連載 フランス出産事情—変わりゆく出産・助産婦・病院・13
フランスの産院を訪ねて③—根本的変革を志向するリラ
舩橋 惠子
1
1桜美林大学国際学部
pp.660-666
発行日 1991年7月25日
Published Date 1991/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900375
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リラへの道
リラは,日本ではほとんどその名を知られていないが,フランスでは有名なパリ郊外のラディカルな産院である(注1)。しかし,その評価は2つに分かれていた。1つは,夫のみならず子どもにも出産立ち会いを許している進んだ産院という評判であり,もう1つは,十分な医療水準を持たずに自然出産を唱える,問題のある産院という噂である。ピティヴィエのように地域の中心になっている公立病院ならば,一定の医療水準を備えているはずだという信頼が寄せられるが,リラは小さな私立の産院だったから,いろいろと疑いが持たれたのだろう。
しかし,私の身近な研究者仲間の1人は意識的にリラを選んだし,研究指導者ルークスさんの一番末の妹であるショーシャール=ガルニエさんも,リラを選んで無事に高齢初産していた。彼女たちはこぞって,リラは訪ねるに値するよい産院だと私にすすめた。特に,ガルニエさんは,ジャンヌという名前の麻酔科医はすはらしいから,ぜひ会って話を聞いたらよいと言った。
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