精神看護 22巻5号 (2019年9月)

特集 感情・関係・状況を可視化できるグラフィックレコーディングのインパクト—なぜこのツールは希望を生み出すのか

熊谷 晋一郎
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この特集は、《2018年国際カンファレンス「コ・デザインと当事者研究」》の2日目に行われたワークショップ「グラフィックレコーディング」(主催:東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野)から一部抜粋し、加筆をしたものです。

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「これは単なる記録ではない。ホワイトボードでその人の世界が視覚化されることで“生きやすさ”を作っているのだ」

 精神科病棟には、見えないものが見えたり聞こえないものが聞こえたり、多くの人が感じない世界を感じたりする人たちがたくさんいます。そんな不思議な世界に生きている人たちは、現実には孤立して、生きにくい。

 ある統合失調症の人は、「五感が幻になる」という言い方をしました。彼らは、自分の経験に対して後ろめたさを覚えています。そして自分の経験が公になることによって、自分がどんな扱いをされるか、という恐怖を感じています。

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 まず「実際のグラレコの現場を見てみたい」ということになり、即興で「当事者研究をグラレコする」ことになりました。向谷地生良さんが会場内に向けて「当事者研究をやりたい人〜」と募ると、2人の若い男女が手を挙げました。2人を檀上に招き、向谷地さんが2人に話を聞き、その内容を檀上のホワイトボードに清水淳子さん(グラフィックレコーダー)が描きます。本誌では、話者たちの会話と並行して清水さんが描いたグラレコを紹介していきます。

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1. 行き詰まりにこそグラレコが効く

研究テーマは議論の可視化

 清水淳子と申します。本日はグラフィックレコーディング(以下、グラレコ)とは何かということを説明したいと思います。よろしくお願いします。

 私は今は、フリーランスのデザイナーと、多摩美術大学の情報デザイン学科というところで講師をやっているのと、東京藝大の修士2年として研究をやっているという感じで、三足のわらじという変なことになってしまっています。

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 寛解。病に対して、全治とは言えないけれど、だいぶよくなってきたこと。ぼくがそのことばを身体で知ったのは、2017年。

 多くの精神的な病の回復には、「寛解」という言葉を使う。勤勉で、できる限り善良で、おだやかに暮らしていきたいと思う。でも、何も心配のなかった日々は遠い。それどころか、病が全力で襲いかかってきたあの忌み地に、いつだってぼくたちは片道切符で引き込まれる可能性がある。そんな日常。

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 地域で精神疾患をもつ人を支えるには特別な技術が必要だ。特に「困難事例」と呼ばれる人たちに出会った時に支援者に技術がないと、場当たり的な対応になり、翻弄されて収拾がつけられない事態に陥ってしまう。

 道に迷える支援者の羅針盤として、これまでは春日武彦氏の『はじめての精神科』(表紙から通称「ネコ本」)が読まれ続けてきたが、このたび小瀬古伸幸氏による『精神疾患をもつ人を、病院でない所で支援するときにまず読む本——“横綱級”困難ケースにしないための技と型』(通称「横綱本」)が発行され、もう1つの道しるべが加わった。

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身近でありながら語られないもの

 介護や看護をはじめとするケアの仕事は、人間の生(ライフ)に密接にかかわるものであり、においを切り離して考えることはできない。人間が有機物である以上、そこには必ず何らかのにおいが生じる。例えばおむつ交換、トイレ介助、痰の吸引、ベッドや衣服に染み付いた体臭、さらにはそれらが病棟や施設のアルコール消毒剤とまざった独特なにおい。これらに対して、一度も不快な感情を抱いたことはないという人はどれだけいるであろうか。

 対人支援に職業として携わる人には、利用者の安全確保だけでなくより良い支援のためにも、職業上の倫理規範が求められる。そこでは支援者は、自分自身の感情をコントロールしながら、それぞれの規範にしたがってサービスを提供することになる。こうした仕事は「感情労働」と呼ばれ、「自分の感情を誘発したり抑圧したりしながら、相手の中に適切な精神状態を作り出すために、自分の外見を維持しなければならない」*1ものと定義されている。

連載 患者さんが「怒った」事例をアセスメントして今日からの精神科看護に活かしたい・1【新連載】

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 Aさんは知的障害のある40代の男性です。日常的にスタッフへの暴言や暴力行為がありました。生活動作のほとんどが全介助なのですが、車椅子への移乗や排泄、入浴などの介助の際に、固く握ったグーのパンチが手加減なしに飛んでくるので、スタッフは複数対応をすることで安全を確保していました。

 ある日の夜勤中、Aさんが夜中に目覚めて声をあげました。声をあげ続けると周囲の患者さんを起こしてしまうかもしれないと思い、私たち夜勤スタッフはAさんをベッドごとスタッフステーションに移動してきました。Aさんは時折声を荒らげながら何やら1人でモゴモゴ話していて、私は少し離れた所でその声を聞きながら、記録の整理をしていました。

連載 間の間・8

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 ボストンに住んでいると、アメリカ人って散漫だなあと感じる。気が散っているのだ。別の言い方をすれば、まわりのことによく気がつく。そしてためらいなく声をかける。

 たとえばバスに乗って足を組むと、向かいに座っていた女性が「その靴下すごく好き」と褒めてくれる。あれ、あなたさっきまでスマホの画面に見入っていなかったっけ? いったいいつの間に私の靴下に気づいたの? たぶん「ふと視界の隅に入った」程度だったのだろうけど、たかが靴下程度のこと(と言ったら彼女に怒られるかもしれないが)でも、それが気になったらパッとスマホから離れて声をかけてくるのだ。

連載 {発達障害当事者マンガ}私が経験している世界・2

感動しすぎる話 白井 風子

連載 うんこあるある・4

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硬軟は大腸での通過時間で決まる

 便が硬いか軟らかいかは、大腸をどのようなスピードで通過するかに関係しています。通過速度が速ければ水様便(BS7)となり、ゆっくりであれば硬くてコロコロの兎糞便(BS1)になります。

 食べてからBS1になるまでには何時間かかると思いますか? じつは約100時間、約4日と言われています。ちなみにBS7は約10時間です。

連載 家庭で生活できない高年齢児のための「自立援助ホーム」を運営しています・2

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18歳までとそれ以降

 連載初回でも書いたが、自立援助ホームに入居している児童の約3人に1人は何らかの障害を有しているとされる(全国自立援助ホーム協議会の調査による)。近年では、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)の児童の存在も注目されており、児童養護施設においても同様の傾向にある。

 ここで1つの課題が浮き彫りとなる。自立援助ホーム(児童養護施設)は、児童福祉法(児童福祉行政)の枠組みの中に位置づけられた事業(施設)だが、障害支援は基本的に障害者総合支援法(障害者福祉行政)の枠組みの中のサービスとなる。そのため、それぞれ制度ごとの縦割りによるサービス提供となり、自立援助ホームに入居する障害を持つ児童などは退居後にその制度のはざまに落ちてしまう恐れがある。

連載 精神科に入職して初めて働く時に、やったほうがいいこと、やらないほうがいいこと・3

私が患者さんから学んだ「精神科仕事術」

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■自分の価値観に気づき、なりたい自分を持つ

▷ 自分がすごいと思った先輩の動きを真似よう

 周りの先輩の動きが見えてきたら、自分が、こんな人になってみたいと思える先輩を1人見つけ、その先輩の動きを真似てみましょう。「真似る」は「学ぶ」です。なりたい自分を持ち、なりたい自分に近づいていることに気づくと、仕事を続けていける自信がついてくると思います。

連載 MSEを穴埋め式問題で練習してみよう・7

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慢性期統合失調症におけるMSEの視点

 今回は慢性期の統合失調症の患者Aさんについて、どのようにMSEを用いてアセスメントし、看護記録を書くのかについて考えていきましょう。みなさんも臨床において慢性期の患者さんの日常生活行動を観察し、いざ記録をしようと電子カルテや看護記録用紙に向かうと、「……あれっ? 書くことがない! 何を話したっけ?」と感じられた経験はないでしょうか?

 実は私もそういった経験がありました。これまでの連載のように救急病棟や急性期病棟などでの記録の際には、興奮や幻覚、妄想、意欲亢進などの陽性症状に関連したさまざまなエピソードがあり、記録に困ることは稀でした。しかし、長期入院や慢性期においては観察するポイントが“問題行動や陽性症状のある・なし”に限定されてしまい、何を観察するのかが曖昧になってしまったり、ミーティングでも話題に上ることがなかったりして、積極的にかかわって情報収集しようとする意識が薄れてしまうことがあります。さらにADLが自立しているとなると、どう介入してよいのかが見えなくなってしまうことがあります。

連載 栄養精神医学・10

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「ビタミンD欠乏うつ」を問診で見抜く

 ビタミンD欠乏がメンタル不調の一因となる可能性がある。筆者はビタミンD欠乏に伴ううつ状態を「ビタミンD欠乏うつ」*1と名付け、日常診療ではビタミンDのチェックリスト(表1)を用いてメンタルヘルスとの関連性をわかりやすく伝えている。

 紫外線β波が皮膚に当たると、コレステロールからビタミンDが生成される。そのため、日照時間の短い季節や、過度な紫外線カットはビタミンD欠乏を引き起こしやすく、うつ状態につながることがある。冬から春にかけて心身の不調が多くなる患者には、ビタミンD欠乏がないか確認しておきたい。入院患者で注意すべきは、紫外線β波はガラスを貫通しないため、屋内で窓越しに日光に当たってもビタミンDは生成されないという点である。食事からビタミンDを摂取するには、サケ、マイワシ、サンマ、マガレイなどを意識して摂りたい。

連載

お知らせ

精神科認定看護師への道

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共同創造の可能性が拓かれていく

 本書を読み終えた後、私は不思議な感慨に満たされていました。それは、著者と重なる40年に及ぶ実践現場で味わった惨めさや行き詰まりなどを含めた全ての事柄を「わかるよ」と受け止めてもらえたような気持ちになったからです。

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目次

学会&イベント information

今月の5冊

次号予告・編集後記

基本情報

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精神看護
22巻5号 (2019年9月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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