臨床雑誌外科 81巻13号 (2019年12月)

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食道癌手術では,隣接重要臓器の損傷などの術中偶発症には最大限の注意が必要である.重要臓器の損傷を回避するためには縦隔解剖の理解,破格の把握はたいへん重要である.特に胸腔鏡手術では通常開胸手術と違い,大血管からの出血などの緊急対応は制限される場合が少なくなく,術前から十分なシミュレーションをしておく必要がある.偶発症発症時にはその録画映像を即座に再生して損傷状況を確認することは,偶発症への対応をより正確に導くことになる.

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胸腔鏡下食道癌手術における気管損傷は致死的な合併症であり,迅速な対応が求められる.気管損傷で多いのは気管や気管支の膜様部損傷である.気管損傷発生時には,まず換気の維持に努める.損傷部の状況に合わせて修復方法を選択するが,胸腔鏡下食道癌手術時の損傷では,直接縫合閉鎖した後に心膜や大網による被覆術が有用と考えられる.損傷の状態によっては呼吸器外科や形成外科などに診療協力を依頼し,最善の方法で修復する.

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食道癌手術は過大侵襲であり不測の術中トラブルがあった場合に,まずは術後の重症合併症を避け致命的な状況に陥らないような対応が必要になる.そのような緊急事態では,避難的に二期再建術を行うことが一つの選択肢となる.本稿はわれわれが二期的食道再建を行う際の注意点について記述する.

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腹腔鏡下胃切除術件数の増加に伴い,術中に遭遇するさまざまな状況においても腹腔鏡操作で対処する対応力が必要となる.本稿では,腹腔鏡下胃切除術における再建困難例への具体的な対応方法(肥満症例に対する完全体腔内Roux-en Y再建,十二指腸憩室を有する症例に対する再建法)について紹介する.

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直腸癌に対する腹腔鏡下手術のエビデンスはいまだ不十分であるが,開腹手術と比較して術中出血量が少ないなどそのメリットも期待されている.その一方で出血をきたした場合には,止血に難渋することもある.術前準備として骨盤解剖を十分理解し,画像検査でも血管の走行形態を確認する.出血をきたした際には,ガーゼによる圧迫などにより出血をコントロールし落ち着いて止血の対応を行う.止血困難な場合は,開腹移行も念頭におきながら安全に手術を終了させることがもっとも重要である.

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腹腔鏡下直腸手術では微細な手術が可能となっているが,従来の開腹手術とは異なる手術困難症例が存在する.低位前方切除術においては直腸吻合でdouble stapling technique(DST)吻合を行っており,縫合不全率をさらに下げるためのさまざまな工夫を当科でも行っているが,それでもまれにより慎重な対応が求められるトラブルに遭遇することがある.本稿では当科で経験した腹腔鏡下直腸吻合時のトラブルとその対応について提示する.

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腹腔鏡下肝切除術(LLR)における止血操作は,もっとも重要な基本的手技として習得されるべきである.安全にLLRを進行するために,未然に出血を防ぐこと,ドライな術野を保つことは大切である.そのためにはデバイスの特徴を理解して選択し,実際に出血した際は落ち着いて対応し,ポートの位置変更や追加を含めて術野を立て直し,適切な止血法を選択する.そして時機を逸しないconversionへの判断もチームの力量の一つである.

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腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)時の術中胆道損傷(BDI)は依然として多く,直近3年間でも0.58%と開腹胆摘時に比し3~5倍多い.LC時BDIはStewart-Way分類のClass 3や総胆管横断損傷や,Strasberg分類のType Eに相当する複雑な損傷が多い.LC時BDIは,術中発見できた場合は予後良好であり,術中胆道造影検査を全例で行うべきであるとする論調もある.術後にBDIが判明した場合には修復時期と治療成績には相関がないとも報告されている.このためまず達成すべきは,腹膜炎の鎮静化と胆汁漏の瘻孔化である.LC時BDIは血管損傷を伴うことも多く,治療は専門家にゆだねたほうが成績良好である.手術治療は胆管空腸吻合が基本となる.近年は内視鏡的インターベンション成功例の報告も多い.

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腹腔鏡下胆道再建は,ほかの消化管吻合と異なり,自動縫合器の使用や体腔外での吻合が叶わず,また解剖学的にも視野制限や鉗子の運動制限によって,その難易度は格段に高くなる.本稿では,現在当科で行われている腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術を中心に腹腔鏡下胆管空腸吻合の手術手技の要点および術中・術後のトラブルへの対応について述べる.

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腹腔鏡下膵切除術を安全に行うために,あらゆる血管損傷を想定した出血への対処方法を,術者のみならず手術チームで理解・共有しておくことが重要である.出血点を見失わず確実な止血を行うために,出血時の術野展開を変更しない,適切なデバイス・方法での一時止血を行うなど,基本の止血手技を解説する.血管損傷を起こさないために,軸を合わせた適切な術野展開や安全な血管処理法を意識して手術を行うことも非常に重要である.

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甲状腺切除手術後に副甲状腺機能低下となり,低カルシウム(Ca)血症やテタニーなどを呈する症例が存在する.腸管におけるCa吸収促進を目的に,活性型ビタミンD3(VD3)製剤が一般的に使用され,血清Ca濃度の調整が行われている1,2).活性型VD3製剤であるfalecalcitriol(Fulstan)は,強力で持続的なCa吸収促進作用3),骨Ca動員作用3)を示すといわれている薬剤である.またfalecalcitriolは副甲状腺機能低下による低Ca血症の改善に効果が認められているが,その投与量は0.3~0.9 μg/日とされており,開始量や維持量を決定および有効性を検討した報告は少ない4,5).今回,甲状腺切除術後副甲状腺機能低下症に伴う低Ca血症に対するfalecalcitriolの効果について,初回開始投与量を0.6 μg/日で開始した検討を前向きに行った.

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はじめに 食道気管瘻は,進行した食道癌や肺癌の終末期合併症の一つである.唾液や食物の気道への流入のために誤嚥性肺炎などの呼吸器症状が出現し,経口摂取も困難となり,致命的になりうる病態である.外科的な根治治療の対象とならない患者が多く,生活の質(QOL)を高めることが治療の目的となる.進行肺癌による食道気管瘻に対して食道バイパス術を施行し良好なQOLを得られた症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

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はじめに 消化管原発悪性リンパ腫は非Hodgkinリンパ腫の約10%を占めるが,それらはB細胞由来が90%以上でT細胞由来はまれである1,2).今回,私たちは単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫(monomorphic epitheliotropic intestinal T-cell lymphoma:MEITL)と診断された2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに 腹部手術後の腸穿孔は比較的まれであるが時に遭遇する合併症であり,治療に難渋することも多い.今回われわれは瘻孔鏡手技を用いてTチューブ挿入を行い,比較的早期に治癒させることができた術後小腸穿孔の1例を経験したので報告する.

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はじめに 虚血性大腸炎(ischemic colitis:IC)は臨床経過から一過性型,狭窄型,壊死型に分類されていた1)が,現在では壊死型を除いた2型に分類されている.本邦で主に用いられている飯田らの分類2)では,治癒固定期X線像において病変部の最狭小管腔幅と隣接正常大腸の管腔幅の比を計算し,その値が70%未満を狭小型,70%以上を一過性型と判断している2).しかし,慢性期においては腸閉塞を起こすような高度な狭窄を起こすか否かの判断のみが実臨床上重要であると考えられる.

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はじめに 大腸穿孔は大腸の構造・生理学的にS状結腸の腸間膜付着部反対側に好発し,付着部側への穿通はまれである.今回われわれは,S状結腸間膜付着部側へ特発性大腸穿通した1例に対し一期的に吻合した症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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はじめに 鼠径部ヘルニアは,世界中で年間2,000万人が治療を受けるcommon diseaseの一つである1).しかし,鼠径部ヘルニアにはまれな病態も存在する.虫垂を内容とする大腿ヘルニアは1731年にRene Jacques Croissant de Garengeotにより最初に報告され,一般にde Garengeot herniaと呼称される2).今回われわれは,大腿管内に盲腸と虫垂根部が嵌頓し,虫垂穿孔による敗血症性ショックを呈した1例を経験した.虫垂の嵌頓を術前診断できなかったが,後方視的にはCT診断が可能であった.de Garengeot herniaの本邦報告例を集計し,その臨床的特徴について考察を加えた.

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はじめに 異時性胆道癌に対して根治術を再度行った報告例は少ない1~10).今回われわれは,肝門部胆管癌にて肝拡大右葉切除および胆道再建を施行した後に,遠位胆管癌を異時性に発症し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した1例を経験したので報告する.

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肛門疾患に関連する症状は出血,疼痛,脱出,腫瘤,違和感,残便感,排便障害などがある.このような悩みをもつ人がまず受診する医療機関はどこであろうか.自覚症状によって,“肛門科”を標榜している医院か,外科や内科の施設を受診すると思われる.しかし“肛門科”はどこにでもあるわけではなく,近所のかかりつけ医,近隣の外科や婦人科,泌尿器科,内科などを受診される人も多いと思われる.診察される先生が専門外の場合は,問診と視診程度で専門知識のある医師のいる医療機関を紹介されていることと思われる.そのような場合に役に立つのがこの一冊といえる.

基本情報

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臨床雑誌外科
81巻13号 (2019年12月)
電子版ISSN:2432-9428 印刷版ISSN:0016-593X 南江堂

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