臨牀透析 32巻12号 (2016年11月)

リハビリ・運動療法を活用した高齢腎不全患者の栄養管理

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高齢透析患者の栄養管理において栄養評価は重要である.単に加齢による食事摂取低下および身体機能低下だけでなく,腎臓病,透析に関連した因子による低栄養,つまりprotein-energy wasting(PEW) syndromeに進展し,ADLおよび生命予後悪化の危険性が高まるからである.このため低栄養の発生および進展の予防には,栄養障害の評価が必須となる.しかしながら単独の栄養評価法での絶対的な低栄養の診断はできないため,実臨床ではさまざまな評価法を複合的に利用することになる.適切な栄養評価により高齢透析患者のサルコペニア,ロコモティブシンドロームを予防し,フレイルへの進展を阻止またはフレイルの改善をはかることで高齢透析患者の生命予後の改善につなげたい.

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慢性腎臓病(CKD)患者は,高齢化や運動不足に加えて,尿毒症物質の蓄積,代謝性アシドーシス,炎症性サイトカインなどのためフレイル・PEW(protein-energy wasting)をきたしやすい.運動耐容能の低下やフレイル・PEWは生活の質や生命予後に大きな影響を与える.腎臓リハビリテーション(腎臓リハ)は,運動療法,食事療法と水分管理,薬物療法,教育,精神・心理的サポートなどを行う,長期にわたる包括的なプログラムであり,CKD患者の筋力・筋量増加,栄養状態改善,QOL向上や生命予後改善をもたらす.さらに,保存期CKD患者の腎機能を改善させ,透析導入を先延ばしできる可能性が高い.日本腎臓リハビリテーション学会が設立され,診療報酬にも収載された.今後の腎臓リハの普及・発展が期待される.

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高齢の慢性腎臓病(CKD)患者は低栄養や身体不活動などさまざまな要因が関与し,フレイルやサルコペニアを高率に合併している.これらCKD患者の身体機能低下は生命予後不良の危険因子であることが明らかとなってきた.したがって,健康寿命の延伸や健やかな透析ライフを長く維持するためにも,CKDの早期から運動介入することで身体機能低下を予防することが重要である.しかし,透析患者を含めたCKD患者全般の運動療法に対する診療報酬の算定はできないのが現状である.そのため,CKD患者に対する運動療法は在宅ベースで行えるものが現実的であり,歩数計を用いた有酸素運動や自宅で可能なレジスタンス運動の実施が推奨される.

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本稿ではリハビリテーション栄養療法の基本的な考え方を提示し,症例を提示してリハビリテーション栄養の実践的な方法を示した.高齢透析患者は,保存期からある程度たんぱく質制限があり,透析が導入されると食思不振の状態にも陥る.また,透析導入による倦怠感で不活動となり,加齢の要因も加わってサルコペニア状態となる.リハビリテーション栄養では,国際生活機能分類(ICF)で評価を行ったうえで,障害者や高齢者の機能,活動,参加を最大限発揮できるような栄養管理を行うことが重要であるが,高齢透析患者にも臨床応用の適応となりうる.そのためには,関連職種との連携は必須であり,今後,この分野でのエビデンスの早急な構築が望まれる.

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透析患者の脳出血発症率は高く,脳梗塞も増加傾向にある.経口摂取困難例の場合,急性期から経管栄養を行い,栄養状態を保ちながら摂食・嚥下リハビリテーションを行い,経口摂取可能になることを目指す.摂食嚥下障害に対する食事の対応で効果的なものは嚥下機能に合わせた形態調整である.嚥下しやすいようにゼリー状にしたり,とろみをつけたり,また,補助食品の利用により必要栄養量を確保する.言語聴覚士による段階的摂食訓練などにより嚥下機能は改善し,常菜食が食べられるようになることも多い.転院に際しては情報提供が重要であり,多職種連携による継続的なケアが必要である.

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高齢の腎不全・透析患者においては,摂取エネルギー量不足や糖尿病神経障害,糖尿病網膜症に伴う活動量低下がサルコペニア(加齢性骨格筋減少症)を引き起こしADL低下に繋がる可能性が高まる.サルコペニアの防止のためには,管理栄養士による早期の栄養療法の介入と理学療法士による運動療法の介入が効果的である.

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血液透析患者の高齢化は確実に進行している.夫と2人暮らしで高齢の女性患者の場合,ADLの低下に伴い,買い物を含めた食事の準備でさえも,負担となる場合がある.今回,当院で実施している集団調理実習(透析患者向け)を利用した食事指導と運動療法を行い,約2年間にわたり安定した経過を辿っている1症例を提示する.夫と2人暮らしで高齢の女性患者においては,調理実習によるレシピや補助食品を利用した個々の患者に合った食事指導と,栄養状態,炎症状態を定期的に観察したうえでの運動療法が重要である.

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透析導入前に寝たきり状態となった高齢患者に対し,投与する栄養内容を工夫しながらリハビリテーション(リハビリ)を並行して行った結果,経口摂取量の増加とともに身体機能が改善した症例を経験した.入院前,もともとの関節症状によるADLの低下に加え,腎機能障害の進行に伴い尿毒症症状が出現し,徐々に食事が摂れなくなり,透析導入目的で緊急入院となった.入院後,透析治療と並行し,患者の状況に応じたきめ細やかな栄養投与内容の変更を行いながらリハビリを実施したことによって徐々に全身状態が改善し,介助下ではあるが車椅子移乗が可能となったと考えられた.寝たきり状態の患者に対する栄養管理は,リハビリも含めたチームアプローチが重要である.

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最近は高齢透析患者の低栄養や痩せの問題が注目されている.管理栄養士は食事のほかに,環境や精神状態を踏まえて栄養指導を行うことが求められている.食事では,回数,食欲,体重変動,咀嚼や嚥下障害,歯の状態などを把握する.生活環境では同居者や調理担当者の有無を確認する.精神状態では食事の受けとめ方,気分の落ち込み,認知機能障害を確認する.これらを総合的に評価した栄養管理を行うことで低栄養を防止していくことが必要である.そのためには,医師,看護師,薬剤師,臨床工学技士,ソーシャルワーカー,管理栄養士の透析チームに加え,精神科リエゾンチームや介護職などと連携していくことが重要である.

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症例は70歳代,女性.30歳代に糖尿病を指摘され治療が開始された.60歳代より認知機能の低下を認めた.70歳代に腎機能低下のため当院に紹介となり,BMI(body mass index)30以上の肥満のため食事内容の評価および教育目的に栄養指導が開始となった.栄養管理上の問題点は,食事摂取状況の把握が困難,果物の摂取過剰,漬物の摂取過剰であった.背景に認知機能の低下があるため,指導内容は簡潔を心がけた.果物は手のひらを用いて適量を指導し,漬物は即席のピクルスに置き替える指導を行った.指導開始時と4ヵ月後を比較すると,BMIは30.1から29.6に低下した.高齢者は容易に食事摂取量が低下するため,減量をはかる場合は,栄養状態をモニタリングしながら行うことが重要である.

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症例は70歳,女性.慢性腎臓病(ステージG4A3),2型糖尿病,高血圧を有し,血糖コントロールおよび腎機能障害増悪のため精査・加療目的に入院となった.糖尿病網膜症による視力障害・リウマチによる関節の変形があり内服管理ができていなかったことや,市販品の利用が多く食塩摂取過剰といった食事管理に問題があった.また,身体活動量が低くサルコペニア・フレイルが懸念された.本症例に対して患者が理解できるようにイラストを中心として拡大した個別の指導パンフレットを用い適正な食事量を指導した.また,調理負担を減らすために市販惣菜を利用した減塩の工夫を紹介した.運動療法は自身で安全に実施できる椅子に座っての軽度有酸素運動・レジスタンス運動を紹介した.今後透析導入の可能性も考慮すると低栄養状態の予防が生命予後に影響し,サルコペニア・フレイル予防のためには継続的な栄養管理・運動療法の両立が必要不可欠であると考える.

基本情報

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臨牀透析
32巻12号 (2016年11月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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