肝胆膵画像 14巻7号 (2012年11月)

特集 肝胆膵疾患に挑む―次世代へのメッセージ

序説

次世代へのメッセージ 真口 宏介
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はじめに

 長くご愛読いただいた本誌も本号でいったん休刊となる.

 この話を聞いたとき,「申し訳ない」という気持ちで真っ先に順天堂大学名誉教授の有山襄先生の顔が浮かんだ.本誌は,1999年『消化器画像』の名称で刊行が始まったが,発刊にこぎつけるべく奔走いただいたのが有山先生だからである.ご存じの方も多いと思うが,消化器画像診断研究会,臨床消化器病研究会の初代代表世話人である.

 消化器画像診断研究会の特徴は症例報告であり,内科医,外科医,放射線科医,病理医が一堂に会し,朝から晩まで1例ずつ,画像,治療方針,病理について徹底的に討論する.大きな学会では,主題(シンポジウム,パネルディスカッション,ワークショップ)が注目され,症例報告には関心が少なく,また限られた時間であるため十分な討論がなされない傾向にあるが,年に2回の本研究会に出席するたびに1例ごとの吟味の大切さ,そして画像診断の重要性を実感する.

 この研究会の中心的存在であった有山先生,竹原靖明先生(元関東中央病院副院長)が呼びかけ,故板井悠二先生(元筑波大学教授),二村雄次先生(元名古屋大学教授),故望月福治先生(元仙台JR病院院長)が初代編集委員として本誌のそう刊に尽力していただいた.

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要旨

 MRIの白黒を理解する過程で脂肪のかかわりに興味をいだき,同位相,逆位相の重要性を知った.細胞外液性Gd造影剤による造影MRIでは,逆位相で撮像すると脂肪成分を伴う病変では「造影されて白くなるべきなのに,むしろ黒くなる」現象が起こる.このparadoxical negative enhancementが,肝細胞癌の化学塞栓術で使用されているリピオドール®とGd造影剤との間でも起こることに気づき,ファントム実験で検証できた.MRIは,CTとは異なり,撮像原理が複雑で解釈も難しい.考えながら一歩ずつ進む.途方に暮れたら基本に戻る.そうした繰り返しの中で,臨床例が語りかけてくるヒントに気づくことがある.仮説を立て検証する.遠い道のりではあるが,楽しい過程である.

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要旨

 膵臓は,背側膵原基と腹側膵原基が癒合して形成される.副膵管の走行形態を,主乳頭開口部から副膵管合流部までの主膵管の距離により,主膵管と膵頸部で合流し上流背側膵管と直線化をなすlong typeの副膵管と,主膵管の下頭枝の分岐部近傍で主膵管と合流するshort typeの副膵管に分類した.主膵管内色素注入法により検討した十二指腸副乳頭の開存率は,副膵管の口径,走行形態および末端像と関連性を認めた.急性膵炎例の副乳頭開存率は低値であり,副膵管の開存は第2の膵液ドレナージシステムとして,急性膵炎の発症を防止する安全弁として機能する可能性が示唆された.Long typeの副膵管は,胎生期の背側膵原基の主導管がそのまま残存したと考えられた.一方,short typeの副膵管は背側膵原基の主導管から派生した長い下頭枝が腹側膵原基の主導管と下頭枝分岐部近傍で癒合し,これが交通路となり,腹側膵原基の主導管と癒合した近位側の背側膵原基の主導管は退縮したと推察された.さらに,導管像などの解析から膵管非癒合,膵管不完全癒合,膵・胆管合流異常,輪状膵の発生機序を推察した.

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要旨

 私が肝腫瘍の診断と治療に目覚めたのは1989年米国から帰国し,CO2 US angio graphyとCTAPで肝腫瘍の血流動態と組織所見の対比を精力的に行い始めた時代にさかのぼる.現在では極めて優れた超音波造影剤ソナゾイド®やEOB-MRIが登場し,肝腫瘍の診断治療体系は大きく変わろうとしている.次世代へのメッセージとして一例一例の症例観察の重要性と多施設での前向き研究が重要であることを強調して私からのメッセージとしたい.

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要旨

 術中超音波によって肝臓外科は大きく進歩した.特に,術前画像診断で発見されなかった“new nodule”が,感度の高い術中超音波によって発見されるようになった.第二世代超音波造影剤ソナゾイド®の登場により,さらに精密な術中stagingが可能になった.最近,ICG蛍光法やエラストグラフィという新しいモダリティも注目されている.近い将来,ナビゲーション技術の進歩により安全で正確な肝切除がもっと容易にできる時代がくることが期待される.

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要旨

 肝門部胆管癌の外科治療について,これまで自身の歩いてきた道を振り返るとともに今後の展望について述べた.広範囲肝切除が標準術式となり,PDの併施,脈管の合併切除・再建も安全に行えるようになってきている.手術適応の拡大にもかかわらず,手術死亡率は約1%にまで低下し,予後も着実に改善している.肝門部胆管癌は拡大切除によるbenefitが大いに期待できる疾患であり,とにかく切除を諦めない姿勢が重要である.

胆膵診療にかける想い 真口 宏介
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要旨

 私が胆膵専門医を志したきっかけは,症例そして高名な先生方との“出会い”と医局での事情という“偶然”であった.ERCP関連手技およびEUSは独学で施行してきたが,上手に行うためのkey pointは“より正確なスコープ操作法の習得”であり,施設見学,ライブへの参加そして自分の手の動きとスコープ先端の動きについての分析が役に立った.これらの手技は胆膵疾患の診療には不可欠であり,標準化の確立と教育システムの構築が必要と考える.画像診断機器は進歩したが,現状においても早期の膵・胆道癌の症例数は少なく,発癌から進行癌に至る経路の解明も十分にはできていない.画像診断での微細な異常所見を捉える眼を養うこと,常に病理との対比を行うこと,その積み重ねが膵・胆道早期癌の発見のための診断法の確立に繋がると考える.次世代に伝えたいメーセージは「画像診断にこだわれ!」である.

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要旨

 EUS-FNAの開発の歴史,本邦での普及や保険収載の経緯,筆者が今までに行ってきたEUS-FNAを通して若い先生方にお伝えしたいメッセージを記述した.本技術は世界に先駆けて日本で初めて開発・報告されたが,世界に比べなかなか普及しなかった,その原因を実体験を通じて紹介した.しかしながら,現在では保険収載が要因の1つともなって本邦においてもEUS-FNAは世界に肩を並べられる,あるいはそれ以上の広がりを見せている.公に認められた診療技術であるinterventional EUSの今後の発展に期待したい.

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要旨

 膵胆道癌の高危険度群として様々なものが考えられているが,胆道癌における膵胆管合流異常以外に決定的なものはない.膵癌の治療成績は不良で,5年生存率10%以下である.10mm以下の腫瘍を切除すれば予後はよい.胆道癌では当然のことながらf stageの低い症例の予後がよい.しかし,f stageⅠの切除例は10%以下である.膵胆道癌の画像診断は進歩したが,現状では遠隔治療成績に対する効果は不十分である.鋭敏な腫瘍マーカーの開発が望まれる.

超音波技師教育に思う 竹原 靖明
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要旨

 リニア電子スキャンの実用化以後の本邦における超音波機器の進歩を述べ,課題として担当者教育の在り様,現行の制度の改変について私見を述べた.

回想―悪戦苦闘の胆道疾患 二村 雄次
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要旨

 田舎の野戦病院での外科入門時代に,十二指腸乳頭部のX線画像に魅入られて胆膵領域に興味を抱き,1例目の乳頭部癌との出合いで決定的となった.胆膵内視鏡治療,特に肝内結石症の胆道鏡的切石術の経験がのちの肝門部胆管癌の診断・治療体系の確立に結びついた.肝内区域・亜区域胆管枝の臨床解剖学的研究は肝内結石症の予後に悪影響を及ぼす遺残結石対策に役立ち,肝門部胆管癌の進展度診断と切除・再建術式の立案に大きく貢献した.新しい診断治療体系の確立に至る道のりで様々な苦難に遭遇したが,日本の胆道外科は今や世界を一歩も二歩もリードしている.将来も世界のダントツトップの座を維持していただきたい.

追悼

望月福治先生を偲んで 竹原 靖明
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 残暑のきびしい8月下旬,突然,先生の訃報に接し,深い哀惜とともにご無音に過ぎた平素の怠慢を深く恥じ入っています.お許し下さい.

 長年にわたり,「同期の桜」としてご厚誼をいただき,世の「しがらみ」を越えて貴重な意見や熱い支援をいただいたことなどを思い起こしながら感謝を込めて綴らせていただきます.

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要旨

 近年の医療技術の進歩に伴い,内視鏡検査・治療の高度化は著しい.その中で安全かつ効率的な内視鏡診療を充実させるには,様々な機能を有する内視鏡センターが必要である.当院では2011年5月の全面移転に当たり,内視鏡センターの移設に関してスタッフの意見を十分に反映し,検査室・洗浄室の整備,感染管理,X線透視室,内視鏡画像ファイリングの整備を行った.今後,マルチソサエティガイドラインを考慮し,医師のみならず看護師,内視鏡技師などコメディカルスタッフの能力が最大限に発揮できるよう配慮された自己完結型の内視鏡センターが求められる.

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要旨

 胆膵内視鏡医にとって内視鏡室は1日の多くの時間を費やす場所であり,胆・膵疾患に対する検査は,主にEUS検査室とX線TV室で行っている.特に,胆・膵治療内視鏡は増加傾向にあり,手技も多様化・複雑化してきている.このため,X線TV室は様々な状況に対応可能なゆとりのある広さが必要であり,さらに術者と内視鏡モニターなどのレイアウトや処置具の整備などの室内環境の充実と,被験者のみならず,術者・助手,看護師らのX線被曝防護対策も,検査の質の向上において重要な因子である.

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研修医だけでなく,指導医,職員にも読んでいただきたい珠玉の一冊

 このたび医学書院より『研修医のためのリスクマネジメントの鉄則――日常臨床でトラブルをどう防ぐのか?』が出版された.著者の田中まゆみ氏とは数回しかお会いしていない.いずれも研修医を対象とした研修会においてであったと記憶している.

 その研修会ではピカピカの研修医に対し,医療界のガイダンスやオリエンテーションをはじめ,医師としての基本的な姿勢,「今日からは学生ではなくプロフェッショナルな“ドクター”ですよ」と“刷り込み”的な講義が2日間続いた.この第1日目の講師に田中氏と私が前になったり後になったりして講演したのである.この研修会では,残念ながら先日亡くなられたCOMLの辻本好子さんも患者の立場から講演され,大変好評であった.田中氏については「どこかの看護系大学の教授かな」と思っていたが経歴を見てびっくり.大学の後輩ではないか.われわれ紛争世代が今もって悔やみ,コンプレックスを抱いている海外留学の経験もあるではないか.

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自身のロールモデルを見付ける一助として

 この本は聖路加国際病院の,年代もさまざまな50名のOB・OGの先生方が,医師を志した理由から学生時代の思い出,研修病院を決めた経緯,実際に経験した研修の感想,その後の進路を決めた理由と現職への思い,そして最後に後輩へのアドバイスを書かれたものを,医学部卒業年次の若い方順にまとめられたものだ.こうした本が商品として成り立つこと自体,「聖路加」のブランド力の証であろうが,そのブランド力を育て,維持発展させてこられたのが,ここに登場される先生方ご自身でもあろう.

 私は卒後研修必修化前の2003年,当時の研修実態を探ろうと全国25か所の病院を回り,『臨床研修の現在』(医学書院)という本にまとめたが,その際最初に訪問した聖路加国際病院の様子は今も鮮明に記憶している.循環器,呼吸器,内分泌などさまざまな疾患の患者を集めた混合病棟を3年目のレジデントをリーダーにきっちりした屋根瓦式のチームで診る.その体制はもちろんだが,看護師や薬剤師も交えた毎朝のミーティングや,知識と技能の伝授の場として充実した回診など,まさに理想的な研修の場だと感じたものだった.あの厳しく充実したトレーニングで鍛えられたからこそ,ここに登場される先生方の今があるのだとも思う.

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Information 第21回肝病態生理研究会
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日 時:2013年6月5日(水)13:00-17:00(予定)

場 所:京王プラザホテル 東京

    (〒160-8330 東京都新宿区西新宿2-2-1)

    Tel:03-3344-0111(代表)

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編集後記 工藤 正俊
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 「肝胆膵疾患に挑む―次世代へのメッセージ」と題して本号の特集号が組まれた.肝胆膵の画像診断を代表する7人の編集幹事がそれぞれの立場から肝胆膵画像診断のどこに魅かれ,どのようにその分野に打ち込んできたのか,あるいは次世代にどのようなメッセージを送りたいのか,といった点について詳細に書かれている.いずれも意欲に満ちた文章であり,若い次世代の人たちにとっては読み応えのある特集号になったものと考える.

 本誌は1999年に「消化器画像」としてそう刊され,2008年からは病態・治療に迫る専門誌「肝胆膵画像」として再出発をした.しかしながら,本号を最後に休刊になる.本誌には肝胆膵の画像に関してはトップクラスの極めて芸術的な美しい写真が多数掲載されており熱狂的なファンも多くいたので大変残念に思っている.

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基本情報

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肝胆膵画像
14巻7号 (2012年11月)
電子版ISSN:1882-5095 印刷版ISSN:1882-5087 医学書院

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