日本災害看護学会誌 26巻2号 (2024年12月発行)

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巻頭言

第26回年次大会を振り返って西上　あゆみ 26巻2号 , 2024年12月 , pp.1-3

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このたびの第26回年次大会におきましては1,366名の方にご参加いただきましたことを心からお礼申し上げます。2024年8月31日−9月1日の年次大会は初めての大阪開催、茨木市文化・子育て複合施設「おにクル」をメイン会場として開催する予定でありました。しかし、迷走する台風10号のため、現地開催を断念、オンデマンド配信のみに切り替えをいたしました。このようなことでご迷惑をおかけしました皆様には重ねてお詫び申し上げます。

原　著

被災自治体保健師が災害対応を行うにあたり生じる公私間の葛藤花井　詠子 , 佐藤　奈保 26巻2号 , 2024年12月 , pp.4-18

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要　　旨

目　的：被災地保健師が災害対応を行うにあたり生じる公私間葛藤の内容とその特徴を明らかにし，公私間葛藤への平時からの対策示唆を得る．

方　法：2000年以降に発生した災害の被災地自治体に属する保健師に，公私間で生じた葛藤内容，気持ち，及び対応と結果等について半構造化インタビューを実施した．

結　果：対象は11自治体，24名の保健師で，体験災害は，洪水，地震，崖崩れ，津波，放射線汚染であった．公私間葛藤は急性期から静穏時に生じ，内容は，＜緊急参集と家族の安全確保＞，＜自治体の指揮命令遵守と自己の安全確保＞を含む15のカテゴリが抽出された．

結　論：公私間葛藤の意思決定基軸の中核は，災害時に住民の生命・健康を守るのは自治体保健師の責務であるという意識と使命感，家族・同僚に負担をかけたくないという価値観であった．基軸は平時の公衆衛生活動の中で培われていた．よって自治体保健師は，平時から災害時にどのようなことが起き，自分はそれをどう考え対応するのか想像して活動していく必要がある.

報　告

A市の子育てサークルに所属する妊婦と乳幼児を育てる母親の災害の備えに関する実態調査 —共助を高めるための支援に向けて— 北出　千春 , 本間　裕子 , 浅野　浩子 26巻2号 , 2024年12月 , pp.19-30

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要　　旨

目的：Ａ市の子育てサークルに参加する妊婦と乳幼児を育てる母親の自助・共助における災害の備えの実態とニーズを明らかにする。

方法：17の子育てサークルに所属する妊婦と乳幼児を育てる母親170名を対象とし、無記名Web質問紙調査を実施した。

結果：51名の回答を分析したところ、半数以上の回答者が備えていたものは懐中電灯と避難場所の取り決めであった。防災訓練の参加は2％であった。災害への不安の高さと近所の人同士の信頼および近所の人同士の助け合い、母親同士のつきあいに負の相関があった。災害の備えと近所の人同士の信頼に正の相関があった。備え教育として人とのつながり方や母子サークルを希望している人は3割弱であった。

結論：自助・共助の備えは十分ではなかった。信頼や助け合いが、災害の備えを促進させ不安が軽減すると示唆されたが、人とのつながりを希望している人は少なかった。今後、共助を見据えた介入が課題である。

COVID-19軽症感染者の社会復帰に向けた支援ニーズ —軽症者等宿泊療養施設退所後の調査から— 宮本　純子 , 髙田　大樹 , 藤田　さやか , 牛尾　裕子 , 水川　真理子 26巻2号 , 2024年12月 , pp.31-41

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要　　旨

【目的】軽症者等宿泊療養施設を退所後の軽症感染者の社会復帰に向けた支援ニーズを明らかにすることである。

【方法】2021年1月26日〜2021年2月28日の期間に軽症者等宿泊療養施設入所中調査に協力いただいた方に退所後調査を依頼した。

【結果】退所後調査は18名から回答を得た。退所後調査の有症状者全員が嗅覚・味覚障害を有していた。退所後の経験として「迷惑をかけて申し訳ない」「また感染させるのではないかという不安」を抱えていた。退所後の課題として、後遺症や症状の経過、社会生活への復帰への不安、誹謗中傷が挙げられた。

【考察・結論】退所後は、後遺症への不安、誹謗中傷や職場復帰する際に受け入れられにくい問題を抱えており、就労・雇用に関連するものを含めた迅速な情報提供、相談窓口の提供、感染者の経験を活かす場作りや受け入れ側への教育・啓蒙の必要性が明らかとなった。

緊急レポート

令和５年7月九州北部豪雨における先遣隊活動報告寺田　英子 , 三橋　睦子 26巻2号 , 2024年12月 , pp.42-49

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Ⅰ．はじめに

活発な梅雨前線の影響により，2023年6月29日から全国各地で大雨が降り続いていた．

この大雨の影響により，全国24県の各地で河川の氾濫や洪水，土砂崩れが多発し死者や行方不明者が発生するなど広範囲に甚大な被害が発生した．

さらに対馬海峡付近の梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだことによって， 7月10日未明から九州北部地方及び山口県に「線状降水帯」が発生，福岡県，大分県には大雨特別警報が発令される中，甚大な被害がもたらされた．被害状況は7 月18日の時点で，24県で人的被害は死者13名，行方不明者1名，負傷者28名，住家被害は全壊，半壊，床上・床下浸水を含め3,082棟に及んだ．

本先遣隊は2名で被害の大きかった福岡県久留米市及び佐賀県唐津市に先遣隊第1 班として派遣され，活動を行った．本レポートでは主に急性期の福岡県久留米市と佐賀県唐津市の状況と活動内容及び今後の災害看護活動に関する課題について報告する．

令和6年能登半島地震災害看護プロジェクト活動中間報告酒井　明子 , 佐々木　久美子 , 増野　園惠 , 宮前　繁 26巻2号 , 2024年12月 , pp.50-60

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1 ．はじめに

　このたびの令和6年能登半島地震および令和6年9月能登半島豪雨により、お亡くなりになられた方々に、心よりお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様には謹んでお見舞い申し上げます。

　能登半島地震は、過疎化や高齢化の渦中にある地方都市や中山間地の脆弱性を露呈し、半島部の弱体化が被害を拡大させた。電気や通信の復旧には相当な時間がかかり、上下水道の復旧や道路の修復においては、まだ見通しがたっていない地域もある。避難生活や仮設住宅での暮らしが長期化する中、更なる災害関連死の増加やコミュニティの分断が懸念されている。

　日本災害看護学会は、能登半島地震発災直後より先遣隊を派遣し、2月10日以降は、令和6年能登半島地震災害看護プロジェクトとして、活動を継続してきた。　本稿では、本プロジェクトの中間報告として、令和6年能登半島地震の概要、能登半島地震災害看護プロジェクトの設置経過・目的・体制、活動内容について報告する。

基本情報

日本災害看護学会誌
26巻2号
(2024年12月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1345-0204 日本災害看護学会

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