精神看護 22巻4号 (2019年7月)

特集 メリデン版訪問家族支援!—「家族」を本人と同等の支援対象にすると、こんな変化が生まれるんです

  • 文献概要を表示

「メリデン版訪問家族支援」という名前を聞いたことがあるでしょうか。

これは、本人と家族とをまるごと支援する、英国発祥の技術です。

日本ではこれまで、支援の対象者はあくまで本人で、家族は本人を支えるための資源の1つ、のように捉える傾向がありました。

メリデン版訪問家族支援では、家族を利用者と同等の支援対象として位置づけ、一家にまるごとかかわっていきます。

精神障害をもつ人が家庭内にいる場合、家族関係が家族全員にとっていいバランスで成り立っていることは少なく、誰かしらが、あるいは全員が我慢していると感じていることがよくあります。

メリデン版訪問家族支援のアプローチにより、いつも「病気」を中心に生活してきた家族が、「健康的な暮らし」を望む家族へと変わり、家族の力が強まっていき、支援者も驚くような変化を見せていきます。

この特集では、メリデン版訪問家族支援とはいったいどういうものなのか、そのメソッドを教えていただくとともに、ファミリーワーカーとなってケースにかかわった方たちの、個人的な経験や思いを教えていただきました。

  • 文献概要を表示

 「メリデン版訪問家族支援」(以下、ファミリーワーク)は、本人と家族をまるごと支援する技術です。このファミリーワークが日本に導入されてから5年が経過しました。

 この特集ではファミリーワークのトレーナーと基礎研修修了者の方々が、この技術を実施しての経験や感想を書いてくれています。本人と家族へまるごと同時に濃密な介入をすると、こんなにも家族が変わるというのは、日本でファミリーワークを実施し始めた皆さんの実感です。

  • 文献概要を表示

継続的に支援するにあたって

こんな流れで進みます

 ここから、ファミリーワークの具体的な流れを紹介していきます。

 ファミリーワークでは、ファミリーワーカー(ファミリーワークの実施者)1〜2人が、本人を含めた家族に対して、1回1時間前後、計10〜15回のセッションを行います。頻度は週1回、月1回などさまざまで、期間は半年〜1年のように継続的に行います。

  • 文献概要を表示

【実践報告①】ファミリーワークを通して、ポジティブで建設的な見方・姿勢を培うことができた!

【実践報告②】困難ケースが困難ケースでなくなった!以前の私、今の私の視点の違い

【実践報告③】ファミリーワークがもたらした組織への変化 家族に対するスタッフの姿勢が変わった

【実践報告④】支援のなかで変わっていく家族と私 「やっぱり信じるって大事だ!」

【実践報告⑤】本人、家族との協働作業 新しいチャレンジを一緒に楽しむ

【実践報告⑥】ファミリーワーカーがACTに新しい気づきを運んでくれた

  • 文献概要を表示

◎英国の方法に準拠した形で

 これまでに紹介してきた支援技術は、「メリデン版訪問家族支援基礎研修」で学ぶことができます。この基礎研修は、英国・バーミンガムにあるMeriden Family Programmeだけでなく、2018年からは日本でも受講することが可能になりました。これまでに、東京、北海道(札幌・帯広)、京都で4回開催し、2019年3月末現在で日本での基礎研修を修了されたのは45名となっています。

 日本で行うメリデン版訪問家族支援基礎研修は、英国のMeriden Family Programmeの基礎研修と内容だけでなくその雰囲気もできるだけ同じになるようにしています。私たちトレーナー(6名)は、Meriden Family Programmeからのグループスーパービジョンを受けており、英国での基礎研修の内容が修正された場合には、その内容について相談し、日本での研修に反映できるようにしています。グループワークのテーマやファシリテーションの仕方についても同様に、常にアップデートし、日本の基礎研修では常に最新のファミリーワークを受講者が習得できるように心がけています。

特別記事 袖ケ浦さつき台病院では、特定行為研修修了者が活躍中

  • 文献概要を表示

 袖ケ浦さつき台病院(以下、当院)は、房総半島の東側、山と海に挟まれた住宅街の真ん中に位置しています。朝は大きな太陽が照らし、青々とした東京湾が眺められ、海に沈む夕日を見て夜を迎えます。夜になっても家々の明かりに囲まれ温かさを感じる、このうえない環境です。

 1983年に精神科医療を担う民間病院として開設され、時代の流れと地域のニーズを捉え、ケアミックスの医療形態として成長してきた当院の、現在の地域における役割は、精神科疾患をもつ患者にその質を保証できる医療を提供することかと考えています。そして当院の強みを発展させていくには、さらなる精神科医療の質の強化が必要であると感じています。

  • 文献概要を表示

制度が生まれてからこれまで

 特定行為に係る看護師の研修制度は、超高齢化社会における医療の高度化・複雑化が進むなか、質の高い安全な医療を提供するために看護師の業務範囲を見直そうという動きから、2015年10月1日に施行されたものです。

 厚生労働省は、2025年に向けて約10万人以上の特定行為に係る看護師の育成を目指していますが、制度誕生から3年が経過した2018年3月現在、特定行為研修を修了した看護師は1006名(総数)となっています。

  • 文献概要を表示

当院には特定行為研修修了者が4人います

 袖ケ浦さつき台病院(以下、当院)には特定行為研修修了者が4名います。病棟に配属されていますので、病棟業務も兼務です。日祝日を除き、毎日少なくとも1名は特定行為に係る看護師としての活動を担うようにしています。活動日は、ユニフォームを専用のものに変更し(写真1)、PHSを携帯して、医師や看護師からの連絡や相談にタイムリーに対応するようにしています。

日本精神科看護協会に聞きました。
  • 文献概要を表示

特定行為研修について日本精神科看護協会ではどのように考えているのか、現場からの質問に答えていただきました。

連載 {発達障害当事者マンガ}私が経験している世界・1【新連載】

連載 家庭で生活できない高年齢児のための「自立援助ホーム」を運営しています・1【新連載】

  • 文献概要を表示

「自立援助ホーム」を知っていますか?

 本誌2019年5月号で、精神疾患に対する啓発活動であるシルバーリボンについて書かせてもらったのだが、本連載では、3年前から足を踏み入れることとなった「社会的養護(児童福祉)」の領域について書かせていただく。

 社会的養護とは、保護者のいない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、施設、ホーム、シェルター、里親といった形で公的責任のもと、社会的に養育したり保護したりすることを指している。

  • 文献概要を表示

 3月末からボストンに住んでいる。マサチューセッツ工科大学(MIT)の客員研究員として、半年間滞在する予定だ。初めてのアメリカ生活で、まさに「犬も歩けば棒に当たる」状態。毎日が失敗と発見の連続だ。

 「Macを注文したらマクドナルドではなくマカロニのことだった!」とか「ダンキンドーナツのコーヒがめちゃくちゃ甘い!」とか、小さな「棒」はいろいろある。けれど、暮らす日数が増えるうちに、じわじわと身に沁みてきた違いがある。それは、こちらの人たちの「場」に対する感覚だ。

連載 イイネ! その業務改善・11

  • 文献概要を表示

トラウマ・インフォームドケアとの出会い

 皆さんの病院ではどのような入院案内をお使いでしょうか。

 通常は入院に際して必要な物や不必要な物、入院中の約束事が、「お願い」という表現を通して羅列されているのではないでしょうか。私が有馬高原病院(以下、当院)の入院案内の表現を変えたいと思ったのは、トラウマ・インフォームドケア(Trauma-Informed Care:TIC)を学んでからでした。

連載 うんこあるある・3

  • 文献概要を表示

うんこを笑う者は、うんこに泣く

 とある単科精神科病院から女性患者さんが転院してきました。イレウスになりかけている、とのことでレントゲンやCTを撮影したところ、ニボー像があり、狭窄や捻転はなく、ガスや便が溜まっていて大腸は大きく膨らんでいます。主治医から毎日浣腸の指示があり、初日は私とベテラン看護師とで担当しました。

 直腸診をして、便が下りているかを確認。すると肛門近くにもう便はいることがわかりました。ベテランさんは「摘便しよう」と言って直腸診ついでに摘便を開始しました。すると出るわ、出るわ。BS(ブリストルスケール)1の兎糞便。左下腹部を刺激して、さらに触れた便を摘便すると、BS2の硬便と、BS3とは言い難い、硬いけどねっとりした便がたくさん出ました。それから浣腸をしましたが、反応便はなく……。

連載 精神科に入職して初めて働く時に、やったほうがいいこと、やらないほうがいいこと・2

私が患者さんから学んだ「精神科仕事術」

  • 文献概要を表示

■検温は情報収集とケアをするチャンス。丁寧に行おう

▷ 検温の前に、担当の患者さん全員に挨拶に回ろう

 検温をする前に、自分の担当の患者さん全員の所を回って挨拶に行くとよいでしょう。「○○さん、おはようございます。今日担当の○○です。これから順番に検温に行くのでよろしくお願いします」のように声をかけます。患者さんの中には、担当看護師がいつ検温に来てくれるのか気を揉んで待っている患者さんがいるからです。また急変の患者さんがいないかどうかの確認もしておきたいからです。万が一にも、拘束中の患者さんや高齢の患者さんが心肺停止状態でいるといったケースも、ないことはないからです。

連載 MSEを穴埋め式問題で練習してみよう・6

  • 文献概要を表示

 第4回(3月号)で、あなたは「認知症の疑い」という診断名をもつ入院2日目の高齢の男性患者を担当し、バイタルサインを測定しに訪室しました。患者の異変に気づき、アセスメントを深め、その症状のレパートリーからせん妄ではないかと考えました。しかし、「この異変は認知症によるものかも?」と疑問を感じ、その場面だけではせん妄だとは言い切れませんでした。

 そこで第5回(5月号)では、現病歴と入院1日目の看護記録とをあらためて読み返し、現れていた症状をピックアップしました。

連載 栄養精神医学・9

  • 文献概要を表示

「亜鉛欠乏うつ」を問診票で見抜く

 亜鉛はストレスと密接に関係している。亜鉛欠乏の状態はメンタル不調を引き起こしやすくなる。この事実を患者さんにわかりやすく伝えるために、亜鉛欠乏症に伴ううつ状態を「亜鉛欠乏うつ」*1と名付け、亜鉛欠乏のチェックをしてもらっている。

 亜鉛は、細胞分裂に必要なミネラル。そのため、舌にある味蕾・嗅覚系組織・腸管などの粘膜、皮膚や赤血球、前立腺や精子、記憶に関係する海馬の神経など、細胞の入れ替わりが早い組織で不足しやすい傾向がある。性ホルモンに必要なので、女性では月経不順、男性では精力減退につながり、精子の量やテストステロンが低下する。また、免疫力を高めたり、創傷の修復促進にかかわったりしている。

連載

  • 文献概要を表示

立ち上げ人生。そのきっかけはデイケア

 皆さん、こんにちは。伊藤絵美と申します。私は臨床心理士として現場で長らく仕事をしてきています。最初の職場は精神科のクリニックでした。大学院の博士課程に通いつつ、クリニックで非常勤心理士として心理療法(カウンセリング)を担当しました。博士課程修了のタイミングで、院長から「デイケアを立ち上げたいから常勤になってマネジメントをしてくれないか」という素敵なオファーがあり、それまでしていた生活のためのアルバイトを辞め、クリニックの常勤職となりました。そして「デイケア部長」という素敵な肩書を与えられ、デイケアを立ち上げるために、場所を選定したり、スタッフを募集したり、メンバーさんを集めたり、保健所や精神保健センターにご挨拶に出向いたり、とにかく忙しく動き回りました。そして1996年春、無事デイケアをスタートすることができました。

 この「デイケア立ち上げ」という仕事は私にとって大きな意味がありました。すなわち「立ち上げるって楽しい!」というポジティブ体験として私の中に深く残ったのです。場所を決め、必要な物品を買い揃え、システムを構築し、プログラムを決め、コンテンツを決め、スタッフを雇い、スタッフを教育し、メンバーを集め……というように、新たに場を立ち上げ、その場が無事回っていくようにマネジメントする、というのは私の性に合っていたようで、その後、私は自分のキャリアにおいて、「企業内ベンチャー企業の立ち上げ」「カウンセリング機関の立ち上げ(現在運営中)」と、次々と何かを「立ち上げ」ることになるのでした。つまりデイケアを立ち上げた経験を皮切りに、私の「立ち上げ人生」が立ち上がったのです。最近では、「日本スキーマ療法研究会」などという研究会を立ち上げ、その運営などをしております。

お知らせ

精神科認定看護師への道

--------------------

目次

次号予告・編集後記

基本情報

13432761.22.4.jpg
精神看護
22巻4号 (2019年7月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)