臨床雑誌外科 80巻7号 (2018年6月)

特集 見逃してはならない腹部救急疾患の画像診断と治療

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腸管損傷は遅発性に症状が出現することもあり,患者の生命予後にも影響する.現在の主たる画像診断はCT検査によるところが大きいが,感度,特異度ともに高い画像所見は存在せず,術前診断も困難な場合が多い.腸間膜損傷に関しては,腸管損傷合併の可能性や,血流障害に伴う遅発性腸管損傷が問題となる.本稿では腸管損傷,腸間膜損傷のCT画像所見に焦点をあてて概説する.

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外傷全身CTから得られる情報は,損傷の緊急度評価を可能とし,適切な治療方針決定にたいへん有用である.その際,活動出血だけでなく,被膜断裂や出血が起きている空間の組織密度を評価することも重要である.CTが撮影されたならば,その直後に一定時間画像に貼り付くことは決して患者から離れることではない.

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血行障害を伴う腸閉塞症と定義される絞扼性腸閉塞は,緊急処置を要する代表的な腹部救急疾患である.CT検査は絞扼性腸閉塞のもっとも有用な画像診断法であるが,形態に着目したclosed loop obstructionと血行動態変化を示す所見の両方から考えることで,緊急性の判断や治療方針の決定に役立つ.虚血性変化を少しでも疑う所見を有するclosed loop obstructionを認めた際には緊急手術を検討する.

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内ヘルニアとは,腹膜もしくは間膜の裂孔部・陥凹部,腹膜の欠損部を介して,腹腔内臓器が脱出・嵌頓する病態である.CT所見は,①sac-like appearance を含むclosed loop obstruction,②ヘルニア門を示唆する屈曲・蛇行・拡張した腸間膜血管の収束,③ランドマークになる臓器・血管の偏位があげられる.

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非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)は,腸間膜血管主幹部に器質的な閉塞を伴わないにもかかわらず,分節状,非連続性にその支配領域の腸管血流障害をきたす疾患である.これまでは血管造影がゴールドスタンダードであったが,最近のMDCTの進歩の進歩で腸管虚血の客観的な検査診断が向上した.NOMIと診断されれば,腹膜症状がない場合は血管拡張薬の血管内投与の適応であるが,腸管壊死が疑われれば外科手術が必要となり,second look operationやdamage control surgeryの必要性も示唆される.

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消化管穿孔は迅速な診断,治療介入が求められる病態であり,正確な診断にはマルチスライスCTが欠かせない.腸管外ガスを認識できる表示条件で,適宜thin slice画像や冠状断,矢状断と組み合わせて観察する.穿孔の直接所見は腸管外ガスの存在,腸管壁の不連続性,腸管内投与した造影剤の漏出であり,腸管壁の区域性肥厚や異常造影効果,穿孔周囲の脂肪混濁や液体貯留,腫瘍といった間接所見と組み合わせて穿孔部位の絞り込みを行う.

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急性虫垂炎は緊急手術が必要となるもっとも一般的な腹部救急疾患である.抗菌薬で保存的に改善する症例も多いが,非穿孔性虫垂炎であっても約10%は保存的治療に反応せず,緊急手術に移行する.穿孔性虫垂炎で全身状態が安定しない症例,free airを認める症例には緊急手術がすすめられる.穿孔性虫垂炎であるが全身状態が安定している症例は,抗菌薬による保存的加療または緊急手術が選択される.また,高齢者では悪性腫瘍の可能性を考える必要がある.

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大腸憩室炎は腹部救急疾患ではまれではなく,画像診断が治療方針決定に重要な役割をはたす疾患である.画像診断ではCTまたは超音波検査が有用とされ,その所見でHinchey分類を正確に評価することが,内科的治療もしくは外科的治療の選択に大きく関与する.大腸憩室炎の画像診断の特徴的な所見について,および画像診断によって選択する治療方法について解説する.

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急性膵炎の多くは保存的治療で軽快するが,10~20%を占める壊死性膵炎では,しばしば局所合併症を伴う.4週間以上経過した膵仮性囊胞(PPC),被包化壊死(WON)では治療的介入を必要とすることが多い.近年,外科的治療のほかに低侵襲なインターベンション治療も開発され,治療オプションが広がってきている.どのタイミングでどのような治療的介入を行うかの選択が必要であり,そのために画像診断,特に造影CT所見が重要となる.

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外科,特に肝胆膵・移植外科は高度な技術と専門知識を必要とするうえに労働負荷が大きいことから希望者の減少が著しく,若手外科医育成が大きな課題である.まずは外科医となる人材の「リクルート」が重要であり,外科医となった後は「育成」,「モチベーションの維持」がポイントであるが,中堅外科医が若手にとって“輝く”ロールモデルとなれば,好循環となるはずである.若手の修練期間にモチベーションを保たせ,技術習得のため,外科医養成プログラム,そして学会発表や論文作成を通して学問的満足感も体験させることが有効である.

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はじめに 多形性乳癌は2000年にSilverらによって臨床病理学的特徴が報告されたきわめてまれで予後不良な疾患である1).今回,われわれは超高齢女性(102歳)に発症した多形性乳癌の1切除例を経験したので,本邦報告例を検討して報告する.

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はじめに Meckel憩室は剖検例の約0.6~2.3%に認められる先天性小腸憩室で,合併症として腸重積や腸閉塞などが多い1).またMeckel憩室内には癌がまれに発生し,1931年にWiseley2)によってはじめて報告され,本邦でも40例ほどの報告がある.今回われわれは腹腔鏡補助下に切除したMeckel憩室癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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はじめに 虫垂原発悪性腫瘍は比較的まれで,術前に良・悪性の診断を得ることは困難な疾患である.大腸癌取扱い規約第8版では虫垂粘液産生腫瘍の分類に変更があった.今回われわれは,卵巣腫瘍の術前診断で手術を施行した巨大虫垂粘液囊胞腺癌の1例を経験したので報告する.

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はじめに 本邦では回腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)はまれな疾患で,小腫瘤でも腸閉塞をきたすことがあり,また高い確率で転移することが知られている.今回,亜腸閉塞を発症した1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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はじめに 大腸憩室炎の多くは腹痛や発熱などの症状で発症するが,急性期に腸閉塞をきたすことはまれである.今回われわれは,腸閉塞で発症したS状結腸憩室炎の1例を経験したので報告する.

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はじめに 近年Bochdalek孔は成人にも一定数存在していることが報告されており,腹圧上昇によってヘルニア嵌頓症状を呈する可能性がある.今回,過食が誘因と思われる急性発症の成人Bochdalek孔ヘルニア嵌頓に対し,ヘルニア還納術,胃固定術を施行した1例を経験したので報告する.

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はじめに 鼠径ヘルニア嵌頓は臨床上,しばしば経験される頻度の高い疾患であるが,嵌頓する臓器は小腸や大網などが多く,虫垂や回盲部が嵌頓する頻度はあまり高くない.今回,われわれは右鼠径ヘルニア囊内に回盲部が嵌頓し,ヘルニア囊内で盲腸が穿孔した1例を経験したので報告する.

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はじめに 肝硬化性血管腫は,血管腫内部に血栓,壊死,石灰化などの二次性変化を生じ線維化,硝子変性した良性腫瘍で,画像上悪性肝腫瘍との鑑別が困難で外科的に切除されることが多い.今回胃癌の同時性肝転移と診断し切除し,病理診断で肝硬化性血管腫と診断された症例を経験した.肝硬化性血管腫は確定診断が得られれば経過観察可能な良性腫瘍であり,本例では胃切除時に肝生検を行うことで肝切除を回避できた可能性がある.転移性肝腫瘍の鑑別診断に肝硬化性血管腫を念頭におくことの重要性が強く示唆された.

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はじめに 胆道系の悪性腫瘍の多くは腺癌であり,小細胞癌はきわめてまれである.また切除例においても早期に転移,再発をきたし予後不良とされている.今回われわれは術前に診断し,手術を施行した下部胆管原発小細胞癌の1例を経験したので報告する.

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はじめに 急性胆囊炎の重症例において,胆囊壁内膿瘍や胆囊周囲膿瘍を合併することはあるが,肝実質内への穿通による肝膿瘍の併発はまれである.そして,膿瘍が肝被膜下に存在する肝被膜下膿瘍を形成することはさらにまれである1).結石が関与することが多いが,今回われわれは,無石急性胆囊炎に広範な肝右葉被膜下膿瘍を合併した症例に対して経皮的膿瘍ドレナージと経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)施行後に,腹腔鏡下胆囊摘出術にて治癒しえた1例を経験したので報告する.

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はじめに 胆囊管に嵌頓した結石を内視鏡的に採石できない場合,手術を必要とすることが多いが,Mirizzi症候群をきたしているような場合,術中の胆管損傷や胆汁漏のリスクは高い.今回,胆囊管に嵌頓した結石に対し,体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock wave lithotripsy:ESWL)を行うことで採石可能となり,待機的に手術を行うことができた症例を経験したので報告する.

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はじめに 腹部内臓動脈瘤はまれな疾患で,対応が遅くなれば致命的になりうるため,迅速な対応を要する.Segmental arterial mediolysis(SAM)は1976年にSlavinら1)が提唱した概念で,非炎症性,非動脈硬化性の動脈中膜の変性疾患とされている.本例は動脈瘤の成因にSAMが考えられたが,SAMによる動脈瘤が急性期に異時性,異所性に続発した報告は少ない2~6).今回われわれはSAMが原因と考えられる第1空腸動脈瘤破裂に続発して後下膵十二指腸動脈瘤破裂に対して短期間に二度の経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を施行し止血できた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

基本情報

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臨床雑誌外科
80巻7号 (2018年6月)
電子版ISSN:2432-9428 印刷版ISSN:0016-593X 南江堂

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