手術 72巻9号 (2018年8月)

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肛門疾患は多くの患者がいるにもかかわらず,専門的な教育機関がなく,痔核・痔瘻・裂肛などの肛門疾患の定型的な疾患においても適切な治療が行われる専門医師が少ない状態にある。そのなかで,実臨床において担当医は各肛門疾患の重症例,再発例,合併症などの特殊な状態や,定型的でない肛門疾患に対して,適切な治療を行うためにどのような手術を行うべきか,または肛門科専門医に紹介すべきか,を判断しなくはならない。難治性肛門疾患の手術治療においては,教科書,文献からの知識だけでは不十分であり,多くの経験と繊細な技術を必要とする。

難治性内痔核に対する手術 八子 直樹
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痔核は肛門疾患のなかで最も頻度が高く,排便時出血や脱出を愁訴とする手術適応患者も多いが,一方で病態や症状は患者により千差万別である。定型的な状態であるのはまだしも,治療に難渋させられる症例もしばしば経験する1)。

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日常臨床上,肛門手術後の肛門狭窄は,裂肛による狭窄と比して狭窄の度合いが強く,かつ瘢痕形成した狭窄であり,治療に難渋する場合が多い。術後の肛門狭窄に対して,通常行われているV-Y plastyは,侵襲が大きくなりがちである1)。一方,皮膚弁移動術(sliding skin graft;SSG)は侵襲が少ないが,通常の裂肛に行われる方法では,強度な狭窄に対しては対応が困難である。

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一般に痔瘻はまず膿瘍の症状にて発症し,切開・排膿ののちに痔瘻化することが多い。しかし,高位筋間膿瘍については保存的加療が奏効することや1回の切開・排膿のみで痔瘻化せずに消退する症例が他の肛門周囲膿瘍に比べると多い。当院の北山らの報告1)では2013年1月~2015年3月までの高位筋間膿瘍25例において,7例(28%)は切開・排膿を行わず保存的治療で改善した。

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痔瘻の手術の留意点は,根治性と同時に肛門機能の温存である。

広範囲におよぶ深部の病巣が肛門括約筋とその周囲の構造,機能を侵し,さらに根治手術においては,原発口,原発巣の処理ならびに瘻管の切除などにより肛門機能に侵襲が加わる。さらに術後創部は日々の排便により安静を保ち難く汚染は回避できず,術後のドレナージ不良などが治癒遷延や再発リスクになる。

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われわれは術前に深部痔瘻(坐骨,骨盤直腸窩痔瘻)をジャックナイフ位MRI法で解析し,いかなる深部痔瘻も「浅外肛門括約筋レベルの短く直線的な単純な痔瘻」に変換するMRI navigating seton手術を行っている。骨盤直腸窩痔瘻に対するこの術式を解説する。なお,骨盤直腸窩痔瘻,膿瘍の原発口は,肛門後方の6時方向の歯状線,およびその近傍に位置し,その原発巣膿瘍は,深外肛門括約筋レベルの後方の内外肛門括約筋間,あるいは破壊された外肛門括約筋内に存在する1)。

直腸瘤の手術 赤木 一成
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直腸瘤は,近年,消化器外科領域でも認知されるようになってきた疾患である。直腸瘤の2大症状は「後膣壁膨隆(prolapse)」および「便排出障害(obstructed defecation)」であり,それぞれ異なる治療戦略が必要となる。

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完全直腸脱の術式は経肛門的術式と経腹的術式に分かれるが1-3),近年,腹腔鏡下大腸手術の普及により経肛門的術式よりも根治性の高い経腹的直腸固定術を腹腔鏡下で施行する施設が増加している4,5)。直腸脱症例のなかには骨盤臓器脱(子宮脱・直腸瘤・小腸瘤など)を合併する症例もみられ,このような骨盤臓器脱合併例に対して産婦人科医と協力して同時または異時的に外科的な治療が行われることが多い。われわれの施設では直腸が膣内に脱出する骨盤臓器脱をときどき経験しており,このような症例に対しても後膣壁形成を併用した腹腔鏡下直腸固定術が有用であると考えている。

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Fournier症候群の定義はいまだ定まっていないが,一般的には肛門周囲,性器,会陰の壊死性筋膜炎とされている。直腸肛門から発生し,泌尿器系,会陰部へと拡大し,放置すれば急速に皮下の脂肪織を壊死させ腹壁へと広がり重篤な敗血症へと移行する疾患である。肛門科領域の疾患のなかでは最も緊急性の高い疾患で,致死率は3~67%と報告されている1)。

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クローン病に合併する痔瘻は一般的な痔瘻とは異なり「難治」「多発」「長期」に病状が継続するため,患者のQOLを大きく損なうことが多い。そのため,症例を多く治療する施設に患者が集中する傾向にある。しかし,肛門病変が先行する際には初回の手術が一般外科医に委ねられることも少なくない。

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肝切除は肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;HCC)や大腸癌肝転移(colorectal liver metastasis;CLM)などの肝腫瘍に対する唯一の根治的治療である。近年,術後肝不全の予防や再肝切除率の向上という観点から残肝容積をできるだけ温存する肝切除(parenchyma-sparing liver resection)を推奨する報告が増えてきている1-8)。一方,残肝のうっ血は,肝機能低下や,肝再生の遅延,または肝壊死を招く可能性があり,残肝の静脈還流を維持することは肝切除において重要である。腫瘍がS2亜区域に位置し,左肝静脈(left hepatic vein;LHV)に浸潤している症例では,LHV切除によりS3亜区域のうっ血が生じるため,通常は外側区域切除が選択される。

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総胆管結石に対する治療法は,胆嚢結石の合併や胆管炎の有無など患者側の要因や治療にあたる施設の考え方などによって決定されている。胆石症診療ガイドライン1)における総胆管結石の治療としては,内視鏡的結石摘出術が第一選択として推奨されている。また,胆嚢結石合併総胆管結石に対しては,腹腔鏡下胆嚢摘出術と内視鏡的総胆管結石摘出術の併用(二期的治療)が望ましいとされている。一方,内視鏡外科診療ガイドライン2)によれば,腹腔鏡下胆嚢摘出術兼総胆管結石摘出術(一期的腹腔鏡手術)は「術者の経験と技量があれば」との条件付きで推奨されている。

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腎細胞癌はしばしば肺,骨,肝臓へ血行性に転移するが,胆嚢への転移は剖検例の0.58%とまれである1)。今回われわれは,9年前に左腎細胞癌で手術を受け無再発で経過するも,スクリーニングの超音波検査で発見された腎細胞癌の胆嚢転移を経験したので,文献的考察を加え報告する。

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転移性膵腫瘍の報告は現在まで腎癌・肺癌などを原発とする症例が散見される1)が,軟部腫瘍さらに平滑筋肉腫の膵転移の報告はきわめてまれである。

今回,われわれは後腹膜原発平滑筋肉腫の膵転移の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

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リンパ管腫はリンパ組織が孤立することにより発生すると考えられ,小児の体表に発生することが多く,腹腔内に発生することはまれである。膵臓原発のリンパ管腫は1913年にKochらにより最初に報告され,リンパ管腫全体の1%以下と非常にまれな良性腫瘍である1,2)。

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腹腔鏡下大腸切除術は近年,急速に普及し,高難易度とされてきた進行癌や横行結腸癌,下行結腸癌に対しても,その適応が拡大されている。腹腔鏡下大腸切除術後の合併症として腸間膜欠損部をヘルニア門とした内ヘルニアが報告されているが,発生頻度が少なく腸間膜欠損部閉鎖の必要性についてはいまだコンセンサスは得られていない。

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手術
72巻9号 (2018年8月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4423 金原出版

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