臨床雑誌外科 81巻12号 (2019年11月)

  • 文献概要を表示

腹腔鏡下肝切除術(laparoscopic liver resection:LLR)は,区域切除術,葉切除術といった高難度肝切除も保険収載されたことを受けて,今後もさらに症例の増加が見込まれる.多くの施設でLLRが安全に施行されることを期待し,本稿では当科で施行しているLLRの手技の工夫,特に肝離断の実際について述べる.

  • 文献概要を表示

腹腔鏡下系統的肝切除を正確に施行するうえで,インドシアニングリーン(ICG)蛍光法は肝区域を同定する有用な手術支援となる.ICG蛍光法を用いた肝区域同定法には,positive staining法とnegative staining法がある.各法で染色された蛍光領域境界に沿って肝実質を離断することで,三次元的に精緻な系統的肝切除を行うことが可能となる.筆者らは開腹手術と同様にpositive staining法を腹腔鏡下に応用する試みをしてきた.本稿ではICG蛍光法を用いた腹腔鏡下系統的肝切除の工夫について解説する.

  • 文献概要を表示

腹腔鏡下肝葉切除(laparoscopic major hepatectomy:LMH)は手技難度が高く,まだまだ標準的手術と呼べるほど普及はしていない.しかしながら,LMHは開腹手術と比較すると術中出血量,術後合併症,術後在院日数の減少や医療費の削減につながるという報告もみられ,LMHがもたらすメリットは非常に大きい.本稿ではLMHの適応および手術手技の実際について述べる.

  • 文献概要を表示

当科では,生体肝移植ドナー手術での安全性および確実性を担保する術式として,上腹部正中切開によるハイブリッド肝グラフト採取術を行っている.腹腔鏡下手術と開腹手術の利点を生かし,偶発的な出血などにも大開腹同様対応可能であり,手術の安全性と術後の生活の質(QOL)のバランスが取れた合理的かつ有用な方法と考える.世界的には完全腹腔鏡下での生体肝移植ドナー手術が増加してきており,本邦での外側区域ドナーからの今後の保険適用承認の議論が望まれる.

  • 文献概要を表示

胆囊癌に対して胆囊床部の肝部分切除術を腹腔鏡下に行い,腹腔鏡下肝部分切除術として保険請求することは可能である.その際に胆囊管断端の術中迅速病理組織診断が表層伸展によって陽性になったために,腹腔鏡下に胆管切除を追加して胆道再建を行うことに制約はない.患者に真の利益をもたらす可能性があり,かつ保険診療として施行可能な胆管切除・再建を伴う腹腔鏡下肝切除の数少ない適応の一つである.

  • 文献概要を表示

単孔式手術の登場から約10年が経過した.現在でも胆囊摘出術が単孔式腹腔鏡手術の導入には最適であると考えている.本稿では当教室で現在行っている単孔式胆囊摘出術の手技を解説する.単孔式手術のそもそもの利点であるはずの「創の最小化」にこだわると同時に,安全性と標準化を心がけ,2場面に単純化した.本手術を通じて腹腔鏡手術を改めて熟考することで,今後の本格的な肝胆膵領域の低侵襲手術化の一助となることを期待する.

  • 文献概要を表示

腹腔鏡下膵頭十二指腸切除(LPD)の導入にあたっては,まず自施設が「施設基準」を満たしているか確認し,National Clinical Database(NCD)の術前登録に参加する準備を整える必要がある.保険診療上の本術式の適応は「脈管の合併切除やリンパ節郭清切除が必要でないもの」と定められるが,各施設においては病理および解剖学的な観点から切除適応を明記するとともに,開腹移行の条件もあらかじめ検討しておくべきである.LPDの術式は定型化されているとはいいがたいが,事前に手術手順を定め,手術後には各ステップの所要時間や達成度を評価することが,手術成績の向上と安定につながると考えられる.今後,ロボット支援手術などの新規技術の導入により,再建を含めて開腹と同等かそれ以上の精度で手術を実施できれば,膵切除においても低侵襲手術の意義が強調されていく可能性がある.

  • 文献概要を表示

本邦では2016年4月から腹腔鏡下膵体尾部切除術が膵癌にまで適用拡大された.膵癌に対する腹腔鏡下膵体尾部切除術の成績は,海外からの報告で出血量や在院日数などの短期成績が開腹手術と比較し優れており,腫瘍学的根治性や長期成績が同等である可能性が示されている.当科ではStrasbergらが提唱するradical antegrade modular pancreatosplenectomy(RAMPS)に準じた膵癌に対する腹腔鏡下膵体尾部切除術を行っており,本稿ではその手術手技を解説する.

  • 文献概要を表示

ロボット肝切除術は腹腔鏡下手術と比べ,曲線的な操作が容易であり,ラーニングカーブが短い点がその利点である.胆道手術においても再建術を含む手術ではその優位性が示されている.デバイスの問題は解消されつつあり,ロボット手術は肝胆道外科においても非常に大きな潜在能力を秘めた術式と考えられる.しかし,肝胆道外科領域におけるロボット手術はいまだに保険適用外であり,今後保険収載に向け尽力していく必要がある.

  • 文献概要を表示

ロボット支援腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術では,精緻な剝離・正確な運針などの操作性の向上が期待できるが,その特性を理解するのが最重要である.われわれは,新たに提唱する“Gordian anchor”の切離による“semi-derotation technique”を導入し,動脈先行処理を確実に行えるようになった.鏡視下手術用に適合させた“wrapping double mattress anastomosis(Kiguchi-method)”を膵空腸吻合に導入し,安定した膵空吻合が可能となった.

  • 文献概要を表示

腹腔鏡下肝切除の導入と検証には紆余曲折はあったが,多施設共同プロジェクト研究などでは,開腹手術に比べ出血量は少なく回復も早く,腫瘍学的予後に大きな差はなかった.さらに同手術の正しい評価と安心・安全な普及を目的に全症例の術前前向き登録制度を開始した結果,その手術死亡率はきわめて低いものであった.腹腔鏡下肝切除が肝切除の全術式に保険収載され,今後肝腫瘍に対する標準治療の一つと位置づけられると考えている.

  • 文献概要を表示

肝切除における低侵襲性の定義は一定しないが,正確に過不足のない予定術式を施行することが患者のメリットになることは明らかである.そのためには,まず正確に開腹下肝切除を施行しうること,さらに腹腔鏡下肝切除の特性をよく理解し適応を慎重に検討することが重要であり,結果的に低侵襲な肝切除につながるものと考えられる.

  • 文献概要を表示

開腹手術を行ってきた外科医からみても,手技の定型化と手術チームの連携強化で,安定した腹腔鏡下膵体尾部切除の実現は可能と考える.しかし膵頭十二指腸切除(PD)の鏡視下再建は,膵管径など患者因子への対応がむずかしく,万人が行える手技ではない.症例の集約化とロボット手術が,低侵襲PD普及の鍵となる.過渡期ともいえる現在,低侵襲膵切除が患者にとって最良の手技なのか,自分と組織の技量を見極め判断する必要がある.

連載 外科医を育てる!(第23回)

  • 文献概要を表示

和歌山県立医科大学では,外科学講座として2講座を有し,外科学第1講座は「心臓血管外科・呼吸器外科・乳腺外科」,第2講座は「消化器外科・内分泌外科,小児外科」を担当している.二つの講座が協力して作成した「和歌山県立医科大学外科専門専修プログラム」を基盤として,外科研修を行うことが基本となる.

  • 文献概要を表示

診断技術の進歩に伴い重複癌はさしてまれとはいえなくなったが,悪性黒色腫(MM)を含む重複癌の報告は比較的少ない.われわれは先に直腸肛門部MM(ARMM)と胃癌(GC)が重複した1例と1),MM治療中に直腸癌(RC)を発生した1例を機に,わが国のMMを含む重複癌(MMT)の報告例を1996年,2009年に集計し検討を加え発表した2,3).この二度の報告以後確認された本邦の症例を集計,前2回と比較・検討を行い若干の知見を得たので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 先行する腹腔内感染症などの既往がなく,大網に限局した膿瘍を形成する原発性大網膿瘍はきわめてまれな疾患である.今回われわれは,腹腔鏡下手術が有用であった原発性大網膿瘍の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに 小腸憩室はまれな疾患であり,特に回腸憩室はきわめてまれである1).ほとんどが無症状で経過するため日常診療で問題となることは少ない.しかし,出血,憩室炎,穿孔などを発症した場合には緊急手術を必要とすることがある.今回われわれは腸間膜内に穿通した回腸憩室炎の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

基本情報

G8112-h1.jpg
臨床雑誌外科
81巻12号 (2019年11月)
電子版ISSN:2432-9428 印刷版ISSN:0016-593X 南江堂

文献閲覧数ランキング(
11月4日~11月10日
)