特集 薬疹と薬剤性皮膚障害~いま問題になっているのは何?
ワンポイント解説
エンホルツマブ ベドチンによる薬剤性皮膚障害とその治療
濱 菜摘
1
,
阿部 理一郎
1
1新潟大学医歯学総合研究科皮膚科学分野
pp.454-455
発行日 2025年6月1日
Published Date 2025/6/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000004165
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エンホルツマブ ベドチン(enfortumab vedotin;EV)は,根治切除不能な尿路上皮癌に対し,Nectin-4を標的として微小管阻害薬であるモノメチルアウリスタチンE(monomethyl auristatin E:MMAE)を結合させた抗体薬物複合体である.MMAEは細胞内の微小管ネットワークを破壊し有糸分裂を阻害し,アポトーシスをひきおこす1).しかし,Nectin-4は尿路上皮だけでなく表皮ケラチノサイトや皮膚付属器にも発現しており,第III相試験ではEV治療を受けた患者の43.9%に治療関連の皮疹がみられた2).
典型的には腋窩や鼠径部,足関節などの間擦部に紅斑がみられ,重症例では,同部に水疱やびらんがみられることがある(図1a,b).EVの発売早期には表皮剝離の所見からStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)/中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)と診断された症例報告も散見された3).しかしSJS/TENと異なり粘膜障害をおこすことは少ない.一方,表皮剝離面積が限定されていても,EVの直接臓器障害としての骨髄抑制などにより予後は不良となりえる4).最近では皮膚病理組織学的特徴として,表皮や毛包上皮にリング様やスターバースト様の異常核分裂像がみられることが報告されている(図2a,b)5).さらにわれわれは汗腺分泌部や導管にも同様の所見があることを見出している(図3).
(「エンホルツマブ ベドチンによる皮膚障害の特徴」より)
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