血液フロンティア 28巻12号 (2018年11月)

特集 骨髄異形成症候群(MDS)の分類・病態・治療と予後の最前線

特集扉

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 骨髄異形成症候群は,不応性貧血と前白血病状態という二つの側面から研究が始まり,その二つが同一疾患であることが明らかとなって確立した疾患概念である。形態的な分類のみでは予後予測に不十分ということで予後予測システムが作られ,染色体所見の重要性を明らかとしつつ染色体リスク群を予後予測システムに取り込んで現在に至っている。現在はゲノム研究が進み,多くの国際共同治験が行われているが,国内でもこうした国際共同研究に十分に対応していく必要がある。

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 2017年にWHO分類第4版改訂が発表された。近年の骨髄異形成症候群(MDS)に関する知見の蓄積を踏まえて,病型分類についても変更が行われた。その中では,異形成や骨髄芽球比率などの形態学的特徴を重視する名称の変更とともに,SF3B1遺伝子変異に基づく環状鉄芽球を伴う低リスクMDSや第5染色体長腕欠失を伴うMDSの定義の見直しが行われた。また,骨髄芽球比率を算出する上での赤芽球比率の取り扱いの変更や,MDSを診断する際に生殖細胞系列に遺伝子変異を有する骨髄性腫瘍を鑑別する必要性を強調している。

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 骨髄異形成症候群(MDS)は造血細胞の異形成と骨髄における無効造血を特徴とする造血不全症であり,急性骨髄性白血病に移行することを特徴とする腫瘍性疾患でもある。従来,造血細胞の形態学的な特徴から診断がされてきているが,最新のWHO分類においては,形態学に基づく診断がより病態を反映したものに改訂されるとともに,染色体異常に加えて,網羅的遺伝子変異解析によって同定された遺伝子変異がついに診断に反映されるようになった。これらの特徴を用いて疾患を適切に分類し予後予測を行うことが,治療方針の適切な選択にもつながる。

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 骨髄異形成症候群(MDS)は,形態異常を伴う血球減少を特徴とする,骨髄腫瘍のさまざまな独立した病型の集合であり,それぞれの病型では特徴的なゲノム異常が認められる。そのうち,ゲノム異常に引き続いてエピゲノム異常が起こるが,そのうち,DNAメチル化酵素やヒストン修飾酵素の変異やコピー数異常がMDSの病態に深く結びついている。最近はSWI/SNF複合体を構成するARID2変異が,その他のヒストン修飾分子の変異と関連していることが報告された。今後,ゲノム異常とエピゲノム異常を統合的に解析することにより,新たな知見が得られることが期待されている。

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 低リスク骨髄異形成症候群(MDS)は,IPSS Low~Intermediate-1(Int-1)あるいはIPSS-R Very Low~Intermediateで診断されるカテゴリーであり,多くの症例では芽球増加は軽度であり,血球減少や機能障害など骨髄不全症状が臨床上最も問題となる。白血化リスクは比較的少なく,主に造血改善を目的とした治療が行われる。しかし,抗腫瘍療法が標準の高リスクMDSと異なり,低リスクMDSでは様々な薬剤選択肢があるものの,奏効率の高い治療法はわずかであり,その選択基準も明確になっていないものが多い。低リスクMDSに対する有用な薬剤の開発や治療方針選択基準の確立が求められている。

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 高リスクMDSの主な治療選択肢は,同種移植とアザシチジン(azacitidine:AZA)治療である。治癒が得られる治療法は同種移植のみであるが,移植がなされない例ではAZAが選択される。支持療法単独や低用量シタラビンなどの通常治療に較べてAZA治療によって生存期間が改善され,75歳以上の高齢者,WHO分類では急性骨髄性白血病(AML)に分類されるFAB分類のRAEB-Tや, 低形成MDSでも同様に生存期間の改善がみられる。

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 骨髄異形成症候群(MDS)に対する根治療法は同種造血幹細胞移植のみであるが,高齢者に多い疾患であるため,その適応は限られている。しかし近年,移植年齢の上限は徐々に引き上げられており,移植を検討すべき症例は増加傾向にあると思われる。そのため,移植可否の見極めはより重要になると考えられる。また,移植までの橋渡し治療は確立していないが,DNAメチル化阻害薬の上市により,これまでの治療選択は再考の余地がある。また,MDSでは遺伝子変異が高頻度で認められるが,特定の遺伝子変異を持つ症例においては,前処置強度が移植成績に及ぼす影響も近年報告されており,今後は考慮すべきかもしれない。

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 アザシチジン治療により高リスク骨髄異形成症候群の約半数で血液学的改善が得られ,全生存中央値は約2年である。しかし,アザシチジン治療後再発例あるいは初回抵抗例に対する有効な薬剤は開発途上にある。リゴサチブは,細胞周期M期制御に重要なPlk経路と細胞の増殖・生存・抗アポトーシスに関連するPI3K経路の双方に対する非ATP競合型阻害薬である。グアデシタビンは第2世代の脱メチル化薬で,decitabineとdeoxyguanosineのジヌクレオチドである。ペボネディスタットはAMPのアナログで,プロテアソーム阻害作用を有する。これらは本邦にて治験が進行中である。

連載 臨床研究,私の思い出(196)

日本人のT細胞腫瘍とB細胞腫瘍 下山正徳

連載 第20回 世界の血液学と血液学専門誌

Editorialを斬る 吉田彌太郎

Topics「身近な話題・世界の話題」(169)

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 成人T細胞白血病(ATL)は免疫学の進歩により病態の特異性が明らかになり,その後,ヒトレトロウイルスを原因とする腫瘍であることが明らかにされた。ここでは主に臨床のサンプルを用いて,ATL細胞の免疫学的解析が進み,それが画期的な治療の開発に結び付いたことを紹介する。一方で,その研究から免疫学に双方的にインパクトを与えている側面と,新たな治療法・知見をも紹介した。

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基本情報

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血液フロンティア
28巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6940 医薬ジャーナル社

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