連載 とらうべ
「出産場所」が変わりつつある
宮崎 文子
1
1福岡県立看護専門学校
pp.613
発行日 1996年8月25日
Published Date 1996/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901520
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私は,この6月まで福岡県看護協会の助産婦職能委員の任にあり,母子や家族に少しでも正しい医療情報を提供するために,今年2月,会員施設を対象に「母子保健看護情報調査」を実施した。その結果,大・中病院の分娩数の激減の事実を確認し,非常に驚いている。今から10年前,開業医の先生から「病院では普通のお産はいずれなくなりますよ」と聞いたことがある。地域特性かもしれないが,福岡県ではまさにその方向に移行しつつあるように思われる。
単純に計算すると、回収された会員の施設ごとでは35病院の平均月間分娩数(平成7年)は812人,そこで働く助産婦数は396人,病院間の差はあるものの平均すると,助産婦1人当たりの月間分娩介助数はなんとおよそ2人となる。一方,産科診療所8か所の平均月間分娩数は440人,そこで働く助産婦は54人であった。施設間,地域の助産婦の偏在はますます強くなっている。ちなみに母乳育児相談室12か所の乳房トラブルの新患数は平成7年では1,652人もあった。このことも施設助産婦の偏在がもたらしている1つの現象ではないだろうか。1950年代,自宅出産は急激に施設に移行したが,その後約30年間,助産婦不足に困窮した病院に全く逆現象が起こりつつある。変革の時期にある施設管理者は2つの問いかけ,疑問を投げかけているようである。1つは施設全体のいかなる成果の改善が必要か。
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