臨床皮膚科 63巻1号 (2009年1月)

連載 Clinical Exercise・17

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症例

患 者:45歳,男性

主 訴:全身のびらん,水疱

既往歴:全身性強皮症,間質性肺炎

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:1995年発症の汎発性強皮症に対し,1998年4月よりD-ペニシラミン(以下,D-P)を投与され,300mg/日を内服中の1999年12月よりく幹に水疱が出現し,全身に拡大したため当科を受診した.

現 症:被髪頭部を除くほぼ全身に拇指頭大までのびらん,水疱が多発し,顔面,く幹,四肢に全身性強皮症による色素沈着と硬化も認めた(図1).

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要約 60歳女性,66歳女性,45歳男性,および74歳男性.4例ともハゼノキはウルシ科の植物であることを知らずに庭のハゼノキの剪定や伐採をして,皮膚炎を発症した.ウルシ皮膚炎の既往歴があったのは74歳男性例のみで,他の3例は植物による接触皮膚炎の既往歴はなかったが,全例とも接触翌日または2日目より皮膚炎が出現したので,ウルシ類に感作されていたと考えた.パッチテストでは,全例ともウルシオールと,接触歴のないマンゴーの抗原であるマンゴールに陽性であった.ウルシ類で感作されると,マンゴーにも容易に交叉反応が生じることを確認した.

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要約 55歳,女性.急性前骨髄性白血病の診断でレチノイド(all-trans retinoic acid:ATRA)による分化誘導療法を開始し,ATRA開始16日目より発熱とともに四肢の有痛性紅斑が出現した.病理組織学的に,真皮層に好中球主体の炎症細胞浸潤があり,核塵,血管壁の破壊を伴っていた.ATRAにより生じた好中球性皮膚症と診断し,ATRAを中止した.しかし,呼吸苦が出現し,画像検査にて両側肺にびまん性間質影を認め,ATRA症候群と診断した.ATRAによる好中球性皮膚症の機序として,接着分子による微小血管系の血管内皮損傷,好中球活性化因子の産生亢進など,血管透過性亢進による体液貯留の病態を示すATRA症候群と共通する機序を考えた.ATRA療法中に生じた発熱とともに自験例のような四肢の有痛性紅斑,あるいは陰部潰瘍を呈する皮疹は,ATRA症候群の皮膚徴候あるいは前駆病変として位置づけできると考える.

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要約 45歳,男性.36歳時より潰瘍性大腸炎に罹患し,サラゾスルファピリジンとベタメタゾン坐薬にて腸症状はコントロールされていた.初診の1週間前に39℃を超える発熱と下肢の発疹,痛み,しびれが出現した.初診時,両下腿に網状あるいはびまん性に有痛性の紫紅色斑が認められた.Plt34×104/μl,FDP(D-ダイマー)3.0μg/ml,PTおよびAPTTは正常であった.生検にて血管炎を示唆する所見はなく,中小の皮膚血管に血栓形成を認めた.深部静脈血栓症や肺塞栓症はみられなかった.ステロイド療法や抗凝固療法,血漿交換療法を行ったが,軽快しなかった.心室性不整脈,肝機能低下,消化管出血が次々と出現し,DICを併発して約1か月で死亡した.

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要約 80歳,男性.慢性腎炎症候群による腎不全のため,維持透析中である.左前腕内シャントの再建後,左手に疼痛および紫紅色調変化が出現した.しかし,通院中であった透析医のもとで,シャントを使用して透析が続行された.10日後シャント専門医によってSteal症候群と診断され,シャント閉鎖術を受けた後,当科を初診した.指尖に黒色壊死を認め,プロスタグランジンE1製剤と抗血小板薬にて加療したが改善しなかったため,前腕切断に至った.重症化の原因として,発症後10日間放置されたことと,発症後も透析時にシャントから脱血を行ったことが考えられた.

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要約 68歳,男性.糖尿病に伴う末梢神経障害に対し,2001年より塩酸メキシレチン,メコバラミンを内服,頓用でロキソプロフェンナトリウム,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液を内服していた.2006年9月29日頃よりはじめに臀部に数個の紅斑が出現,徐々にほぼ全身に数が増加してきたため,同年12月19日当科を受診した.顔面,下背部,腰部,臀部,両下肢に境界明瞭な暗赤色紅斑を多数認めた.薬剤内服中止とステロイド軟膏外用により,紅斑は色素沈着を残し消退した.色素沈着となった皮疹部で行った薬剤パッチテストは,塩酸メキシレチンのみ陽性を示した.われわれが調べ得た限り,塩酸メキシレチンによる固定薬疹の報告は稀であり,本症例が2例目であった.

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要約 79歳,男性.2007年6月初旬に進行期食道癌を指摘され,9月初旬より化学療法,放射線療法を施行されていた.9月中旬より顔面,体幹に掻痒の強い皮疹が出現した.顔面,体幹に痂皮とびらんを有する落屑性紅斑がみられ,一部に小水疱を伴っていた.粘膜疹はなく,両耳朶には凍瘡様紅斑がみられた.血清学的に抗デスモグレイン1抗体が高値で,生検で表皮浅層に裂隙形成と棘融解像がみられた.免疫ブロット法にて腫瘍随伴性天疱瘡は否定的であり,臨床所見と合わせて落葉状天疱瘡と診断した.

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要約 78歳,男性.急性の経過で発症し,ほぼ全身の紅斑,水疱のほか,眼,口腔,口唇,外陰に高度の粘膜疹を認めたため,当初Stevens-Johnson症候群(SJS)を疑った.しかし,病理組織学的に表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部にIgA,IgGが線状に沈着していたため,linear IgA/IgG bullous dermatosis (LAGBD)と診断した.免疫ブロット法ではIgAがBP230抗原に,IgGが200kdおよびBP180抗原C末端部位に反応した.PSL50mg投与で皮膚,粘膜症状とも軽快したが,20mgに減量した時点で再燃し,現在治療継続中である.急性の経過で発症する自己免疫性水疱症の報告はlinear IgA bullous dermatosisに多いが,自験例のようにSJSを思わせる経過,臨床像を呈する症例は稀と思われる.自己免疫性水疱が急速な経過で発症した場合,臨床的にSJSに類似する可能性があることを常に念頭において診療にあたる必要がある.

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要約 59歳,男性.6年前より胸腺腫,低ガンマグロブリン血症(Good症候群)の診断のもと,当院内科に通院中.2か月前より舌に疼痛,びらんが出現し,また腹部にも紅色皮疹が出現した.初診時,下口唇,舌,頰粘膜および硬口蓋や軟口蓋に膿苔を付すびらんが多発し,下腹部,腰部,両上腕にも自覚症状を欠く淡紫紅色斑が散在していた.口唇,上腕皮疹の生検組織所見により,扁平苔癬と診断した.副腎皮質ステロイド内服,タクロリムス水溶液含嗽,グリセオフルビン,エトレチナート内服などを行ったが皮疹は消失せず,難治であった.Good症候群と扁平苔癬の合併例は散見されており,いずれもその発症には自己免疫機序の関与が考えられている.

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要約 77歳,男性.初診の約3年前より両頰部に紅色局面が出現し,次第に拡大した.両上眼瞼,頰部に境界が比較的明瞭な自覚症状のない光沢を帯びた浸潤を触れる紅色硬化性局面がみられた.病理組織検査で真皮全層に膠原線維の増生,真皮の上層から中層の膠原線維の離開とムチンの沈着を認めた.甲状腺機能を含め内分泌異常,糖尿病,M蛋白血症はなかった.硬化性粘液水腫と診断し,トラニラスト,ニコチン酸トコフェロールの内服を開始し,症状はやや軽快したが,出血性膀胱炎が生じトラニラストを中止したところ再燃した.プレドニゾロン25mg/日の投与を開始し,皮疹は急速に改善した.本症の治療にはいまだ確立したものはないが,ステロイド内服有効例がいくつか報告されている.本疾患のステロイド治療の有用性を,ムチン沈着の機序から考察を加え検討した.

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要約 20歳,男性.四肢の浮腫性紅斑,発熱・咽頭痛にて入院し,2週間ほど遅れて関節痛も出現した.血中フェリチン値は著増し,臨床および検査所見上,多周期全身型の成人Still病と診断した.感染症,悪性腫瘍,膠原病は否定された.皮疹は解熱時にも消失せず,定型的皮疹ではなかった.プレドニゾロン50mg/日内服により病勢は徐々に軽快した.減量中に2回再燃したが,プレドニゾロン内服量を増減しつつ治療を継続し,発症から15か月後に治癒した.

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要約 2歳,男児.家系内に同症なし.出生時より左右第4趾が前方に彎曲していた.その後,爪甲が伸び,趾遠位端皮膚に疼痛を生じたため来院した.初診時,左右第4趾の爪甲が前方に彎曲し,遠位端皮膚に食い込んでいた.第4趾以外の爪甲,手爪甲には異常がなく,身体発育は正常で,ほかに合併奇形を認めなかった.足趾の骨単純X線で,左右第4趾末節骨にわずかな短縮がみられた.彎曲した爪が食い込まないように爪切りの指導を行った.

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要約 50歳,男性.1年前から左第1足趾背側に疣状の皮疹を生じ,徐々に増大した.初診時,左第1足趾背側に,5×15mm前後の,角化を伴い,数珠状に連なった疣状小結節を認めた.皮膚生検では,表皮に連続して上皮細胞索が真皮方向に延長,網目状の構造を呈し,上皮細胞索内には管腔構造を認めた.臨床像と組織像からeccrine syringofibroadenomaと診断し,液体窒素による凍結療法を施行したところ,退縮傾向を示した.Eccrine syringofibroadenomaは稀な腫瘍で,外科的に切除されることが多いが,液体窒素凍結療法は有効な治療法の1つと考えられた.

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要約 61歳,男性.初診の数年前,左下腿に自覚症状を伴わない皮下結節が出現した.病理組織学的に皮下脂肪織内に線維性被膜を有する境界明瞭な腫瘍塊があり,好酸性線維束の増生を伴う明調領域と毛細血管周囲の腫瘍細胞増殖を呈する暗調領域を認めた.腫瘍細胞はビメンチン染色とα-SMA染色が陽性,デスミン染色,S-100蛋白染色とCD34染色は陰性であった.以上より,成人単発性筋線維腫と診断した.筋線維腫は乳幼児に発症する線維腫症の1つとして知られているが,稀に成人発症例の報告がある.

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要約 46歳,男性.28歳よりCrohn病にて加療中であった.2007年春頃より発熱が続いたため,前医を受診,精査にて骨盤内の腫瘤が指摘された.この巨大腫瘤による通過障害解除のため手術を行った際に,主治医が肛門部の腫瘤に気づき,精査目的で当科を受診した.病理組織診断で真皮に印環細胞様の腫瘍細胞が増殖し,CK20陽性で,皮膚原発ではなく,消化管由来の粘液癌と診断した.これまでCrohn病に悪性腫瘍が合併することは稀とされてきたが,近年報告が増加している.

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要約 症例1:48歳,女性.3か月前より臍部の腫瘤を自覚し,近医皮膚科を経て当科を受診した.そのほかの自覚症状を認めなかったが,皮膚生検にて腺癌と診断され,全身精査で卵巣癌が発見された.症例2:68歳,男性.1か月前に気付いた臍部の腫瘤を主訴に近医皮膚科を受診し,同院での生検にて腺癌との診断で当科を紹介され受診した.精査の結果,大腸癌が発見された.内臓癌発見の契機となった転移性臍腫瘍(Sister Mary Joseph's nodule:SMJN)の過去の報告例では,臍部結節のみを主訴として皮膚科を初診する事例は決して少なくない.SMJN自体は稀な病態ではあるが,皮膚科医が臍部の結節性病変をみた際には,生検を含めた確定診断への積極的なアプローチが必要である.

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要約 73歳,女性.2か月前から右頰に虫刺様の丘疹が生じた.病理組織では真皮内に好中球,組織球よりなる膿瘍の像を認めた.一般細菌培養は陰性であった.抗酸菌培養で10日以内に白色のコロニーを形成し,DNAハイブリダイゼーション法でMycobacterium chelonaeと同定した.全切除後も再発したが,レボフロキサシン,クラリスロマイシン内服により治癒した.

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要約 88歳,女性.帯状疱疹の診断で当科に入院した.入院時の検査(第7病日)で血小板数は6.0×104/μlと低値で,入院3日目には0.8×104/μlとさらに低下した.血小板関連IgGを認め,抗水痘・帯状疱疹ウイルスIgG抗体も著明に上昇していた.血小板減少に対しては血小板輸血を施行し,血小板数は正常化し,以後再発は認めていない.

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要約 47歳,男性.8年前より顔面神経麻痺があった.半年前より下口唇の腫脹が出現し,軽快しないため,当科を受診した.初診時,下口唇に自覚症状を欠く持続性の腫脹があり,硬く触知した.舌の異常はなかった.上下の歯牙には重度のう歯があり,数本の歯根を残してすべてう蝕していた.下口唇より生検し,病理組織学的所見で真皮の浮腫と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫がみられた.以上より,不完全型Melkersson-Rosenthal症候群と診断した.発症の要因として,う歯による慢性炎症が強く疑われたため,歯科口腔外科にてう歯を全抜歯し,総義歯を作製した.加えてトラニラスト内服を6か月間行い,下口唇の腫脹は著明に改善した.

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要約 アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2002で最重症と規定された成人のアトピー性皮膚炎患者に対するシクロスポリンMEPC(ネオーラル®)の有効性と安全性を検証する目的で,プラセボを対照薬とした二重盲検比較試験を実施した.8週間の経口投与で,ネオーラル®の平均投与量は約3mg/kg/日であった.ネオーラル®群およびプラセボ群はそれぞれ44名,45名で,皮疹の重症度スコアの最終変化率(平均値±標準誤差)はそれぞれ-63.0±3.43%,-32.6±4.18%,罹病範囲スコアの最終変化率はそれぞれ-41.4±4.08%,-19.5±3.71%と,いずれもプラセボ群に比べネオーラル®群で有意な改善が認められた(p<0.001).また皮膚所見別では,急性病変,慢性病変の違いによる効果の差はみられず,いずれの罹患部位に対しても有効であった.

 ネオーラル ®群の有害事象の発現割合は75.0%(33/44)と,プラセボ群73.3%(33/45)と同様であった.また,臨床検査値,血圧および腎機能検査も両群で違いは認められなかった.以上から,ネオーラル ®は本疾患の治療に有用な薬剤と結論した.

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 日本でコミュニケーションスキル・トレーニングを医学教育に取り入れるようになったのは1990年以降である.それ以前に大学を卒業した医師の大部分は,コミュニケーションに関わる教育を受ける機会がなかった.本書はこうしたベテラン医師を対象に,患者とのコミュニケーションスキルの習得と実践について体系的な学習を可能とする,従来なかった手引書である.前半にコミュニケーションや患者満足度に関する解説があり,後半にスキルアップのための手法やトレーニングの内容,効果が説明されている.ベテラン医師が自身で学べると同時に,トレーニングコースの実践テキストとしても活用することができる.編著者らは,コミュニケーションスキル・トレーニングコース(CSTコース)の開発・運営に実際に携わる専門家で,編者のお一人の松村真司先生は,研究もこなしながら臨床の場で活躍されている先生である.

 病気になれば誰しも不安で心細くなる.医療者と心の通う対話ができれば,患者は緊張や不安が和らぎ,診療を前向きに受けることができ,ひいては病気と積極的に向き合うことができる.一方,よいコミュニケーションは医師自身の達成感も向上させる.

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あとがき 渡辺 晋一
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 昨年の秋に,ようやくわが国でもレチノイド外用剤であるディフェリン®が認可され,わが国のニキビ患者もその恩恵を受けることが可能になった.しかしディフェリン®は,海外では特許が切れた薬剤で,決して新しい薬ではなく,東南アジアでは10年前から使用されている.またこの薬剤の登場で,日本のニキビ治療が世界標準に近づいたわけでもない.Cystic acneとか集簇性痤瘡といった重症ニキビ患者の第一選択薬であるイソトレチノイン(経口レチノイド)や耐性菌を生じない外用抗菌薬benzoyl peroxideは,海外では20年前から使用されているが,日本では認可されていない.したがって,日本は今でもニキビ治療に関しては,アジアの中で最も遅れた国の一つである.問題なのは,これがニキビ治療に限らないことである.特に問題なのは医療機器で,内視鏡など一部の分野では,わが国はトップレベルにあるが,他の医療機器や人工血管などの消耗品では,アメリカで製造中止となったような古いものや問題のあるものが輸入され,日本で使用されている.なぜならば,十分に有効性と安全性が確かめられていても,もう一度日本で治験をしなければ保険承認が下りないからである.米国での治験は,白人ばかりでなく,黒人やアジア人など多人種が被験者となっている.もう一度日本で治験を行わなければならない理由はない.わが国で治験を行えば膨大なお金と時間がかかるため,その医療機器が認可された時には,すでに時代遅れになってしまっていることが多い.最新鋭の医療機器を使用したほうが,故障も少なく耐久性もよいので,患者のためになるのであるが,国の認可が下りていない器械や材料を使用した場合は,私費診療にせざるを得ず,混合診療を認めていないわが国では,金銭的な問題が大きくのしかかることになる.その結果,時代遅れの医療器械を使用せざるを得ず,医療事故の要因になり,人工心肺装置では死亡につながることになる.ニキビのように命にかかわることが少ない疾患でも問題であるが,命に直結する医療機器がアジアの最低レベルだとすれば由々しき問題である.

基本情報

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臨床皮膚科
63巻1号 (2009年1月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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