日本災害看護学会誌 20巻2号 (2018年12月)

巻頭言

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 日本災害看護学会第20回年次大会は、2018年8月10日、11日の2日間、学会設立の地である神戸で開催されました。学会発足から20周年を迎え記念大会となった今大会では、20周年記念式典と記念講演がプログラムに盛り込まれ、例年とは少し異なる様相の大会となりました。大会長として、今大会の運営にあたることができ、感慨深く、また、実り多い経験となりました。

 今大会のテーマは、「災害に立ち向かう看護のリーダーシップを探究する」でした。災害時にはしばしばリーダーシップの問題が指摘されます。災害という社会が混乱する状況下では、その対応や復旧・復興に向けて強いリーダーシップが求められます。では、災害の時、看護が発揮するリーダーシップとはどのようなものでしょうか。これが今大会で改めて追究したいことでした。講演やシンポジウム、パネルディスカッションを通して、看護がこれまでの災害でどのような働きをしてきたのかを振り返り、看護が発揮するリーダーシップについて検討していただきました。これからの災害看護を担う次世代リーダーとなる大学院生、専門看護師の皆さんには未来に向けてリーダーシップを議論していただきました。また、緊急企画として平成30年7月豪雨災害の被災地で活動中の看護職の皆さんには、被災地で今まさに起こっていること、そして、看護が何にどう対応しているのかを報告いただきました。

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要  約

1.目 的

 熊本地震における避難所活動において、看護職が何を意図して被災者と関わり、どのようなコーディネートを行なったのかを明らかにする事である。

2.方 法

 質的記述的研究。熊本地震発災1ヶ月以内の避難所においてコーディネートを行った看護師6名を研究協力者とし、半構成的面接法により「看護の視点におけるコーディネートの実際」についてデータ収集し、概念ラベルを作成した。概念ラベルの中から性質ごとに関連のあるものを集め抽象化しサブカテゴリー、カテゴリーを生成した。全ての分析過程において、専門家のスーパーヴァイズを受けた。

3.結 果

 カテゴリーは、【日常生活の自立を支え被災地につなぐ】【さりげなく被災地の支援者を支える】【効率的な生活環境の把握と調整】【多職種と役割共有を認識】【限りある資源分配への臨機応変な判断】【危険を察知し安全を確保】【避難者に負担をかけない情報共有】の7つであった。

4.結 論

 避難所では、被災者個々との相互の関係性からなるカテゴリーと、避難所内全体の生活への関心からなるカテゴリーのコーディネートが行われていた事が明らかとなった。今後の支援の方向性として、被災者個々に目を向けた自立を支える視点と、避難所を俯瞰しながら生活環境と健康管理を行う視点が重要である事が示唆された。

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要  旨

【目的】発災時に自己完結型の救護活動が行えるように、災害拠点病院であるA病院に勤務する看護師の個人備蓄の現状を調査し明らかにする。

【方法】A病院で勤務する看護師助産師438名を対象に、備蓄に関する自作のアンケート用紙を作成し調査を実施した。

【結果】職場内での備蓄ありが63%、なしが37%であった。備蓄なしと回答した理由は「必要だと思うが準備できていない」が81%で最多であった。備蓄の想定日数は1日分が最も多く、具体的な内容としては飲料水が82%、食糧品が93%であった。

【結論】備蓄の必要性は理解できているが実際には備蓄できていない事から、「備蓄の必要性についての定期的な周知」「備蓄物品の保管場所の確保」が必要である。備蓄内容や備蓄量は個人の判断に委ねられている現状であるため、「備蓄モデルの作成と検討」の必要性が示唆された。

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要  旨

目的:災害復興期の仮設住宅に暮らす高齢者のストレス対処能力(Sense of Coherence,以下,SOC)を高めるプログラムを開発し,有用性を検討する.

方法:被災高齢者のSOCを高めるための,ワークショップを取り入れたプログラムを作成した.東日本大震災により被災したA町の仮設住宅に暮らす高齢者22名を対象にプログラムを実施し,アウトカム評価及びプロセス評価により有用性を検討した.

結果:全3回のワークショップに参加し,実施前後の質問紙調査に回答した15名の高齢者を分析対象としたアウトカム評価では,ワークショップへ参加することによってSOCが向上し,主観的健康感およびうつ傾向が改善した.プロセス評価では,作成したプログラムに基づき,ワークショップの一部に改良を加えながら実施し,参加者の満足感も高かったことを確認した.

結論:被災高齢者を対象にしたSOCを高めるプログラムは,精神面での健康の改善につながる可能性が示唆された.自然災害が多発する我が国において,災害復興期の被災高齢者への看護に活用していける可能性がある.

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要  約

目的:GISを用いて、津波浸水予測エリアに居住する精神障がい者の、津波からの逃げ遅れ要因を明らかにすること。

方法:津波浸水予測エリアに居住する24人を分析対象とした。データ収集は、事業所の看護師にK-DiPSTMシートを用いた聞き取りを依頼した。

結果:対象者のうち24人が、南海トラフ地震で想定される津波浸水予測エリアに居住していた。5箇所の福祉避難所のうち4箇所が津波浸水予測エリアに位置していた。避難行動シミュレーションの結果、1人が逃げ遅れると推定された。逃げ遅れの要因は、避難方向と考えられ、福祉避難所への避難行動が逃げ遅れのリスクを高めている可能性がある。

結論:福祉避難所を指定し、避難を呼びかける対策は、負の誘導効果により、津波流入方向への移動を誘発する可能性がある。避難途中の被災を防ぐためには、福祉避難所の指定位置、浸水深、津波の流入方向、距離等、地理的な条件を考慮する必要がある。

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【要  約】

 地域に暮らす障害者とその家族の災害発生時における支援ニーズおよび準備状況と近隣の看護系大学に対する希望を明らかにすることを目的として実態調査を実施した。その結果、6名の研究協力者から情報が得られた。研究協力者はすべて専業主婦であり、その子どもである障害者はすべて成人男性で、車いすによる移動を必要としており、2名が気管切開を行っていた。

 災害発生時の支援ニーズとして、車イス移動と持参する介護用品が多いために複数の支援者を必要としていた。準備している物品は、食料類、飲料水類、紙おむつ類等であった。近隣の看護系大学への希望として、ただ単に場所の提供だけではなく、障害者に必要な医療用品や生活必需品や人的資源、信頼関係の構築、医療関係者や福祉関係団体との連携などが挙げられた。

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1.はじめに

 平成29年7月5日から6日にかけ、線状降水帯が形成・維持され、同じ場所に猛烈な雨を継続して降らせたことから、九州北部地方で記録的な大雨となった。

 総降水量が多いところで500ミリを超え、7月の月降水量平年値を超える大雨となったところもあり、福岡県朝倉市や大分県日田市等で24時間降水量の値が観測史上1位を更新するなど、これまでの観測記録を更新する大雨となった。

 記録的な大雨により、死者40名(福岡県で37人、大分県日田市で3人)、行方不明者2名(福岡県)の人的被害の他、発災直後には2,000名を超える方々が避難生活を送ることになった。

 また、多くの家屋が全半壊や床上浸水となり、甚大な被害が発生した。加えて、水道、電気等のライフラインの他、道路や鉄道、地域の基幹産業である農林業にも甚大な被害が生じた。

 そこで、日本災害看護学会ネットワーク活動委員会、調査・調整部では、短時間に起こった大規模水害において被災地の保健・医療・福祉に従事する看護職がどのようなケアニーズを把握し、活動を行ったか調査を行ったため、ここに報告する。

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1.はじめに

 2018年6月18日7時58分に大阪府北部でマグニチュード6.1の地震が発生した。各地の震度は、最大震度6弱が大阪府大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市の5市区であった。震度5強は京都府京都市、亀岡市など18の市区町村で観測したほか、近畿地方を中心に、関東地方から九州地方の一部にかけて震度5弱〜1を観測した。(地震調査研究推進本部事務局,2018)。

 日本災害看護学会では、今回の大阪府北部地震について、被災までの災害への備えや、住民のケアニーズ、今後の課題などを把握することを目的に地震発生から約3ヶ月後に初動調査を実施したので報告する。

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Ⅰ.序 論

 2018年7月7日、西日本中心に豪雨が続き、岡山県倉敷市で大規模水害が発生した。真備町は約21万世帯483,000人が居住(平成30年5月現在)していたが、発災後2日目の9日には、4か所に開設された避難所には約1,800人が避難しているという情報を得た。同日に、真備町で被災しながらも避難所や地域の被災者への支援活動を開始していた専門家を支援するため、物資を持参して現地に入った。7月9日から11日までの3日間、DNGL(災害看護グローバルリーダー養成プログラムi)の先発隊として活動したため、報告する。

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Ⅰ.はじめに

 平成30年7月豪雨は、7月5日に西日本まで南下し停滞した前線の影響と、台風第7号の影響により、西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な大雨となった。この影響により、特に広島県、岡山県、愛媛県では人的・物的ともに甚大な被害が及んだ。また、全国各地で断水や電話の不通等、ライフラインに被害が発生したほか、鉄道の運休等の交通障害が重なり、迅速な情報収集・分析が出来ず、被害の全容解明が困難な状況であった。また、復旧・復興の長期化が予測される中、猛暑の環境下での土石流・土砂の掻き出しや片付け、土埃が舞う中での作業による熱中症や呼吸器感染症など、心身の健康障害が予測された。このため、被災状況の詳細と必要な支援ニーズの把握をするため、平成30年7月14日から17日に広島県、愛媛県の被災地へ日本災害看護学会先遣隊として入った。現地の指定避難所や自主避難所をはじめ、被災病院、社会福祉協議会、ボランティアセンターなどへの訪問や看護活動を通し、必要な支援や看護の課題についての示唆を得たため報告する。

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Ⅰ.はじめに

 平成30年6月28日以降に北日本に停滞していた前線が7月5日に西日本に南下し停滞、さらに6月29日に発生した台風7号の影響で、西日本を中心に広範囲で記録的な大雨が続いた。1府10県に数十年に一度の重大な災害が予想される「大雨特別警報」が発表され、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が各地で発生、死者、行方不明者が多数の甚大な被害となった。

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1.はじめに

 平成30年6月29日に発生した台風第7号は、先行して停滞していた前線の影響と相まって、西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となった。この豪雨では、四国、中国、近畿、九州を中心に、全国で多数の死者や負傷者、住宅被害が生じ、激甚災害に指定された。また11府県110市町村に災害救助法の適用が、さらに12府県88市町村に被災者生活再建支援法が適用されるなど、その被害は国民の生活に大きな影響を与えた1)

 日本災害看護学会では、先遣隊による豪雨被災地での活動に続いて、ネットワーク活動・調査調整部において、被災地の状況、保健医療福祉の災害対応を担った岡山県内の行政機関、岡山県看護協会、NPO法人、地元看護系大学における、活動、今後の課題と展望について調査したのでここに報告する。

基本情報

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日本災害看護学会誌
20巻2号 (2018年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1345-0204 日本災害看護学会

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