皮膚病診療 39巻4号 (2017年4月)

特集 痛みを伴う皮膚病

臨床例

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<症例のポイント>メリケントキンソウによる皮膚障害の集団発生を経験した。メリケントキンソウは南米原産のキク科の植物であり、すでに西日本を中心にわが国でも広く分布、定着している。症状は軽微な有痛性紅斑が主体であるが同植物の医療関係者の間での知名度は低く、周知しておく必要がある。

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<症例のポイント>自験例はともに手拳大程度までの結節性紅斑が複数出現し、大きな局面を形成していた。潰瘍性大腸炎の増悪に伴う結節性紅斑は、皮膚病理組織学的所見において、septal panniculitisに加え、lobular panniculitisがみられることが1つの特徴だが、必須ではない。結節性紅斑が潰瘍性大腸炎の増悪時に出現することが多く、原疾患の増悪に気づく有用な所見と考えられる。症例2は、結節性紅斑の原因精査によって、潰瘍性大腸炎の増悪が診断された。

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<症例のポイント>潰瘍性大腸炎の症状増悪に伴い結節性紅斑を生じた症例を経験した。下肢に有痛性紅斑、皮下硬結が多発し、皮膚生検にて結節性紅斑と診断した。遠心性に拡大する臨床像を呈したため、遊走性結節性紅斑も考えた。結節性紅斑の病勢は潰瘍性大腸炎の病勢と並行していた。

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<症例のポイント>Bazin硬結性紅斑は、1861年にBazinが太った女性の下腿の皮下に硬結が存在する紅斑について記載したことが始まりである。当時はまだ結核菌は同定されておらず、1896年にDarierが結核菌あるいはその毒素に対する反応性皮膚疾患とする概念を提唱し、以来結核疹として扱われてきた。本態は小葉性脂肪織炎であり、結核菌によるアレルギーの関与が指摘されている。今回われわれは、53歳男性で、父親と妻に結核の家族歴をもち、当初は両下腿の結節性紅斑と診断していたが、その後、皮下硬結、潰瘍を生じ、本症と診断した1例を経験したので報告する。

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<症例のポイント>Bazin硬結性紅斑は、結核菌や菌体成分に対する反応性皮膚疾患であり、結核疹の1つとして知られる。自験例のように臨床像と病理組織学的所見からBazin硬結性紅斑を強く疑うも、全身検索で活動性結核病変は証明されない場合には、診断確定や治療に迷うことも多い。自験例ではツベルクリン反応とインターフェロンγ遊離試験(IGRA)が陽性であることからBazin硬結性紅斑を強く疑い、抗結核薬4剤併用療法が奏功したことで診断確定した。

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<症例のポイント>急性膵炎に伴う皮下結節性脂肪壊死症を経験した。皮下結節性脂肪壊死症は膵疾患の診断より皮疹が先行してみられることがあり、自験例も、急性膵炎発症の数週間前から皮疹が先行していた。国内の本症報告87例を検討したところ、54例(62%)で診断に皮疹が先行しており、そのほとんどが受診前の1ヵ月以内に皮疹が出現していた。また、先行する膵疾患としては慢性膵炎や膵癌が多く、潜在性の膵疾患のデルマドロームとして留意すべきと考えられた。

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<症例のポイント>膵炎および門脈血栓症にて消化器内科入院中に両側四肢に赤褐色調の有痛性皮下結節が多発し、皮膚生検の結果、皮下結節性脂肪壊死症と診断した。血中膵酵素値の増悪・寛解と並行した皮膚症状の増悪・寛解を認め、膵炎治療に反応し皮膚病変も軽快した。

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<症例のポイント>皮膚型結節性多発動脈炎(cutaneous polyarteritis nodosa;CPN)とも診断され得る結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa;PAN)を経験した。プレドニゾロン(PSL)内服療法に加え、シクロホスファミドパルス療法を併用し、良好な転帰を得たため、CPNと診断されていても顕著な末梢神経障害や、炎症反応の高値、自己抗体の存在といった免疫学的異常を認める症例では、シクロホスファミドパルス療法の併用が必要であると考えられた。自験例では初発症状出現から診断まで約10年を要した。経過中に特徴的な皮疹や全身症状をきたさなかったことが原因と考えられ、患者の主訴が両下肢痛と筋痛、関節痛といった疼痛のみの場合でもPANを念頭におく必要がある。

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<症例のポイント>脂肪腫は脂肪細胞を由来とする発生頻度の高い良性腫瘍であり、上腹部、背部、頸部、肩部、四肢近位部に好発するが、外陰部に発生することはまれである。今回、われわれは外陰部脂肪腫を2例経験したため文献的考察も含め報告する。自験例では通常の脂肪腫と異なり、外陰部脂肪腫に伴う圧痛、および摘出後の圧痛の消失を認めた点が特徴であった。

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<症例のポイント>cystic eccrine spiradenomaの1例を経験した。腫瘍の嚢腫壁は、充実性部分と同様に、two cell patternを呈する2種類の腫瘍細胞により裏打ちされていた。two cell patternでは、内側の大型で明調な細胞がCK7陽性、外側の小型で暗調な細胞がp63陽性であり、嚢腫壁内腔に一部CEA陽性であった。過去のcystic eccrine spiradenomaの報告例における病理組織学的所見をまとめ、嚢腫壁形成の機序に関して考察した。

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<症例のポイント>グロムス腫瘍は動静脈吻合装置に由来する良性軟部腫瘍であり、手指爪下を好発部位とするが自験例は右前腕に出現した。通常1cm程度までの暗紫紅色結節で著明な圧痛を有するが、自験例は圧するとヘルニア様に平坦化する臨床像を呈した点が特異であった。

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<症例のポイント>発熱を伴わず痛みがあり、発赤の強い浸潤ある紅斑や硬結が、掌蹠も含めて多発性、再発性にいずれも元気な若者(症例2ではアトピー性皮膚炎を合併)でみられた。発疹からPantonValentine leukocidin(PVL)陽性メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Methicillin susceptible Staphylococcus aureus、MSSA)が検出され、抗菌薬の治療に反応するが、再発を繰り返した。PVL陽性は市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(community-acquired methicillin-resistant Staphylococcus aureus、CA-MRSA)でよく知られているが、MSSAでもみられる。壊死性肺炎などの重症感染症を引きおこす場合もある。元気な若者で、繰り返し皮膚に発赤が強く痛みある硬結がみられ、黄色ブドウ球菌(S.aureus)が検出される際には、PVL陽性株を疑い、MSSAでもCA-MRSAに対する治療に準じた抗菌薬治療と環境対策が必要と考えた。

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<症例のポイント>5年前から潰瘍性大腸炎が先行し、腹部症状の増悪に伴い左足背に発症した壊疽性膿皮症を報告した。自験例はプレドニゾロン(PSL)50mg(1mg/kg)の初期投与量で改善傾向を認めたが、減量に伴い皮膚病変が悪化しPSLの減量を行うことが困難であった。潰瘍性大腸炎の病勢がgrade 3であることからインフリキシマブを導入したところ、皮膚病変は速やかに改善しPSLによる治療から離脱できた。治療抵抗性の壊疽性膿皮症に遭遇した際、抗TNF-α阻害薬が認可されている基礎疾患を有する場合には、抗TNF-α阻害薬を積極的に導入すべきと思われた。

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<症例のポイント>マムシ咬傷は症状の出現や悪化を確認するため、原則入院とする。マムシ抗毒素投与や減張切開は、患者の重症度や臨床症状に応じて選択する。受傷後4時間の病理組織像では血管壁の変化は認めたが、付属器や神経には変化を認めなかった。当院での手のマムシ咬傷治療例では、減張切開により、大きな皮膚壊死や固定した知覚障害を残した症例はなかった。

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<症例のポイント>human adjuvant disease(HAD)は、主に美容形成術のために使用されたパラフィンやシリコン等の異物が体内に長期間存在することにより発症する膠原病様の疾患である。自験例では47年前に豊胸術が施行され、両側乳房下部外側に浸潤を触れる紅斑局面が出現した。豊胸術の施行部位と一致し、異物除去術後は速やかに皮疹の消褪が認められたことからHADと診断した。自験例では、豊胸術に用いられた物質は不明であったが、47年前という施行時期よりシリコンを直接注入された可能性が高い。近年アジュバント物質によって生じる自己免疫疾患様の病態をautoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants(ASIA)と総称する概念が提唱されている。

英文抄録

editorial

皮膚科も医工連携を 浅井 俊弥

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帯状疱疹関連痛(ZAP)は、発症時には侵害受容性の要素が中心であったものが、時間の経過とともに神経障害性の要素へと変化し、痛みが複雑かつ重症化してゆく特徴がある。侵害受容性の痛みにはアセトアミノフェンを、神経障害性の痛みには抗鬱薬や抗痙攣薬を適切に使い、必要に応じてトラマドール製剤の使用を考慮する。ZAPの病態、薬物療法の概要、非オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬、トラマドールについて概説した。

蝶の博物詩

生態22 西山 茂夫

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痛みを伴う皮膚病変の原因には,癤,癰,丹毒,皮下膿瘍, 蜂窩織炎などの化膿性皮膚疾患や,Lyme病などの遊走性紅斑など感染症が問題になるものもあれば,Behçet病やサルコイドーシスによる結節性紅斑や壊死性筋膜炎,痛風発作や深部静脈血栓症など非感染性疾患によるものもある.壊死性筋膜炎に代表される壊死性軟部組織感染症は早期の対応で生命予後にも影響を与える疾患であり,日常診療でも常に鑑別の対象に入れておかなければならないものである.(「はじめに」より)

学会ハイライト

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平成28年10月22日~23日に第67回日本皮膚科学会中部支部学術大会を大阪国際会議場(グランキューブ大阪)において開催させていただきました.兵庫医科大学皮膚科学教室が中部支部学術大会を担当しますのは,第32回(昭和56年開催 会長 相模成一郞 教授),第51回(平成12年開催会長 喜多野征夫 教授)に続いて3回目になります.お陰様で会期中に1,400名を超える皆様にご参加いただき,無事に終了できました.ご参加の皆様をはじめ,ご講演いただいた先生方,座長,オーガナイザーをお努めいただいた先生方,また,ご指導いただきました日本皮膚科学会事務局,ご後援いただいた蘭芷(らんし)会(兵庫医科大学皮膚科学同門会), 兵庫医科大学関係者の皆様に心より御礼申し上げます.(「はじめに」より)

私の歩んだ道

私の歩んだ道 武藤 正彦

皮心伝心

診察室の四季

斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第142回 浅井 俊弥

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目次

編集後記・次号予告

基本情報

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皮膚病診療
39巻4号 (2017年4月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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