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過去20年間に播種を有するスキルス胃癌320例に対し包括的治療(腹膜切除+周術期化学療法)を行ったところ,5年以上無再発生存した例は14例であった(治癒例).これらの例の治療方法から,われわれはスキルス胃癌の腹膜播種を治癒させる包括的治療の理論を提唱している.手術単独で治療した(シナリオA)例は6例で,全例が再発死亡した.肉眼的に播種を完全切除した後遺残した微小転移を術中温熱化学療法(IOHIPEC)で完全に消滅できれば患者は治癒する(シナリオC).治癒する条件は微小転移の数が1回のIOHIPECで完全消滅できる数以下(閾値)でなければならない.閾値以上であればIOHIPECを行っても再発する(シナリオB).NACなしで切除+IOHIPECが行われた例(シナリオB・C)は42例で,1例(2.4%,シナリオC)が治癒した.この例は遺残微小転移数がIOHIPECで完全消滅されたと考えられる.微小転移の数が閾値以上であっても術前化学療法(NAC)でその数を閾値以下にしておけば肉眼的完全切除+IOHIPECで治癒する(シナリオD)が,閾値以上の微小転移があれば再発する(シナリオE).neoadjuvant intraperitoneal/systemic chemotherapy(NIPS)が行われ腹膜切除+IOHIPECが行われた236例中12例(5.1%)が治癒した(シナリオD).一方,全身化学療法によるNACが施行された例は36例中1例(2.8%)しか治癒しなかった(NS).NAC+IOHIPECが行われた141例中10例(シナリオD:7.1%)が治癒した.シナリオFはNACで微小転移が術前に完全に消滅したもので,腹膜切除で3/131(2.3%)が治癒した.再発巣を早期発見し,再切除で完全切除できれば治癒する(シナリオG)が,再発再切除で治癒した例はなかった.肉眼的完全切除例のみが治癒し,不完全切除例で治癒した例はなかった.また,cytoreductive surgery(CRS)+IOHIPECが施行された163例中11例(6.7%)が治癒したが,IOHIPECなしでは112例中2例(1.8%)しか治癒しなかった(p=0.048).
2013~2021年に腹膜播種を有するスキルス胃癌152例に対しNIPSを3コース施行後開腹し,腫瘍を切除後,IOHIPECを行う群(79例)と行わない群(73例)にランダムに割付けて生存率を比較した.生存率はnon-IOHIPE群に比べIOHIPEC群で良好であった(p=0.035).Grade 3,4の合併症はnon-IOHIPEC,IOHIPEC群でそれぞれ23.3%,27.8%(NS),死亡率は1,4%(1例),2.6%(2例)で両群間に差はなかった(NS).遺残した微小転移の数は肉眼的播種係数(PCI)に比例するが,スキルス胃癌で治癒した例の最大PCIは10であり,それ以上のPCIを有する例はIOHIPECを行っても全例が再発死亡した.NIPS後PCI 10以下の例では積極的に肉眼的完全切除を行い,IOHIPECを行うことが治癒率を上げると思われた.経験豊富な施設で包括的治療が行われれば安全に生存率を改善でき,治癒も期待できると考えられる.包括的治療でも80%の症例が再発・死亡するため,今後はより強力な術前化学療法と微小転移を術中に発見する方法の開発がまたれる.

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