The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 57巻6号 (2020年6月)

巻頭言

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 現在,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する緊急事態宣言の延長が発表された状況でこの原稿を執筆しています.まずは,このたびのCOVID-19で犠牲になられた方々,ならびにそのご遺族の皆様には深く哀悼の意を表します.また,罹患された皆様と,感染拡大により生活に影響を受けておられる地域の皆様に,心よりお見舞いを申し上げます.

 本巻頭言の話題も新型コロナウイルス関連のものが続いてしまうかもしれませんが,それだけ大きな課題であると思いますのでお許しください.第57回日本リハビリテーション医学会学術集会をはじめとして,各種の研修会や地方会,その他の行事も,やむなく延期や中止となっているものが相次いでいます.本誌が発刊される頃には,落ち着きを取り戻す道筋がみえていることを願っています.

特集 東京2020パラリンピックとリハビリテーション医療のこれから

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 障がい者スポーツの領域は,リハビリテーション治療としての機能回復目的から,社会参加,そして競技スポーツまで非常に広く,リハビリテーション医療にかかわるわれわれに寄せられる期待は大きい.新型コロナウイルス感染症により東京2020パラリンピックは延期となったが,本特集では障がい者スポーツについて,概要から実務の詳細まで第一線の先生方に解説いただいた.リハビリテーション科医師・専門職種にとって実際の大会や現場でどのような知識やスキルが求められるのかという実践的な内容と東京大会の観戦のポイントや新競技などを紹介する.

▷ 担当:藤原清香,企画:編集委員会

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要旨 障がい者スポーツは1943年英国のストーク・マンデビル病院でLudwig Guttmannが脊髄損傷者に初めて行い,1952年国際ストーク・マンデビル競技大会を開催し国際的に初めて認知された.障がい者スポーツはリハビリテーション・スポーツと生涯スポーツ,競技スポーツに分類できるが,競技スポーツから発生したパラリンピックへとつながり,2021年東京パラリンピックへとますます興隆している.東京パラリンピックのレガシーとは,障がい者の個性を重んじ,スポーツを通して社会参加を推進し,活力ある社会の創造と,健常者と障がい者との一元化施策を図り,活力あるinclusiveな共生社会を創造することにある.

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要旨 パラリンピック競技大会は2004年アテネ大会以降オリンピック競技大会と共同運営されるようになり,東京パラリンピック競技大会も東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が運営することとなる.そのため,医療サービス体制もオリンピック競技大会から継続して行われることになる.パラリンピック競技大会時は選手村総合診療所と競技会場にパラリンピック競技特有の障がい特性を理解している障がい者スポーツ医が配置される.パラリピアンの障がいと合併症を理解することが大切である.

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要旨 ドーピングは,スポーツ活動において競技能力を高める目的で不正に薬物を使用するか,不正な方法を用いることを指し,世界アンチ・ドーピング規程で,アンチ・ドーピング規則違反として10個の項目が定義されている.パラアスリートにおいても同じ規程が適応される.過去の国際大会での薬物使用者は約70%と高率であり,パラリンピック前に行った参加選手の使用薬物調査では,禁止薬物使用割合は,アテネ大会30.2%,北京大会16.7%,ロンドン大会5.7%であった.パラアスリートにおいては,視覚障害者,知的障害者,未成年者も多いため,禁止物質使用がある場合には,対象選手に通知文書を郵送し,対処方法の指導を行っている.

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要旨 障害者の競技スポーツには,impairmentの内容・程度を判定し公平に競えるようクラス分けというシステムが存在する.パラリンピックに出場するために国際パラリンピック委員会公認のクラス分けを受ける必要があり,その準備としてクラス分けに精通した担当医がMedical Diagnostics Form(診断書)を書かなければならず,詳細な病歴・現症・画像資料が求められる.さらに,クラス分けが完了するまでに障害を客観的に証明する筋電図やMRIなどの追加検査を行う場合があり,医師の関与・判断がきわめて重要である.また今後,クラス分けの根拠となるevidenceを構築するため医科学的アプローチが欠かせない.

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要旨 わが国において障がい者スポーツ選手に対するメディカルチェックは日本障がい者スポーツ協会医学委員会が行っている.障害者は特殊な病態をもっているため,健常者スポーツにおける医学的サポートと異なる点が多い.本稿では,日本障がい者スポーツ協会が実施している障がい者スポーツ選手のメディカルチェックと選手の健康管理体制について記述する.障がい者スポーツ選手の生理学的特徴や多くの二次傷害,合併症のコントロールなどをよく理解し,健康管理の観点で個別に対応する必要がある.障がい者スポーツ選手を診るためには,障害を熟知した医師のみならず,多くの関連職種の協力が不可欠である.

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要旨 パラリンピックをはじめとする国際大会への帯同医は,障害の存在やクラス分けなどパラリンピック競技の特殊性を理解したうえで,日本選手団の活動を医療面からポートする重要な役割がある.傷病の治療だけでなく選手団内の感染症予防や体調管理,生活環境の管理など,必要とされる業務は多岐にわたる.また,長期間の活動期間を通じて,選手だけでなくスタッフについても身体的・精神的に健康な状態に保つよう努めることも重要である.

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要旨 東京2020パラリンピックの新競技としてバドミントンが採用された.一般的にはパラバドミントンと呼ばれ,車いすと上肢障害・下肢障害・低身長の立位カテゴリーに分かれており,シングルスとダブルスとで戦う.数々の国際大会で活躍している日本選手のメダル獲得が期待される.

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要旨 パラテコンドーは東京2020大会で初めて正式競技として実施される.テコンドーはコンタクトスポーツで,そのスピード感と迫力によって,世界で7,000万人の競技人口を抱える人気競技の1つである.日本国内ではパラテコンドーの競技人口が10人余りと非常に選手人口が少ないが,日本からも東京大会では3人が出場する予定になっている.

本稿では新競技としてのパラテコンドーのルールや障害のクラス分け,パラスポーツとしての見どころについて紹介する.

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要旨 東京2020パラリンピックが開催されるにあたり,パラリンピック独特のスポーツを紹介する.近年パラリンピックの競技性も向上し,世界の強豪と戦うのは大変である.それだけ選手の層も厚く,日本でもさまざまな競技に対する研究や指導が進んできている.

実際の競技をみる前に,スポーツ観戦の見どころを紹介する.例えば,陸上や水泳は種目としては同じだが,クラス分けや障害に応じて道具や義足などが異なり,投げ方や泳ぎ方など,さまざまな工夫がなされている.練習に対してもコーチの指導の工夫が必要で,医療従事者とのかかわりが大切である.

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はじめに

 本稿は汎性注意(以下,注意)障害に関して,第3回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会での教育講演(2019年11月16日,静岡)の内容からいくつかのテーマを選んで概説したものである.講演内容の一部についてはすでに系統的にまとめたものが発刊されているので,参照いただければ幸いである1, 2).「教育講座」の性質上,基本的事項が中心だが,講演では触れなかった事項についても述べたい.

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はじめに

 高齢障害者に対しては介護保険サービスを利用した生活支援が行われる.一方,若年障害者の場合には,就労支援の課題もあり障害福祉サービスのほうがより重要となる.

 本稿では,障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスと障害者雇用促進法を利用した職業リハビリテーションの2つを中心に据え,関連する諸制度も含め障害者に対する福祉サービスの概要を示す.

脳卒中後うつ 村岡 香織
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はじめに

 「脳卒中後うつ病(post stroke depression;PSD)」は,脳卒中患者の30%程度にみられるとされ,生命予後・ADLなどの予後を低下させる合併症状として臨床上重要である.リハビリテーション医療にかかわる医療者としては,疑われる症例をみつけ専門家の診察や治療につなげること,薬物療法が開始される場合にその副作用やリハビリテーション医療場面でよく使われる薬剤との併用禁忌などに注意すること,そしてPSDの発症を抑制する・症状を悪化させないために心理的支援や運動療法など薬物療法以外の対応・配慮をすることなどが必要であると考えられる.

連載 英語論文の書き方—誰も教えてくれなかったコツ—・第3回

表現の手法 小山 哲男
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はじめに

 前々号より連載で,筆者が考えるところの「英語論文の書き方」を紹介しています.第1回では,日本語と英語の違いと共通点を,視座,主語,パラグラフの観点から概観しました.第2回では,論文執筆の核心である論理構成について概説しました.最終回の今回はわかりやすい図のつくり方,さらに発展して,診療現場からの発信を世に遺す表現の手法について述べます.

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はじめに

 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)とは,軽度または中等度の組織損傷をきっかけとして発症し,慢性的な痛み,皮膚温の異常,発汗異常,浮腫,運動機能の低下などの症状を伴う症候群である1)

 CRPSの病態メカニズムは明確には解明されていないが,末梢組織の循環障害,慢性炎症,中枢神経の機能障害などが考えられている2).また,CRPS患者において外傷直後のギプス固定などの不活動が痛覚過敏に関与することが指摘されており3),このような不活動が病的疼痛やアロディニアの発生機序とも密接に関連しているといわれている4)

 CRPSの治療については,いまだ一定の見解は得られていないが,脊髄電気刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)の有効性が報告されており5),さらに運動療法や物理療法を含む理学療法の有効性を示した報告も散見される6, 7).しかし,これらの治療を複合的に実施した報告は少ない.

 今回,足部のCRPSと診断され,SCSと理学療法を併用して複合的な治療を実施した結果,症状の改善を認めた症例を経験したので報告する.

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はじめに

 化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy:CIPN)は,がん薬物療法に伴う一般的な有害事象であり,がん患者の身体機能の低下や転倒1),健康関連quality of life(QOL)の低下2)を引き起こすが,有効な治療法が確立されていないのが現状である3).運動療法は,がん患者の身体機能と精神・心理機能,健康関連QOLの改善に有効であることが報告されているが4),CIPNへの効果を示した報告は少ない.

 今回,CIPN患者に対して運動療法を行い,CIPNの症状緩和と身体機能の改善が得られた症例を経験したので報告する.症例には,本報告の目的と内容について説明し,書面にて同意を得た.

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今回の改訂までの経緯

 令和2年3月5日,官報に令和2年度診療報酬改定の内容が公表された.当委員会においては,前回平成30年度診療報酬改定後,学会誌などを通じて関連項目の改定についてその概要を報告するとともに,日本リハビリテーション医学会会員を対象にアンケート調査を行い,令和2年度診療報酬改定について討論を重ねてきた.日本リハビリテーション医学会として,内科系学会社会保険連合(内保連)および外科系学会社会保険委員会連合(外保連)を通じ表1に示す7項目について提案した.各提案の結果は,○:収載,△:部分的に収載,×:収載なしで記した.

 内保連においては,内保連リハビリテーション関連委員会(26医学会)および全国リハビリテーション医療関連団体協議会診療報酬分科会において協議を重ね,共同提案を検討した.今回は内部障害のリハビリテーションに関する技術,イノベーション的技術,摂食嚥下障害関連技術について提案学会以外からの共同提案が多く得られた.当学会は表2に示す17項目について共同提案した.

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 日本障がい者スポーツ学会は,日本車椅子スポーツ研究会を前身とし,2002年日本障害者スポーツ研究会に,2008年日本障害者スポーツ学会に名称を改めて行われています.この学会は,医師,理学療法士や義肢装具士をはじめ障がい者スポーツにかかわる多職種が参加して行われ,今年は,第29回大会が2月15日(土),16日(日)の2日間,西九州大学の大川裕行会長のもと佐賀市での開催となりました.

 今年は143名の参加者を得て,初めに和歌山県立医科大学の上條義一郎先生による特別講演が行われました.体温調節を専門にされて,現在日本パラ陸上競技連盟の強化委員会において体温調節のアドバイザーとして活躍されている上條先生からは,障がい者スポーツにおいて体温調節対策がいかに重要かについて講演がされました.午後は2会場に分かれ,一般演題が24演題,アットホームな雰囲気の中で討論がなされました.2日目も12の一般演題発表がされ,市民フォーラムが「佐賀県におけるパラスポーツ振興活動報告」のタイトルで2023年に行われる全国障害者スポーツ大会に向けての佐賀県の取り組みが紹介されました.

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The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
57巻6号 (2020年6月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-3526 日本リハビリテーション医学会

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