臨床雑誌整形外科 60巻10号 (2009年9月)

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日常診療において脊椎圧迫骨折(VCF)の保存的治療を中心的に行っている整形外科医に対してアンケートを実施し、期待医療費の推計を試みた。アンケートは全国83施設に依頼し、最終的に65施設から得られた結果を集計した。その結果、医療機関を受診し、保存的治療を受けた骨粗鬆症性VCF患者における1治療あたりの医療費は平均37.1万円と推計された。また、入院のみの治療方針における推計結果は、状態1(腰背部痛あり、ADL支障なし、神経症状なし)の場合で入院期間が36.3日で66.6万円、状態2(腰背部痛あり、ADL支障あり、神経症状なし)では39.6日で72.1万円、状態3(腰背部痛あり、ADL支障あり、神経症状あり)では48.9日で89.3万円となった。本分析で推計した1治療あたりの平均医療費をもとにして、全国規模の骨粗鬆症性VCF保存的治療による年間疾病負担額の推計を試みた結果、年間1089億円と推計された。

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椎弓根スクリュー併用in situ後側方固定術(PLF)のみを施行した腰椎分離すべり症8例について検討した。術式は、3例は正中進入、両側椎弓展開で、5例は正中皮膚切開、両側傍脊柱筋間進入により低侵襲化を図った。すべり椎間角度をみると、術直後は全例僅かに前彎傾向となったが、最終観察時にはほぼ術前中間位と同じ角度となり固定された。1例は骨移植が不十分で偽関節となり、術後1年で椎弓根スクリューを抜去したが、椎間ROMは術前12°から最終観察時5°に制動されていた。すべり椎間の%slipは、全例で術直後変化しないか僅かに矯正されたが、最終観察時には術前中間位と同程度となった。平均JOAスコアは、術前18.9点から術後27.5点となり、4例では29点と極めて成績良好であった。全例で下肢痛は安静時痛を含めて消失し、間欠跛行も消失した。しびれは2例に残り、うち1例は偽関節例で、JOAスコアは25点となった。術前に腰痛を呈していた5例はいずれも軽快し、術後に術前と異なる遺残腰痛を3例に認めたがいずれも軽度であった。

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変形性膝関節症に対して人工膝関節全置換術(TKA)を施行し、術後早期より可動域(ROM)が経時的に記録されていた122例131膝を対象とし、patient controlled epidural analgesia(PCEA)をROM訓練に使用した46例49膝(PCEA群)と、PCEAを使用しなかった76例82膝(対照群)に分け検討した。膝関節屈曲角度、局曲角度改善率(術後の屈曲角度/術前の屈曲角度×100)は、術後1週でPCEA群103.0°(85.8%)、対照群88.8°(73.9%)、術後2週でPCEA群109.8°(91.7%)、対照群101.9°(84.8%)、術後3週でPCEA群116.8°(97.2%)、対照群110.3°(91.9%)となり、各週ともPCEA群が良好な結果を示し、術後3週を除き統計学的有意差を認めた。最大屈曲時の疼痛(VAS)も、PCEA使用期間中PCEA群は対照群より軽減しており、統計学的有意差を認めた。PCEA群の合併症としては、排尿障害(尿閉)を5例、嘔気・嘔吐を16例に認め、うち1例が食事困難であった。

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Forged composites of unsintered hydroxyapatite/poly-L-lactide(F-u-HA/PLLA)骨接合材を用いて治療を行った足関節骨折75例のうち、半年以上経過観察できた19例を対象に治療成績を検討した。平均経過観察期間14.4ヵ月であった。全例で骨癒合が得られ、足関節可動域は背屈平均14°、底屈平均39°であった。日整会足部疾患治療成績判定基準は平均98点で、American Orthopaedic Foot and Ankle Societyスコアは平均99点であった。なお、合併症は認めなかった。

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多剤併用化学療法を受けた初診時15歳未満の下肢骨肉腫患者で、1年以上経過観察できた8例を対象に、治療中と治療終了後の骨密度(BMD)及び、経過中生じた脆弱性骨折について検討した。メトトレキサート(MTX)の総投与量は平均331.7gであった。14歳を過ぎた時点で測定した6例の大腿骨近位部BMDは0.606~0.835g/cm2で、若年成人平均値の56.5~77.1に相当した。2回以上BMDを測定できた7例のうち、治療開始前後でのBMDを比較できた3例ではいずれも治療後にBMDは低下していた。8例中5例で治療開始から12~20ヵ月の間に脆弱性骨折を認め、全て保存的治療とし、機能障害を残さず治癒した。

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73歳女。腹部膨満を主訴とした。小児頭大の腫瘤を触知し、単純X線正面像でL2は左椎弓根が消失し、左側が圧潰しており、側面像では椎体から椎弓根にかけて骨透亮像を認めた。MRIでは脊柱管内から椎体内、後腹膜腔へ進展した19×10.5×12cmの巨大な腫瘍を認めた。脊髄は腫瘍により右側へ圧迫されていた。CT骨条件で左椎弓根は消失、椎体にscallopingを認め、椎体には辺縁硬化像がみられた。以上より、L2神経より発生したダンベル型巨大神経鞘腫と診断した。背側から椎体内に浸潤した部分を針生検した結果、悪性所見はなかった。腫瘍が巨大すぎるため消化管の通過障害が生じ食事は全く摂食できず、低栄養状態で胃潰瘍からの出血もあるため手術困難と判断し、ドレーンを挿入して腫瘍内容物をドレナージすることとした。経皮的ドレナージを継続しながら、プロトンポンプ阻害薬を投与したところ、胃潰瘍は治癒し食事可能となった。約3ヵ月間経皮的ドレナージを継続し、全身状態の回復を待って腫瘍摘出術を施行した。腫瘍が大きく摘出に難渋したが、腫瘍を皮膜下に全摘出することができた。なお、L2神経根が腫瘍化し剥離不可能であったため、L2神経根を切離し、後側方・前方固定を行った。組織学的所見はAntoni分類A型とAntoni分類B型の部分が混在した神経鞘腫であった。術後1年で骨癒合は完成し、腫瘍の再発なく経過良好である。

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54歳男。19年前に右肘の腫瘤に気付き他院で切除手術を受け、色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)と診断された。術後2年頃から再び創周囲に腫瘤が出現し、次第に増大して運動時痛を伴うようになり当院紹介となった。初診時、右肘は全体に腫脹し、内側には前回の手術瘢痕と2個の大きな腫瘤を認め、屈曲は軽度制限され、最大屈曲時に疼痛を生じた。MRIでは肘関節内から皮下にかけて大きな腫瘤陰影を認め、T1強調画像で低信号、T2強調脂肪抑制画像で高信号と低信号の混在する所見を認めた。CTでは上腕骨遠位と尺骨近位に骨嚢腫像を認め、骨浸潤が疑われた。肘関節内外に及ぶびまん型のPVNSの再発と骨への浸潤を疑い手術を行い、内側皮下に黄褐色調の大きな腫瘤を認めた。腕尺関節部には暗赤色の滑膜が著明に増生しており、上腕骨肘頭窩は破壊され骨孔を形成していた。また、橈骨頭と尺骨近位部を取り巻くように黄白色の大小多数の腫瘤があり、肘頭骨切り面には骨内に浸潤する腫瘤を確認した。関節内外の病巣切除と骨内病巣掻爬を行い、切離翻転した肘頭を鋼線固定した。病理組織所見よりPVNSと確定診断した。術後肘頭部の骨癒合が遷延したが術後1年で癒合が得られ、疼痛、腫脹及び屈曲制限は消失し、術後5年の時点で再発所見は認めない。

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84歳女。自転車走行中に乗用車と接触し、頭部をフロントガラスに強打した。顔面全体は軽度腫脹し、頸部には自発痛・圧痛がみられ、頸椎CTにてC1前弓右側、C2椎体右側に骨折を認めた。ベッドアップ30°まで許可し、頸部を砂嚢で固定し、深部静脈血栓症予防のため弾性ストッキングを装着した。第2病日に骨折部の安定と早期離床を目的に局所麻酔下にハローベストを装着し、ベッドアップの制限をなくした。第6病日よりリハビリテーションを開始し、日常生活動作は徐々に改善したが、第26病日早朝にトイレ着席時にごく短時間の気分不良を訴えた後、急激に意識消失をきたし心肺停止状態となった。蘇生処置に反応せず、同日死亡が確認され、剖検では右肺動脈の起始部に長さ約15cmの血栓を認め、これにより右肺動脈は完全に閉塞されていた。なお、患者からの自覚的訴えは全くなく、他覚的な所見も認めなかった。

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78歳女。転倒後に左踵部痛が出現した。左アキレス腱部に硬結を触知し、単純X線像で左踵骨アキレス腱付着部を含む嘴状の骨折を認め、骨片の後縁が中枢へ転位しており、その近位部に小骨片を認めた。Boehler分類I-b型の踵骨嘴状骨折と診断して手術を計画したが、糖尿病のコントロールが必要であったため、受傷から手術まで約2週間を要した。アキレス腱内側部の縦皮切で進入したところ、上方に転位した裂離骨片を皮膚直下に認め、嘴状にとがった後縁が皮膚に突き刺さっていた。嘴状骨片を整復したところ、小骨片を伴い全層にわたり断裂したアキレス腱断端部を認め、cannulated cancellous screwとワッシャーを併用してアキレス腱付着部と嘴状骨片を同時に固定した。更に、plantaris tendonをアキレス腱実質内及び作製した踵骨骨孔に通して補強とした。術後骨片が突出し、圧迫されていた部分に皮膚潰瘍を生じた。創傷被覆材による処置で治癒したが、上皮化までに約4週間を要した。術後1週から立位訓練、3週から歩行訓練を行い、3ヵ月で骨癒合が得られ、術後1年時で可動域制限なく歩行可能である。

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62歳女。右足関節痛、腫脹を主訴とした。足関節のMRIで左右ともに腱鞘滑膜炎が示唆され、右足関節鏡視下滑膜生検を施行した。滑膜の増生を認めたが軽度で、滑膜病理所見では形質細胞、リンパ球の浸潤を認め、慢性の非特異性炎症の診断であった。以上より、腫脹の主原因は関節内病変ではなく腱鞘滑膜炎由来と考え、右足腱鞘滑膜切除術を施行した。腓骨筋腱、後脛骨筋腱周囲の腱鞘滑膜の著しい増生を認めたため切除し、摘出滑膜の総重量は4.6gであった。術後2日目から両手掌、足底に皮疹が出現し、皮膚科で掌蹠膿疱症(PPP)と診断された。その後、左脚関節の疼痛、腫脹が増強したため左足腱鞘滑膜切除術を行い、摘出した滑膜重量は11.65gで、病理組織では形質細胞、好中球の浸潤を認めた。以後、両足関節の関節症性変化が出現し始めてからDMARDsを使用し、術後13年の現在、NSAIDsのみで疼痛はコントロールされているが、経年的に両足関節、距骨下関節ともに関節裂隙の狭小化や骨棘の形成がみられる。また、皮質骨の骨膜性肥厚など骨増殖性変化が著明である。

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69歳女。左前足部の足底に5×5cmの軟部腫瘍を認め、圧痛はなく、皮膚との可動性は不良であった。MRIでは中足骨から中足趾節(MTP)関節レベルにかかる軟部腫瘍を認め、T1・T2強調画像とも低信号を呈し、ガドリニウム造影で強い造影効果を示した。軸位像で腫瘍は足底部から第1・2中足骨間と第3・4中足骨間に進入していた。血管造影像では膝窩動脈付近で血管の狭小化を認め、足底動脈は側副血行路で血流が保たれている状態であった。針生検では、myxoidな間質を背景に円形から一部多形成を示す細胞の増殖を認めた。また、mitosisが軽度みられ、中央にガングリオン様細胞が認められた。Acral myxoinflammatory fibroblastic sarcomaと診断し、Syme切断術を施行して問題なく創治癒した。切除材料は、針生検所見に加え、リンパ球や形質細胞などの炎症細胞の増殖を認め、特徴的なガングリオン様細胞やReed-Sternberg様細胞も認めた。術後5ヵ月現在、再発はない。

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7歳女児。右股・膝関節拘縮を主訴とした。先天性股関節脱臼、足部変形に対し手術施行されていた。初診時、両眼隔離、眼球突出、頬部膨隆、小顎、軽度前額突出、歯列不整を認め、漏斗胸があり胸郭は狭く、手指と足趾は太く短縮し、趾間が開大しておりtree frog foot様であった。また、軽度精神運動発達遅延を認めた。単純X線で下顎骨は低形成で、軽度の頭蓋底硬化を認めた。鎖骨はやや短く、肋骨はリボン状変形し、椎体は前面が陥凹し、高さが増大していた。腸骨翼のflaring、腸骨遠位部の狭細化、外反股を認め、長管骨は彎曲し、橈骨近位はS字状変形を呈し、手関節はMadelung様変形を呈していた。脛骨近位も彎曲し、低位膝蓋骨を認めた。母趾基節骨は三角指節骨様で、末節骨の低形成を認めた。末梢血よりゲノムDNAを精製し、FLNA全翻訳領域をPCRで増幅し、変性高速液体クロマトグラフィー法で塩基配列を決定した結果、エクソン25の4197番塩基において、GからTへのヘテロのミスセンス変異と、リシンからアスパラギンへのアミノ酸置換を認めた。両親の同部位に変異はないことから、de novo変異と考えられた。

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腰・下肢の疼痛がない大学女子スポーツ選手34名を対象に、姿勢制御訓練の効果について前向き介入研究を行った。対象のうち、ハンドボール部員13名、バスケットボール部員8名は左下肢を中心に訓練(左下肢訓練群)し、バレーボール部員13名は右下肢を中心に訓練(右下肢訓練群)を行った。訓練方法としては、足趾把握、芋虫歩行、ジャンプ着地の3種類の訓練を行った。その結果、足趾による床面把握能は、左・右下肢訓練群とも足握力と足趾回転において有意に向上した。動作遂行能は、左下肢訓練群では立ち幅跳び以外は垂直跳び、反復横跳びとも有意に向上し、右下肢訓練群では全て有意に向上した。小型不安定板の動揺に対する制動能は、左下肢訓練群は前後方向の動揺に対する左足の制動能が有意に向上したが、右下肢訓練群は向上しなかった。大型不安定板の外乱に対する制動能は、左下肢訓練群では左傾斜時のステップカが有意に向上したが、右下肢訓練群では向上しなかった。また、本訓練実施前と実施後に行ったアンケート調査では、訓練を実施した年は行わなかった年に比べ膝・足関節の損傷が減少することが判明した。

Vocabulary Wnt 5a 前田 和洋

X線診断Q&A Lisfranc靱帯損傷 三谷 玄弥

基本情報

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臨床雑誌整形外科
60巻10号 (2009年9月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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