胸部外科 63巻4号 (2010年4月)

心房細動に対する外科治療

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双極高周波アブレーションを用いCox maze IV手術を施行した48例を、左右の肺静脈(PV)isolation lineを下部のみつなげるsingle ablation lineを選択したS群20例(男14例、女6例、平均年齢66.6歳)と、PVを上下でつなぐbox-lesion setを選択したB群28例(男15例、女13例、平均年齢70.1歳)に分け、治療成績を比較検討した。両群とも80%以上が基礎疾患として弁膜症を有し、左心房径および心房細動期間は両群間で有意差を認めなかった。退院時における除細動率はS群80%、B群89.3%、術後遠隔期における除細動率はS群75%、B群89.3%であり、いずれも両群間で有意差を認めなかった。Maze IV手術はsingle ablation lineとbox-lesion setどちらを選択しても良好な成績を期待できるが、左心房径拡大例では両群とも除細動不成功例の割合が多かった。

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1997年~2008年に施行したmaze手術213例(男117例、女96例、平均年齢66歳)の遠隔期治療成績(平均経過観察期間38ヵ月)を検討した。心房細動の分類は慢性151例(71%)、発作性62例(29%)であり、154例(72%)は合併手術として僧帽弁手術を施行した。入院中死亡例は4例(1.9%)であり、退院時洞調律であった157例(74%)のうち16例は心房細動を遠隔期再発した。そのうち15例は1年以内に再発し、リスク因子は術前左房径≧50mmであった。Maze手術の術式による遠隔期心房細動再発の回避率に差は認めなかった。一方、退院時心房細動であった52例は遠隔期に20例が洞調律に復帰し、洞調律への復帰は平均45ヵ月、5年間の洞調律への復帰率は34%であった。

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2004年8月~2007年7月に人工心肺を用いない心拍動下冠状動脈バイパス術とoff-pump肺静脈隔離術(PVI)の同時手術を計画した22例(男16例、女6例、平均年齢72.6歳)を、off-pump PVIが完遂できた13例とできなかった9例に分け比較検討した。完遂例での心房細動回避率は発作性心房細動8例においては100%であったが、慢性心房細動5例においては20%であった。非完遂例はすべて左側PVIに際し十分な術野展開が不可能で循環を維持できなかったことが原因であった。心拡大を有する症例や低心機能例に施行できるoff-pump PVIとして心臓脱転の必要がない高周波バルーンカテーテルを用いた手法を考案した。ミニブタを用いた基礎実験では左房・肺静脈間の前庭部が円周状に5~8mm幅で焼灼され組織学的には貫壁性の凝固壊死像を得たが、臨床応用にはさらなる研究が必要である。

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2002年2月~2004年9月(前期)にcut and sewによる肺静脈隔離術を37例(男16例、女21例、平均年齢67.0歳)に施行し、退院時の洞調律回復率は前期全体で62.2%、慢性心房細動(Caf)例に限れば57.6%であった。体外循環確立後電気的に除細動できなかった7例は全例退院時も心房細動であったことから、2004年10月以降(後期)は体外循環確立後に除細動できない症例を適応から除外し、洞調律能が良好な49例を対象としてmitral isthmusの切開を追加したcut and sewによる肺静脈隔離術を施行した。後期全体の退院時の洞調律回復率は91.8%、Caf例に限れば90.2%であった。

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対象は2004年1月~2009年8月の40例(男22例、女18例、平均年齢61.9歳)で、内訳はcryoablationのみによるmaze手術20例(cryo群)とradiofrequencyを使用した20例(RF群)であった。弁形成術はCryo群8例、RF群15例であり、後者が有意に多かった。周術期データは両群間で有意差を認めなかった。退院時の洞調律復帰率はCryo群80.0%、RF群70.0%であり、退院時の抗不整脈薬はCryo群の9例およびRF群の13例が要した。Radiofrequency ablationデバイスを用いた手技はcryoablation法と比較して手術手技上時間短縮・簡便化に有益であり、従来の心房細動に対する外科治療の代替となる新たな治療法として期待がもたれる。

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2002年4月~2009年3月におけるアブレーションデバイスを用いたmaze手術手技の変遷と、手術成績、自律神経叢(GP)アブレーションの効果を報告した。対象は269例(男146例、女123例、平均年齢64歳)で、現疾患は弁膜症196例、拡張型心筋症36例、虚血性心疾患18例、成人の先天性心臓病その他19例であった。病院死亡は7例であった。前期129例中111例はモノポーラによるアブレーション、残り18例および後期140例はバイポーラによるアブレーションデバイスを用い、モノポーラ使用の79%、バイポーラ使用の75%が洞調律を回復した。後期の73例の無作為研究でGPアブレーションの有無による洞調律への回復率の検討した結果、GP未施行群は72.4%、GP施行群では88.6%であった。

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1999年~2008年に初期のFontan型手術施行後遠隔期に心房性頻脈型不整脈を合併し循環不全に陥った7例(男5例、女2例、手術時年齢中央値20.3歳)を対象とした。前回Fontan型手術からの期間の中央値は15.6年であり、その術式は右心耳-肺動脈吻合術4例、側方トンネル2例、Bjork吻合1例であった。右房回帰性頻脈(IART)6例に対しては右側mazeを、心房細動1例に対しては肺静脈隔離術を伴う両側mazeを行った。在院死亡は認めず、術後観察期間(中央値7.4年)中、感染性心内膜炎に起因する遠隔死亡を1例認めた。術後IARTあるいは心房細動は認めず、生存6例のNew York Heart Association分類はI度4例、II度2例であった。

画像診断Q&A 小田 誠

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77歳男。主訴は交通事故による多発外傷であった。搬送時はショック状態であり、右外傷性血胸および左多発肋骨骨折による左外傷性緊張性気胸に対して両側胸腔ドレナージ術を施行した。心エコーおよび胸部CTでは明らかな心嚢液貯留や造影剤の血管外漏出は認めなかったが、胸腔ドレーンの持続吸引によりドレーンからの出血量が急増したため、胸骨粉砕骨折に伴う肺靱帯の血管損傷の疑いで緊急手術を施行した。術中、心膜破裂を伴う心嚢内下大静脈損傷を出血源として認めたため、裂創を連続縫合閉鎖してタココンブを貼付した。術後は肺炎のため気管切開術を要したが徐々に回復し、第25病日に骨折加療目的に転科した。

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25歳女。主訴は胸痛および息切れであった。胸部X線にて気胸を認め胸腔ドレナージを施行したが改善しなかった。ドレナージに伴う右肺の再膨張後のCT撮影では、粘液が充満し右中葉支との連絡を認めないB4気管支と、気腫化したS4肺表面に大小の気腫性嚢胞を認めた。右B4の先天性気管支閉鎖症とS4に多発する気腫性肺嚢胞の穿孔による気胸と診断し、胸腔鏡併用小開胸アプローチにてS4肺表面に認める大小の気腫性嚢胞のうち1個の穿孔と盲端のB4を確認し、S4区域切除術を施行した。病理組織学的に気腫性肺嚢胞はブラと診断された。

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75歳女。主訴は突然の咳嗽であった。胸部X線およびCTでは縦隔気腫と右胸水を認め、食道透視所見にて造影剤の漏出を確認したため、特発性食道破裂の診断で発症8時間後に緊急手術を施行した。胸腔鏡観察にて下部食道右壁に長径1.5cmの破裂部を認め急性膿胸の状態であったため、5cmの小切開を加え胸腔鏡下に食道全層を縫合し、開腹して作成した有茎大網弁にて充填した。術後経過良好で50病日に退院した。

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64歳男。主訴は咽頭部不快感であった。胸部CTにて中心部に扁平な充実性部分を有する4.1×3.9cmの嚢胞状陰影を右下葉S9に認めた。気管支鏡下生検では気管支上皮直下から深部の軟骨周囲までB細胞の密な増殖とlymphoepithelial lesionを認めたためMALTリンパ腫(病期I-E期)と診断し、右下葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行した。肉眼的に嚢胞状に見えたのは壁を破壊され嚢胞状に拡張した肺胞・気管支であり、嚢胞壁は腫瘍で裏打ちされていた。術後経過は良好では第9病日に退院し、1年1ヵ月経過して再発や転移は認めていない。

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44歳男。主訴は咳であった。呼吸機能検査では努力性肺活量(FEV)1秒量1.3l、FEV1秒率33.4%と著明な閉塞性呼吸機能障害を認め、胸部CTでは気管内に充実性の腫瘤を認めた。気管支鏡では膜様部に広基性の基部を有する球形の腫瘍を認め、生検で平滑筋腫性過誤腫と診断された。後側方開胸にて気管管状切除および端々吻合術を施行した。切除標本では気管内腔に黄白色の限局した20mmの腫瘍を認め、病理組織学的には交錯する索状構造を呈する平滑筋腫の所見を示していた。術後15ヵ月経過して再発は認めず、呼吸機能検査もFEV1秒量3.33l、FEV1秒率91.7%と正常化した。

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74歳男。主訴は胸部X線上異常陰影であった。7年前より前立腺癌の診断で内分泌療法を継続していた。造影CTでは左肺下葉S8に胸膜嵌入を伴う境界明瞭な腫瘤を認め、経気管支肺生検では腺癌で前立腺特異抗原(PSA)陽性であったため、前立腺癌肺転移と診断した。PET-CTで肺病巣以外の転移を認めなかったため胸腔鏡補助下楔状切除術を施行し、術後第12病日に退院した。2ヵ月後に高感度PSAの上昇を認めたためDEC化学療法を2コース施行し、肺切除から5ヵ月経過現在通院中である。

基本情報

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胸部外科
63巻4号 (2010年4月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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