Medical Scope
抗リン脂質抗体と胎児(2)
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.680
発行日 1991年7月25日
Published Date 1991/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900379
- 有料閲覧
- 文献概要
5月号につづけて抗リン脂質抗体と胎児の話題をお知らせします。前回,自己免疫抗体はもっているものの,全身性エリテマトーデスなどの病気にならないひとがいるということをお話ししました。抗リン脂質抗体の場合がもっとも多いので,今日では,そのような症例のことを抗リン脂質抗体症候群と呼んでいます。この女性では,一般に流産,死産の確率が高いことは前回述べたとおりです。第1回目の分娩はうまくいっても,次回の妊娠では,何とその80%もが流産してしまうそうです。ですから,2回目以降に流産をくり返すような症例では,抗リン脂質抗体のチェックも必要となるでしょう。
今日,この抗リン脂質抗体陽性例の治療には,膠原病の治療に用いるプレドニンなどの副腎皮質ホルモンが用いられます。この治療で患者さんの体内の抗リン脂質抗体は減少してくることがわかっています。できれば,妊娠する前からプレドニンなどを投与しておいて,6ヵ月ぐらいするとかなり抗リン脂質抗体の量が減ってくるので,その時点で妊娠するように指導するとよいこともわかりました。さらに,妊娠中も副腎皮質ホルモンの治療はつづくことになります。しかし,妊娠中には,副腎皮質ホルモンの投与量を少なくしたいのが私たちの希望です。1日20mg以内に,できれば1日15mg以内にしたいのです。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.