Medical Scope
巨大児の出生前診断
島田 信宏
1
1北里大学病院産婦人科
pp.693
発行日 1996年8月25日
Published Date 1996/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901542
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頭位分娩で児頭娩出後に肩甲の娩出が困難になる肩甲難産(shoulder dystocia)では,新生児に多くの合併症が発生する可能性があります。難産のための新生児仮死(低酸素症),あるいは分娩外傷としての分娩麻痺(腕神経叢麻痺や横隔膜神経麻癖)や分娩骨折(鎖骨や上腕骨の骨折)といやな合併症発生が考えられます。こういった肩甲難産の大部分を占めるのが巨大児です。必ずしも4kg以上の体重を示す巨大児ばかりではなく,それに近い大きな胎児です。巨大児は肩甲難産だけではなく,分娩が長時間にわたる遷延分娩から難産といわれる状態になることも多いでしょう。そして,出生前に巨大児であることが診断されていたら,この難産や肩甲難産は発症しないで済んだのではないかと考えられる場面があります。
しかし,これだけ発展をとげた産科周産期医療でも,巨大児の出生前診断はとても難しいものの部類に入り,100%出生前に診断するということはなかなかできません。超音波断層法は大変有効な手段ではありますが,ときどき見逃してしまうこともあります。大切なポイントは胎児の1カ所の計測で巨大児だという診断をしないことです。すなわち,胎児の児頭大横径,大腿骨長,胸囲,腹囲といったように多くの項目をチェックして,計算式を作ったりして,それに当てはめて診断するという方式が採用されなくてはなりません。また,胎児の肩幅が計測できるととてもいいのですが,なかなかうまく計れません。
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