呼吸器ジャーナル 65巻1号 (2017年2月)

特集 呼吸器画像診断—エキスパートの視点

序文 藤田 次郎
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 呼吸器疾患の診断に胸部画像診断が大きな役割を担うことはいうまでもない.ただし画像所見はあくまでも影絵であり,また多くの鑑別疾患を列記しうることから,確定診断のためには追加検査を行うことが求められる.医療資源に恵まれているわが国においては,比較的容易に画像診断を実施することが可能である.また診断,および治療を担当する呼吸器科医が画像診断の主体者でもあることから,総合的な画像所見の解釈が蓄積されてきた.一方,米国では,画像所見の読影を放射線科医が行うため,画像所見の全体的解釈に乏しいように感じている.

 今回,呼吸器画像診断のエキスパート医師は,読影の際に,どのような視点で行い,また鑑別診断を行うのか,という観点で本特集を組んでみた.本特集で選択した疾患は,いずれも日常診療で遭遇するありふれた疾患であり,希少疾患についての記載は最小限とした.またⅠ.総論,Ⅱ.感染症,または感染症と鑑別すべき疾患,Ⅲ.間質性肺疾患,またはびまん性肺疾患,Ⅳ.慢性閉塞性肺疾患,およびⅤ.腫瘍性肺疾患の5つに分類した.各項目のタイトルは,近縁疾患との鑑別のポイントを明確にするようなタイトルとした.

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Point

・病変部位,病原体の棲息細胞,画像パターンを手がかりに画像診断を進める.

・画像パターンを理解すれば,起炎菌が推定できる.

・胸部CTによる病変の分布によっても起炎菌が推定できる.

・病変の分布は病理像(病態)を反映.

・すりガラス陰影,またはcrazy-paving patternという用語を理解する.

Ⅱ.感染症,または感染症と鑑別すべき疾患

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Point

・肺炎は特に高齢者において,予後を左右する疾患であり,早期に適切な診断・治療を行うことが重要である.

・わが国の肺炎診療ガイドラインでは,初期に細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別し,エンピリック治療を行うよう推奨されている.

・肺炎のHRCT所見は,原因微生物によって特徴的であり,患者背景や臨床所見と並んで細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別に役立つ.

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Point

・肺結核症,肺非結核性抗酸菌症の鑑別では,感染対策の視点からは肺結核らしい所見が重要である.

・典型例での鑑別は容易だが,空洞を有する症例では鑑別が困難なことがある.

・肺結核症を疑う臨床背景(症状や基礎疾患)があれば,無理に画像で鑑別する必要はない.

・肺結核症では空洞・胸水・10mm以下の小結節,tree-in-budを認める頻度が高い.

・肺非結核性抗酸菌症では気管支拡張や中葉舌区に所見を有する頻度が高い.

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Point

・器質化病変自体は極めて非特異的な所見であり,多くの疾患に際してみられる.

・続発性器質化肺炎は,感染後や膠原病,有毒ガス吸入など多くの病態でみられる.感染後器質化肺炎もこの1つである.

・感染後の器質化肺炎は,肺炎の浸出物の吸収が何らかの機序で遅延し,浸出物が器質化して生じると考えられる.細菌やウイルス,マイコプラズマ,真菌など多くの病原体による肺炎でみられる.

・感染後器質化肺炎の局所の画像所見は,特発性器質化肺炎と変わるところはなく,容積減少を伴うconsolidationである.感染性肺炎に引き続いて器質化肺炎に至る経過が十分観察できる症例は少ない.

・限局性器質化肺炎は,臨床上肺癌との鑑別が問題になることが多い.

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Point

・侵襲性肺アスペルギルス症では,halo signやair crescent signが特徴的である.

・慢性肺アスペルギルス症では,画像的な菌球の存在や空洞壁の肥厚が最も特徴的である.

・アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では,中枢性気管支拡張像や粘液栓が特徴的である.

・患者背景や画像所見の経時的変化を総合的に考慮し,肺アスペルギルス症の病型は検討される.

Ⅲ.間質性肺疾患,またはびまん性肺疾患

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Point

・急性間質性肺炎(AIP)および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の臨床・画像所見を概説した.

・AIP,ARDSともに,びまん性肺胞傷害(DAD)を病理学的特徴とし,AIPは,基礎疾患のない比較的健康人に誘因なく発症する特発性間質性肺炎の急性型の1型である.

・一方,ARDSは原因病態に続発して発症する症候群である.

・HRCT所見上,すりガラス状陰影や浸潤影などの濃度上昇域が斑状に分布し,病理学的病期の進行に応じて,これらの濃度上昇域内部に気管支・細気管支拡張像が認められる.その広がりが予後に影響する.

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Point

・肺胞性肺水腫は心拡大や胸水貯留に加え,典型的には両側肺門側優位の蝶形陰影を呈し,小葉間隔壁などのリンパ路性間質の肥厚を伴う.

・肺炎は限局性・区域性の陰影を呈し,しばしば小葉中心性・細葉性・小葉性陰影を伴う.

・典型的な画像所見を呈していれば肺胞性肺水腫と肺炎の区別は比較的可能であるが,実際には肺胞性肺水腫とそれに合併した肺炎を明確に判別し難いこともしばしば経験される.

・時に肺胞性肺水腫が比較的限局性の分布を示し,肺炎との鑑別に迷うこともある.

・肺胞性肺水腫は比較的短期間に陰影が変化しうるため,胸部X線写真で陰影の経時的変化を確認することで,初めて両者の判別が可能となることも少なくない.

・画像所見のみで両者を鑑別するには限界があり,臨床像や検査データ,経時的変化などと併せた総合的な評価が大切である.

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Point

・臨床症状と,時間経過を考慮すれば特発性間質性肺炎の画像診断から病理診断はかなり推測できるが,確定診断のためには外科的肺生検が必要な症例がある.

・高齢者(>70歳)で,牽引性気管支拡張を伴うPossible UIPパターンを認めた場合は組織学的にUIPパターンと推測できる可能性がある.

・IPFの画像診断において小葉・細葉辺縁分布の線維化をとらえることは重要であり,早期から上肺の胸膜下に小葉辺縁分布の線維化(perilobular fibrosis)の所見を認める.

・間質性肺炎の診断においては,一時点の画像から病理を推測するだけでなく,経過を追った画像の観察が必要である.

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Point

・膠原病固有の肺病変は多彩であり,間質性肺炎,細気管支・気道病変,胸膜病変,血管病変などがある.

・間質性肺炎の組織パターンは,特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias;IIPs)に準じて分類され,全体としてはNSIP(nonspecific interstitial pneumonia)パターンが多い.

・間質性肺炎の高解像度CT(HRCT)パターンは,IIPsに準じて分類され,典型的なHRCTパターンにおいては組織パターンとの一致率は比較的高い.

・細気管支・気道病変には,濾胞性細気管支炎(follicular bronchiolitis;FB),閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans;BO)などがあり,特徴的な画像所見を呈する.

・その他に,びまん性肺胞出血(diffuse alveolar hemorrhage;DAH),続発性アミロイドーシスなども比較的特徴のある画像所見を呈する.

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Point

・薬剤性肺障害のCTによる画像パターンは7型に分類される.

・背景にusual interstitial pneumonia(UIP)やNSIPなどの慢性間質性肺炎を有するほど,薬剤性肺障害は発生頻度が上がり,かつ重篤となる.

・薬剤性肺障害は癒着などにより呼吸性移動が低下した領域には生じず,動きの良いほうに発生する.

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Point

・サルコイドーシス患者の90%に胸郭内病変が認められる.

・胸部単純X線像で両側肺門リンパ節腫脹(bilateral hilar lymphadenopathy;BHL)を特徴とする.

・肺野病変は広義間質に相当するリンパ流路に沿って形成され,上中肺野優位に分布し,HRCTによる診断が有用である.

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Point

・急性過敏性肺炎のHRCT像は粒状影,すりガラス陰影,air-trappingが特徴的である.

・慢性過敏性肺炎のHRCT像は多彩であり,NSIPやIPFとの鑑別が必要である.

・慢性過敏性肺炎では気管支血管束,細気管支を中心とした病変分布を呈する.

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Point

・吸入粉塵の種類により胸部画像所見は異なるので,職業上で吸入した粉塵の種類を聴取する必要がある.

・珪肺症は上肺野中心の辺縁が明瞭な結節影を呈するが,進行すると大陰影を形成する.

・溶接工肺やい草染土じん肺では中・下肺野にすりガラス陰影を呈することが多い.

・石綿肺では両側下肺野外側から内側上方に不整形陰影を呈する.

・じん肺は一般に慢性進行性疾患であるが,ヒュームの大量吸入により急性呼吸機能障害を来す.

Ⅳ.慢性閉塞性肺疾患

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Point

・COPDの気流閉塞は末梢気道病変と気腫病変によって起こり,その関与の割合は個人によって異なる.

・COPD重症例ではほとんどの症例で胸部X線所見から容易に診断を推定することが可能であるが,軽症・中等症では難しい.

・肺CT検査では気腫の早期診断が可能で気腫の重症度分類も確立している.

・COPDの気流閉塞と気腫の重症度は相関するがその関係は弱い.

・肺CT検査で評価された肺気腫が重症である場合1秒量の経時的変化が大きい可能性がある.

・肺CT検査にて評価できる気道内腔面積の狭小化と気流閉塞の程度は相関する.

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Point

・COPDは,気腫病変と気道病変とが様々な割合で混在した病態である.

・肺気腫病変が優位である気腫型と,末梢気道病変が優位である非気腫型とがある.

・胸部単純X線検査は,画像診断の基本であるが,早期病変の検出には困難な面がある.

・胸部CTでは,気腫病変は肺野低吸収領域,気道病変は内腔の狭小化や壁肥厚として認められる.

・胸部CTは気腫病変と気道病変の両者を同時に評価でき,COPDの病型分類に有用である.

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Point

・重喫煙者と男性に多いことを踏まえる.

・肺気腫と間質性肺炎のそれぞれの特徴をおさえておく.

・上肺野と下肺野の所見の傾向を把握する.

・囊胞の壁の厚みと内部構造の有無に着目する.

・肺がんや肺高血圧の合併が多いことに注意する.

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Point

・孤立性肺結節病変(SPN)には先天性病変,炎症性病変,腫瘍性病変がある.

・SPNの画像診断として高分解能CT(HRCT)が最も有効な検査方法である.

・SPNの性状によっても異なるが,結節径が10mm以上では悪性の可能性が高く即急な精査が必要.

・画像上,良悪性病変の鑑別が困難な病変に対しては定期的なHRCT画像での経過観察が必要.

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Point

・縦隔腫瘍の画像診断では,CTが主な役割を担う.その縦隔腫瘍の解剖学的位置(上縦隔・前縦隔・中縦隔・後縦隔)を把握する.

・鑑別診断においては,患者情報(年齢・性別・症状)を活用して,画像診断の前に当たりをつけておく.

・縦隔腫瘍を疑ったとき,その管理(診断・治療・フォロー)に関しては気軽に呼吸器外科医,呼吸器内科医にコンサルトしていただければ幸いである.

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Point

・胸膜肥厚が全周性,結節性の胸膜病変,壁側胸膜の1cm以上の肥厚,縦隔側や葉間胸膜への病変の進展は悪性疾患を疑う1)

・同側片側胸郭の狭小化や胸膜プラーク,胸水を伴うことも多いが,良悪性の鑑別には有効ではない1)

・片側性胸水の多くは多量であり,内部に腫瘍が隠れていることが多く,疑わしきは造影CTによる精査が重要である.

連載 症例で学ぶ非結核性抗酸菌症・10

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症例1 65歳女性

3カ月前から咳と痰が増えたために受診した.喀痰検査では一般菌は発育なし,抗酸菌では塗抹陽性,培養でMycobacterium abscessusM. abscessus)が2回陽性であった.これまで検診の受診なし,特記すべき既往なし.

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次号予告

奥付

基本情報

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呼吸器ジャーナル
65巻1号 (2017年2月)
電子版ISSN:2432-3276 印刷版ISSN:2432-3268 医学書院

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