臨床雑誌外科 80巻5号 (2018年4月発行)

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特集　イラストで学ぶ解剖学的変異―外科手術アトラス

I. 総論

1．解剖学的変異とは―そのとらえ方，考え方秋田　恵一 80巻5号 , 2018年4月 , pp.403-410

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肉眼解剖学を専門としているというと，解剖実習体を数多く解剖して，筋・血管・神経の形態のタイプ分けをしたり，破格を見出しては報告するというイメージをもたれることが多い．そのためか，外科医からは，この動脈の枝分かれは何％くらいなのかという質問をよく受けるし，それに答えられないとなぁんだという顔をされるという経験も数多くある．しかしながら，ある形態の出現頻度がわかったとしても，手術をするときの患者の身体

II. 乳腺

1．陥没乳頭，副乳，異所性乳腺松永　有紀 , 明石　定子 80巻5号 , 2018年4月 , pp.411-415

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陥没乳頭や副乳，異所性乳腺はそれ自体に病的意義はない．しかし，日常診療でしばしば出会う先天性の陥没乳頭と乳癌が原因で生じる乳頭陥凹との鑑別や，腋窩腫瘤の鑑別診断として副乳，副乳癌をあげるためには，これらの解剖学的異常の理解が必要である．本稿では陥没乳頭，副乳，異所性乳腺について概説する．

2．乳管走行のバリエーション何森　亜由美 80巻5号 , 2018年4月 , pp.416-422

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乳房は，乳腺や脂肪の割合など個別性に富んだ臓器である．乳管走行もさまざまであるが，それは乳腺を構成する腺葉の容量や分布に個別性があるからである．また末梢側でダイナミックに曲線を描いて広がっているところがあるのは，いざという授乳期に母乳を産生する場所を十分確保しておけるように，「乳管-小葉」を非授乳期の狭い空間に納めているからであろう．そう解釈すると，さまざまな乳管走行がみられるのは，解剖学的変異（

3．胸筋/胸筋神経の解剖学的変異（Langerの腋窩弓，胸骨筋）多田　敬一郎 80巻5号 , 2018年4月 , pp.423-426

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現在日本では年間7万人以上の人が乳癌に罹患し，年間約1万3千人が乳癌で死亡している．したがって乳癌は予防・診断・治療の進歩がまたれる領域の一つである．乳癌治療の重要な柱の一つに手術療法がある．手術療法は少なくともHalstedが定型的乳房切除術を提唱して120年以上の歴史があるが，ここ近年のキーワードは手術の縮小である．手術を縮小しても，生存は損なわれることはなく，患者の生活の質（QOL）が改善す

4．肋間上腕神経と鎖骨下動静脈とその分枝の解剖学的変異高橋　洋子 , 岩瀬　拓士 80巻5号 , 2018年4月 , pp.427-432

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腋窩リンパ節郭清は19世紀後半のHalstedの手術以来，標準治療としておよそ1世紀にわたって行われてきた．やがて温存手術などの縮小手術が普及してくると，臨床的にリンパ節転移がないと判断された症例に対しては，少しでも術後の生活の質（QOL）を維持しようと，肋間上腕神経を温存する郭清も試みられた．その後，20世紀後半にはより負担が少ないセンチネルリンパ節生検が考案され，現在では手術前に腋窩リンパ節へ

5．センチネルリンパ節の解剖学的変異橋本　政典 , 安田　秀光 80巻5号 , 2018年4月 , pp.433-435

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乳癌の標準手術は少しずつ変化しているが，なかでもセンチネルリンパ節生検（sentinel lymph node biopsy：SNB）は乳癌患者の術後身体的生活の質（QOL）を大幅に改善したといえる．乳癌診療ガイドラインでは腋窩領域のSNBが腋窩郭清にかわる低侵襲の腋窩評価法として推奨されている2）．

III. 頸部，上部消化管領域

1．反回神経と下甲状腺動脈の走行異常舛岡　裕雄 , 宮内　昭 80巻5号 , 2018年4月 , pp.436-439

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反回神経は，喉頭内筋を支配し声帯運動を司る，発声，呼吸および嚥下に関係した重要な神経である．そして反回神経は，甲状腺手術など頸部手術において損傷する危険のある，もっとも重要な構造物の一つである．手術中に反回神経を損傷すると，術後に同側声帯麻痺による嗄声などの発声障害，誤嚥などの嚥下障害といった症状をきたす．両側声帯麻痺では声門間隙が狭くなるので特に吸気性の呼吸困難をきたし，さらに窒息にいたる危険性

2．右鎖骨下動脈起始異常と非反回神経山田　和彦 , 加藤　大貴 , 野原　京子 , 相馬　大介 , 山下　智 , 和氣　仁美 , 矢野　秀朗 , 國土　典宏 80巻5号 , 2018年4月 , pp.440-445

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食道癌の手術に際して，術前の画像診断や術中の解剖学的な理解はきわめて重要である．特に反回神経周囲リンパ節領域のリンパ節郭清は重要かつ精緻な技術が要求され，外科医の心理的な影響も少なくない．

3．胸管の走行異常と乳び胸山﨑　誠 , 田中　晃司 , 牧野　知紀 , 土岐　祐一郎 80巻5号 , 2018年4月 , pp.446-450

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乳び胸は，食道癌手術後の合併症としては比較的まれな合併症であるが，管理に難渋して重篤化することもあり，細心の注意が必要である．乳び胸の要因としては，胸管の走行異常であることも多く，解剖学的な変異を認識しておくことはきわめて重要である．本稿では，胸管の一般的な走行および解剖学的変異について述べるとともに，乳び胸の診断・治療についても概説する．

4．大動脈弓の先天性異常（重複大動脈弓，右大動脈弓）寺島　秀夫 , 久倉　勝治 , 小川　光一 80巻5号 , 2018年4月 , pp.451-459

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まず医学史の観点から言及すると，重複大動脈弓はHommelによって1737年に剖検例としてはじめて記載され1），1926年になって最初の臨床例（生存中にX線像にて診断，剖検時に検証）がArkinにより報告された2）．一方，右大動脈弓はFiorettiとAgliettiにより剖検例として1763年にはじめて記載され3），1913年に最初の臨床例（同上）がMohrによって報告された4）．鎖骨下動脈起始

5．下大静脈欠損症宮崎　達也 , 宗田　真 , 酒井　真 , 熊倉　裕二 , 吉田　知典 , 栗山　健吾 , 小澤　大悟 , 横堀　武彦 , 桑野　博行 80巻5号 , 2018年4月 , pp.460-463

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下大静脈欠損症は比較的まれな先天奇形の一つである．多くの場合には自覚症状や身体異常所見を欠くため，心臓カテーテル検査や造影CTを施行する際に偶然発見されることが多い．その変異の頻度は低いが，日常臨床においてその変異を認識しないことで，患者を重篤な状態に陥らせることもありうる．

6．腹腔動脈の解剖学的変異（Adachi分類とMichels分類）大山　繁和 , 山本　知子 , 五十嵐　淳 , 佐藤　篤 , 石曽根　新八 80巻5号 , 2018年4月 , pp.464-469

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Adachi分類，Michels分類は，それぞれ腹腔動脈，肝動脈の変異の国際的な分類であり，消化器外科医，肝臓外科医にとって必須な知識といえよう．変異には発生学的要因があり，複数の発生モデルが考案されている．Tandler1）がもっとも知られている解説であるが，佐藤らはTandlerでは説明できない変異もあるとして著書『日本人のからだ―解剖学的変異の考察』2）の中で発生学的考察として三木の論文3）

7．The infracardiac bursa（心臓下包） -―取り残された網囊腔中村　達郎 , 倉橋　康典 , 山田　重人 , 篠原　尚 80巻5号 , 2018年4月 , pp.470-473

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食道胃接合部は，解剖学的に腹腔側からも胸腔側からもアプローチに難渋する領域である．光学機器の進歩と内視鏡手術の普及により，この領域における微細な解剖が再現性をもって認識されるようになってきた．しかし，拡大視効果により鮮明となった微細解剖の概念はまだ確立されていないものも多く，外科医の関心はホルマリン固定されたcadaverによる肉眼解剖から生体における微細解剖へと変化してきている1）．このような微

IV. 下部消化管領域

1．右結腸動静脈の変異山口　茂樹 , 石井　利昌 , 近藤　宏佳 , 原　聖佳 , 鈴木　麻未 , 清水　浩紀 , 竹本　健一 , 岡田　拓久 , 石川　慎太郎 80巻5号 , 2018年4月 , pp.474-477

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結腸右半切除はしばしば遭遇する手術でありながら，やや難易度が高い手術とされる．その理由は日本においては多くが大腸癌の根治術であり，血管根部ないしその近傍の処理を伴うリンパ節郭清が必要になるためである．特にD3郭清では外科的静脈幹（surgical trunk）の露出と周囲リンパ組織の切除が必要であるが，分岐形態の変異が多く組織が脆弱な静脈は，ひとたび損傷すると大きなトラブルとなる．さらに動脈に関し

2．Riolan弓の破格 -―3D-CTで視覚化する成島　一夫 , 幸田　圭史 , 首藤　潔彦 , 小杉　千弘 , 森　幹人 , 清水　宏明 80巻5号 , 2018年4月 , pp.478-481

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大腸癌手術において，大腸の動脈走行の解剖学的知識は，正確なリンパ節郭清や腸管血流の温存ために非常に重要である．しかし，大腸の動脈にはさまざまな解剖学的変異があり，その中でRiolan弓は非常に有名であるが，実際には明確な定義はなく，その走行をきちんと可視できることもまれである．Riolan弓の解剖を解説して実際の走行を3D-CTで可視化し，その歴史に触れ，臨床的意義について概説する．

3．下腸間膜動脈から左結腸動脈・S状結腸動脈の分岐高橋　慶一 , 山口　達郎 , 夏目　壮一郎 , 高雄　美里 , 中野　大輔 , 松本　寛 80巻5号 , 2018年4月 , pp.482-487

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S状結腸癌および直腸癌手術におけるリンパ節郭清において，下腸間膜動脈（inferior mesenteric artery：IMA）の立ち上がりおよび血管分岐形態を理解しておくことは，実際の手術において安全に過不足なく手術を行うためにはその解剖学的構造を理解しておくことがどうしても必要になる．

4．重複尿管小川　真平 , 板橋　道朗 , 山本　雅一 80巻5号 , 2018年4月 , pp.488-492

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尿管は大腸手術における重要なメルクマールであり，尿管損傷は注意すべき合併症の一つである．尿管損傷の頻度については，開腹手術で851例中11例（1.3％）1），鏡視下手術で0.2～7.6％であったと報告されている2）．重複尿管は，比較的頻度の高い尿路奇形であるが，大半は無症状で経過するため3），他疾患の検査や治療中に偶然発見されることが多く，その存在を認識しないまま手術が行われた場合，術中損傷を引き

5．中直腸動脈の変異小西　毅 80巻5号 , 2018年4月 , pp.493-498

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中直腸動脈は，教科書や手術書には必ず記載されており，外科医にとってなじみのある血管である．特に，下部直腸癌の治療において側方リンパ節転移を重要視する日本の外科医にとっては，側方転移ルートとなる中直腸動脈は腫瘍学的に重要な構造物として認識されている．しかしながらその走行は変異に富み，過去の文献報告も少ない．教科書に記載されているとおりの走行は現実にはむしろまれであり，その定義や変異についてはあまり深

6．内腸骨動脈の変異清松　知充 , 合田　良政 , 秀野　泰隆 , 矢野　秀朗 , 國土　典宏 80巻5号 , 2018年4月 , pp.499-503

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直腸癌の基本手術手技であるtotal mesorectal excision（TME）の操作において内腸骨動脈が関連することはないが，下部進行直腸癌における側方郭清においてはその解剖学的構造の把握が非常に重要である．複雑な骨盤内において，内腸骨動脈は総腸骨動脈から分岐して梨状筋下孔から出るまでのわずか10 cm足らずの部分において，きわめて変異に富んだ分岐形態を有している．しばしば側方リンパ節転移

7．腸回転異常丹羽　浩一郎 , 河野　眞吾 , 河合　雅也 , 石山　隼 , 杉本　起一 , 坂本　一博 80巻5号 , 2018年4月 , pp.504-508

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腸回転異常症は胎生期における腸管の回転や固定の異常によって発生し，その発生頻度は出生1～2万人に1人とされ，比較的まれな疾患である1）．男女比は2～3対1と男性に多く2）．そのほとんどが新生児期に腸管の閉塞や捻転，内ヘルニアを発症し発見される．成人後に症状が出現する頻度は0.2～0.5％とまれである3～5）．一方，成人後では，ほかの消化器疾患の診断時や手術時，あるいは腸閉塞症状で偶然に発見される．

V. 鼠径部

1．Corona mortis -―腹膜前腔（恥骨背側面）剝離を伴う鼠径部ヘルニア手術で注意すべき脈管変異三澤　健之 80巻5号 , 2018年4月 , pp.509-516

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Coronaはラテン語で，王冠などの“冠”を意味し，解剖学的にはしばしば冠状あるいは輪状の隆起を表現する場合に使われる．一方のmortisは同様にラテン語のmortすなわち“死”を意味する．合わせてcorona mortis，“死冠”という，いかにも優雅でロマンティックなイメージを思わせる用語である．しかし，時に英語でcrown of deathとも表記されるこの死冠は，外腸骨動静脈系と内腸骨動静

VI. 肝胆膵外科領域

1．肝左葉形成不全後藤　邦仁 , 江口　英利 , 小林　省吾 , 土岐　祐一郎 , 森　正樹 80巻5号 , 2018年4月 , pp.517-521

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肝葉形成不全は先天的な肝葉の発達異常で，非常にまれな解剖学的変異である．一般に無症状のことが多く，他疾患の画像検査中に偶然発見されることがほとんどである．またほかの解剖学的変異を伴っていることも多いため，その解剖学的特徴を術前に把握しておくことが重要である．本稿では，肝左葉形成不全の診断および手術時の留意点を中心に概説する．

2．肝動脈走行異常髙橋　祐 , 齋浦　明夫 80巻5号 , 2018年4月 , pp.522-529

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肝動脈は，下行大動脈の枝である腹腔動脈ならび上腸間膜動脈の一分枝として小網（肝胃間膜・肝十二指腸間膜）の2葉の間を通過し，肝門部からは門脈，胆管，神経，リンパ管とともにGlisson鞘に包まれ肝内に流入する1）．

3．The arc of Bühler -―膵手術で問題となる動脈解剖学的変異國土　貴嗣 , 影山　優美子 , 網倉　克己 , 長谷川　潔 , 坂本　裕彦 80巻5号 , 2018年4月 , pp.530-533

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術前に動脈解剖破格を把握することは，膵切除を行ううえで重要である1，2）．膵頭十二指腸切除術において問題となる動脈解剖破格を表1に示す2）．もっとも高頻度に認め，臨床上問題となる動脈解剖破格はreplaced右肝動脈であり，その頻度は11～21％と報告されている．次にreplaced左肝動脈が高頻度（3.8～10％）であり，まれではあるが重要な動脈解剖破格として，上腸間膜動脈と総肝動脈が共通幹を形

4．右側肝円索西躰　隆太 , 間中　大 , 山岡　利成 , 猪飼　伊和夫 80巻5号 , 2018年4月 , pp.534-539

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右側肝円索とは門脈臍部が右葉にある比較的まれな解剖学的変異であり，成人における頻度は0.11～1.1％，出生前～新生児での頻度は約0.2％と報告されている1～6）．右側肝円索症例では肉眼所見で胆囊が肝円索の左側にあるため，当初左側胆囊と呼称されたが，Nagai，Maetaniらによって本質は肝円索の位置異常であることが認識され4，7），以後は右側肝円索として肝内門脈解剖を中心に理解がすすんだ2，8

5．副肝管石沢　武彰 , 齋浦　明夫 80巻5号 , 2018年4月 , pp.540-546

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本稿では，まず肝内胆管の合流形態を確認したうえで，「副肝管」と総称される肝外胆管の破格について分類を試みた．また，自験例におけるインドシアニングリーン（ICG）を用いた蛍光胆道造影の所見を提示しながら，「副肝管」を術中に認識する重要性について考察した．

6．Luschka管青木　琢 , 窪田　敬一 80巻5号 , 2018年4月 , pp.547-550

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胆囊と肝実質の間を走行する，あるいは肝から胆囊床を経て直接胆囊あるいは胆囊管に流入する細い胆管の存在は，肝胆道系手術を行う際にしばしば問題となり，現在前者はLuschka管（bile ducts of Luschka）あるいはsubvesical bile ductsと称され，後者はcystohepatic ductと呼ばれている．本稿では，両者の定義上の差異を示すとともに，これら破格胆管の臨床的

7．門脈輪状膵水間　正道 , 林　洋毅 , 元井　冬彦 , 海野　倫明 80巻5号 , 2018年4月 , pp.551-554

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門脈輪状膵は膵鉤状突起が門脈あるいは上腸間膜静脈を全周性に巻き込み膵体部と癒合する，まれな膵形態異常である．英語ではportal annular pancreasあるいはcircumportal pancreasと呼称される．われわれは2001年に門脈輪状膵に対して膵頭十二指腸切除術を施行した症例を報告したが1），門脈輪状膵は膵頭部の切離時に注意が必要であり，術後膵瘻のリスクも高いことから，膵臓を

8．膵管非癒合伊藤　貴明 , 杉浦　禎一 , 岡村　行泰 , 山本　有祐 , 蘆田　良 , 坂東　悦郎 , 塩見　明生 , 寺島　雅典 , 上坂　克彦 80巻5号 , 2018年4月 , pp.555-559

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膵管の癒合不全は比較的頻度の高い先天異常であるにもかかわらず，症状を有しない場合には，注意深く画像検査を行い読影しないと見落とされやすい．本稿では膵管癒合不全の有無により術式の立案に影響を与える疾患や手術の注意点について，膵温存十二指腸切除の経験を中心に述べる．

9．十二指腸前門脈多代　充 , 山田　豪 80巻5号 , 2018年4月 , pp.560-563

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門脈の走行異常は肝動脈の走行異常と比較してまれとされるが1），手術に際して損傷や血栓形成をはじめとしたリスクを伴うため，術前にその存在を認識することは非常に重要である．

10．腸回転異常と膵頭十二指腸切除山下　俊 , 廣吉　淳子 , 長谷川　潔 80巻5号 , 2018年4月 , pp.564-568

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腸回転異常は，発生の過程における腸管の回転および固定の異常であり，新生児期に通過障害などの症状を呈して診断されることが多いが，無症状で経過した後，成人期において，他疾患に対する腹部手術の際に偶発的に指摘される場合もある．また，腸回転異常にはさまざまなほかの先天奇形の合併が報告されている．本稿では，消化器手術，特に膵頭十二指腸切除術（pancreatoduodenectomy：PD）における腸回転異

11．下大静脈閉塞（Budd-Chiari症候群）岡島　英明 , 上本　伸二 80巻5号 , 2018年4月 , pp.569-573

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Buddは感染に起因する肝静脈閉塞症の3例を1852年に報告し1），Chiariは1899年に自験例を含めた肝静脈のprimary obliterating endophlebititsの10例を，肝静脈閉塞の独立した疾患として報告した2）．以後，肝静脈主幹部/肝部下大静脈の閉塞や狭窄により門脈圧亢進症にいたる症候群をBudd-Chiari症候群と総称するようになった．

VII. 内臓逆位

1．内臓逆位の上部消化管手術における注意点と工夫―腹腔鏡下手術を中心に庄司　佳晃 , 布部　創也 , 比企　直樹 , 井田　智 , 熊谷　厚志 , 大橋　学 , 佐野　武 80巻5号 , 2018年4月 , pp.574-578

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内臓逆位症（以下，本疾患）は胸腔内・腹腔内臓器の一部または全部が左右逆転した先天性異常であり，心血管系，腸管，脾，胆道系などに合併奇形を伴いやすいとされている．また近年，悪性腫瘍との併存が注目されている．胃癌手術，特に腹腔鏡下手術に際しては術前の詳細な画像シュミレーションおよび手術中の解剖学的変異の把握・手術操作の工夫が必要となる．自験例をふまえ，その臨床的意義について述べる．

2．内臓逆位の下部消化管手術における注意点と工夫小練　研司 , 五井　孝憲 , 呉林　秀崇 80巻5号 , 2018年4月 , pp.579-582

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内臓逆位症の患者に対して下部消化管手術を行う状況は頻繁に遭遇することは少ない．しかし近年になり腹腔鏡下大腸切除術を実施した症例報告も散見されてきており，知識として内臓逆位症ならびにその手術における留意点を知っておくことは重要と考えられる．本稿では，特に内臓逆位症に対する腹腔鏡下手術を行う際の周術期管理，手術手技に関して概説する．

3．内臓逆位の肝切除における注意点と工夫内山　秀昭 80巻5号 , 2018年4月 , pp.583-586

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完全内臓逆位患者における肝切除は，その解剖がこれまで慣れ親しんだ“正位”のものと比較して，完全な鏡面像となるため技術的に困難である1）．特に肝葉の脱転や，脈管処理を伴う肝切除は，解剖の誤認につながるおそれがあり注意が必要である．外科医は，触覚や視覚情報を経験の繰り返しにより体に覚え込ませることで，その手術技術を確立させているものである．多くの手術手技は，これらの微細な感覚情報と右手と左手の協調作業

4．内臓逆位の膵頭十二指腸切除における注意点と工夫垣内　慶彦 , 児島　亨 , 仁熊　健文 , 三村　哲重 , 藤原　俊義 80巻5号 , 2018年4月 , pp.587-590

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内臓逆位（situs inversus：SI）は，胸腹部の臓器が解剖学的に正常と比較して左右鏡面像を呈する先天性の形成異常である．この病態自体に病的意義はないとされるが，心血管系・肺奇形が多いとされ，手術を行うに際して注意を要することが多い．今回，SIを伴った膵頭十二指腸切除術（pancreatico duodenectomy：PD）を行う際の注意点と工夫を中心に，その特徴などを含めて解説する．

基本情報

臨床雑誌外科
80巻5号
(2018年4月発行)

電子版ISSN：2432-9428 印刷版ISSN：0016-593X 南江堂

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