雑誌
50巻8号 (1996年8月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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