マイオピニオン
直接検鏡のすすめ
望月 隆
1
Takashi MOCHIZUKI
1
1金沢医科大学医学部皮膚科学講座
pp.198-199
発行日 2014年3月1日
Published Date 2014/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103923
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1. はじめに
皮膚科の診療において最も重要な臨床検査は直接検鏡,特にKOH法であろう.この方法はかつては皮膚科医にとって当然のように習得され,そのknow-howは医局の先輩から新人へと受け継がれていた.この方法は単に皮膚真菌症や疥癬の診断法にとどまらない.除外診断のために陰性所見が期待される場合もあり,またそれをステロイド外用薬使用の前提にしたりする.そのため,これを正確に行えることは皮膚科医のidentityと考えられる.ところが近年これがあまり行われなくなっていることが明らかになり,診断力の低下が懸念されている.この理由として西本1)はある程度の熟練を要する一連の操作が,データを数値化し,それを単純に比較するという安易な風潮に逆行しているためと述べているが,医育機関においてKOH法を教育するという文化が滅びてしまった可能性が危惧される.この責任を指導者の意欲の低下に帰すことは簡単であるが,指導者も医局で先輩の姿を見て育っているので,かなり前からこの傾向は進行していたと考えられ,問題はより深刻である.医育機関の指導者は,正確なKOH法は皮膚科医のminimal requirementであり,皮膚真菌症の診断がままならない皮膚科医は存在価値を問われることを強調しつつ,専攻医に十分修練を積ませていただきたい.
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