臨床皮膚科 68巻3号 (2014年3月)

連載 Clinical Exercise・79

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症例

患 者:72歳,女性

主 訴:右母指腫瘤

既往歴:気管支喘息,高血圧,糖尿病を加療中

家族歴:特記すべき事項なし.

現病歴:初診の約半年前,右母指の爪甲が脱落し,紅色皮疹が出現した.近医にて外用加療を受けたが改善せず,徐々に隆起し,肉芽腫様となってきたため,当科を紹介され受診した.

現 症:右母指爪甲は欠損しており,爪床の全体は凹凸不整で湿潤し,橈側の側爪郭から後爪郭にかけて21×20mm大の表面びらんした淡紅色の結節がみられた(図1).

マイオピニオン

直接検鏡のすすめ 望月 隆
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1. はじめに

 皮膚科の診療において最も重要な臨床検査は直接検鏡,特にKOH法であろう.この方法はかつては皮膚科医にとって当然のように習得され,そのknow-howは医局の先輩から新人へと受け継がれていた.この方法は単に皮膚真菌症や疥癬の診断法にとどまらない.除外診断のために陰性所見が期待される場合もあり,またそれをステロイド外用薬使用の前提にしたりする.そのため,これを正確に行えることは皮膚科医のidentityと考えられる.ところが近年これがあまり行われなくなっていることが明らかになり,診断力の低下が懸念されている.この理由として西本1)はある程度の熟練を要する一連の操作が,データを数値化し,それを単純に比較するという安易な風潮に逆行しているためと述べているが,医育機関においてKOH法を教育するという文化が滅びてしまった可能性が危惧される.この責任を指導者の意欲の低下に帰すことは簡単であるが,指導者も医局で先輩の姿を見て育っているので,かなり前からこの傾向は進行していたと考えられ,問題はより深刻である.医育機関の指導者は,正確なKOH法は皮膚科医のminimal requirementであり,皮膚真菌症の診断がままならない皮膚科医は存在価値を問われることを強調しつつ,専攻医に十分修練を積ませていただきたい.

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要約 札幌皮膚病理診断科で,澄明細胞性棘細胞腫(clear cell acanthoma:CCA)と病理診断された98例について,臨床病理学的検討を行った.性別は,男性39例,女性58例(不明1例),切除時年齢は23~90歳の平均64.8±15.5歳であった.発生部位は,不明の5例を除く93例中,軀幹が41例(44.1%),次いで下肢27例(29.0%),顔面15例(16.1%)の順であった.軀幹のなかでは,乳頭・乳輪部5例(男性1例,女性4例),外陰部8例(男性2例,女性6例)と多く発生していた.病理標本を再検討できた28例中19例(67.9%)で腫瘍細胞中にメラニン顆粒が確認された.病変内への好中球浸潤は21例(75.0%),膿瘍形成は5例(17.9%)でみられた.14例(50.0%)で,病変の表面に鱗屑痂皮がみられた.今回のわれわれの臨床的および病理組織学的データからは,CCAは良性表皮性腫瘍の可能性が高いと考えられた.

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要約 26歳,男性.5年前より口唇に疼痛を伴う水疱形成を繰り返していた.2008年8月中旬,左口唇に小水疱が出現した.近医にて口唇ヘルペスを疑われバラシクロビルを処方されたが改善しなかったため,当科を受診した.肛門,亀頭部にもびらんがみられTzanckテストを施行したが陰性であった.その後,自然軽快した.以後2回ほど同様の皮疹が出現し,下顎,両手背に有痛性の紅斑も出現するようになったが自然軽快した.2011年4月中旬,同症状が再度出現し,詳細な問診の結果,トニックウォーターを含むカクテルの摂取後に症状が出現していたことが明らかになった.ジントニック1杯に含まれるトニックウォーターの半量(60ml)による誘発試験を施行したところ,摂取2時間後に症状が出現し,トニックウォーターによる固定疹と診断した.薬剤内服歴のない若年者に同部位に繰り返す皮疹を認めた場合,トニックウォーターによる固定疹も鑑別に挙げることが重要であると考えた.

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要約 81歳,女性.2011年8月頃から腋窩,乳房下,鼠径部など,体幹の間擦部に多発する掻痒を伴わない褐色斑を自覚した.皮疹に先行する薬剤歴はなく,HCV抗体陰性,金属パッチテストも陰性だった.病理組織所見では,軽度の液状変性と真皮浅層の帯状のリンパ球主体の炎症細胞浸潤,多数のメラノファージを認めた.皮疹の分布,病理組織学的所見からlichen planus pigmentosus-inversusと診断した.フルオシノニド外用を1か月続けたが皮疹は改善しなかったため中止した.中止2週間後の受診時に退色傾向を認め,約4か月が経過した現在も無治療のままさらに退色傾向にある.本症では,古典的lichen planusと比較し炎症反応の持続性の欠如が指摘されている.本症の発症,増悪にはKöbner現象が関与している可能性がある.自験例の経過から,外的刺激を減らすよう指導しつつ,未治療で自然経過観察することも治療の選択肢の1つとなりうると考えた.

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要約 20歳,女性.約1年前に甲状腺機能低下,サイログロブリン抗体,甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の上昇があり,橋本病と診断され加療中であった.数日前からの弛張熱,全身掻痒感を主訴に当科を紹介され受診した.サーモンピンク色の紅斑とpersistent papules and plaquesを認め,炎症反応上昇,肝機能障害があり,成人Still病と診断した.プレドニゾロン(PSL)40mg/日より治療を開始するも皮疹が残存したため,60mg/日に増量し,寛解を得た.PSL 10mg/日まで漸減した時点で甲状腺機能亢進症状が出現,甲状腺刺激抗体上昇を認め,Basedow病と診断され,チアマゾール内服で寛解した.後日成人Still病発症時の残血清でTSH受容体抗体の上昇を確認した.Basedow病,橋本病は甲状腺臓器特異的自己免疫性疾患であり,両者にはその機序は不明なものの移行例が存在する.一方で成人Still病とこれらの合併報告はきわめて少ない.自験例ではPSL高用量投与や成人Still病による高サイトカイン血症が甲状腺疾患の変換に影響したと推測する.

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要約 61歳,女性.既往歴にB型肝炎と関節リウマチがある.初診1年前より両下腿から足背にかけて紫斑が出現した.1か月前から右下腿外側に小潰瘍もみられるようになり,次第に拡大増数したため当科紹介となった.下腿・足背に網状皮斑と大小の打ち抜き潰瘍を認め,病理組織学的に真皮全層の白血球破砕性血管炎の像を呈していた.IgM 863mg/dl,RF 2,162IU/dl,IgM-κ型M蛋白とIgGの混合型(Ⅱ型)クリオグロブリン血症があり,末梢血,骨髄中にモノクローナルなB細胞の腫瘍性増殖を認め,血液内科にてマクログロブリン血症と診断され原疾患と考えられた.プレドニゾロン30mg/日や低温サウナ療法を開始したが難治であった.クリオフィルトレーションを試みたところIgM値・クリオクリット値は速やかに改善し,潰瘍は2か月後に上皮化した.半年後,原疾患であるマクログロブリン血症に対してリツキシマブ,シクロホスファミドを用いた化学療法を施行し,IgM・クリオクリット値は安定した.冬季は保温に努めており,皮疹の再燃はない.クリオグロブリン血症による皮膚症状の病勢と,原疾患の病勢を十分に吟味し治療指針を立てることが重要と考えた.

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要約 61歳,女性.初診の4年前より心サルコイドーシスを疑われ,1年前に完全房室ブロックにてペースメーカーを挿入した.当院内科での心サルコイドーシスの精査入院中に,皮疹につき当科を紹介された.3年前より計3回両眉毛部に施術されたアートメイク部に一致して鱗屑を付す紅色小結節を認め,項部には大豆大の紅色結節,両下腿に母指頭大の紅褐色斑や扁平結節が散在していた.眉毛部の紅色小結節の病理組織像は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫であり,真皮内に色素顆粒が散見された.Gaシンチグラフィー,PET検査で両側肺門リンパ節腫脹と心臓,肺に多発する結節陰影を認めた.サルコイドーシスと診断し,プレドニゾロン30mg/日を開始したところ4週間後には画像検査での集積像は消失し,5週間後には皮疹も軽快傾向となった.サルコイドーシスの瘢痕浸潤と考えた.アートメイクや刺青部に紅斑や結節を認めた場合には,サルコイドーシスを考慮する必要があると考えた.

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要約 1歳6か月,男児.低出生体重児,二卵性双生児.発育および発達は正常である.出生時より左胸鎖関節部に硬結があり,1歳6か月頃より排膿を繰り返すため受診した.30×20mm大,表面ドーム状に隆起する紅色結節で,波動を伴い,容易に排膿した.造影CT,超音波検査では,周囲臓器との交通はなかった.2歳時に全身麻酔下に摘出した.摘出組織は皮下脂肪織内に盲端を有する重層扁平上皮からなる瘻孔で,内腔に毛を含み,周囲に多数の毛包と,脂腺,汗腺を認めた.先天性皮下皮様瘻孔と診断した.本症は左胸鎖骨関節部に生じ,排膿を繰り返すことを特徴とする.皮様囊腫と類似した組織像を呈するが,臨床的には,発生部位や排膿,膿瘍形成の有無などに関して明らかな差があり,別の疾患概念と考える.

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要約 62歳,男性.東日本大震災を契機に自宅内部は生活用品が散乱したため,半年間玄関にて座位で過ごした.下腿に浮腫,色素沈着,皮膚肥厚を伴う疣状局面を認めelephantiasis nostras verrucosa(ENV)を呈し,坐骨結節,尾骨に達する臀部褥瘡も生じた.血液検査でCRP 20mg/dl,Alb 2.2g/dl,細菌培養で下腿疣状局面よりブドウ球菌,臀部褥瘡より嫌気性菌を含む複数の菌種,CT画像上ガス像を伴わない臀部潰瘍を認めた.タゾバクタム/ピペラシリン4.5g/日投与と壊死組織除去,持続陰圧療法にて褥瘡は2か月で縮小し,ENVも挙上,洗浄で改善した.自験例は長期座位で過ごす生活習慣を原因とする褥瘡を併発したENVの1例であった.

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要約 82歳,女性,Alzheimer型認知症.当院受診1か月前より仙骨部に褥瘡が発生したため,入所中の施設にてラップを用いた密閉療法(ラップ療法)を開始された.その後,原因不明の熱発が出現したため,前医を受診し抗菌薬を投与され,褥瘡部のデブリードマンが施行された.しかしその後もさらに全身状態が悪化し,不明熱として当院に緊急搬送された.当院受診時,水玉状の孔をあけたラップが褥瘡に直接貼付され,上からガーゼ保護されていた.ラップを取り除くと強い悪臭と皮膚壊死が認められた.採血では白血球数34,800/μl,CRP 14.0mg/dlと炎症反応高値を認め,クレアチニン2.75mg/dlと腎機能低下を認めた.また創部細菌培養検査では嫌気性菌を検出した.腹部単純CTでは皮下および筋肉組織内にガス像を認めた.以上よりガス壊疽を疑い緊急にデブリードマンを施行,連日の洗浄処置,またメロペネム点滴0.5g/日,テイコプラニン点滴400mg/日を15日間施行し改善した.自験例では褥瘡感染と認識しながらもラップ療法を継続し,重症感染症を合併した症例である.ラップ療法は安易で安価な治療法であるが,重篤な合併症も起こしうることを十分に理解する必要があると考える.

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要約 66歳,男性.右三叉神経第一枝領域の帯状疱疹で,初診時に右上眼瞼と右側鼻背に発赤腫脹と水疱を認めた.発症3日目よりアシクロビルを7日間投与したところ皮疹と眼瞼腫脹は改善したが,発症右眼の開眼困難と眼球運動障害が生じた.眼科で右動眼神経・右外転神経麻痺と診断されプレドニゾロン30mg/日から投与が開始された.症状改善とともにプレドニゾロンが漸減され約3か月後に投与終了となった.三叉神経第一枝領域に出現した帯状疱疹は,高率に眼合併症を併発し,特に鼻背にまで皮疹が及んでいる場合はHutchinson徴候として知られ,その頻度はさらに高くなる.三叉神経第一枝領域の帯状疱疹の急性期は眼瞼腫脹が著明なため外眼筋麻痺が見逃されやすい.神経麻痺症状が感覚神経だけでなく運動神経にまで出現しているということは,炎症が広範囲に波及していることを意味するため早期の対応が必要である.

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要約 60歳,男性.5,6年前より肛門付近に掻痒を伴う皮疹があった.当院外科で生検を行い,尖圭コンジローマと診断され,当科に依頼された.初診時,仙骨部から会陰部にかけて手掌大のカリフラワー状の赤褐色腫瘤を認めた.全摘出標本で一部真皮内への浸潤像と核異型があり,悪性化した巨大尖圭コンジローマと診断した.巨大尖圭コンジローマはBucshke-Löwenstein腫瘍とも呼ばれ,悪性化の報告は多いが転移の報告はほとんどない.慢性刺激や免疫抑制状態などが巨大化の誘因となるとされている.自験例のように全摘出を行って初めて悪性像を確認できる症例もあるため,治療としては外科的切除を行い,病理組織学的に検討することが重要と考えた.

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要約 83歳,男性.12年前より左鼻下に皮疹を自覚し徐々に増大した.初診時,左鼻翼下に紅褐色,光沢のある25mm大の有茎性腫瘍を認めた.ダーモスコピーで血管拡張像あり.MRI検査にて,不均一な造影効果を認めた.病理組織学的に,HE染色で好酸性に染色される充実構造および腺管構造と,好塩基性に染色される間質構造を認めた.管腔は2層の細胞から構成され,一部断頭分泌像がみられた.また,充実部上皮細胞の一部には,大型で異型の核を有するものや,核分裂像を伴う細胞があった.MIB1/p53染色では,多型性や分裂像を伴う細胞も含め陰性であった.CEAは腺管部管腔側細胞に,S100蛋白は充実部の上皮細胞に,α-SMAは,管腔部の筋上皮細胞に発現していた.上記より皮膚混合腫瘍と診断した.自験例は,比較的大型で,MRIで不均一な造影効果や一部の上皮細胞からは悪性を疑う所見もあり,悪性皮膚混合腫瘍との鑑別が必要であった.

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要約 47歳,女性.既往にアルコール性肝障害がある.約1年前より左腋窩の赤褐色局面を自覚し,徐々に拡大したため受診した.15×30mm大,境界明瞭でなだらかに隆起し,皮下まで軟らかい浸潤のある局面で,軽度の圧痛を伴った.右腋窩にも,軽微だが同様の変化を認めた.表在リンパ節は触知しなかった.生検で,真皮全層から皮下に巣状の細胞浸潤を認めた.浸潤細胞は異型性のないリンパ球と形質細胞よりなり,濾胞様構造を形成していた.CD20陽性細胞は濾胞中心に,CD3陽性細胞は濾胞辺縁に目立っていた.IgG,IgM,IgA染色,κ鎖,λ鎖染色により,形質細胞は,多クローン性の増生と判断した.血液検査ではIgE 878mg/dl,IgA 623mg/dlと上昇していたが,その他の全身精査で特記すべき異常はなかった.初診後1年以上経過してから,顔面に赤褐色局面が多発,同様の組織像と染色形態を示した.偽リンパ腫と診断したが,皮膚B細胞性リンパ腫や形質細胞増多症も鑑別に考えた.

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要約 84歳,女性.脱水,低栄養等で当院内科に入院1か月後に手のかさつき,掻痒が出現した.次第に悪化し約2か月目に当科に紹介された.両手掌等に黄色落屑を認め,角化型疥癬と診断の下,直ちに院内感染対策を行った.院内感染者は11名(看護師4名,入院患者と付き添い7名)で全例にイベルメクチン内服とクロタミトン外用の併用療法を行った.角化型症例には4週間,また他の通常疥癬症例には1~2週間の治療を要した.スタッフの感染者には半数にアトピー性皮膚炎があり,入院患者は全例日常生活自立度C2であった.今回,過去の疥癬院内感染報告に比べ院内感染を早期にかつ低率に終息できた.院内感染疑いで受診した多数の患者の疥癬除外診断・確定診断・治癒判定を確実にし,予防投与なしのイベルメクチンの効果的な適応選択にダーモスコピー法が有用であった.

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欧文目次

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 胆汁うっ滞性肝疾患では,血中および組織中の胆汁酸濃度が上昇し,重度の瘙痒および無痛覚症を引き起こすことが知られている.

 Tgr5は胆汁酸に対するG蛋白質共役受容体であり,体内に広く分布しエネルギー代謝やグルコース恒常性,胆汁産生・分泌などに関与している.Tgr5は腸管・中枢神経系のニューロンにも発現しており,本論文では,胆汁酸誘発性の瘙痒および無痛覚症におけるTgr5の役割に関して検討された.

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 げっ歯類では創傷治癒過程で毛包が再生されることが報告されているが,ヒトでは再生されない.この毛包新生に関与するメカニズムについて検討した.

 マウス皮膚の創傷部では,受傷後10日目以降の真皮でFgf9の発現が増強しており,それに応じて新生毛包も増加した.解析の結果,受傷後12日目の段階でFgf9が主に真皮のγδT細胞から分泌されることがわかった.遺伝子改変によりγδT細胞を欠損したマウス,あるいはT細胞特異的にFgf9を欠損させたマウスでは同程度に新生毛包が減少した.これより,γδT細胞が産生するFgf9が創傷治癒の後期の毛包新生に重大な役割を持つことが示唆された.

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 本書では皮膚レーザー治療の適応と効果,およびその限界とが詳細かつ明快に記されている.皮膚レーザー治療機もこのように数が増えてくると,各々の機械の特徴や効果の違いが段々よくわからなくなってくる.どの機種もあたかも魔法の機械のような謳い文句で販売されているが,一方で若干の胡散臭さを感じるのもまた事実である.本書は日本のレーザー治療の草分けであり,基礎実験の段階からレーザー治療に深く関わってきた渡辺晋一先生によって編集され,渡辺先生を含むごく少数の精鋭によって記されている.著者の人数が少なく厳選されているため,全体としての統一感が取れており,共通のコンセプトが本書全体を通じて一貫として流れている.

 編者がいみじくも述べたとおり,レーザー治療はメーカー先行になりやすく,ともすれば先方の宣伝文句を鵜呑みにしがちである.しかしながら,レーザー治療に関しても数多の文献があり,それらの文献から得られる正しい情報とエビデンスに基づいてレーザー治療にあたるべきであるということを痛感させられる.本書ではまず,レーザーの機種およびその作用機序について詳細に記されている.レーザーの原理は確かに取っ付きにくいものであるが,多少物理が門外漢であっても理解できるよう丁寧に説明がなされている.レーザーの作用機序に関しては今までは何となくわかったつもりでやり過ごしていたが,やはりレーザー機種の全体像および作用機序を根本から把握することは,付け焼き刃的で表層的な知識でごまかすのとは全く異なるということが改めて認識される.

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 『がん診療レジデントマニュアル』の書評を書くのは二度目である.1997年に創刊された本書は3年ごとに改訂され,今回が第6版になる.前回の書評は2003年の第3版であるから,10年が経過した.そこで前回の書評をあらためて読み返してみたが,基本的な印象は変わっていない.すなわち,初版以来本書のコンセプトである①国立がん研究センターの現役レジデントが執筆を担当し,各専門分野のスタッフがレビューする編集方針をとっており,きわめて実践的かつ内容的には高度であること,②最新の情報をもとに治療法のエビデンスのレベルが★印の数により一目でわかるように記載されていること,③単なるクックブックのようなマニュアル本でなく,腫瘍医学を科学的・倫理的に実践するための必要かつ不可欠の要素がコンパクトにまとめられていることなどである.特に,がん腫別の診断や治療,予後についての最新のデータに基づく解説はもちろんであるが,インフォームド・コンセント,臨床試験のあり方,化学療法の基礎理論,疼痛対策と緩和医療,感染症をはじめとする化学療法の副作用対策についてもバランスよく記載されていることが特徴である.また,外形や様式も白衣のポケットに収まるサイズでありながら,活字は8ポイントの大きさで読みやすく,二色刷で要所を強調しているなど使い勝手の良さも受け継がれている.一方,内容としては第5版から3年間のがん診療とがん臨床研究の進歩が漏れなく盛り込まれている.今日のがん診療とがん臨床研究の進歩のスピードと豊富さから言えば,版を重ねるごとにボリュームが増えそうなものだが,内容がよく吟味され既に常識として定着している事項はできるだけ簡素にして全体のボリュームがコントロールされている.随所にある「Memo」には新しい用語の解説やトピックスが紹介されており,医療の進歩や変化が端的に表れているのを実感できる.

 近年のがん薬物療法は切れ味鋭いが毒性にも特別な注意が必要な薬剤が主体となっており,薬物の作用機序,薬物動態,毒性の管理や効果判定などにおいて十分に訓練された医師の下で行われる必要性が増してきている.そのような背景にあって,国立がん研究センターはがん診療の専門家を養成するレジデント制度を含む教育研修プログラムを整え,多くのがん専門医を輩出してきた.本書は国立がん研究センターの腫瘍内科レジデントによるレジデントのための診療マニュアルである.常に携帯して参照できる実践的指南書であり,がん診療にかかわる若手医師にぜひ薦めたい一冊である.

掲載論文の取り消しについて

次号予告

投稿規定

あとがき 瀧川 雅浩
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 平成4年(1992年)から務めさせていただいた編集委員を辞めることになりました.

 読者の暖かい声援,編集委員諸氏の厳しい(?)励まし,出版社の方々の強いサポートで,21年間,編集の仕事を無事やりおおせました.当時の編集委員は4人で,私を入れて西川武二先生(慶應義塾大学),新村眞人先生(東京慈恵会医科大学),田上八朗先生(東北大学)の4人でした.私は前任の石川英一先生(群馬大学)の後を次いで,編集委員になりました.編集会議で集まると,まず,ひとしきり病気の話.「痛風が出て痛い」「虫歯の治療に行かねば」などなど.私は当時一番若かったものですから,病気もなくその話題には入っていけませんでした.で,ひとしきり病気自慢が終わった後,和気あいあいとした雰囲気のなかで査読したものでした.平成16年(2004年)からは,編集委員6人体制で査読しています.編集室の一番の心配は投稿される論文数ですが,幸いなことに,投稿論文数は安定しています.今も,編集会議の雰囲気は,昔と変わらずワイワイと言いながら作業をしています.でも,皆さん健康そのもので,病気の話は出ません.さて,21年の間を通じて感じることは,文章の稚拙な論文が増えたことです.簡単に言うと,独りよがりですね.著者はよくわかっている内容だと思いますが,編集委員が読むと文法的にも科学的にも文意がいまいち通じない.ひとつには,新研修医制度が始まり,大学医局に在籍しなくても専門医が取れるようになったため,医局にいれば得られた耳学問的な知識が入らなくなったのかもしれません.最近の大学生は本を読まないようですが,それも影響しているのかもしれません.また指導医による論文の推敲が十分でないケースも考えられますが,どうでしょうか? というわけで,投稿論文にさまざまなコメント,書き込みをさせていただきました.勝手なことばかり申し上げたかと反省していますが,これも若い人には「科学的記載とは何ぞや」を理解していただきたかったからです.

著作財産権譲渡同意書

基本情報

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臨床皮膚科
68巻3号 (2014年3月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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