臨床皮膚科 54巻7号 (2000年6月)

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 患者 40歳,男性

 初診 1997年3月19日

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 基底細胞癌(BCC)は,その組織型により浸潤動態や再発率が異なることが知られている.249例のBCCを対象とし,組織型と深部浸潤との関連につき統計学的に検討した.組織型をnodular,infiltrative,morpheic,micro—nodular,superficialの5型に分類し,深部浸潤を反映する組織学的指標として,1)腫瘍周囲の皮表面から腫瘍最深部までの垂直距離(深部浸潤径),2)皮下組織への浸潤率,の2項目を評価した.その結果,infiltrative,morpheic,micr—onodularの3型のBCCは深部浸潤径,皮下への浸潤率ともにnodular, superficialの2型を上回っていた.BCCの治療に当たっては,これら組織型による浸潤動態の違いを考慮した上での手術計画,術後経過観察が必要と思われた.

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 65歳,男性.3,4年前より右頭頂部に易出血性腫瘤があり,生検にて不規則な管腔形成を伴う異型血管内皮細胞の増殖を認め,血管肉腫と診断した.インターロイキン2の局注およびX線計60Gy,電子線計20Gyの照射を施行した.右胸水貯留を認め,穿刺にて血性滲出性胸水を得た.血管肉腫の肺転移と診断し,右胸腔内にインターロイキン2を注入したところ,胸水の減少を認め,呼吸苦は著明に改善した.

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 86歳,男性の疱疹状皮膚炎を報告した.背部に丘疹,小水疱のみられる紅斑,色素沈着が混在し,次第に体幹,四肢に緊満性水疱が増えてきた.病理組織像は,主に好中球の浸潤する表皮下水疱であり,真皮乳頭には好中球微細膿瘍はない.蛍光抗体直接法にて表皮真皮境界部にIgAの細線維状,一部顆粒状の沈着を認めた.老衰により死亡するまでの4年半の間,DDS 50mgの内服により良好にコントロールされた.従来の本邦報告例にならえば疱疹状皮膚炎(DH)と診断されるが,自験例のように大型の水疱がみられ,HLA-B8がみられず,グルテン不耐性腸症を伴わないような多くの本邦例は,欧米のDHとは異なるものであり,むしろ線状IgA皮膚症に含めたほうが無理がないように思われる.

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 18歳,女性.下腿に多発する蚕蝕性の潰瘍が認められた.臨床像,生検組織像から壊疽性膿皮症と診断した.全身検索を進めたところ,鼻中隔に壊死性穿孔病変が認められ,生検で巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性病変を示した.Wegener肉芽腫症の合併を疑い,肺,腎病変の有無について検索したが異常は認められず,血清c-ANCAは陰性であった.プレドニゾロン内服開始後4か月で潰瘍は完全に上皮化し,鼻中隔病変の炎症も消退した.

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 15歳男性と14歳女性.いずれも急性に掌蹠の境界明瞭な角化性紅斑と四肢の枇糠様落屑性紅斑が出現し,皮疹および組織所見より毛孔性紅色枇糠疹と診断した.いずれも拡大傾向を認めたが,ビタミンA内服と活性型ビタミンD3であるタカルシトール軟膏外用にて,急速に皮疹が軽快した.本症は発症年齢に2峰性があるとされ,最近では小児例での自然軽快の報告もある.その分類および予後について若干の文献的考察を加えた.

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 41歳,男性.2か月前より全身倦怠感あり.20日前より背部に皮疹が出現し,拡大したため当科を受診した.初診時上背,前胸,腹部に瘙痒を伴う紅色丘疹,網状の色素沈着を認めた.組織像は真皮の血管,毛包周囲のリンパ球主体の細胞浸潤であった.随時血糖200mg/dlと高値で,血中総ケトン体は6625μmol/lと著明に上昇していた.内科にてインスリン療法を開始し,皮疹は塩酸ミノサイクリン200mg/日の内服にて約2週間で色素沈着を残し軽快した.糖尿病に伴った高ケトン血症と色素性痒疹との関連につき考察した.

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 78歳,男性.膵癌および肝転移と診断された後,テガフール800mg/日の内服を開始した.約7か月後より日光露出部に瘙痒を伴う紅斑が出現した.テガフールを用いた光貼布試験ではUVA,UVBともに陽性の反応を示した.テガフールによる日光皮膚炎と診断し,テガフール内服を中止してステロイド剤を外用したところ2週間で紅斑は消失した.

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 アロエ配合香粧品による接触皮膚炎の5例を報告した.症例はすべて女性で,年齢は31歳,42歳,35歳,21歳,61歳であった.使用していた香粧品は,クリーム,ハンドクリーム,クレンジング,サンタンローション,ボディシャンプーなどであった.パッチテストで症例1と2は局方アロエ末が疑陽性,症例3はアロエ葉末と局方アロエ末が陽性,症例4はアロエ葉末,局方アロエ末,アロインが陽性,症例5は局方アロエ末が陽性であった.顕微鏡による観察でアロエの針状結晶は,アロエ葉末より局方アロエ末のほうが明らかに少なかった.

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 症例は在胎31週,帝王切開で出生した二卵性双胎の7か月の女児2人.低体重児.出生直後からビクシリン®,アミカシン®を投与され,日齢7より母乳栄養を開始した.途中人工乳を併用した.第1子は貧血のため鉄剤を投与されていた.生後3か月より臀部に鱗屑を付す紅斑が出現し,外用治療したが範囲が拡大し,当科を紹介された.初診時後頭部脱毛を認めた.指趾の皮疹,下痢はなかった.第1子は皮疹がより重篤であった.1人いる姉は満期正常分娩,母乳栄養で,同症状はなかった.患児の血清亜鉛は低値で,母親の血清亜鉛値は正常であり,母乳亜鉛は低値であった.患児への硫酸亜鉛投与で皮疹は速やかに消退した.本症は獲得性亜鉛欠乏であり,未熟児,低亜鉛母乳という大きな因子に,亜鉛とキレートを形成するペニシリン投与,亜鉛吸収を阻害する鉄剤内服(第1子)という因子が重なって生じた可能性があると考察した.

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 4歳,男児.乳児期よりアトピー性皮膚炎がある.2歳頃より眼周囲に無症候性の黄色丘疹が多数出現し,その後2年間で徐々に増加してほぼ全身に汎発化した.組織学的には真皮上層に泡沫細胞主体の細胞浸潤を認め,泡沫細胞はCD68染色陽性であった.一般検査所見ではLDH,IgEが高値のほかは血清脂質などすべて正常で,内臓病変,粘膜症状は認めなかった.以上より丘疹性黄色腫と診断した.丘疹性黄色腫は正脂血症性黄色腫の疾患群に属すると考えられている.若年性黄色肉芽腫,播種性黄色腫との鑑別,アトピー性皮膚炎との関連について若干の考察を加え報告する.

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 72歳,女性.約10年前から左内反足があり,受診の1年半前に市販の装具を使用した後,荷重部に潰瘍を生じた.その後潰瘍辺縁から足内側に疣状の隆起性病変が出現し,徐々に増大した.組織学的に過角化を伴う表皮肥厚,乳頭腫症,真皮結合組織の増生を認めたが,表皮細胞に異型性はなかった.真皮乳頭層に拡張した血管およびリンパ管が皮膚面に対し垂直に走行し,真皮深層から皮下組織にかけて血管の増生,壁肥厚,閉塞と再疎通像がみられた.抗生剤の全身投与と外用療法で腫瘤が若干縮小したものの,潰瘍は不変であった.その後内反足矯正用装具による潰瘍の減荷により潰瘍は著しく縮小した.自験例は静脈・リンパ系の循環障害の基盤のうえに機械的刺激が加わり生じたpapillomatosis cutis car—cinoides Gottronと考えた.本症の治療は外科的療法が一般的だが,保存的療法も十分煮考慮すべきものと考えられる.

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 55歳,男性.25歳頃より左下腿内踝部に潰瘍が出現した.潰瘍は難治性で再発を繰り返した.高身長,長い四肢などの類宦官様体型や,染色体検査にて核型48,XXYYを示したことなどから,Klinefelter症候群と診断した.本症では,下腿潰瘍の合併が知られているが,発症機序についてはまだ明らかにされていない.本症と下腿潰瘍について,文献的考察を加えたので報告する.

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 3か月,男児.出生時より左肘部に20×15mmの赤褐色隆起性腫瘤があり,時々水疱を形成し,蕁麻疹様発作が数回みられている.病理組織は好酸球を多数混じた肥満細胞の増殖であった.血液生化学検査では異常なく,肝脾腫もみられない.以上より,indolent typeの単発性肥満細胞腫と診断した.腫瘤および末梢血白血球より抽出したDNAについて,c-Kit遺伝子の細胞内キナーゼドメイン,特にコドン560,816の活性化部位を中心として変異の有無を検索したが,変異は陰性であった.近年肥満細胞増殖症においてc-Kitが発症に重要な役割を果たしていることが指摘されているが,自験例のごとく必ずしも全例でc-Kit遺伝子が関与しているわけではないことが示唆された.

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 47歳の女性の腹部に3年前より皮疹が出現した.近医(外科)に湿疹といわれ経過をみていたが次第に拡大し,初診時2か月前より左鼠径部に腫脹が出現したため当科を受診した.左側腹部に直径約5cmの表面が一部疣贅状の紅色腫瘤があり,左鼠径部には8×4Cmの皮下結節を触知した.臨床的に腹部の腫瘤は有棘細胞癌,鼠径部結節はそのリンパ節転移を疑った.腹部腫瘍の生検組織は表皮内癌(Bowen病の組織像)であったため,腫瘍辺縁より1cm離して脂肪織中層の深さで切除し,同時に鼠径部の皮下結節は全摘した.腹部腫瘍を連続組織切片で検索し得た範囲には基底膜を越え,真皮内へ深く浸潤している部位は見つからなかった.鼠径部皮下腫瘤は,大型の異型細胞が増殖し,一部shadow cell様変化のみられる悪性毛母腫に類似した像を呈した.皮膚以外の臓器原発の可能性も考え,画像診断学的に検索したが悪性腫瘍は見つからなかった.原発と転移巣に形態学的な違いがあり,腹部腫瘍からの転移であるか否かが問題となった症例である.

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 72歳,男性.初診の約3か月前に,鼻背正中部に6.5×8mmの境界明瞭な陥凹性病変に気づいた.表面に光沢を有し,陥凹部の周囲に毛細血管拡張を伴う.皮膚生検の結果morphea—like basal cell epithelioma(MBCE)と診断し,拡大切除のうえ含皮下血管網付き全層植皮術を施行した.本症sclerotic basal cell epithelioma(SBCE)との異同については,これまで一致した見解が得られていない.両者を同一なものとした報告や別症とした報告,さらにMBCEの一部がSBCEより移行する可能性を示唆する考えもある.しかし,現在SBCEを独立した臨床型とする記載に乏しいことや,その臨床像も明確に記載されていないため,MBCEの一特殊型とするほうが良いと考えた.

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 48歳,女性.約6年前より,左上後頭部に弾性軟,ドーム状に隆起した,境界明瞭な皮下腫瘤あり.自覚症状なし.病理組織学的に腫瘍巣は境界明瞭で,大小不規則な管腔を多数認め,その一部では“鹿の角状”を呈していた.鍍銀染色ではほとんどの腫瘍細胞間に嗜銀線維が網目状に入り込んでいた.免疫組織化学的所見では,腫瘍細胞はS−100蛋白,第8因子,アクチン,デスミン,ビメンチンのいずれも陰性.CD34は大部分の腫瘍細胞が陽性を示した.術後6か月を経過した現在,再発は認められない.自験例にっき症例報告をするとともに本邦既報告例52例についても併せ検討した.

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 10歳女児の胸部に生じた単発型グロムス腫瘍の1例を報告した.組織学的には真皮内に大小の血管増生を伴って類円形の腫瘍細胞の増生が認められた.これらの腫瘍細胞はα-smoothmuscle actinとvimentinが陽性であり,周囲に散見された神経線維様物質はS−100蛋白とneu—ron-specific enolaseに陽性であった.文献的に自験例のような胸部発生の単発例はきわめて稀であり,また発症年齢も低い点で特異な症例と思われた.

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 症例1は87歳,男性.右側胸部の有痛性ドーム状,単発性,暗紫色の腫瘍.組織学的には多発型でよくみられる血管腫型のグロムス腫瘍の像であった.症例2は70歳,男性.臀部の激しい疼痛を主訴に来院した.同部に表面皮膚色の米粒大の皮下腫瘍があり,切除にて疼痛は消失した.組織学的には典型的な通常型のグロムス腫瘍の例であった.グロムス腫瘍は四肢に発生することがほとんどであるが,躯幹における有痛性腫瘍の鑑別診断としても重要である.

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 88歳,女性.数年前より前額部や頬部に落屑性の紅斑や褐色斑が多発し,一部が隆起,増大してきた.前額正中部に基部最大径3.5cmで,高さ7cmの巨大な皮角が存在し,右頬部には9×8×10mmと5×5×5mmの皮角が認められた.いずれも皮角辺縁より5mm離し,外科的に切除した.病理組織学的には,前額正中部の皮角は高分化型の有棘細胞癌の像を呈し,一部真皮内への浸入像も認められた.また皮角辺縁部の表皮基底層にも異型細胞の増殖を認めた.右頬部の2つの皮角は日光角化症の組織所見を呈していた.さらに約4年後,右頬部の別の部位と右額部に皮角(日光角化症と有棘細胞癌)が続発してきた.いずれも外科的に切除した.

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 43歳,女性.初診9か月前より左足底に自覚症状を欠く皮下結節が出現した.その後徐々に増大したため当科を受診した.切除術を施行し,ガングリオンと診断した.本症の足底発症例は稀であり,症例を報告するとともに,足底に生じにくい理由について考察した.

淋菌性膿瘍の1例 西條 忍 , 平野 繁
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 淋病の典型的な臨床像である尿道炎の臨床症状なしに陰茎に小さな膿瘍を生じた1例を報告した.症例は19歳,男性.2週間前に感染機会があり,1週間前に気づいた陰茎の発疹を主訴に1997年7月2日に当科を受診した.自覚症状なし.陰茎腹側の冠状溝上に,直径4mmの鮮紅色丘疹を3個認めた.組織学的には角層下から真皮深層に及ぶ好中球主体の膿瘍であった.一般検尿,末梢血白血球数,CRPは正常で,梅毒血清反応,血清クラミジア抗体はいずれも陰性であった.組織の培養でNeisseria gonorrhoeaeが検出された.アモキシシリン1000mg/日内服4週間後に治癒を確認した.

連載

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173

DDS(4,4'-diamino-diphenyl-sulfone, dapsone)について正しい記述はどれか.

①1900年代初期に合成された薬剤である.

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医者が起こす医療訴訟

 今回は久しぶりに保険制度についてお話ししましょう.どの国においても裁判訴訟は実に厄介なものですが,ここアメリカでもそれに伴い皮膚科医の現状に変化が起きています.私の父が皮膚科医をやっていたころはbasal cell carcinomaと思われるものはbiopsyなしでその場で診断を下し,処置を行ったものですが,今日ではそのようなことは医者を危険な立場に追い込むばかりでなく,biopsyなしの皮膚癌の処置手術に対しては保険会社から支払いが出ません.その保険会社といえば皆さんもよくご存じのように,HMOの会社は何億というお金を政治家たちにつぎ込んできましたが,近々HMO加入の患者が十分な医療を受けられなかった場合,HMO保険会社を訴えられるようになるようです.そうなるとHMO保険会社はその訴訟に莫大な費用を要することになります.また面白いことにその患者側の弁護士事務所が実はタバコ会社たちを訴えたのと同じ事務所なのです.ここアメリカでは勝訴した場合,弁護士側の取り分は勝訴金の33%ですから,彼らも必死なわけです.そうなるとHMO保険会社が気の毒だと思われる方も何人かはいらっしゃるかもしれませんが,去年HMO会社の重役の年収は1,700万ドル(約18億円)でしたからご心配なく!そして腹がたつことに,その会社たちは皮膚癌のためにbiopsyをしてもそれはtinea corporisと同等扱いで,診察を無視し治療に対してのみ支払いを行っています.そしていまAADではこのように診察と治療を同時に行った場合,診察料の支払いを拒否した会社たちを相手に訴訟を起こしています.まったく難しい時代になったものです.

基本情報

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臨床皮膚科
54巻7号 (2000年6月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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