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間質性肺炎を含む間質性肺疾患は,特発性および種々な原因から生じることから,正確な診断と適切な治療に結び付けることが,臨床上極めて重要である.特に,2011年に特発性肺線維症(IPF)の国際ガイドラインが公表されて以降,間質性肺炎の診断においては,各専門分野のエキスパートによる集学的検討(multidisciplinary discussion ; MDD)の実施が推奨されるようになった.このアプローチにより,従来の病理医による最終診断がゴールドスタンダードとされてきた考え方が大きく変化し,既存の分類に無理に当てはめるのではなく,疾患の進行パターン(疾患挙動;disease behavior)を考慮しながら診断・管理を行う「作業診断(working diagnosis)」の概念が重視されるようになった.この診断アプローチの変化により,臨床医(主治医)の役割がより重要となっている.MDDでは放射線科医,病理医,呼吸器内科医などが協議し,画像所見・病理所見・臨床経過を総合的に評価するが,最終的な診断の決定や治療方針の策定には臨床医の判断が不可欠である.特に,疾患挙動を意識しながら適切なタイミングで再評価を行い,診断を修正しつつ治療方針を最適化する能力が求められる.また,MDDを適切に運用するためには,協議をまとめる力,異なる専門家の意見を調整する柔軟性,そして診断に対する粘り強い姿勢が不可欠である.こうした診断の進化に伴い,臨床医には従来以上に高い専門性と判断力が求められる時代となっている.
また,急激に長期生存時代を迎え,複数の治療選択肢・治療戦略が並び立つことも珍しくない肺がん治療の現場でも,内科・外科・放射線科によるMDDが欠かせない.本邦から多くのエビデンスが蓄積されてきた間質性肺炎合併肺がんの治療は,急性増悪のリスクと常に背中合わせであり,各診療科の密な連携に基づく慎重なマネージメントが必要である.また,近年の切除可能例および切除不能Ⅲ期症例に対する免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬を用いた治療開発の劇的な進歩により,Ⅲ期非小細胞肺癌の最適治療戦略の決定にも診療科間の一層密なディスカッションが求められる.さらには,高価な治療薬で長期生存を目指す肺がん患者のサバイバーシップ支援においても,医師だけでなく多職種による議論と連携が不可欠で,これも広義のMDDと言えるだろう.

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