アレルギー・免疫 24巻12号 (2017年11月)

アレルギー疾患に対する生物学的製剤

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 アレルギー疾患は一般的に生命予後良好とされているが,患者の生活の質(QOL)が著しく障害されている。QOLに及ぼす因子には,症状による日常活動制限,社会活動性低下,外観,喘息,痒み,痛みなどの直接的因子だけでなく,内服,吸引,外用等の煩わしさに加え,不安等の心理的因子も関与しているため,患者QOLの観点からより積極的な治療が検討されることも多い。生物学的製剤は病態形成に重要な役割を果たすサイトカイン等に特異的に作用し,既存治療抵抗性症例に対しての治療に大きな役割を果たしていくものと考えられる。

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 特に誘因なく瘙痒を伴う膨疹が出没する特発性の蕁麻疹のうち1カ月以上にわたり病勢が持続するものを慢性蕁麻疹という。本症では,ヒスタミンH1受容体拮抗薬を中心とした内服療法が治療の中心となるが,それに抵抗する難治例もしばしば経験される。蕁麻疹診療の分野でも生物学的製剤の応用が始まっており,最近になり抗IgEモノクローナル抗体製剤であるオマリズマブが保険適用となった。慢性蕁麻疹の特徴と生物学的製剤による治療効果とその限界,注意点を十分に理解して慎重に適応を判断することが求められる。

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 アトピー性皮膚炎の難治症例に対して,IL-4/IL-13を抑える抗体であるdupilumabやIL-31を抑える抗体であるnemolizumabなどの生物学的製剤による治療の有効性が報告された。Dupilumabとnemolizumabは外用治療でコントロール不良な中等症~重症の成人アトピー性皮膚炎患者に対して,前者は主に皮膚症状に対して,後者は主に瘙痒に対して高い効果を有し,安全性も比較的高く,アトピー性皮膚炎に対する新しい治療として今後保険適用が期待される。Dupilumabは2017年3月にアメリカで保険が適用された。日本でも2018年には保険適用が期待されている。

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 乾癬性関節炎(PsA)は乾癬患者の約10%に生じ,進行性で骨破壊を生じれば関節の変形は不可逆的になる。多くは皮膚症状が先行するため皮膚科医が定期的に関節症状について注意を払うことが早期発見のためには重要である。以前はメトトレキサート,サラゾスルファピリジンなどの抗リウマチ薬が主に用いられていたが,難治な場合も少なくなかった。関節炎の病変部ではTNFαやIL-17などのサイトカインが重要な役割を果たしており,これらの標的とした生物学的製剤の有効性が臨床試験などで実証され,現在ではPsA治療で中心的な役割を果たしている。

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 2010年にインフリキシマブが乾癬に対して使える最初の生物学的製剤として本邦に登場して以来,TNF阻害剤,IL-12/23阻害剤,IL-17A阻害剤,IL-17受容体A阻害剤からなる合計6種類が現在乾癬に使用可能である。生物学的製剤導入1年後には中等症から重症の乾癬患者の半数以上で皮疹がすべて消失するといった製剤もでてきており,乾癬診療は劇的に変化している。今後は生物学的製剤によって寛解導入したのち,生物学的製剤以外の治療選択肢も含めて,どのように寛解維持していくかの方法論の検討も始まるように思われる。

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 気管支喘息の臨床的特徴は多様であることから,単一の疾患ではなく症候群として捉えられてきた。その多様性から,病態生理学的指標に基づいて類似したフェノタイプの分類が検討され,近年は分子生物学的病態に基づいてエンドタイプの分類も検討されるようになった。特に重症喘息に対して個別化医療の観点からフェノタイプ,エンドタイプの解析が着目されている。

Ⅱ.内 科 2.抗IgE抗体 永田 真
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 重症喘息の中で,家塵ダニや真菌類などの通年性環境アレルゲンに対するIgE抗体が証明される症例においては,抗IgE抗体オマリズマブの投与が考慮される。オマリズマブは各種の薬物療法に抵抗性を示す重症喘息においても,夜間症状や急性増悪頻度を抑制し,さらにコルチコステロイド投与量を減少させるなどの多彩な臨床効果を示す。抗IgE抗体は重症蕁麻疹や花粉症などにも効果を示すことから,特にこれらの合併例においては臨床的な有用性が高いほか,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症などの難治性好酸球性疾患に対しても効果が期待される。

Ⅱ.内 科 3.抗IL-5抗体 長瀬洋之
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 好酸球は,アレルギー性気道炎症で中心的な役割を有しており,IL(interleukin)-5は,その主要な活性化因子である。抗IL-5抗体であるメポリズマブは,初期の臨床試験では有効性が示されず,対象を好酸球性喘息に限定することで増悪抑制効果が示された。メポリズマブの薬価は約17万円/月であり,過去の臨床試験の失敗からも,投与の際は,末梢血好酸球数の基準を遵守することが重要である。他の抗IL-5抗体であるレスリズマブはFDA(Food and Drug Administration)に承認されており,IL-5Rα抗体であるベンラリズマブの増悪抑制効果も報告されている。

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 Th2サイトカインであるIL(interleukin)-4,IL-13はIgE(immunoglobulin E)産生やTh2細胞の誘導,気道リモデリングの形成などアレルギー疾患において重要な役割を果たす。IL-4およびIL-13は膜結合型IL-13Rα1とIL-4Rαとのヘテロ二量体を形成するType Ⅱ IL-4受容体に共に結合して生理機能を示すが,IL-4はこの受容体以外にもType Ⅰ IL-4Rにも結合する。一方,IL-13もType Ⅱ IL-4R以外にIL-13Rα2にも結合する。IL-4,IL-13の機能発現は,各細胞においてどのサブタイプの受容体が高発現しているかによっても異なる。いずれにおいても,現時点ではIL-13のみを抑制する抗IL-13抗体よりもType Ⅱ IL-4受容体を阻害する方が,効率よくアレルギー性炎症を抑制する結果が報告されている。

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 アレルギー疾患における重症例に対する治療法として,生物学的製剤の開発が進められ,近年Th2型免疫反応に関与する分子を標的とした生物学的製剤の有効性が次々と報告されている。現在IL-2,好酸球,好塩基球,Th2細胞に特異的に発現するプロスタグランジンD2(PGD2)の受容体の1つであるCRTh2と,Th2型炎症反応を誘導する上皮由来の炎症性サイトカインであるTSLPに対する生物学的製剤の開発が進められ,実用化に向けた臨床試験が進行中である。

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 エピナスチンおよびオロパタジンはアレルギー性結膜炎に汎用されている抗ヒスタミン薬である。今回,HeLa細胞を用いてヒスタミン刺激後の細胞内Ca2+濃度の上昇に対する抑制効果を比較検討した。  HeLa細胞を100μMまたは1mMのヒスタミンで刺激した後,0.1μMまたは1μMの抗ヒスタミン薬で処理した。エピナスチンはいずれの条件でも有意な抑制効果を示した。一方,オロパタジンはヒスタミン100μMで刺激した後,1μMの薬剤を作用させた場合にのみ有意な抑制効果を示した。オロパタジンが1μMの濃度でのみ有意な抑制作用を示したことから,抗ヒスタミン薬の濃度を1μMに固定し,ヒスタミンの濃度を変えて比較した。10μM,100μM,1mMのヒスタミンで刺激した後,1μMの抗ヒスタミン薬を作用させた。エピナスチンはすべてのヒスタミン濃度で有意な抑制作用を示したが,オロパタジンではヒスタミン濃度が高くなるにつれて抑制効果は減弱し,1mMヒスタミンでは有意な抑制作用は認められなかった。  エピナスチンはオロパタジンに比較し,ヒスタミンによるHeLa細胞内Ca2+濃度の上昇を強く抑制した。この結果は,少なくともHeLa細胞を用いた実験系において,オロパタジンと比較しエピナスチンがより強いヒスタミンH1受容体親和性を持つためと考えられた。

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 慢性咳嗽の原因は多彩であり,咳嗽は乾性咳嗽と湿性咳嗽に分けられ,乾性咳嗽の原因疾患には,咳喘息,アトピー咳嗽,胃食道逆流症,感染後咳嗽などが,湿性咳嗽の原因疾患には,副鼻腔気管支症候群,後鼻漏症候群,慢性気管支炎/COPDなどがある。そのほか,呼吸器以外の疾患でも咳嗽が発現する可能性があることから,多くの原因疾患を鑑別する必要がある。「咳嗽に関するガイドライン第2版」では慢性咳嗽の診断フローが示されており,専門医以外でも原因疾患の見極めや適切な治療選択が可能となったが,一方で不適切な診断や不十分な治療が難治化をきたすことから,咳嗽の原因疾患を正しく見極め,原因に応じた特異的治療を行うことが重要である。

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基本情報

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アレルギー・免疫
24巻12号 (2017年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6932 医薬ジャーナル社

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